14 / 96
14
しおりを挟む
時計を見れば、今日も残業24分。
今から掲示板に貼って、学生相談室に提出すれば、ちょうど残業時間30分。
ロッカーから荷物を取り出します。
「昨日は菜々さんに合コンに連れてってもらったから、リュック置いてったんでした」
荷物をリュックに入れ直しながら、ふと昨日のことを思い出しました。
変わったメニューのある居酒屋だったなあ。
お酒もおいしかったです。薄いだけのチューハイ、甘いだけのカクテルという安っぽいお酒は一つもありませんでしたし。
目の前に座っていた人が店を選んだって言っていました。名前も結局知らないままで、顔もぼんやりしか見ていません。
それから、菜々ちゃんを送っていくと言って二人でタクシーに乗り込むところを思い出します。
「偶然きっかけで、また付き合い始めたりしてね?」
学生相談室は、食堂のある中央棟から東に10mほど行った3号棟にある。二つの棟をつなぐ渡り廊下の入り口付近で菜々さんとは会いました。
今日は、いません。
さすがにそんなに何度も会うわけありませんね。
学生相談室のドアをノックする。
やはり、今日も返事はありません。この時間はすでに勤務時間が終わっているんでしょうか。
どういう人が学生相談室の担当なのでしょう?
もしかして、スクールカウンセラーみたいな人?だとすると、この大学専任ではなくて、他の大学と兼任していて、週に何回かしか来ないとという可能性もありますね。
私は学生じゃないから、学生相談室がどのような時に誰が活用するのか説明を受けているわけではないので、よくわかりません。
箱の中に申し送りの紙を入れて今日の仕事はオールクリア。
さぁ、今日は何を食べようかな。
昨日はおかげさまで結構がっつり食べて飲んだので、今日はあっさりカロリー抑え目の夕飯にしたほうがよさそうです。
「アーティチョークだよ、アーティチョーク」
え?
昨日食べたものを思い出していると、そのままずばりの単語が聞こえてきました。
しかも、この声!
目の前に座っていたあの人の声です!
振り返ると、背の高い眼鏡をかけたスーツ姿のイケメンが立っていた。
「あ」
まさか、このイケメンさんが昨日の人?
眼鏡、かけてなかったけど、昨日ははずしていただけでしょうか?
いくら顔がぼんやりしか見えないとは言っても、眼鏡をかけているかかけてないかは分かりますからね。
髪型も、違うようです。
「何か、用ですか?」
顔をじろじろ見ていたら、スマホから顔をはなして話しかけられました。
冷たい声。
そりゃ、いくらぶしつけに顔をじろじろ見ちゃったからって……。氷のような声です。
「ご、ごめんなさい、あ、えーっと。失礼します」
違う。違います。
声は似ていますけど、別人です。眼鏡も、前髪も違うもの。
踵を返して廊下を速足で歩いて立ち去ります。
今の人は、クールビューティーな顔。
銀縁の眼鏡の奥には切れ長の瞳。前髪は後ろに流していて賢そうな眉と額が見えてた。
それから……って、私ってば、そこまで相手の顔をしっかり観察していたってことでしょうか?
昨日の人かもしれないと思ったからって、やっぱり失礼でした。
って、そもそも、昨日の人かもと思ったからって、なぜそこまでじっと見てしまったのでしょう……。
別に、もう一度会いたいとか、そんなこと思ってたわけじゃないんんですけど。
今から掲示板に貼って、学生相談室に提出すれば、ちょうど残業時間30分。
ロッカーから荷物を取り出します。
「昨日は菜々さんに合コンに連れてってもらったから、リュック置いてったんでした」
荷物をリュックに入れ直しながら、ふと昨日のことを思い出しました。
変わったメニューのある居酒屋だったなあ。
お酒もおいしかったです。薄いだけのチューハイ、甘いだけのカクテルという安っぽいお酒は一つもありませんでしたし。
目の前に座っていた人が店を選んだって言っていました。名前も結局知らないままで、顔もぼんやりしか見ていません。
それから、菜々ちゃんを送っていくと言って二人でタクシーに乗り込むところを思い出します。
「偶然きっかけで、また付き合い始めたりしてね?」
学生相談室は、食堂のある中央棟から東に10mほど行った3号棟にある。二つの棟をつなぐ渡り廊下の入り口付近で菜々さんとは会いました。
今日は、いません。
さすがにそんなに何度も会うわけありませんね。
学生相談室のドアをノックする。
やはり、今日も返事はありません。この時間はすでに勤務時間が終わっているんでしょうか。
どういう人が学生相談室の担当なのでしょう?
もしかして、スクールカウンセラーみたいな人?だとすると、この大学専任ではなくて、他の大学と兼任していて、週に何回かしか来ないとという可能性もありますね。
私は学生じゃないから、学生相談室がどのような時に誰が活用するのか説明を受けているわけではないので、よくわかりません。
箱の中に申し送りの紙を入れて今日の仕事はオールクリア。
さぁ、今日は何を食べようかな。
昨日はおかげさまで結構がっつり食べて飲んだので、今日はあっさりカロリー抑え目の夕飯にしたほうがよさそうです。
「アーティチョークだよ、アーティチョーク」
え?
昨日食べたものを思い出していると、そのままずばりの単語が聞こえてきました。
しかも、この声!
目の前に座っていたあの人の声です!
振り返ると、背の高い眼鏡をかけたスーツ姿のイケメンが立っていた。
「あ」
まさか、このイケメンさんが昨日の人?
眼鏡、かけてなかったけど、昨日ははずしていただけでしょうか?
いくら顔がぼんやりしか見えないとは言っても、眼鏡をかけているかかけてないかは分かりますからね。
髪型も、違うようです。
「何か、用ですか?」
顔をじろじろ見ていたら、スマホから顔をはなして話しかけられました。
冷たい声。
そりゃ、いくらぶしつけに顔をじろじろ見ちゃったからって……。氷のような声です。
「ご、ごめんなさい、あ、えーっと。失礼します」
違う。違います。
声は似ていますけど、別人です。眼鏡も、前髪も違うもの。
踵を返して廊下を速足で歩いて立ち去ります。
今の人は、クールビューティーな顔。
銀縁の眼鏡の奥には切れ長の瞳。前髪は後ろに流していて賢そうな眉と額が見えてた。
それから……って、私ってば、そこまで相手の顔をしっかり観察していたってことでしょうか?
昨日の人かもしれないと思ったからって、やっぱり失礼でした。
って、そもそも、昨日の人かもと思ったからって、なぜそこまでじっと見てしまったのでしょう……。
別に、もう一度会いたいとか、そんなこと思ってたわけじゃないんんですけど。
20
お気に入りに追加
1,639
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる