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【まぁそんな感じで、誰も近寄らなかったんでしょ、ロアさんに】
「えっと、近寄りがたかったんじゃないかな?」
訳ありっぽくてとは言わない。
「そうだなぇ、わしら村人とは違う雰囲気があってちょっと近寄りがたいねぇ」
私とロアさんの会話を聞いて、おじさんも会話に入ってきた。
「えっと、雰囲気が違う?僕はただの木こりですよ?」
「そうです、ロアさんは木こりで、私は農夫の娘です」
おじさんが笑った。
「そうだね、お嬢ちゃんは農夫の娘なんだろうね」
あっさり納得された。
「木こりの方は、木こりになる前にいろいろあったように見えるけど、まぁ人にはそれぞれ事情ってもんがあるから聞かないが」
ロアさんがホッと息を吐き出している。いろいろあったのか。
「村に寄ったあとも南へ行くのかい?」
はいと返事をしようとして、ロアさんの顔を見る。
「目的地は特に決めてないんです。仕事をしながらふらふら旅をしているので」
「そうかい、急ぐたびじゃなきゃ、3つ先の村……次の宿場町の先にある村に届け物を頼んめないか?」
ロアさんが私の顔を見た。
あれ?
ロアさんが頼まれたことだから、私に確認する必要はないよね?
【この先も一緒に行動してくれるつもりかもよ】
そうなの?
「ロアお兄ちゃん、寄り道しても大丈夫だよね?」
勘違いなら恥ずかしいけど、とりあえず一緒に行動してくれるというのを前提として尋ねてみた。
「もちろん。大きな物は無理ですが、小さなものなら持っていきますよ。乗せてもらったお礼をどうしようかと思っていたところなので……」
街道を南に進んで次に大きな街までどれくらいだとか、その街の特産は何があるとか、おじさんはいろいろと教えてくれた。宿場町へ飼い葉の配達をするので、宿場町で休む商人や旅人からいろいろな話を聞いてよく知っているらしい。
馬車に揺れれること1時間近く、わき道に入ってしばらくすると畑が広がっているのが見えた。
その真ん中に集落が見える。
集落からも馬車が近づいてきたのが見えたのだろう。
一人の女性が掛けてきた。
「大変だよ、あんたっ!」
「どうしたんだ?」
おじさんが馬車を止めて御者台から降りて、女性の前に立った。
「毒蛙が出たんだ、井戸がダメになったんだよ」
「は?なんだって?」
二人の会話を聞いてロアさんが荷台から飛び降り神妙な顔つきになる。
「毒蛙?ここも?この辺りに大量に発生してるのですか?であれば、井戸にしっかり蓋をするように伝え回らないといけませんね……」
おじさんがすまなさそうな顔をこちらに向けた。
「すまんね、ここでも水は分けて上げられないよ……それどころか、村の人間が使う水を隣村に分けてもらいに行かねにゃならん……」
大きなため息をつく。
「それで、毒蛙はもう捕まえたのか?」
「今やってるとこだよ。もし捕まえられても10日は水が使えない……。うちの村は井戸が一つしかないから……どうしたもんか」
「周りもやられていたら水は分けてもらえないから、川まで行くか」
重苦しい空気が漂っている。
「あの、そんなに毒蛙ってよく出るんですか?王都にいたときは聞いたことがなくて……」
「王都はよほど井戸の管理がしっかりしているのだろうね……。毒蛙は5年に1度くらいの頻度で大量発生して、油断すると井戸に入られる。うちの村は井戸が1つしかないからね、蓋をしっかりしめていたはずなんだけど……」
そこに、ガタイの良い男が一人走ってきた。後ろから男が3人追いかけている。
「そいつが犯人だっ!」
「えっと、近寄りがたかったんじゃないかな?」
訳ありっぽくてとは言わない。
「そうだなぇ、わしら村人とは違う雰囲気があってちょっと近寄りがたいねぇ」
私とロアさんの会話を聞いて、おじさんも会話に入ってきた。
「えっと、雰囲気が違う?僕はただの木こりですよ?」
「そうです、ロアさんは木こりで、私は農夫の娘です」
おじさんが笑った。
「そうだね、お嬢ちゃんは農夫の娘なんだろうね」
あっさり納得された。
「木こりの方は、木こりになる前にいろいろあったように見えるけど、まぁ人にはそれぞれ事情ってもんがあるから聞かないが」
ロアさんがホッと息を吐き出している。いろいろあったのか。
「村に寄ったあとも南へ行くのかい?」
はいと返事をしようとして、ロアさんの顔を見る。
「目的地は特に決めてないんです。仕事をしながらふらふら旅をしているので」
「そうかい、急ぐたびじゃなきゃ、3つ先の村……次の宿場町の先にある村に届け物を頼んめないか?」
ロアさんが私の顔を見た。
あれ?
ロアさんが頼まれたことだから、私に確認する必要はないよね?
【この先も一緒に行動してくれるつもりかもよ】
そうなの?
「ロアお兄ちゃん、寄り道しても大丈夫だよね?」
勘違いなら恥ずかしいけど、とりあえず一緒に行動してくれるというのを前提として尋ねてみた。
「もちろん。大きな物は無理ですが、小さなものなら持っていきますよ。乗せてもらったお礼をどうしようかと思っていたところなので……」
街道を南に進んで次に大きな街までどれくらいだとか、その街の特産は何があるとか、おじさんはいろいろと教えてくれた。宿場町へ飼い葉の配達をするので、宿場町で休む商人や旅人からいろいろな話を聞いてよく知っているらしい。
馬車に揺れれること1時間近く、わき道に入ってしばらくすると畑が広がっているのが見えた。
その真ん中に集落が見える。
集落からも馬車が近づいてきたのが見えたのだろう。
一人の女性が掛けてきた。
「大変だよ、あんたっ!」
「どうしたんだ?」
おじさんが馬車を止めて御者台から降りて、女性の前に立った。
「毒蛙が出たんだ、井戸がダメになったんだよ」
「は?なんだって?」
二人の会話を聞いてロアさんが荷台から飛び降り神妙な顔つきになる。
「毒蛙?ここも?この辺りに大量に発生してるのですか?であれば、井戸にしっかり蓋をするように伝え回らないといけませんね……」
おじさんがすまなさそうな顔をこちらに向けた。
「すまんね、ここでも水は分けて上げられないよ……それどころか、村の人間が使う水を隣村に分けてもらいに行かねにゃならん……」
大きなため息をつく。
「それで、毒蛙はもう捕まえたのか?」
「今やってるとこだよ。もし捕まえられても10日は水が使えない……。うちの村は井戸が一つしかないから……どうしたもんか」
「周りもやられていたら水は分けてもらえないから、川まで行くか」
重苦しい空気が漂っている。
「あの、そんなに毒蛙ってよく出るんですか?王都にいたときは聞いたことがなくて……」
「王都はよほど井戸の管理がしっかりしているのだろうね……。毒蛙は5年に1度くらいの頻度で大量発生して、油断すると井戸に入られる。うちの村は井戸が1つしかないからね、蓋をしっかりしめていたはずなんだけど……」
そこに、ガタイの良い男が一人走ってきた。後ろから男が3人追いかけている。
「そいつが犯人だっ!」
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