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さてと。張り出して学生相談室に学校への申し送りを届ければおしまいです。
渡り廊下の前に差し掛かる。
「あ!」
渡り廊下の中央当たりで、菜々さんといけ好かないイケメンが向かい合って何か話をしています。
う、わ。
一瞬お似合い!美男美女!なんて思ってしまいましたけれど……。
人のよい菜々さんが、あんなに性格の悪い男を選ぶわけないですよね!
いえ、性格が悪いのはフェイクで、女学生除けにわざとそう見せてる可能性もあったんでした。でもそうすると学生である菜々さんと仲良くするわけないですよね?
慌てて渡り廊下から見えない位置に身を隠してしまったけれど、二人の仲を邪推してはだめですよね。
……。
菜々さんとこのあたりでよく会ったり、イケメンとこのあたりでよく会ったりしたことが、二人がいつも逢引きにここを利用しているからとか……では、ないですよね?
邪推はだめです。
もう一度ちらりと二人の様子をちゃんと見ましょう。
あー。
イケメンが嬉しそうな顔しています。
菜々さんがニヤニヤしています。
……。
よし。
見なかったことにしましょう。
階段を降り、1階の渡り廊下を通って、2階へ上がって学生相談室へ紙を入れて終了。
次の日は、調理服に着替えようとしているところにチーフがきた。
「ご意見箱に、こんなものが入ってたんだけどね、邪魔になるから先に回収しておいたんだよ」
ご意見
【白井さんが学生相談室の人だったら良かったのに!これ、どう思いますか?めちゃくちゃバカにしてますよね?】
という意見にホチキスで止められたものは、学生相談室に出したであろう用紙。
それから、何冊かの洗濯機のカタログ。
学生相談室への相談内容
【洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困ってます。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです】
パソコンから印字された紙が回答欄に張り付けられています。
どうやら学生相談室からの回答は、手書きではないようです。
回答
【乾燥機付きの洗濯機を買ってはいかがですか。最近のものは電気代もかなり抑えられているようです】
「カタログがはみ出ちゃって、他の人が意見箱を利用しにくくなってたからね。それにしても、学生相談室も大変だねぇ……」
チーフが小さくため息をつきました。
「あの、学生相談室にちょっと行ってきてもいいですか?仕事が終わってからだと、いつも無人なんで」
「ん?まぁ構わないよ。ご意見の返信を書くために必要なことだろう?上からも、白井ちゃんの返信は学生に評判がいいからできる限り続けてほしいって言われてるからね。行っておいで。2限終了後の昼休みの一番忙しくなる時間前なら構わないよ」
ありがとうございますと頭を下げて、カタログ付きのご意見用紙を持って学生相談室に向かいます。
これは、ひどいです。
あまりにもひどい……。
学生相談室のドアの前に立ちます。
トントンとノックをするけれど、いつものように返事はありません。
「いません?いつならいるのでしょう?」
後でもう一度来てみようと思って背を向けると、部屋の中からスマホの着信音が聞こえて、すぐに消えました。
いる?
誰かがいます!
もう一度ノックをする。
「すいません、食堂の白井です。お話いいですか?」
「なんだ、学生じゃなくて白井さんか。どうぞおはいりください」
部屋の中から声が聞こえ、すぐに内側に扉が開いきました。
この声。
と思った通り、扉を開けたのはあのイケメンでした。
「あなたが、学生相談室の人だったんですね」
だから、このあたりでよく会ったのでですねと思っていたら、同じことをイケメンさんも思ったようです。
「ああ、君が白井さんだったのか。学生かと思っていた。毎日のように申し送りを届けてくれていたから会うはずだ」
イケメンさんは意外にも今までのように不機嫌そうな顔は見せずに、口調も穏やかなです。
だけれど、私のほうは怒りで頭が沸騰しそうになっています。
渡り廊下の前に差し掛かる。
「あ!」
渡り廊下の中央当たりで、菜々さんといけ好かないイケメンが向かい合って何か話をしています。
う、わ。
一瞬お似合い!美男美女!なんて思ってしまいましたけれど……。
人のよい菜々さんが、あんなに性格の悪い男を選ぶわけないですよね!
いえ、性格が悪いのはフェイクで、女学生除けにわざとそう見せてる可能性もあったんでした。でもそうすると学生である菜々さんと仲良くするわけないですよね?
慌てて渡り廊下から見えない位置に身を隠してしまったけれど、二人の仲を邪推してはだめですよね。
……。
菜々さんとこのあたりでよく会ったり、イケメンとこのあたりでよく会ったりしたことが、二人がいつも逢引きにここを利用しているからとか……では、ないですよね?
邪推はだめです。
もう一度ちらりと二人の様子をちゃんと見ましょう。
あー。
イケメンが嬉しそうな顔しています。
菜々さんがニヤニヤしています。
……。
よし。
見なかったことにしましょう。
階段を降り、1階の渡り廊下を通って、2階へ上がって学生相談室へ紙を入れて終了。
次の日は、調理服に着替えようとしているところにチーフがきた。
「ご意見箱に、こんなものが入ってたんだけどね、邪魔になるから先に回収しておいたんだよ」
ご意見
【白井さんが学生相談室の人だったら良かったのに!これ、どう思いますか?めちゃくちゃバカにしてますよね?】
という意見にホチキスで止められたものは、学生相談室に出したであろう用紙。
それから、何冊かの洗濯機のカタログ。
学生相談室への相談内容
【洗濯を干す場所がなくて乾かなくて困ってます。コインランドリーにも行けない。何とかしてほしいです】
パソコンから印字された紙が回答欄に張り付けられています。
どうやら学生相談室からの回答は、手書きではないようです。
回答
【乾燥機付きの洗濯機を買ってはいかがですか。最近のものは電気代もかなり抑えられているようです】
「カタログがはみ出ちゃって、他の人が意見箱を利用しにくくなってたからね。それにしても、学生相談室も大変だねぇ……」
チーフが小さくため息をつきました。
「あの、学生相談室にちょっと行ってきてもいいですか?仕事が終わってからだと、いつも無人なんで」
「ん?まぁ構わないよ。ご意見の返信を書くために必要なことだろう?上からも、白井ちゃんの返信は学生に評判がいいからできる限り続けてほしいって言われてるからね。行っておいで。2限終了後の昼休みの一番忙しくなる時間前なら構わないよ」
ありがとうございますと頭を下げて、カタログ付きのご意見用紙を持って学生相談室に向かいます。
これは、ひどいです。
あまりにもひどい……。
学生相談室のドアの前に立ちます。
トントンとノックをするけれど、いつものように返事はありません。
「いません?いつならいるのでしょう?」
後でもう一度来てみようと思って背を向けると、部屋の中からスマホの着信音が聞こえて、すぐに消えました。
いる?
誰かがいます!
もう一度ノックをする。
「すいません、食堂の白井です。お話いいですか?」
「なんだ、学生じゃなくて白井さんか。どうぞおはいりください」
部屋の中から声が聞こえ、すぐに内側に扉が開いきました。
この声。
と思った通り、扉を開けたのはあのイケメンでした。
「あなたが、学生相談室の人だったんですね」
だから、このあたりでよく会ったのでですねと思っていたら、同じことをイケメンさんも思ったようです。
「ああ、君が白井さんだったのか。学生かと思っていた。毎日のように申し送りを届けてくれていたから会うはずだ」
イケメンさんは意外にも今までのように不機嫌そうな顔は見せずに、口調も穏やかなです。
だけれど、私のほうは怒りで頭が沸騰しそうになっています。
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