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どういうこと?
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さっきから話をしていたのはそれ?
服の襟首が枝にひっかっかってぶら下がっているようで、自力では降りられなくなっているようだ。
ネウス君には見えないし声も聞こえないようなので、枝を揺らす手を緩めることはない。……どころか、実が落ちるのが楽しいのか次第に枝が大きく揺れて……。
引っかかっていた服が取れてポーンと飛んで行った。
『うわぁーーっ!落ちるぅ、死ぬぅ~!』
いや、死んで……ると思うけれど、落下してきた小さな人をぽすんと受け止める。
「どういうこと?」
『どういうことじゃ?』
二人同時に声を上げる。
「あの、死んでるんじゃないんですか?なんで、触った感じがするんだろう……」
両手の平の上に立っている小さなおじいさん。白髭に白い髪、頭頂部がちょこっと薄くて。茶色のダボダボしたシャツにベルトを締めてぴちっとした深緑のズボンに、明るい茶色のブーツを履いている。
『死んでるとはなんじゃ!死にそうだったが、こうして嬢ちゃんが助けてくれたじゃないか……って、なんでワシ、人間としゃべってるんじゃ?』
ぎょぎょーっと大げさなくらいおじいさんが身をのけぞらせた。
『まさか、人間、ワシのことが見えておるのか?』
ここまで会話をしておいて、その質問。
「ええ。えっと、見えてますし、声も聞こえてますし……不思議なことに触れた感覚もあります」
触れる幽霊なんて初めて。
というか、霊の類じゃなくて、妖怪なんだろうか?……妖怪も見える人と見えない人がいると聞いたことがあるにはあるけれど。私、日本にいるときも妖怪は見たことなかったんだけどな?
『おお、なんてことじゃ。精霊のワシが見える人間に会ったのは1000年ぶりじゃ。とはいえ、人間にあうのも久しぶりじゃがの。魔王との決戦の地となってからは人間が現れなくなったからのぉ』
「せ……精霊?」
幽霊じゃないの?
『そうじゃ!ワシが地の精霊ノームじゃ。見てわからんのか人間。このとんがり帽子がチャームポイントじゃ』
頭頂部が薄くなった頭に手を乗せるおじいさん。
『あああーっ!帽子がない!そうじゃった、あのくそ鳥めぇ、帽子を盗んでいきおったんじゃ。必死に抵抗したら、ワシごと飛んで……無念、力尽けてワシは落下してあの木に……ぐぐぐ』
なるほど。ノームさんの話を総合すると、帽子を加えるか足でつかむか何かした鳥がいて、帽子を取られまいと帽子につかまって一緒に空を飛んで、力尽きたということかな。
『まったく。あの赤い帽子はおきにいりじゃったんじゃが。仕方がないのぉ』
ふぅっと小さくため息をついて、地の精霊ノームさんがズボンの中から緑の帽子を取り出してかぶった。
『すまんかったの、人間。これでワシが地の精霊だと分かるじゃろ』
どや顔のノームさん。
……帽子のあるなしだけでわかるわけもないんですけれど。
「ごめんなさい、あの、私の住んでいたところでは、えーっと、精霊に会うようなことがなくて……知らなかったです」
服の襟首が枝にひっかっかってぶら下がっているようで、自力では降りられなくなっているようだ。
ネウス君には見えないし声も聞こえないようなので、枝を揺らす手を緩めることはない。……どころか、実が落ちるのが楽しいのか次第に枝が大きく揺れて……。
引っかかっていた服が取れてポーンと飛んで行った。
『うわぁーーっ!落ちるぅ、死ぬぅ~!』
いや、死んで……ると思うけれど、落下してきた小さな人をぽすんと受け止める。
「どういうこと?」
『どういうことじゃ?』
二人同時に声を上げる。
「あの、死んでるんじゃないんですか?なんで、触った感じがするんだろう……」
両手の平の上に立っている小さなおじいさん。白髭に白い髪、頭頂部がちょこっと薄くて。茶色のダボダボしたシャツにベルトを締めてぴちっとした深緑のズボンに、明るい茶色のブーツを履いている。
『死んでるとはなんじゃ!死にそうだったが、こうして嬢ちゃんが助けてくれたじゃないか……って、なんでワシ、人間としゃべってるんじゃ?』
ぎょぎょーっと大げさなくらいおじいさんが身をのけぞらせた。
『まさか、人間、ワシのことが見えておるのか?』
ここまで会話をしておいて、その質問。
「ええ。えっと、見えてますし、声も聞こえてますし……不思議なことに触れた感覚もあります」
触れる幽霊なんて初めて。
というか、霊の類じゃなくて、妖怪なんだろうか?……妖怪も見える人と見えない人がいると聞いたことがあるにはあるけれど。私、日本にいるときも妖怪は見たことなかったんだけどな?
『おお、なんてことじゃ。精霊のワシが見える人間に会ったのは1000年ぶりじゃ。とはいえ、人間にあうのも久しぶりじゃがの。魔王との決戦の地となってからは人間が現れなくなったからのぉ』
「せ……精霊?」
幽霊じゃないの?
『そうじゃ!ワシが地の精霊ノームじゃ。見てわからんのか人間。このとんがり帽子がチャームポイントじゃ』
頭頂部が薄くなった頭に手を乗せるおじいさん。
『あああーっ!帽子がない!そうじゃった、あのくそ鳥めぇ、帽子を盗んでいきおったんじゃ。必死に抵抗したら、ワシごと飛んで……無念、力尽けてワシは落下してあの木に……ぐぐぐ』
なるほど。ノームさんの話を総合すると、帽子を加えるか足でつかむか何かした鳥がいて、帽子を取られまいと帽子につかまって一緒に空を飛んで、力尽きたということかな。
『まったく。あの赤い帽子はおきにいりじゃったんじゃが。仕方がないのぉ』
ふぅっと小さくため息をついて、地の精霊ノームさんがズボンの中から緑の帽子を取り出してかぶった。
『すまんかったの、人間。これでワシが地の精霊だと分かるじゃろ』
どや顔のノームさん。
……帽子のあるなしだけでわかるわけもないんですけれど。
「ごめんなさい、あの、私の住んでいたところでは、えーっと、精霊に会うようなことがなくて……知らなかったです」
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