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「ずいぶん、その、顔はいいけれど残念な人だと思いましたけれど……。悪い人ではないのかな……と」
彼氏にどうかという話であれば、まぁ、全く考えられません。むしろ、向こうも迷惑な話でしょうが……。
チーフがふぅと小さくため息をついた。
「それはよかった。あんまりいい噂聞かないからね。何か昨日はご意見用紙持って突進していったから。衝突して嫌な目にあったんじゃないかと……」
「あ、そういう心配をしてくださったんですね……」
ひゃー。私ったら、何を彼氏にどうかとかそういうことだと勘違いしてるんでしょう。
「心配というか、ほら、これ」
A4サイズに印字されたメールです。
社内メールのようです。
食堂責任者へ?
学生相談室の黒崎より?
「時間があるときにご意見返信係の白井さんを借りたい。この間の話の続きを聞かせてもらいと白井さんに伝えてほしい。事前に連絡をいただけば時間はそちらにできるだけ合わせる」
声に出して読み上げる。
そういえば、話が途中でチャイムの音が鳴ったんでしたっけ……。
「白井ちゃんが黒崎さんに会うのが苦痛じゃなければ、昨日と同じ時間帯なら食堂は問題ないけど、どうする?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃぁ、月曜の午前の時間に伺うと返信しておくよ」
「はいすいません、ありがとうございます。では、失礼いたします」
ぺこりとチーフに頭を下げて部屋を出ます。
そのまま菜々さんとの待ち合わせ場所、前回メイクしてもらったロッカールームに足を運びます。
「ああ、来た!結梨絵ちゃん!こっちだよ!今日はかわいい服着てる!メイクのし甲斐がある!」
「ありがとうございます。お願いしま……あっ」
しまった……。
口を押える。
「どうしたの?」
「いえ、服は忘れずに持ってきたのに、コンタクトを忘れました……」
「ああそうか、眼鏡はずすと顔とかよく見えないんだったよね?別にいいんじゃない?この間も大丈夫だったし」
菜々さんが私の髪にスプレーしながら言葉を続けます。
「それに、見えないほうがいいこともある……」
「見えないほうがいいこと?」
「あ、何でもない。っていうか、うん、今日はせっかくデコルテがかわいく見える服着てるから、髪の毛を少し後ろで束ねようかな?」
「お任せします」
そうか。服装に合わせて髪型も変えるのがオシャレなんだ。私は……厚いとか寒いとか基準で髪型作ってたなぁ。あと、ラーメン食べるときに邪魔だとか……。
今日は、化粧をしてから仕上げにヘアアイロンを取り出して、前に出した髪の毛をくるくると巻いてくれました。
あれ?もしかして、わざわざこのためにヘアアイロンまで大学に持ってきてくださったのでしょうか?
「さ、できた!今日も結梨絵ちゃんかわいい!」
眼鏡を顔の前に充てて鏡を見る。
「ありがとうございます。菜々さん、お化粧とても上手で、嬉しいです」
眼鏡はハンカチにくるんでバックの中に入れる。コンタクトを忘れたので、眼鏡ケースもないのです。
「そうだ。菜々さん、化粧していただいたお礼です」
「え?お礼なんていいよ!こっちの都合で飲み会に来てもらうんだし……。むしろこっちがお礼したいくらいっていうか、お礼はあいつからもらうし」
あいつ?
彼氏にどうかという話であれば、まぁ、全く考えられません。むしろ、向こうも迷惑な話でしょうが……。
チーフがふぅと小さくため息をついた。
「それはよかった。あんまりいい噂聞かないからね。何か昨日はご意見用紙持って突進していったから。衝突して嫌な目にあったんじゃないかと……」
「あ、そういう心配をしてくださったんですね……」
ひゃー。私ったら、何を彼氏にどうかとかそういうことだと勘違いしてるんでしょう。
「心配というか、ほら、これ」
A4サイズに印字されたメールです。
社内メールのようです。
食堂責任者へ?
学生相談室の黒崎より?
「時間があるときにご意見返信係の白井さんを借りたい。この間の話の続きを聞かせてもらいと白井さんに伝えてほしい。事前に連絡をいただけば時間はそちらにできるだけ合わせる」
声に出して読み上げる。
そういえば、話が途中でチャイムの音が鳴ったんでしたっけ……。
「白井ちゃんが黒崎さんに会うのが苦痛じゃなければ、昨日と同じ時間帯なら食堂は問題ないけど、どうする?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃぁ、月曜の午前の時間に伺うと返信しておくよ」
「はいすいません、ありがとうございます。では、失礼いたします」
ぺこりとチーフに頭を下げて部屋を出ます。
そのまま菜々さんとの待ち合わせ場所、前回メイクしてもらったロッカールームに足を運びます。
「ああ、来た!結梨絵ちゃん!こっちだよ!今日はかわいい服着てる!メイクのし甲斐がある!」
「ありがとうございます。お願いしま……あっ」
しまった……。
口を押える。
「どうしたの?」
「いえ、服は忘れずに持ってきたのに、コンタクトを忘れました……」
「ああそうか、眼鏡はずすと顔とかよく見えないんだったよね?別にいいんじゃない?この間も大丈夫だったし」
菜々さんが私の髪にスプレーしながら言葉を続けます。
「それに、見えないほうがいいこともある……」
「見えないほうがいいこと?」
「あ、何でもない。っていうか、うん、今日はせっかくデコルテがかわいく見える服着てるから、髪の毛を少し後ろで束ねようかな?」
「お任せします」
そうか。服装に合わせて髪型も変えるのがオシャレなんだ。私は……厚いとか寒いとか基準で髪型作ってたなぁ。あと、ラーメン食べるときに邪魔だとか……。
今日は、化粧をしてから仕上げにヘアアイロンを取り出して、前に出した髪の毛をくるくると巻いてくれました。
あれ?もしかして、わざわざこのためにヘアアイロンまで大学に持ってきてくださったのでしょうか?
「さ、できた!今日も結梨絵ちゃんかわいい!」
眼鏡を顔の前に充てて鏡を見る。
「ありがとうございます。菜々さん、お化粧とても上手で、嬉しいです」
眼鏡はハンカチにくるんでバックの中に入れる。コンタクトを忘れたので、眼鏡ケースもないのです。
「そうだ。菜々さん、化粧していただいたお礼です」
「え?お礼なんていいよ!こっちの都合で飲み会に来てもらうんだし……。むしろこっちがお礼したいくらいっていうか、お礼はあいつからもらうし」
あいつ?
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