死神と呼ばれた俺は聖母と呼ばれた彼女に恋をした。

尾高 太陽

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~始まりの異変~

ーこ、れで…ー

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「っ!!」
 俺は思わず剣を構えてしまった。
 まるで走馬灯のように頭が回転する。
 ここは俺を餌にしてベルセルクに剣を渡すべきだった。
「タナトス様!!」
 ダメだ、今投げた所で届くかどうか。いやそれ以前に飛んできている蛇の勢いはどうにも出来ない。
 もし今何もしなければ死ねる。………そして代わりにベルセルクや子供…マリアが死ぬ。
 俺自身の事はどうでもいい、今は後ろを守る事だけを考えろ。
 飛んでくる蛇への対処はどうする。
 〈受け止めれないなら受け流せばいい。〉
 何で受け流す。
 〈剣を使う?〉
 どう受け流す?
「俺を使えばいい。」
 その瞬間、死など感じないほどに冷静になった。
 体の強張りを抜き、もう一度力を入れ直し。
「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 飛んで来る蛇の口の内側から上、脳側に剣を突き刺した。 

 この瞬間私はタナトスさんをかっこいいと思ってしまった。
 タナトスさんは今ここにいる誰よりも。ベルセルクさんや私、子供達の誰よりも強く、誰よりも人間らしい。
 そんなあなたを私は………。

 今までの爆発のおかげもあるのか、全力で突き上げた剣は深く突き刺さった。
 さらに強くさらに深く、そして刺した後にも上に殴り飛ばすように。
 しかしそのあと、剣を離せなかった。
 いや、正しくは剣が刺さった時に閉じた蛇の口に剣を持った右手を噛まれ、飛んでいく蛇に引っかかった状態になっていた。
 だが上へ殴り飛ばした効果もあってか蛇の軌道は上へとずれ、ベルセルク、マリア、子供を通り過ぎて協会の奥の壁へと突っ込み。そしてそれに引っかかった俺の背中も壁に打ち付けられる。
 蛇は俺を噛んだまま、ガラガラと崩れる瓦礫とともに崩れ落ちるとそのまま動かなくなった。
「タナトス様!!!」
 マリアと共に駆け寄って来たベルセルクによって開かれた口から腕を抜く。
 肩が外れている。もちろん骨は砕け、肉も裂けている。
 今にも気を失いそうな全身の激痛に耐え、蛇の口の中から剣を抜いた。
「こ、れで…。」
 最後に持つ手を変えて、ベルセルクとヘーパイストスの潰した眼球の上からもう一度剣を深く重く刺した。
「タナトスさ」
「タナトスさん!!!」
 気を失いかけた俺を抱えたのはマリアだった。
 ………しかし女だな。
 結局俺を支えきれず崩れ、最終的にマリアの膝にうつ伏せで頭を置いた。
「ここは僕が行く流れじゃ………。」
 そんなベルセルクの言葉に思わず笑って俺は気を失った。
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