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 仕事が終わり、いつものようにチーフに紙を渡されました。
「お疲れ様です。今日は、残業なしで帰ります。お先に失礼します!」
 チーフから受け取った紙は、相談用紙のコピーを挟んであるファイルにクリップで止めておく。
「ああ、そうか、今日は魚の特売日だっけ?」
「え?なんで知ってるんですか?私、言いましたか?」
 職場で一番の年長者が私の背中を叩いた。
「白井ちゃん、魚、魚って言いながら何度も急いで帰っていったことあるの、覚えてないの?」
 え?
 驚いた顔をすると、その場にいた3人が笑った。
「あははは、いいねぇ、白井ちゃんのそういうとこ。休憩時間にサンマって言ってたのも覚えてない?無意識?サンマの季節じゃないけど、いいサンマが売ってるといいね」
 あちゃー。
 そうかでしたか……。
 そういえば、昼休みに菜々さんからラインが届いてて「何か食べたいものある?」って聞かれて……。
 スマホを手にラインを開きます。
「サンマって送ってますね、私……」
 うん。これ、きっと今食べたいものじゃなくて、飲み会の店選びの参考意見を聞かれたんですよね……。
 失敗……しました。
 まぁいいですよね?きっとみんなに聞いてるんだろうし、他の人の意見を参考にしてもらえれば……。
 サンマのおいしい季節はまだまだ先です。
 でも、なんか突然サンマが食べたくなっちゃったんですよね。
 皮がカリカリになるように、グリルで焼いたサンマに、大根おろしを乗せて、少しポン酢をたらす。
 口に入れて、3度ほどサンマの味をかみしめた時に、炊き立てご飯を口に入れる……。うはー。最高ですよ。
 と、口の中に唾液をためながら臨んだ魚の特売。
 ……残念ながらサンマはありませんでした。
 サバとメバチマグロを買いました。今日食べる分は焼いて、他は冷凍。
「サバは味噌煮よりも塩焼きがおいしいんだよねぇ」
 ぱちぱちとグリルから油の始める音がする。
 はい。こうして目の前でおいしそうに焼けているサバを見ると、口はすでにサバモードに切り替わりました。さようならサンマ。
 そろそろでしょうか。
 火を止めると、スマホが鳴りました。
 菜々さんからです。
「明後日の金曜日で大丈夫?」
「大丈夫ですよ。金曜日なら、次の日休みですし少々飲みすぎても大丈夫そうですね」
「じゃぁ、金曜!この間メイクした場所覚えてる?仕事終わったら来て!」
「了解です」
 金曜日に飲み会。
 メイクした場所に来てということは、またお化粧してくれるということですよね?
 えーっと、どんな店か分からないので少しだけオシャレしましょうか?
 男性陣はこの間は仕事帰りだったのか、スーツとか割とかっちり目でした。
 菜々さんはいつもおしゃれです。せっかくまたばっちりメイクしてもらうのだ。少しはましな服を着ないと申し訳ないのです。
 自分で化粧するときに比べて5倍はかわいくしてもらえるのです。28歳にもなってかわいいというのも変な話ですけれど。

 金曜日って、明後日です。今日も早く帰ってきてご意見に返信してないませんから、明日は返信しましょう。
 それから、金曜日は返信できませんと書いておくほうがいいでしょうか。
 何枚くらいあるんでしょう。


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