39 / 103
39
しおりを挟む
「……入れ替わっていることをばらしてやると……言われました。もし本当にばらされたら迷惑をかけてしまいます」
お父様が私には何も返事を返さずに部屋のへと戻っていった。
「おい!使用人を全部首にしろ!入れ替わりをばらされないように、今いるやつらには……そうだな、金では口止めはできん……だ。白い粉でも使って……ああ、全部お前に任せる」
お父様は家令に何かを命じているようだ。
次の日。
私は朝から身支度をさせられた。
「いいか、絶対にカツラは外すなよ。それから部屋から一歩も出るな。出ていいのは使用人が帰った夜だけだ!いいな!」
家の中でもアイリーンのフリを白と命じられる。
昨日までいた使用人の姿は一人もなく、新しく通いで何人かの使用人を雇用したようだ。
屋根裏部屋からアイリーンの部屋に移された。
屋根裏部屋よりもずっと明るくて広い。柔らかいベットに、たくさんのドレス。
そのどれにも喜びは感じない。むしろ部屋から出歩くことを禁じられ、常にカツラをかぶってアイリーンのふりしなければならないなんて……。
ヴァイオレッタが消えてしまったようだ。
書類仕事は毎日家令が運んできた。
アイリーンの部屋にうつったことで、使用人の目がどこにあるかもわからず悪い噂が立つといけないと、体に触れられることはなくなった。
そして、部屋にこもっていなければならないということは、下働きや侍女の仕事の手伝いはしなくてよいことになった。
水仕事をしなくなって、荒れていた手が10日もすればマシになった。
たまっていた書類の処理も時間ができたことで片付けることができた。
そうすると、書類の量が減り、1日のうち1時間もあれば終わるようになった。
何をして過ごそうか。
部屋から出るなと言われているため、できることは限られている。
新しく雇い入れた使用人は、お義姉であるヴァイオレッタが静養中で落ち込んで部屋にこもっていると家令が伝えているようだ。
……ありがたい。
いくらカツラをかぶっていても、ずっと家の中でアイリーンを演じるなんて無理だったろうから。
そっと、屋根裏部屋から持って来た数少ない私物を手に取る。
お母様が私に残してくれたという本。
マーサからもらった。
本……の形をしているけれど、中は日記帳だ。お母様がつづった日々の出来事が書かれている。
私を妊娠してからのこと。生まれてくるのを楽しみにしていると書かれている。
女の子だったらどんな名前がいいだろう、男の子だったらどんな名前がいいだろう……と。
お父様が私には何も返事を返さずに部屋のへと戻っていった。
「おい!使用人を全部首にしろ!入れ替わりをばらされないように、今いるやつらには……そうだな、金では口止めはできん……だ。白い粉でも使って……ああ、全部お前に任せる」
お父様は家令に何かを命じているようだ。
次の日。
私は朝から身支度をさせられた。
「いいか、絶対にカツラは外すなよ。それから部屋から一歩も出るな。出ていいのは使用人が帰った夜だけだ!いいな!」
家の中でもアイリーンのフリを白と命じられる。
昨日までいた使用人の姿は一人もなく、新しく通いで何人かの使用人を雇用したようだ。
屋根裏部屋からアイリーンの部屋に移された。
屋根裏部屋よりもずっと明るくて広い。柔らかいベットに、たくさんのドレス。
そのどれにも喜びは感じない。むしろ部屋から出歩くことを禁じられ、常にカツラをかぶってアイリーンのふりしなければならないなんて……。
ヴァイオレッタが消えてしまったようだ。
書類仕事は毎日家令が運んできた。
アイリーンの部屋にうつったことで、使用人の目がどこにあるかもわからず悪い噂が立つといけないと、体に触れられることはなくなった。
そして、部屋にこもっていなければならないということは、下働きや侍女の仕事の手伝いはしなくてよいことになった。
水仕事をしなくなって、荒れていた手が10日もすればマシになった。
たまっていた書類の処理も時間ができたことで片付けることができた。
そうすると、書類の量が減り、1日のうち1時間もあれば終わるようになった。
何をして過ごそうか。
部屋から出るなと言われているため、できることは限られている。
新しく雇い入れた使用人は、お義姉であるヴァイオレッタが静養中で落ち込んで部屋にこもっていると家令が伝えているようだ。
……ありがたい。
いくらカツラをかぶっていても、ずっと家の中でアイリーンを演じるなんて無理だったろうから。
そっと、屋根裏部屋から持って来た数少ない私物を手に取る。
お母様が私に残してくれたという本。
マーサからもらった。
本……の形をしているけれど、中は日記帳だ。お母様がつづった日々の出来事が書かれている。
私を妊娠してからのこと。生まれてくるのを楽しみにしていると書かれている。
女の子だったらどんな名前がいいだろう、男の子だったらどんな名前がいいだろう……と。
39
お気に入りに追加
1,883
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~
山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」
婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。
「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」
ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。
そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。
それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。
バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。
治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。
「お前、私の犬になりなさいよ」
「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」
「お腹空いた。ご飯作って」
これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、
凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。
義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
側妃を迎えたいと言ったので、了承したら溺愛されました
ひとみん
恋愛
タイトル変更しました!旧「国王陛下の長い一日」です。書いているうちに、何かあわないな・・・と。
内容そのまんまのタイトルです(笑
「側妃を迎えたいと思うのだが」国王が言った。
「了承しました。では今この時から夫婦関係は終了という事でいいですね?」王妃が言った。
「え?」困惑する国王に彼女は一言。「結婚の条件に書いていますわよ」と誓約書を見せる。
其処には確かに書いていた。王妃が恋人を作る事も了承すると。
そして今更ながら国王は気付く。王妃を愛していると。
困惑する王妃の心を射止めるために頑張るヘタレ国王のお話しです。
ご都合主義のゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる