異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果

富士とまと

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 知らなかった。そうなんだ。水害は土地を豊かにするためには必要なのか……。必要ならば水害がない方がいいとは言えないね。人の命が犠牲にならなければ良かったというしかないのかもしれない。
「殿下、教えていただいてありがとうございます」
 素直にお礼を言うと、殿下が首を横に振った。
「いや、俺は財務長官に教えてもらっただけだし、礼を言われることは何もしてない」
「いいえ、何もしていないことはありませんわ。私が知らないことを、殿下は知っていた。それを教えてくださったのですから。知っていることを教えることを何もしていないと言うのでしたら、教師たちは何も仕事をしていないことになってしまいますわ。ですから、シュナイード様ありがとうございます」
 もう一度お礼を言うと、殿下は恥ずかしそうにうつむいた。ちょっともじもじしたかと思うと、顔を上げて地図を指さす。
「そ、それで、俺……考えたんだ。あのさ、川の外側に畑を作るだろ?でもさ、住むところは川の内側にしたら、いいんじゃないかって」
「残念ですが、それは無理だと思いますわ。川を渡るためには橋が必要です。橋の建設費用は莫大なものになりますし、何年かに一度水害が起きるような場所では、せっかく建設した橋も流されてしまいますでしょう?」
「あ……!」
 どこか足りないと言われている殿下だけれど、私の言葉はすぐに理解したようで、短く声をあげた。お金の問題。
 きっと橋を作るよりも被害にあった村を復興させる方が費用が安いのだろう。たかが村の一つ二つのために川に橋をかけるなど現実的ではない。
 そう言えば、セイラが何か言っていた。なんだったかな……、そうだ。
「流されないように橋を作ろうと思うからだめ……流れに逆らわなきゃいい……人が行き来するだけなら、舟でいい」
「なんだ?エリータどういう意味だ?」
 しまった。セイラが言っていたことを口に出してしまったんだ。何が言いたかったのか、分からない。
「わ、分かりません。何度も人が行き来するのに、舟では不便だと思いますし……」
「自分で言って分からないのか?もしかしてお告げか?」
 そうそう、お告げお告げ。お告げの発言と言うことにしておこう。こくりと頷く。
「あの声は発しないのか?」
 はうっ。
「ぶほぉぉぉっ」
 誰ですか!奇声設定作ったの!両手を上げて立ち上がり奇声を上げる。……誰ですか!公爵令嬢にこんなことをさせるの!
「あれ?前はふごぉぉぉじゃなかったか?」
 殿下が首を傾げる。どっちでもいいやろがいっ!こまけぇんだよ!
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