死神と呼ばれた俺は聖母と呼ばれた彼女に恋をした。

尾高 太陽

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~始まりの異変~

ー変色ー

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 くだらん………。
「マイケル、まだ致死量ではないんだろ?」
 するとマイケルは「いえ」と否定した。
「致死量と言うのは、あくまですぐには死なないと言う事です。数10秒なら問題はありませんが、それでも多少の体調不良にはなると思います。」
 ほう。
「ベルセルク。どっちがいい。」
 どっちとは、〈害物質で体調不良になる代わりにこの後必要になるであろう食料を手に入れる〉か〈害物質に触れずに空腹と喉の渇きを耐えるか〉だ。
 するとベルセルク迷いなく「水!!」と防護服後ろの服を着脱口から手を出し、自分のバックから水筒、食料をありったけ掴んで防護服にもどった。
 ………。
 「あの、閉めてもらえると嬉しいです。」と言う言葉を聞くまで、全員が防護服は閉めなければいけない事を忘れていた。
 ボックスが防護服を閉めると、ベルセルクは「ありがとうございます。」と言い、口に水を流し込んだ。
「クゥゥゥ!!!」
 お前は力仕事終わりに水を飲むジジイか。



「マリア殿!!」
 執行者最高責任者付き人のウルの声が扉の向こうから聞こえた。
「ウルさん!?今扉を開けます!!」
「いや!このままで頼む!子供達は?」
 後ろの子供達は肌を寄せ合い震えていた。
「少し怯えているようですがパニックは起こしていません。ウルさんも早くこちらに!!」
 すると扉の向こうでウルが「ふっ」と笑った。
「悪いが俺は今頃泣いてるだろうアルテミスのところに行かないとならんのでな。俺たちが来るまで絶対に開けるなよ。」
 その言葉を残して、足音が遠ざかって行った。
 ………トーマスさん、どうか間に合ってください。



 休憩を終わった俺たちはまた階段を登っていき、広場を3回通り過ぎた。
「マイケル。」
 その言葉をだけでマイケルはカラーフォーマーを取り、害物質濃度を測る。
「あれ?第四広場と変わってない。」
 変わってない?
「つまり……。」
 するとベルセルクが俺の言葉を続けた。
「ここが最高濃度って事ですか?」
 その言葉に全員が疲れを忘れて立ち上がり、広場の中央を突き抜ける螺旋階段を駆け上がった。
「これで、やっと解放門外の謎が解けるんでしょうか!?」
 とマイケルは喜んだような声を出す。
「さあな。」
 第五広場を過ぎた途端電灯の光はなくなり、ライトを使わないと足元が見えなくなっていた。

 しばらく登り続けると、また広場がある。
 しかし、今までのように階段の途中に部屋があるのではなく、階段はそこで終わり、部屋にも出入り口らしいものはなかった。
 つまり、これ以上はどこにも行けなくなっていた。
 行き止まり。
 俺の後ろで困惑している奴らを置いて、俺はマイケルに手を伸ばす。
「マイケル。カラーフォーマーを4枚くれ。」
 俺はマイケルからカラーフォーマーを受け取って、広場の四方向。カラーフォーマー同士を線で繋げは十字になるように壁に貼り付ける。
「どうだ?」
 マイケルは貼り付けたカラーフォーマーを見ていくと、一枚を見て「え!?」と声をあげた。
「ここだけ害物質濃度が異常です!」
 マイケルが指差すカラーフォーマーを見ると、元は青かったカラーフォーマーは真っ黒に変色していた。
「いえ、異常なんてものじゃない!これだけの濃度、カラーフォーマーでは測定できません!!」
 なるほど……今までの害物質はこの超高濃度害物質から漏れた一部だったか。
「マイケル。これだけの濃度、この防護服で防げるか?」
 するとマイケルは首を横に振った。
「おそらく無理でしょう。今現在ここにいる時点でかなり……マズイです。」
 俺はライトの持ち手で真っ黒に変色したカラーフォーマー近くの壁を叩く。
 叩かれた壁はコーンと柔らかい音が鳴る。
 俺とは反対側に立つジグムンドを見ると、その視線の意味を理解したのか、別のカラーフォーマー近くの壁を叩いた。
 すると、その壁はコッと硬い音を立てた。
 「これは……。」というボックスの声にインが答える。
「空洞になってる。」
 今はこれを壊せないか。
 壊せば今までとは比にならない害物質が漏れ出してしまう。
「帰るぞ。」
 そう言うと、ジグムンドが先頭となり来た道を戻っていった。

 しかし最大の謎がまだ謎のままだ。
 ベルセルクやマイケルは気付いていないのか、口にしないだけなのか。
 一つ。俺が解放を命じたのは184人。なのにも関わらず解放門外で見た亡骸はせいぜい90人程度。残りの半数はどうなった?
 そして二つ……解放門外は広場こそあれど一本道だった。もちろんそれらしき物も痕跡も無い。なら4586番を殺した生物はどこから来た?

「タナトス様!!」
 螺旋階段の下から、反響したトーマスの声が聞こえた。
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