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いじめるのはこれくらいにしておきましょう。
あ、別に人をいじめる趣味はありません。
いっぱい反省してもらえばもらうほど、これから言うことを一生懸命やってくれるかなと思ったのです。
相談した学生のために、大学側と交渉して大学を動かしてもらわなければなりませんからね。
「さて、黒崎さん。信用を回復するためにできることがありますよ?」
黒崎さんが顔を上げて私を見た。
机の上から、相談の書かれた紙をカタログから引っぺがします。
「後半の部分から、何が分かりますか?」
黒崎さんが相談内容を読む。
「洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困っていますという部分からは、1Kなどの狭い部屋い一人暮らしをしている女性かもしれないということが推測できたんだった。その続き……。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです……か」
しばらく考えて、黒崎さんは大きな声を出した。
「分かった!コインランドリーに行くだけのお金もないということだな?だが、それは学生相談室に相談したからと、どうにかしてやれることでは……」
「そうですね。学生相談室に相談するとお金がもらえるなんて誰も思いませんよね。それに、お金がないから何とかしてくれなんてお願いするのに、洗濯の話をするわけないと思いますよ?」
コインランドリーに行くお金すらないという発想はどうなんでしょうね。
金銭感覚が違うと、ここまで極端にしか考えられないのでしょうか。
「なら、どうしてコインランドリーに行けないんだ?大学にどうにかしてくれと相談したのはどういうことだ?」
黒崎さんが頭を横に振りました。
うん、これはねぇ。男の人には分からないかもしれません。
教えてあげようと口を開いた瞬間、2限終了のチャイムが鳴り響きました。
「あっ!いけない!仕事に戻らないと!じゃぁ、黒崎さん、私、食堂の仕事に戻ります!」
黒崎さんが私の手をつかみます。
「待ってくれ!答えを教えてくれ!」
真剣な目がまっすぐと私を見ている。
「なぜ、ですか?」
「なぜ?」
「知りたいのは……なぜですか?単純に答えが分からないと気になるから?それとも、バカにされたと言われて癪だから?それとも……」
黒崎さんの目が泳いだ。
考えをまとめようとしているのだろうか。
即答ではないんだ。そうですか……。
なんだか、少しがっかりしました。
「手を、放してください、仕事に戻らなければ」
私の手をつかんでいたことも忘れていたかのように、はっとして黒崎さんが手を離しました。
どうしてでしょう。
私からすればとても簡単なことなのです。
黒崎さんは少しも考えたことがないのでしょうか。
だとしたら、私は黒崎さんを助けるようなことはこれ以上しません。教えません。
学生もバカじゃありません。
バカにするような相談員なんて必要ないと声が上がれば、別の人と代わるでしょう。
もし、黒崎さんが……単に答えが知りたいだけなら、学生のために何ができるか考えたいと思っているのでなければ……。
黒崎さんよりも学生のことを考えてあげられる人に相談員が交代したほうが、学生にとっていいはずです。
「すいません、遅くなりました!」
更衣室で急いで着替え、しっかり手を洗って消毒。
「あー、よかった。間に合ったね。頼んだよ!戦争はこれからさ!」
食堂を見れば、食券販売機にたくさんの学生が並び始めています。
まだ、食券を手にカウンターに来ている人間の数は少ない。
よし。今日も戦争を戦いぬかねばなりません!
あ、別に人をいじめる趣味はありません。
いっぱい反省してもらえばもらうほど、これから言うことを一生懸命やってくれるかなと思ったのです。
相談した学生のために、大学側と交渉して大学を動かしてもらわなければなりませんからね。
「さて、黒崎さん。信用を回復するためにできることがありますよ?」
黒崎さんが顔を上げて私を見た。
机の上から、相談の書かれた紙をカタログから引っぺがします。
「後半の部分から、何が分かりますか?」
黒崎さんが相談内容を読む。
「洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困っていますという部分からは、1Kなどの狭い部屋い一人暮らしをしている女性かもしれないということが推測できたんだった。その続き……。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです……か」
しばらく考えて、黒崎さんは大きな声を出した。
「分かった!コインランドリーに行くだけのお金もないということだな?だが、それは学生相談室に相談したからと、どうにかしてやれることでは……」
「そうですね。学生相談室に相談するとお金がもらえるなんて誰も思いませんよね。それに、お金がないから何とかしてくれなんてお願いするのに、洗濯の話をするわけないと思いますよ?」
コインランドリーに行くお金すらないという発想はどうなんでしょうね。
金銭感覚が違うと、ここまで極端にしか考えられないのでしょうか。
「なら、どうしてコインランドリーに行けないんだ?大学にどうにかしてくれと相談したのはどういうことだ?」
黒崎さんが頭を横に振りました。
うん、これはねぇ。男の人には分からないかもしれません。
教えてあげようと口を開いた瞬間、2限終了のチャイムが鳴り響きました。
「あっ!いけない!仕事に戻らないと!じゃぁ、黒崎さん、私、食堂の仕事に戻ります!」
黒崎さんが私の手をつかみます。
「待ってくれ!答えを教えてくれ!」
真剣な目がまっすぐと私を見ている。
「なぜ、ですか?」
「なぜ?」
「知りたいのは……なぜですか?単純に答えが分からないと気になるから?それとも、バカにされたと言われて癪だから?それとも……」
黒崎さんの目が泳いだ。
考えをまとめようとしているのだろうか。
即答ではないんだ。そうですか……。
なんだか、少しがっかりしました。
「手を、放してください、仕事に戻らなければ」
私の手をつかんでいたことも忘れていたかのように、はっとして黒崎さんが手を離しました。
どうしてでしょう。
私からすればとても簡単なことなのです。
黒崎さんは少しも考えたことがないのでしょうか。
だとしたら、私は黒崎さんを助けるようなことはこれ以上しません。教えません。
学生もバカじゃありません。
バカにするような相談員なんて必要ないと声が上がれば、別の人と代わるでしょう。
もし、黒崎さんが……単に答えが知りたいだけなら、学生のために何ができるか考えたいと思っているのでなければ……。
黒崎さんよりも学生のことを考えてあげられる人に相談員が交代したほうが、学生にとっていいはずです。
「すいません、遅くなりました!」
更衣室で急いで着替え、しっかり手を洗って消毒。
「あー、よかった。間に合ったね。頼んだよ!戦争はこれからさ!」
食堂を見れば、食券販売機にたくさんの学生が並び始めています。
まだ、食券を手にカウンターに来ている人間の数は少ない。
よし。今日も戦争を戦いぬかねばなりません!
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