【完結】偽聖女め!死刑だ!と言われたので逃亡したら、国が滅んだ

富士とまと

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「婚約者とは、偽聖女のことですか?」
「偽聖女だと?マリアージュのことか?」
「はい。浄化魔法が使えるというだけで、実際に使えるかどうかも分かりません。王妃になりたいだけで聖女を自称していた女です」
 陛下はさらにこめかみを抑える。
「今はお前の主張はどうでもいい、マリアージュはどこだどこにいる?」
 皇太子は悪びれもせず答える。
「分かりません」
 陛下が立ち上がり、皇太子の襟首をつかみ上げる。
「分からないとはどういうことだ?仮にもお前の婚約者だろう?会場にいないならいないで部屋で休んでいるとか、状況は把握しておくべきだろう!」
 皇太子は驚きながらも自分は間違った行動はしていないと堂々としていた。
「父上、私は聖女を自称し、皆を欺くような大罪人と結婚はできません。それゆえ、婚約は破棄しました。それに、元は庶民。栄えある学園を卒業できないように、出て行ってもらいました」
 陛下は愕然とし宰相を見た。
「おい、お前の息子を呼べ、それからマリアージュの弟と、いつもお前が一緒にいる者たち全員呼べ」
 集められたのは、卒業式の前にマリアージュを取り囲んでいた者たちだ。
「なぜ、皇太子の行動を止めなかった?」
 大きなため息をつき陛下が部下に命じた。
 連れてこられた宰相子息、騎士団長子息、第二王子、第三王子、そして隣国の王子。
 陛下はまず隣国の王子に謝罪した。
「申し訳ない、巻き込む形になってしまった。王都に毒蛙が大量に発生し、ほとんどの井戸が使えなくなってしまった。当面は水以外のものを口にすることで我々はしのぐことができるが、毒が消えるまでの10日はとても持ちそうにない……。すでに王都に住む者たちには大きな被害が出始めており、今後どうなるか不明だ。危険もあるため今すぐ帰国していただきたい」
 隣国の王子は、素直に頷いた。
「我が国と違って毒蛙が出ない秘密でもあるのかと思ったが、そうじゃなかったのか、もうちょっと遊んでいたかったけど、帰るよ」
 隣国の王子の背を眺めながら陛下は再びため息をつく。
「さて、戻ってどうなることやら……」
 第二王子と第三王子が口を開いた。
「毒蛙とはなんですか?」
「大きな被害とは?」
 陛下は三度目のため息をつく。
「知らないのか……まさかまずはそこから説明せねばならんとは……」
 宰相子息が眼鏡をくいっと片手で上げて説明を始める。
「王都の水源は井戸です。そのため、井戸に毒を入れられてしまえば簡単に王都を掌握できる。そうならないように、主要な何か所かの井戸には見張りが立っているはずですが?」
 騎士団長子息が息巻いた。
「裏切者がいたのか!犯人は捕まえたのか?見張りは何をしていたんだっ!」
 宰相が息を吐いた。
「王都に井戸水を飲んだ者が不調を訴えたのですぐに調査した。原因は毒蛙だと判明したのだ。管理されている見張りが立っている井戸は利用者は許可制だ。見知った顔の者以外は使えない。見張りも、不審者が近づかないかはしっかりとチェックしていた……。人は、しっかりと見はっていたんだ」
 皇太子がチッと舌打ちをする。
「小さな蛙は見逃したってことか、飛んだ怠慢だなぁ!すぐに首を切ってしまえ!」
 部屋の中にいた使用人が息をのんだ。
 陛下が宰相に声をかける。

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