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【番外編3】
05 解放された?
しおりを挟む「っ……ぅ、あ、あのっ……殿下」
「何?」
「……どうか、この首輪と、拘束具を外していただけませんか?お願い、しますっ……」
俺はしおらしく涙を滲ませながら、王子に懇願した。手足を拘束されているので、このままでは全く抵抗出来ずにヤラれてしまう。そんなの嫌だ。
「……ああ、ごめんね。やっぱり、気に入らないよね、これ」
王子は申し訳なさそうにそう言うと、俺の尻からゆっくり指を抜いた。俺はほっと胸を撫で下ろす。
「すぐに外してあげるよ、ごめんね」
王子はそう告げると、ベッドサイドの引き出しから鍵のようなものを取り出した。そのまま俺の手足の拘束を順番に外していく。最後に首輪を外され、ようやく俺は自由になった。
アレ?意外とあっさり外してくれた。
やっぱりいい人なのか、単なる無能な変人なのか、どっちなんだ。
「あ、ありがとうございます」
礼を言って王子の膝の上から降りようとするのだが、何故か俺の腰に絡みついた腕がまだ離れない。
困ったな、解放してもらえないと逃げ出せないのだが。
俺は冷や汗を浮かべながら、王子を見つめた。
王子は穏やかな笑顔を浮かべたまま、腰に回した手と反対側の手で俺の髪を優しく撫でている。
「ミシェル。君の妹は王宮で保護している。この意味が分かる?」
「え?」
王子の言葉の意味を、俺は咄嗟に理解することができなかった。王子は俺を優しく見つめながら、微笑んでいる。
「君の一番大事なモノは、僕の手の中だ。君が逃げ出せば、妹が酷い目に合うかもしれない」
「……は?、え、えっと……?」
「ああ、そんな不安そうな顔しないでくれ。大丈夫、僕は君を傷つけたりしないから。むしろ可愛がってあげるつもりだよ?君が僕のモノになるなら、病気の妹も穏やかに過ごせるよう環境を整えて、きちんとした治療を受けさせてあげよう。君が逃げ出したりせず、僕のモノになるなら、ね」
「あ……」
王子の言葉に俺は言葉を失った。
要するに俺は、目の前の悪魔に、自分にとって一番大事な妹を人質にとられてしまったのだ。俺を逃さないためにはどうすればいいか。この王子の「相手を知る」は、要は「そういう」事なのだろう。この男は、捕らえた俺を解放するつもりがないのだ。
「君の行動は今回は罪には問わないよ。悪い子には躾が必要だから、お仕置はするけどね」
王子の右手が俺の顎に添えられる。その親指が下唇を撫でた後ゆっくりと口内に侵入してくる感触に背筋が震えた。俺はそれを拒むことができないまま受け入れるしかない。
「だから安心して僕に身を委ねてよ」
そう言って笑う彼の目は笑っていなかった。その瞳の奥にある狂気のようなものを感じ取り、思わず身震いしてしまう。けれども俺は逃げ出すことなどできるはずもないのだ。
王子の顔が近づいてきて、そのまま唇を塞がれた。触れるだけの優しいキスだった。
「……その怯えた表情、凄く可愛いな。もっと泣かせたくなる。ミシェル。今から恥ずかしいことをたくさんしようね。……楽しみだなあ」
王子はうっとりとした表情でそう囁くと、俺の頬を撫でながら優雅に微笑んだ。その笑顔は無邪気そのもので、逆に恐ろしくて背筋が寒くなる。俺は身体の震えが止まらなかった。
俺の認識は間違っていた。
やっぱりコイツは良い人なんかじゃない。美しい姿形をした筋金入りの変態だ。しかもやってることは元上司と同じ、とんでもない外道野郎である。
「やっぱり、こっちの首輪の方が君には似合うね。可愛いよ」
王子はそう言いながら、いつの間に準備したのか、俺の首に新しい首輪を嵌めた。それは最初に俺が嵌められていた無骨なものとは違い、中央に宝石のようなものがあしらわれていて、とても美しいデザインのものだった。ちなみに宝石の色は、王子の瞳の色と同じ翡翠色だ。金のかけ方が間違っている。
「僕のモノって証だよ。嬉しい?」
「全く嬉しくないです」
「素直じゃないなあ。そういうところも可愛くていいね」
王子はそう言いながら、俺の首輪に指先で触れてきた。その指の動きはとても優しいもので、まるで壊れ物を扱うかのように優しく撫でられる。あまりにもベタベタ触られるので、こんな扱いにもだんだん慣れてきた。
『王子様のモノ』になった俺は、どうやら彼に従う必要があるらしい。
「どんな理由があろうとも犯罪行為に手を染める人間は容認できないから、君が二度と馬鹿な真似をしないよう、きちんと躾け直してあげる。……ああそれと、僕以外の人間に懐いたり命令されたりしないよう、裏稼業の人間とは手を切らせるよ。僕はわりと嫉妬深い方でね」
王子は穏やかな口調でそう語りかけてくるが、その目は笑っていない。威圧感のようなものを感じ取り、俺は思わず息を飲む。
「ミシェル、返事は?」
「……は、はい」
王子の有無を言わさない口調に逆らえず、俺は素直に返事をした。すると王子は満足そうに微笑むと、俺の頭を優しく撫でてくる。
「いい子だね」
大人しく頭を撫でられていると、王子が再び顔を近付けて来て、そのまま唇を塞がれた。今度は先程よりも長く濃厚な口付けだった。何度も角度を変えて貪るような口付けを繰り返された後、ようやく解放された時には、俺はすっかり蕩けた表情になっていたと思う。
王子はそんな俺を愛おしげに見つめてきた。
「……あのさ、ミシェル。可愛かったからまた尻尾つけていい?」
「嫌です」
「痛くしないから。ほら、お尻こっち向けて?」
「お断りします」
俺はもう、この男の前で取り繕うのをやめた。
この変態王子は、やはり頭がおかしい。こんな奴に捕まってしまうなんて最悪だ。
俺は心の中で悪態を吐きながら、王子の膝の上から降りようと試みる。だが、またしても腰にがっしりと腕が巻きついて逃げられない。
頬を膨らませながら王子を睨みつけてみたものの、彼は相変わらず穏やかな顔で微笑み返してくるだけだ。
「ふふ、やっぱりミシェルは素直で可愛いね。……逃がしてあげられなくてごめんね。僕は多分、君を愛することができると思うから、ずっとそのままで、僕の側にいてね」
俺にとっては呪いの言霊のような言葉を紡ぎながら、俺の額に口付けを落とすと、王子は自分の腕の中に捕らえた俺をいつまでも拘束し続けた。
【終】
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面白くて一気読みしてしまいました。
私としてはもう少し長くしてシモンさんのこととか色々深ぼってほしかったです。少し物足りないけどおもしろかったです!
感想ありがとうございます✨
今回勢いだけで書いてしまったのですが、もうちょっと長いお話も書いてみたいなあと思ってます。
物足りなかったようですみません💦
面白かったと言っていただき、ありがとうございます!
ジラルドがいいオトコ過ぎて参りました。
ふたりの今後とか、おばか聖女と変態執着王太子のざまぁとか、ちょっともう少し見たかったです。
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夏バテ気味で気が滅入ってましたが、面白かったです!元気でました。
ありがとうございます😊
感想ありがとうございます😊
面白かったと言っていただけて嬉しいです!
ジラルドは、いつもと違う攻にしてみよう〜と試みたのですが、いい男になってたようでほっとしてます。
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