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「そろそろ第二弾選んでくるか?」
 いつの間にかテーブルの上の缶詰がほとんど空になっていた。
 ここは飲み物以外は注文できないので、食べるものがなくなったら自分で取ってくるしかないわけです。
「結梨絵さん、今度は何が食べたいですか?」
 立ち上がると、隣に和臣さんが立っていました。
「缶のラベル、読み上げますよ」
「ありがとうございます。でも、目の高さにあるものならば読めるので、大丈夫ですよ」
 私に付き合わせてしまったら、和臣さんが好きなものが選べなくなってしまいますから。
 先ほどサンマの並んでいた棚の裏側を見てみることにします。
 サンマの缶詰が並んでいた棚は、客席側の周りにある棚だった。その裏には図書館に並ぶ本棚のように3つの棚が並んでいる。通路の幅は図書館よりも少し狭いが、しゃがんで下のほうを見るには十分の幅があります。
 棚の裏に回ると、後ろに和臣さんがついてきました。
「あの、本当に大丈夫ですから。和臣さんは和臣さんの好きなもの探してきてください」
 なんで、コンタクト忘れてきちゃったんだろう。気を使わせてしまって申し訳ないです。
「あ、ごめん。困らせるつもりじゃ……」
 謝られてしまいました。私が、困った顔をしたから?
「僕は、相手のことを考えているつもりでも、どうも相手を怒らせてしまうことがあるようで……」
 声に張りがない。とてもショックを受けているようだ。
「いえ、困ってもいませんし、怒ってもいません。むしろ、私がコンタクトレンズを忘れたせいで和臣さんに気を使わせてしまって、それで、申し訳なくて……」
「本当?僕がまた何か知らないうちに不快にさせるようなことを結梨絵さんにしてしまったのではないですか?」
「また?いえ。一度も不快になるようなことはありませんけれど?」
 私の言葉に、ほーっと、息を吐く音が聞こえる。
「またというのは、仕事で……ポカをしました。相手のことを考えたつもりが、相手を貶しているように受け取られてしまって……」
 ふと、ご意見用紙に書かれた、ライバル君のことを思い出しました。
 私の何を持ってライバル視しているのかいまだにわからないけれど……。
「すべての人にわかってもらうことはむつかしいですよね。……誤解されるとつらいです。でも……」
 ライバル君を怒らせたり傷つけたりしたくなくても、どう私の言葉を受け止めているのか分からないけれど……。
「大丈夫です。相手のことを考えていることを、親しい人は知ってくれてます」
 ライバル君とのやり取りをすべて見ているチーフは、ご意見用紙の返信を褒めてくれる。
「誤解されたのであれば、誤解を解くようにすればいいのです。あの、親しい人が、味方です。和臣さんはそんなつもりじゃなかったんだよって、機会があればきっと、その人に伝えてくれると思います……だから、あの……」
 実際、誤解したまま二度と縁のない人もいる。私の言っていることは、きれいごとで。
 それでも、必死で言葉を続けてしまうのは……。
 不器用だけど一生懸命な彼が、自分に重なる部分もあって……。
「私、和臣さんは人間的に素敵だと思いますよ?」
 自分に似ているから素敵というのもおかしな話だと、思ったけれど……。
 自分にとって魅力的だと思うのだから、言葉選びとしては間違っていませんよね?
「人間的……に?」
 戸惑う声が聞こえます。
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