上 下
77 / 103

77

しおりを挟む
『”ヴァイオレッタ”に声をかけてきた男には見覚えがある。”アイリーン”をさんざん虐めた女の婚約者だ。いつも自分は婚約者に愛されていると贈られたものを自慢していた。何が、愛されてるだ。ヴァイオレッタが贈り物が欲しいと、自慢していた品と同じものを要求すれば「そんな安物でいいのか?」ともっといい物を贈ってくれた』
 アイリーンの小さな復讐。
「あ、もしかして」
 ドレッサーの左の上の引き出しを開く。
 手紙やカードとともに封筒に入れて保管されている品は……戦利品ということ?
 日記の内容と、カードの裏にメモされた日付と場所と相手の名前が一致する。
『娼婦のような女と噂されるようになった。まだ、娼婦であればよかったでしょうね。お金を出して仕事と割り切る女とただの客。勝手に言えばいい。本心ではいつ婚約者を取られるのではないかとびくびくしているのでしょうね。娼婦であれば無視できる話も、子爵令嬢相手じゃそうもいかないものね』
 こうして、アイリーンは心を保っていたのか……。
『ざまぁみろ』
 そう書かれた日記のすぐ後にはやはり。
『辛い』
 と言う言葉が出てくる。
『寂しい』
『またお茶会に行かなければならない。いやだ。行きたくない』
 お父様もお義母様もアイリーンには「我儘を言うな」「我慢しなさい」「ドレスを買ってやったのに何が不満だ」「今度宝石も買ってやるから文句を言うな」と繰り返している。
 それから……。
『ヴァイオレッタを見てみろ。ドレスも着られずみじめな姿を。お前もああなりたいのか……と言われ、変われるものなら変わりたいと言いそうになった。私は贅沢を言っているのだろうか。お義姉様が食事を抜かれたり、お父様や侍女たちに暴力を振るわれたりしているのを見てしまうことはある。……部屋も狭くて薄汚い屋根裏部屋。水仕事で荒れた手に、手入れが行き届かずぼさぼさになった髪。確かにみじめなのかもしれない』
 いいえ。アイリーン……。いいえ……。私はアイリーンはお父様とお義母様に愛されていると思っていた。
 うらやましいと思ったのはそれだけ。薄汚い屋根裏部屋をみじめだと思ったことはない。
『お義姉様よりはましなはず。だから、ドレスを着て見せびらかした。部屋をわざと散らかして使用人のように片付けさせた。うらやましいでしょう?と言った。それなのに、お義姉様はまるきり私をうらやましいという顔もしない。悔しそうな顔もしない。悲しくて泣きだすこともない』
 そうか……。アイリーンは私の方がマシだと思いたくて……。
 気が付かなかった。本当にアイリーンは綺麗なドレスを着ることが好きで私に自慢しているのだと思っていた。それをうらやましいと思わなかったから特に反応することもなかったけれど……。そのことが余計にアイリーンを苦しめていたのか……。



===========
正直、人の机の中を勝手に見るとか、人の日記を勝手に読むとか人のスマホの中を勝手にチェックするとか
「だめやろ、それ!」って思いながら書いてる。
言い訳入れてあるけど……。
あと、ドレッサーの引き出しに宝石類?首になった侍女たち使用人が一つ二つ持ち出してそうだなとかも思いながら書いてる。
本当に、心の中でいっぱい突っ込みいれまくっている。
ご都合主義で、そっとスルーして書いてるけども。

そして、気が付けばそっとエールを入れてくださっている方がいて、ありがとうございます!
私はアプリを使っていないため、知識でしか知らなくて操作がどれくらいめんどくさいものなのか分からないのですが、ひと手間かけていただいていることに感謝いたします。

それから、承認不要での感想もありがとうございます。表に出ないので返信ができませんが、助かっていますし、嬉しいです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側妃を迎えたいと言ったので、了承したら溺愛されました

ひとみん
恋愛
タイトル変更しました!旧「国王陛下の長い一日」です。書いているうちに、何かあわないな・・・と。 内容そのまんまのタイトルです(笑 「側妃を迎えたいと思うのだが」国王が言った。 「了承しました。では今この時から夫婦関係は終了という事でいいですね?」王妃が言った。 「え?」困惑する国王に彼女は一言。「結婚の条件に書いていますわよ」と誓約書を見せる。 其処には確かに書いていた。王妃が恋人を作る事も了承すると。 そして今更ながら国王は気付く。王妃を愛していると。 困惑する王妃の心を射止めるために頑張るヘタレ国王のお話しです。 ご都合主義のゆるゆる設定です。

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます

神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。 【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。  だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。 「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」  マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。 (そう。そんなに彼女が良かったの)  長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。  何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。 (私は都合のいい道具なの?)  絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。  侍女達が話していたのはここだろうか?  店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。  コッペリアが正直に全て話すと、 「今のあんたにぴったりの物がある」  渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。 「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」  そこで老婆は言葉を切った。 「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」  コッペリアは深く頷いた。  薬を飲んだコッペリアは眠りについた。  そして――。  アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。 「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」 ※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)  (2023.2.3)  ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000 ※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

結婚二年目、愛情は欠片もありません。

ララ
恋愛
最愛の人との結婚。 二年が経ち、彼は平然と浮気をした。 そして離婚を切り出され……

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...