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領地行き

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「なるほど、ポケットに入るようなサイズで、全てが収まる……それは新しいですね。むしろもっと小さくしましょうか。針の長さがあれば問題ないでしょうから」
「そうね、そうね、とすると……もしかして、男性の上着のポケットにも収まってしまう?」
「そうですね、袖の折り返しの部分にも収まるでしょうし、ベルトの一部に……と、女性が持ち歩くのですよね?」
 しまった。エミリーが持ち歩く前提なんて言えないんだ。
「え、ええ、そうね」
「細工師に早速相談します。10日ほどお時間をいただけますか」
 10日なら、次の舞踏会に間に合う。
「ええ。お願いするわね」

「ロバート、エカテリーゼ嬢との関係はどうだ?」
 次の舞踏会まであと数日というところでお父様が夕飯の席で唐突に切り出した。
「問題なく仲良くしていますよ」
 お兄様の答えに、お父様がうんと頷いた。
「なら、しばらく会えなくても問題ないか」
「は?どういうことですか?」
「ロバート、お前にはしばらく領地へ行ってもらいたい。本来ならば私が行くべくだが……王都を離れられない理由ができた。私の代わりに行ってほしい。」
 毎年、お父様は王都から馬車で2日ほどの領地へ1カ月ほど向かい仕事をする。半年に1度のペースだ。
「王都を離れられない理由って何ですか?どうして突然」
 お兄様が動揺している。
「お前も、ゆくゆくは公爵となって領地を治めなければならないから、勉強だと思って行ってくれるか」
 王都を離れられない理由をお父様は口にしない。本当に理由があるのか、ないのか分からない。
 単に、エカテリーゼ様と一緒にいたいということでお兄様がここ数回、お父様との領地行きを断っていたので業を煮やしたのか。
 本当に何らかの事情があるのか。
 お父様の表情を見る限り、今回ばかりは何を言おうとも覆りそうにない。
「エカテリーゼのエスコートが……」
 お兄様も分かっているはずなのに、小さく呟きを漏らす。
「うむ。そろそろいいんじゃないか?ロイホール公爵夫人の舞踏会は次回が最後でもいいだろう。お前が、ゆくゆくは公爵夫人になるエカテリーゼに舞踏会を経験させ勉強してほしいと頼まれて出席を許してきたが、本来は婚約者のいない者が参加する場だ。毎回行く必要もないだろう。他の舞踏会も、公爵家が顔を出すに値しないものは断ればいい。そうすれば、年に4、5回ほど参加すれば問題なかろう」
 年に4、5回。私からすれば、それでも大変そうに思うけれど、エカテリーゼ様は社交好きなので満足するかしら。



============
そして、話は動き出す……フラグ。


はー。そう、もう言ったかな?っていうかとっくに気が付いてると思うけど、短編の線は確実に消えました。
長編に変更しました。(今更言うのか)
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