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「まぁ、いや、うん、そうかな?コインランドリーを使ったことがないので分からないが……」
 そうでした。ハウスキーパーがいる人がコインランドリーに行くはずがありませんね。
「大学にコインランドリーを作ってください」
 必要のない人には、必要性が分からなかったのですね。
 コインランドリーは便利です。梅雨とか。毛布などの大きなものを洗濯したいときとか。
「作る?大学に?」
「できれば女性専用と男性専用と男女共用と簡単に仕切ってもらえるといいですね。敷地内にコインランドリーがあれば、講義を受けている間に洗濯から乾燥まで終わるので便利ですし、怖い思いをしなくて済みますよね。それから、部活のユニフォーム関係の洗濯もできるでしょうし、役立つと思いますよ」
 黒崎さんが目を見開いた。
「待て、待て、待ってくれ、いや、コインランドリーがあれば学生も助かるというのは分かった、分かったが、そう簡単なことではない……。予算の問題から、一部の学生のためだけの施設を設置する問題や、それから……」
「ふっふふふっ」
 思わず笑いが漏れる。
「な、なんですか、白井さん、何がおかしいんですか?」
「いえ、私と同じだと思いまして」
「同じ?」
「私も、学食へのご意見に、たこ焼きをメニューにとかカレーの辛口をとか言われても、予算そのほか、まずそういう現実的に実現できるかどうかということから考えてしまうので……」
 黒崎さんがふっと笑う。
「いや、それは普通のことだろう?本を1冊買って図書館に入れる程度のことならまだしも、コインランドリーともなれば……。そうだ、乾燥機能付きの洗濯機はいくらするんだ?」
 黒崎さんが、自分が集めた洗濯機のパンフレットを手に取りました。
「オープン価格、値段がわからない。いや、確か、電気販売店で見た記憶では、15万ほどだったか?それをなんだいくらい設置すればいいんだ?」
  何やら頭の中で計算を始めた黒崎さんに声を掛けます。
「黒崎さん、食堂にたこ焼きをメニューに追加してほしいというご意見が寄せられました」
「あ?ああ、見た。導入しても冷凍になるだろうという返事をしていたな?」
 よく覚えていますね。
 学生相談室には申し送りしか入れてませんが、どうしてやり取りまで……。
 もしかして、掲示板も見てます?
「新しく、たこ焼きについてご意見をもらいました。まだ返事は書いていませんが……」
「それが、コインランドリーとどんな関係があるんだ?」
 さすがに黒崎さんは眉を顰めます。
 そりゃそうですよね。いきなりたこ焼きの話をされてもと思いますよね。
「冷凍たこ焼きはいやだそうです」
「わがままだな」
「ですから、たこ焼きの屋台を大学に呼んでくれと書いてありました」
「は?」
 黒崎さんの眉根がさらに寄り、そして……。
「白井さん、そういうことですか!」
 私の両手を黒崎さんが握る。

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