32 / 96
32
しおりを挟む
「学生には居留守を使うんですか?」
学生相談室だというのに、学生が来たら無視ですか。
相談したいと、わざわざ普段学生がいない場所にまで足を運んだ人に対して……。
ひどくないですか?
ひどいですよね?
睨みつけても、平然とした様子で部屋の中央当たりに置かれたソファセットに腰かけました。
「白井さんもどうそ。座って話をしましょう」
「学生相談室なのに、学生が来ても会わないのですか?」
私の質問を無視したイケメンに、もう一度同じ言葉を繰り返す。
イケメンが困った顔を見せました。
「私は、学生相談室に来て3年目になるんだけどね、1年目にひどい目にあったんだよ」
「ひどいめ?」
「いろいろなうわさが大学に広まったようで、私の顔を見ようと学生が押し掛けた。そのうち、わたしと仲良くしたいと思った学生たちが、相談があると言って足を運ぶようになった」
「本当に困っていて相談したかったんじゃないんですか?学生と仲良くして何が問題なんですか?」
「黒崎さん、あ、私の名前は黒崎というんだが……黒崎さん、男の人とお付き合いするにはどうしたらいいんでしょう、教えてくださいと、目の前で服を脱がれた私の気持ちがわかるか?」
そ、それはなんというか。
仲良くの方向性がよくありません……。
「いくら私に非はないとはいえ、表に出れば私のせいだと責められるようなことが次々に起きた」
想像してぞっとしました。
黒崎さんは、イケメンの中でも、かなり上等なイケメンです。かっこいいだけではなく、目を引くんです。カリスマ性があるというか……。
フェロモンでも出しているんでしょうか?艶っぽいと言いますか、顔の作りがよいことにプラスして説明しようのないあらがえないような魅力があふれています。
ああ、古典でいうところの「匂い立つ」とはこういうことなのかもしれません。
もともと「におい」は「霊(に)が這う」が語源らしいです。
魂に訴えかけるような霊的な何かで人を引き付けてしまうとしたら……。
苦労、するかもしれませんね……。最近は肉食女子と呼ばれる人種も増えてきているようですし……。
「そんな人間がうろうろしているせいで、本当に相談したい人間が近寄れない場所になってしまったんだよ。だから、仕方なく、居留守を使うようになった。相談事を紙に書いて入れてもらうことにした」
「はぁ……」
大変さを想像して、噴火しそうな怒りが落ち着きました。
「自分に似合う口紅の色が分からなくて困っています。選んでくださいといった相談事には、文書で返答することにしたんだ。教授とうまく意思疎通ができないといったような、会って話を聞いたほうがいいような相談内容であれば、会って話を聞くようにしている」
なるほど。
「ほとんどの相談事は文書で問題ない。会って話を聞く必要がありそうな相談は相談室ではなく、事務所の奥に仕切られた場所で面談して話を聞くようにしている」
ああ、二人きりにならないようにしているということですね。
なかなか対処としては頑張っていると言えないことはないのかもしれませんが……。
「事情は分かりましたが、これは、いったいどういくことでしょう?文書での返答で問題がないと言っていましたけど……」
ご意見の書かれた用紙を黒崎さんに向ける。
「あなたにバカにされたと食堂のご意見箱に入っていました」
「は?」
黒崎さんが私の手からカタログ付きのご意見用紙を受け取った。
「何もバカにしていないだろう?」
ご意見に目を通し、添付されている相談用紙と黒崎さんが書いたであろう返答を読み返して黒崎さんが口を開いた。
どこが?
黒崎さんは、読み返してもなお、何も気が付かないようです。
私も、こんな返答が来たらバカにされたって思いますけど……。
それで、思わず「ひどい!」と思ってここに足を運んでしまったわけですけど……。
バカにしているつもりはなかったんですね。……というか、指摘されても、分からないのですか。
学生相談室だというのに、学生が来たら無視ですか。
相談したいと、わざわざ普段学生がいない場所にまで足を運んだ人に対して……。
ひどくないですか?
ひどいですよね?
睨みつけても、平然とした様子で部屋の中央当たりに置かれたソファセットに腰かけました。
「白井さんもどうそ。座って話をしましょう」
「学生相談室なのに、学生が来ても会わないのですか?」
私の質問を無視したイケメンに、もう一度同じ言葉を繰り返す。
イケメンが困った顔を見せました。
「私は、学生相談室に来て3年目になるんだけどね、1年目にひどい目にあったんだよ」
「ひどいめ?」
「いろいろなうわさが大学に広まったようで、私の顔を見ようと学生が押し掛けた。そのうち、わたしと仲良くしたいと思った学生たちが、相談があると言って足を運ぶようになった」
「本当に困っていて相談したかったんじゃないんですか?学生と仲良くして何が問題なんですか?」
「黒崎さん、あ、私の名前は黒崎というんだが……黒崎さん、男の人とお付き合いするにはどうしたらいいんでしょう、教えてくださいと、目の前で服を脱がれた私の気持ちがわかるか?」
そ、それはなんというか。
仲良くの方向性がよくありません……。
「いくら私に非はないとはいえ、表に出れば私のせいだと責められるようなことが次々に起きた」
想像してぞっとしました。
黒崎さんは、イケメンの中でも、かなり上等なイケメンです。かっこいいだけではなく、目を引くんです。カリスマ性があるというか……。
フェロモンでも出しているんでしょうか?艶っぽいと言いますか、顔の作りがよいことにプラスして説明しようのないあらがえないような魅力があふれています。
ああ、古典でいうところの「匂い立つ」とはこういうことなのかもしれません。
もともと「におい」は「霊(に)が這う」が語源らしいです。
魂に訴えかけるような霊的な何かで人を引き付けてしまうとしたら……。
苦労、するかもしれませんね……。最近は肉食女子と呼ばれる人種も増えてきているようですし……。
「そんな人間がうろうろしているせいで、本当に相談したい人間が近寄れない場所になってしまったんだよ。だから、仕方なく、居留守を使うようになった。相談事を紙に書いて入れてもらうことにした」
「はぁ……」
大変さを想像して、噴火しそうな怒りが落ち着きました。
「自分に似合う口紅の色が分からなくて困っています。選んでくださいといった相談事には、文書で返答することにしたんだ。教授とうまく意思疎通ができないといったような、会って話を聞いたほうがいいような相談内容であれば、会って話を聞くようにしている」
なるほど。
「ほとんどの相談事は文書で問題ない。会って話を聞く必要がありそうな相談は相談室ではなく、事務所の奥に仕切られた場所で面談して話を聞くようにしている」
ああ、二人きりにならないようにしているということですね。
なかなか対処としては頑張っていると言えないことはないのかもしれませんが……。
「事情は分かりましたが、これは、いったいどういくことでしょう?文書での返答で問題がないと言っていましたけど……」
ご意見の書かれた用紙を黒崎さんに向ける。
「あなたにバカにされたと食堂のご意見箱に入っていました」
「は?」
黒崎さんが私の手からカタログ付きのご意見用紙を受け取った。
「何もバカにしていないだろう?」
ご意見に目を通し、添付されている相談用紙と黒崎さんが書いたであろう返答を読み返して黒崎さんが口を開いた。
どこが?
黒崎さんは、読み返してもなお、何も気が付かないようです。
私も、こんな返答が来たらバカにされたって思いますけど……。
それで、思わず「ひどい!」と思ってここに足を運んでしまったわけですけど……。
バカにしているつもりはなかったんですね。……というか、指摘されても、分からないのですか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,646
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる