60 / 96
60
しおりを挟む
「えっと、では、あの、続きを話ますね」
黒崎さんが姿勢を正して座りなおします。
私も、腰を少し浮かして浅く腰かけなおし、相談用紙を手に取りました。
「ここから先、私の推測です。洗濯を外に干せない不便な狭い物件に住む女学生が、コインランドリーにも行けないと書いたのは、コインランドリーが怖いからじゃないでしょうか」
とんっと、軽く【コインランドリーにも行けない】という部分を指さします。
「怖い?コインランドリーが?」
男性には想像できないのかもしれません。
ましてや、目の前に座っている黒崎さんは、ハウスキーパーが家事をしていると言っていました。一度もコインランドリーを利用したことがないのでしょう。
「あくまでも、想像ですが、相談者はお金に余裕がないためアルバイトをしているのでしょう。大学が終わってからアルバイトをして帰宅すれば、外は暗くなってます」
洗濯がろくに干せないような部屋に住んでいるのであれば、お金に余裕がない、もしくはお金を貯めたい、節約したいのどれかでしょう。
「暗くなってから、若い娘が一人でコインランドリーに行くことを想像してください。人気のない空間。自分の下着がぐるぐると回る洗濯機。見ず知らずの男の人。男の人たちの目。乾燥までかかる長い時間。暗闇。一人の帰り道。もしかすると、過去に何かあったのかもしれません」
黒崎さんの眉根が寄りました。
「そうか……。確かに、女性が一人で、人気のない夜道を歩くだけでも危険があるものな……。うちの学生を痴漢やストーカー被害に合わせるわけにはいかない。……コインランドリーを利用するだけでも女性の立場になれば……恐怖が付きまとうのか。とても想像できなかった」
でしょうね。
コインランドリーを利用するお金もないのかと、思ったくらいですものね。
「だが、それを相談されても……できることは、警察に見回りを強化してもらうお願いをするくらいしか……」
黒崎さんの言葉に、静かに首を横に振る。
「大学に何とかしてほしいと言っているんですよ?警察にじゃないです。コインランドリーに行けないなら、行けるようにしてあげればいいんです」
黒崎さんが寄った眉根を指でほぐす。
「私が、相談者がコインランドリーに行くたびに護衛すればいいと言うのか?いくら何でも一人の学生のためにそこまでは」
護衛……黒崎さんSP姿とか似合いそうですよね。って、違いますよ。
「一人の学生だけではないと思いますよ。声を上げたのはこの子ですが、一人暮らしの女性は同じように怖い思いをしていると思います。コインランドリーに行くことができても、下着を人に見られたくないと思っている人は多いです。女性専用コインランドリーが欲しいと思ったことありません?男の人も、見るつもりがないのに見えて気まずいこともあるでしょう」
見ていないのに見たと睨まれたなんていう話を聞いたこともあります。
乾燥機にへばりついて残っていた下着を間違って持って帰ってしまったなんて話も……。
「は?」
黒崎さんの眉根がさらに寄り、そして……。
「白井さん、そういうことですか!」
私の両手を黒崎さんが握る。
黒崎さんが姿勢を正して座りなおします。
私も、腰を少し浮かして浅く腰かけなおし、相談用紙を手に取りました。
「ここから先、私の推測です。洗濯を外に干せない不便な狭い物件に住む女学生が、コインランドリーにも行けないと書いたのは、コインランドリーが怖いからじゃないでしょうか」
とんっと、軽く【コインランドリーにも行けない】という部分を指さします。
「怖い?コインランドリーが?」
男性には想像できないのかもしれません。
ましてや、目の前に座っている黒崎さんは、ハウスキーパーが家事をしていると言っていました。一度もコインランドリーを利用したことがないのでしょう。
「あくまでも、想像ですが、相談者はお金に余裕がないためアルバイトをしているのでしょう。大学が終わってからアルバイトをして帰宅すれば、外は暗くなってます」
洗濯がろくに干せないような部屋に住んでいるのであれば、お金に余裕がない、もしくはお金を貯めたい、節約したいのどれかでしょう。
「暗くなってから、若い娘が一人でコインランドリーに行くことを想像してください。人気のない空間。自分の下着がぐるぐると回る洗濯機。見ず知らずの男の人。男の人たちの目。乾燥までかかる長い時間。暗闇。一人の帰り道。もしかすると、過去に何かあったのかもしれません」
黒崎さんの眉根が寄りました。
「そうか……。確かに、女性が一人で、人気のない夜道を歩くだけでも危険があるものな……。うちの学生を痴漢やストーカー被害に合わせるわけにはいかない。……コインランドリーを利用するだけでも女性の立場になれば……恐怖が付きまとうのか。とても想像できなかった」
でしょうね。
コインランドリーを利用するお金もないのかと、思ったくらいですものね。
「だが、それを相談されても……できることは、警察に見回りを強化してもらうお願いをするくらいしか……」
黒崎さんの言葉に、静かに首を横に振る。
「大学に何とかしてほしいと言っているんですよ?警察にじゃないです。コインランドリーに行けないなら、行けるようにしてあげればいいんです」
黒崎さんが寄った眉根を指でほぐす。
「私が、相談者がコインランドリーに行くたびに護衛すればいいと言うのか?いくら何でも一人の学生のためにそこまでは」
護衛……黒崎さんSP姿とか似合いそうですよね。って、違いますよ。
「一人の学生だけではないと思いますよ。声を上げたのはこの子ですが、一人暮らしの女性は同じように怖い思いをしていると思います。コインランドリーに行くことができても、下着を人に見られたくないと思っている人は多いです。女性専用コインランドリーが欲しいと思ったことありません?男の人も、見るつもりがないのに見えて気まずいこともあるでしょう」
見ていないのに見たと睨まれたなんていう話を聞いたこともあります。
乾燥機にへばりついて残っていた下着を間違って持って帰ってしまったなんて話も……。
「は?」
黒崎さんの眉根がさらに寄り、そして……。
「白井さん、そういうことですか!」
私の両手を黒崎さんが握る。
10
お気に入りに追加
1,639
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる