33 / 103
33
しおりを挟む
ルーノ様は噂は聞いたことがあるみたいだけれど、”ヴァイオレッタ”とは会ったことがないみたいだった。
ヴァイオレッタとしてルーノ様に……。
想像してから首を大きく横に振った。
ルーノ様は不誠実な人ではない。
馬鹿な想像に恥ずかしくなる。
誰かを利用しようと考えるなんて……違うな。何かを言い訳にして誰かを動かそうだなんて……。
どちらにしても、最低だ。
刺繍の道具を買いに店につくと、何を刺繍しようか決めていなかったことに気が付いた。
モチーフによって、必要な糸が違ってくる。何色をどれくらい買えばいいのか……。それに、その色が合うハンカチを選ばないといけない。白いハンカチが多いとはいえ、クリーム色やうぐいす色などいろいろとハンカチ似も色がある。
すでに、刺繍がしてあるハンカチも売っている。
「刺繍が売り物になる……」
材料費を差し引いても、刺繍が入ったハンカチは、何もはいっていないハンカチの4倍の値段はする。店のもうけだけではなく、刺繍をした人の手間賃も値段には入っているのだろう。
考えたこともなかったけれど、刺繍でお金を稼げるんだ。
……1日何枚刺繍をするといくらくらいのお金になるのか頭の中で計算してみる。
生活するにはいくらくらいかかるんだろう。
……もし、子爵家を出されて、姪……か甥と二人で暮らすことになってしまったら。お金をどうしたらいいのかと思っていたけれど。そうか……お金を稼ぐ方法を私が知らないだけで、誰かに聞けば私でもできる仕事があるのかもしれない。
もし、どうしても気持ちが悪くて、子供の父親と結婚することができそうになかったら……。いいえ、子供の幸せを考えたら我慢するべきかもしれない。お金の苦労だけはさせずに済むなら……。
この先どうなるのか分からないことだらけだ。だけど、きっと何とかなるんだと、売られているハンカチを見て少しだけ気持ちが落ち着いた。
刺繍をされている物を見ると、薔薇がモチーフとしては一番多いようだ。
他には幸せを運ぶという青い小鳥。
濃い色のハンカチには、白い薔薇や聖女の冠と呼ばれるスズラン、それから白鳥。
あまり花の名前を知らない私にもわかる有名な花ばかりだ。
「イメージじゃないかも……」
ジョアン様にお会いしたこともないのに、どれも違う気がした。
というか、もし、イメージに合っていたとしても、ありきたりな図案の刺繍であれば、何も無理して今から刺さなくても買えば済んでしまう。刺繍しても、それがジョアン様のために刺繍したものか買った物かも分かってもらえないだろう。
何にすれば……。
ジョアン様から贈られたドレスを思い出す。
ヴァイオレッタとしてルーノ様に……。
想像してから首を大きく横に振った。
ルーノ様は不誠実な人ではない。
馬鹿な想像に恥ずかしくなる。
誰かを利用しようと考えるなんて……違うな。何かを言い訳にして誰かを動かそうだなんて……。
どちらにしても、最低だ。
刺繍の道具を買いに店につくと、何を刺繍しようか決めていなかったことに気が付いた。
モチーフによって、必要な糸が違ってくる。何色をどれくらい買えばいいのか……。それに、その色が合うハンカチを選ばないといけない。白いハンカチが多いとはいえ、クリーム色やうぐいす色などいろいろとハンカチ似も色がある。
すでに、刺繍がしてあるハンカチも売っている。
「刺繍が売り物になる……」
材料費を差し引いても、刺繍が入ったハンカチは、何もはいっていないハンカチの4倍の値段はする。店のもうけだけではなく、刺繍をした人の手間賃も値段には入っているのだろう。
考えたこともなかったけれど、刺繍でお金を稼げるんだ。
……1日何枚刺繍をするといくらくらいのお金になるのか頭の中で計算してみる。
生活するにはいくらくらいかかるんだろう。
……もし、子爵家を出されて、姪……か甥と二人で暮らすことになってしまったら。お金をどうしたらいいのかと思っていたけれど。そうか……お金を稼ぐ方法を私が知らないだけで、誰かに聞けば私でもできる仕事があるのかもしれない。
もし、どうしても気持ちが悪くて、子供の父親と結婚することができそうになかったら……。いいえ、子供の幸せを考えたら我慢するべきかもしれない。お金の苦労だけはさせずに済むなら……。
この先どうなるのか分からないことだらけだ。だけど、きっと何とかなるんだと、売られているハンカチを見て少しだけ気持ちが落ち着いた。
刺繍をされている物を見ると、薔薇がモチーフとしては一番多いようだ。
他には幸せを運ぶという青い小鳥。
濃い色のハンカチには、白い薔薇や聖女の冠と呼ばれるスズラン、それから白鳥。
あまり花の名前を知らない私にもわかる有名な花ばかりだ。
「イメージじゃないかも……」
ジョアン様にお会いしたこともないのに、どれも違う気がした。
というか、もし、イメージに合っていたとしても、ありきたりな図案の刺繍であれば、何も無理して今から刺さなくても買えば済んでしまう。刺繍しても、それがジョアン様のために刺繍したものか買った物かも分かってもらえないだろう。
何にすれば……。
ジョアン様から贈られたドレスを思い出す。
41
お気に入りに追加
1,884
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる