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エカテリーゼVS

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「仮病の演技が上手いのですわ。その手で、何人騙されているのか分かったものではありません。そうして、男性の注目を浴びたい、女性からも同情を引きたいというのがお分かりになりませんの?」
 エカテリーゼ様の言葉に、私の周りにいる女性たちがくすくすと笑い始める。
「なんだ、かわいい顔して……そんなことせずともいくらでも声がかかるだろうに」
 バズリー様の声が遠い。
「そういう相手が欲しいならいつでもお相手しますよ」
 耳元で何かささやかれた。
 苦しい。誰も近寄らないで。私から離れて。
 そう思っているのに、周りにどんどん人が集まっているようだ。
「やめなさい。苦しんでいるのが見えないの。皆して、何をしているの!」
 この声は……!
「ローレル様、仮病女を庇うおつもりですか?」
 エカテリーゼ様の前にローレル様が立ちふさがる。
「大丈夫?」
「苦しそうだわ、お水を飲む?」
 私の両脇を、アンナとハンナが支えてくれた。
 よかった。
 男性の手から逃れられた。
「ありが……と、少し……休めば」
 両脇を支えられながら、人の輪から抜け出し、近くの椅子に座らせてもらった。
 はぁ、はぁ。息が、できる。全身のムズムズはまだ収まらないけれど、くしゃみは止まった。
「仮病?あんなに苦しんでいるのを目の前にして、よくそんな言葉が出ますわね?その言葉を信じるあなた方も信じられませんわ」
 エカテリーゼ様が、ディック様、バズリー様、ジョージ様、そして周りに集まって笑っていた人たちを順に睨みつけている。
「わ、私が嘘をついたとでもいうの?」
 エカテリーゼ様が憤りを見せる。
「あら、貴方は嘘をつくのがお好きなようですし、そういうこともあるかもしれませんわね?」
「は?私が嘘つきですって?何を言い出すの!失礼ですわ!それに、立場をわきまえなさい!私を誰だと思っているの!」
 え?立場?
「あら?立場ですか?確か貴方は、辺境伯よりも位が下である伯爵令嬢ではありませんでしたか?」
 ローレル様の言葉に、エカテリーゼ様が手に持っていた扇子の先をローレル様に向ける。
「私は、辺境伯よりも位が上の公爵家へ嫁ぐ身。将来の公爵夫人だとご存知ありませんの?」
 ふんっとエカテリーゼ様が鼻を鳴らす。
「あらいやだ。まだ嫁いでもいないと言うのに、公爵夫人気取り。……婚約破棄されないとも限らないでしょう?それに、未来の話でしたら」
 ローレル様が一旦言葉を切って手に持つセンスで、エカテリーゼ様が付きだしたセンスをパシリと払った。
「私、未来の皇太子妃……のちの王妃になるかもしれませんのに。ねぇ?」
 ローレル様が集まっている人たちに同意を求めるように視線を向ければ、誰もが押し黙った。
 そりゃそうだろう。未来のありもしない位で上下関係を語るなど聞いたこともない。


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きゃー、ローレル様よ!かっこいいわー!すてきぃ!
っていうか、どこまでも、エカテリーゼ様は残念なお人のようでございまして。
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