【完結】偽聖女め!死刑だ!と言われたので逃亡したら、国が滅んだ

富士とまと

文字の大きさ
上 下
12 / 26

12

しおりを挟む
 ロアさんを見たら、寂しそうな顔のままぶつぶつと何かをつぶやいていた。
「お兄ちゃん……もう、ロアお兄ちゃんとは呼んでくれないんですか?」
 えええ!それ?そこ?大事な話なの?
 【……ああ、この木こりもどき、残念なタイプだ……。まぁ、どう見ても木こりに見えないのに、木こりだって言い張ってるあたり、相当残念だとは思ってたけど……】
「ロ、ロアお兄ちゃんっ、私とロアお兄ちゃんのこと、勘違いされてるから、ちゃんと言ってあげて」
 おばさんが私がロアさんのことをお兄ちゃんと呼んだことで勝手に解釈を始める。
「あら、もしかして似てないけれど兄妹かい?ロアお兄ちゃんって呼び慣れてないことを考えると、母親違いの兄妹かねぇ?生き別れてたのが最近遭遇したとか?」
 【はは、想像力豊かだよね。似てなさすぎなのに、どうしてそういうはっそうになるのか】
 複雑な表情をすると、おばさんが振り返って私の表情を見て口をつぐむ。
「ごめんごめん、詮索はしないよ。何やら事情があるんだろう。分かるよ、ロアもマリーも、とても立ち振る舞いが庶民っぽくないからねぇ。もしかしたらお貴族様と侍女の許されない恋なんて想像しちゃったよ。いや、詮索する気はないんだ。ただ娯楽が少ないと、いろいろ想像するくらいしか楽しみがなくてねぇ」
 え?
 【ああああ、そういうことか!ロアが木こりに見えないように、”私”も庶民に見えないってことか!】
 私は庶民だよ。少しの間侯爵家に引き取られていただけで。
 【その侯爵家で12年過ごしたんだし、家庭教師にしごかれたし、周りは貴族ばかりだったんだから……身についちゃってるのよ、歩き方とか姿勢とかっ!ロア見てたらわかるでしょ、ロアみたいになってるのよ、”私”も!】
 え?それって……。
 【聖女を探してる人の耳に「そう言えば庶民とは思えない女の子が」みたいな話が届いたら足取りを追われるわね】
 まずいのでは?
 【逆に、貴族の兄妹がお忍びで来ていたってことになれば、聖女とは関係ないなって思ってもらえるんじゃないかな】
 なるほど。……ロアさんを利用するようで申し訳ないけれど……。
 【いいわよ。お兄ちゃんって言われて喜んでるんだから、ウィンウィンよ!日本ならお兄ちゃんって呼んでもらうのもただじゃないんだから。スチャパで課金よ課金。お金出したらお兄ちゃんって呼んであげるシステムとかあるくらいなんだから!】
 ……変なの。
 そうこうしてる間に、馬車はおばさんの家の前に来た。
「どうなったか見に行ってみましょう」
 ロアさんは荷台から飛び降りると、私に手を差し出した。
 ちょこんと手を載せる。
「あはは、本当に二人はお貴族様みたいだねぇ」
 おばさんの笑い声に、しまったという顔をすると、ロアさんも慌てて否定する。
「騎士とお姫様ごっこを……」
 おばさんが笑った。
「そうかい、完璧な騎士様とお姫様だ。さぁ、井戸はあっちだよ、行こう」
 おばさんのの後を二人でついていく。
 【ロアはいったい何者なんだろうね?それに、ロアは”私”を怪しんでないのかな?】
 私、ロアさんが何者か知らないけど、本物の庶民だから、何者か聞かれても庶民ですとしか……。
 前世の私が小さくため息をつく。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...