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最終章 薔薇魔女のキセキ

番外編4 薔薇魔女の結婚式 中

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 ルスラーンとレオナの結婚式を三日後に控え、ローゼン公爵邸は慌ただしく準備に追われていた。
 レオナの希望で、イゾラの大教会ではなく王宮裏庭で執り行われる、マーカム初のガーデンウエディング。
 これには、公爵夫人でレオナの母親であるアデリナが、王妃へ積極的な広報活動を行ってくれた。
 
 ――求心力を失っているイゾラ聖教会によらずとも、出席者全員への誓約の形で結婚すれば良い。

 マーカム王国貴族の結婚届は、両家当主の署名後王宮に提出されるので、なにもイゾラ神に了承を得る形にこだわらなくても良いのである。
 このアイデアにアデリナは思わず「レオナには、いつも驚かされるわね。この発想は普通思いつかないわ」と感嘆の息を漏らした。正直、大金をはたいてまでイゾラ聖教会の司祭を招くことに抵抗感がある者もいる。庶民の結婚式へのハードルもぐんと下がるのではと、ルスラーンも当然賛同してくれた。
「司祭のもとで結婚しろとか、んな細かいことをあのイゾラ神が言うわけねえし。仮に文句言う奴がいたら、じゃあイゾラに直接文句言う、って言ってやる」
 である。ずいぶん頼もしくなった、とレオナはひそかに惚れ直していたりする。

 前日には新郎新婦そろって王宮入りし、賓客として招いたブルザーク帝国、ガルアダ王国、アザリー王国一行とディナーをする予定だ。
 晩さん会のドレスとアクセサリーは……とスイとともにクロゼットルームに来たレオナを、けたたましいノック音が襲った。

「レオナ様! タミーマ殿下が!」

 侍従兼護衛としてローゼン公爵家に従事している、テオが息せき切って走り込んできた。
 
「タミーマ様が、どうされたの!?」
「王都で買い物中に、拉致されたと!」
「っ、なんですって……リンジーは!?」
「既に動いています。僕も行って良いでしょうか」
「テオ。第三騎士団員として対応して。それから常にスイと」
「はい。連携を取ります。情報はすぐ共有します……スイ?」

 スイが、がたがたと青くなって震えている。

「ユイ、ユイは……」
「大丈夫。タミーマ殿下と一緒にいるはずだよ。ユイなら、きちんと守って、無事に戻ってくるよ」
「うん……」
「念のためお兄様にもお伝えするわね」
「はい、ありがとうございます」

 しゅん、と瞬く間に消えるテオ。
 フィリベルトに連絡をと廊下へ出た二人を、赤ちゃんを抱いたアデリナが笑顔で迎えた。一緒にドレスを見ようと来てくれたのだろう。が、様子のおかしいことを察して、すぐにその表情を曇らせた。

「どうしたの? 何かあったの?」
「お母さま。タミーマ殿下とユイが……」
 
 アデリナは、レオナに皆まで言わせない。
 公爵邸に出入りしている者の身分はしっかりした裏取りをしているが、噂がどう伝わるか分からないからだ。
 
「っ……ルーカス!」
「は。至急閣下に確認を」
 背後に従っていた執事のルーカスが、あっという間に姿を消す。
「ふぎゃあああああ」
 アデリナの腕の中で泣き出す赤ちゃんは、バラ色の頬で天使のようなプラチナブロンドの、
「お~よしよし。驚いたわねえ~リニィちゃん~」
 フィリベルトとレオナの弟であるリナルドだ。
 
 瑠璃色の瞳を受け継いだその面立ちは、幼いころのフィリベルトに瓜二つである。
 ヒューゴーとマリーの娘である、ローズマリーと同時期に生まれたため、普段はマリーが乳母として預かっている。今日はアデリナの体調が良いため、なるべくレオナと共に過ごさせようとこちらに連れてきたのだと言う。
 とんとん、とんとん、と背中を優しくたたく間に機嫌を直し、すやすやと親指を吸いながら寝だした弟に、レオナは微笑んだ。
 
「ありがたく存じます、お母さま」
「ええ。レオナ、どうか気に病まないでね」
「はい、大丈夫ですわ」

 もしかするとこれは、フィリベルトの思惑が作用した結果かもしれない。
 レオナはそう、楽観視することにした。なぜなら――

「雑事は、私の式の前に片づける、とお兄様が仰っていましたから」
「あら、まあ。じゃ、平気ね。それなら、一緒にドレスを選びましょう」

 アデリナの緊張が解かれたのを見てスイが
「……ローゼンって、やっぱりすごい……」
 と、思わず独り言を漏らした。


 
 ※ ※ ※
 


「タミーマ様って、私のこと信用しすぎですよね」
「あら、そう?」

 ユイの呆れた声に、タミーマはけろりと返事をした。

「ヒル兄様がずっとお側に置いているんだもの。当然だわ」
「……女としては、見てもらえてないですけどね」
「そうかしら? うーん。なら、ヒル兄様が、奈落の三神であったことは知ってらして?」
「はい。封印にも関わっておりました」
「そう。空神ジズは、疑り深くて、嫉妬深くて――嘘つき」

 タミーマは、いたずらっぽく笑う。

「兄様そのものね」
「え?」

 ユイが首を傾げる。
 とそこへ――

「くだらねえおしゃべりしてんじゃねえ! 立て!」

 山賊風の輩が数名、タミーマとユイの腕を乱暴に掴んで無理やり引っ張った。
 粗末な馬車の荷台。ささくれだった木がふくらはぎを引っかいて、その痛さに顔を歪めたタミーマは、後ろ手に縛られている姿勢のまま周囲を見回した。
 降ろされた場所は、マーカムの土地勘のないタミーマにとっては未知の場所に変わりないが、耳を澄ませるとせせらぎの音がした。川の近くということか、と予想した後で――サーディスとサービアが潜伏していたという王都郊外の小屋のそばにも小川がなかったか、と過去に目を通した報告書を思い返す。

 まさか同じ場所を使うまい、と思ったものの背後でユイが息を呑んでいる。まさか――

「入れ!」

 森の中にある、木造の狩猟小屋。
 簡易的な木のテーブルに四脚の椅子があるダイニング、その奥にはロッキングチェア。
 キッチンはしばらく使われていなかったのだろう、埃っぽい。

「やあやあ。お美しいお二人! ようこそ」

 でっぷりとした腹を揺らす、太陽神殿の司祭服を来た中年男性が笑顔で迎えた。
 マーカムに似つかわしくないその出で立ち――灼熱の王国アザリーで快適なように、多少露出が激しいのだ――に、思わずタミーマは顔をしかめる。

「どなたかしら?」
「面識はございませんがね。彼のことはご存じでしょう?」

 促されて、部屋の奥から恭しく出てきたのは――

「ハリー!」

 かつて死蝶に侵され、タウィーザの暗殺をもくろんだ、アザリーきっての間諜。改心してマーカム王立学院の調理人として従事している彼が、ここにいる。
 タミーマの声に微動だにせず、頭を下げ続けるハーリドの代わりに、
「彼は調理人などに収まる器ではないのでね」
 と粘着質のある声で言う男に、タミーマは鳥肌を立てる。が、もちろんそれは悟らせない。
 
「あら。ということは、ハリーの昔の上司? ご本人自らお出ましになるだなんて。よっぽど自信がおありなのね?」
「ハリーなどという、汚らしい名前で呼ぶな!」

 だん、と男はテーブルに拳を叩きつけた。

「ハーリド! 拘束しろ!」
「っ」
「聞こえぬのか? 兄の形見が、欲しかろう!」
「……はっ」

 タミーマは、軽く頷いた。全て了解した、とハーリドへ伝えるために。
 
 ゼルの存在を前国王に信仰心でもって伝え、命を落としたハーリドの兄。
 闘神ゼルとまともにやり合えば、痛い目を見るのは明らかだ。ハーリドを脅迫して戦闘力のないタミーマ、かつ警備が脆弱なマーカム訪問時を狙ったということか。しかも、ローゼン公爵令嬢の結婚式を控えている今、派手な動きはできないのを見越している。
 そこまで思い至ってから、砂漠の王国の王妹は微笑む。
 
「ハーリド、喉が渇いたわ。それから、ここは埃がすごわね。具合が悪くなりそう。少しでいいから窓を開けてくれないかしら」
「かしこまりました」
「おい、何を」

 不満げな司祭に、ハーリドは怜悧な目線を向ける。
 
「タミーマ殿下のご無事が担保されなければ、物事は進みません。わたしにお任せいただきたい」
「ふん」

 ユイが隙を見て、場所を知らせる闇魔道具を、窓の隙間からそろりと外へ放つ。
 救出は時間の問題、ならばタウィーザが欲しがっていた、神殿と前国王派が繋がっているという証拠をこの男から引き出す――タミーマはそんな計算をしつつ、怒りを沸騰させた闘神を想像してしまい、身震いするのだった。

 
 
 ※ ※ ※



「根回しは済んだから、安心して欲しい」

 ティーカップを傾けつつ言い切る、フィルベルトの目の前で戦慄するのは、レオナ、ルスラーン、そしてゼルだ。

「お兄様?」
「フィリ、あのさ」
「どういうことだ?」

 再び、ローゼン公爵邸のガーデンを望むバルコニー。
 明日には王宮入りを控えているレオナとルスラーンは、ゼルを呼び出したフィリベルトに従ったわけだが――

「説明しとらんのか? 相変わらずというか、なんというか」

 そこへ加わったのは王国宰相兼ローゼン公爵家当主のベルナルド。
 背後にはヒューゴーが立っている。
 
「詳しく聞かせて欲しい。タミーマは無事なのだろうか」

 ゼルが緊張した声で尋ねると、ベルナルドが頷く。
 
「もちろん。フィリベルトが一日で全部解決させたぞ。本当に末恐ろしい息子だ。公爵家だけではもったいないな。宰相も」
「いやです。めんどくさい」
「だめかー。そんなにフランといちゃいちゃしたいか~」
「はい」
「だよな~。俺もアデリナといちゃいちゃしてたかった~」
「今からすればよろしいかと」
「うん。する」
「ちょ」
「えっ」
「うは」

 フィリベルトは、しれっと紅茶を飲み続けている。どうやら話す気はなさそうだ。
 見かねたヒューゴーが助け舟を出す。

「ゼル殿下。タミーマ様は、レオナ様の結婚式には必ず戻られます。ご安心を。ただそれ以上をここで話すと、事態がどうなるか分かりませんので、言えないだけなのです」
「ヒューゴー」
「は」
「……友人として、信じるぞ」

 ニヤ、と侍従は笑って応える。

「おう。友人として、約束する」
「けど、俺はまだ根に持ってるからな」
「ん?」
「既婚者で年上なのに、同級生だって騙してたことだ」
「げ」
「次騙したら、容赦しねえ! いいな!」
「はは。分かってる」

 そのやり取りを見守っていたフィリベルトは、優しく微笑んだ。

「ザーラ嬢にも、新たな縁談を持ち込んでおいた。ゼル君はフラれた形にしておいたよ」
「は?」
「女性の名誉のためだし、良いよね」
「……恩に着る」
「えっ、でもあんなにゼルのことっ」

 レオナが驚愕すると
 
「ザーラ嬢は、良くも悪くも、貴族のご令嬢だよ」

 フィリベルトが眉尻を下げる。

「アザリー王族と同等なご縁があれば、それでいいのさ」
「あー! わかった。わかったぞ! やってくれたな!」

 ルスラーンが額に手をやる。

「おま、よりにもよって! まあ、うん、そうするしかねえよな! しれっと俺の仕事増やしやがって! くっそ、あったまいてえ!」
「ルス!?」
「くっくっく。近衛筆頭としては、そうだろうな」
「だーもう! 俺もそうだけど、ジャンルーカがぜってえキレる。知らねえぞ?」
「そこは騎士団でうまくやっといてくれ」
「あーあ……どうせジョエルは面白がってんだろ」
「正解」
「え? え?」
 
 事態を飲み込めていないのは、どうやらレオナとゼルだけのようだ。
 ふたりで顔を見合わせ――同時に首を傾げた。
 
「ま、そのうち大々的に発表されるさ。さあ、そうと決まれば帰った帰った。今日は娘と水入らずで過ごす最後の夜なんだからな!」

 ベルナルドが立ち上がって、手をしっしっと振る。

「え、閣下。まさか俺もすか?」

 ルスラーンが抗議すると
「当然だ! まだ娘はやらんぞ!」
 一蹴された。

 ダークロードスレイヤーを足蹴にする宰相、強い! とヒューゴーは密かに戦慄した。

 
 
 ※ ※ ※ 
 

 
「し~ごとはじみ~じ~みじみ~~~♪」
「ジョエル……その歌何とかなりませんか」
「え~。いいじゃん、ジャンったらー。それより見てよこれー」

 騎士団本部の詰め所で、騎士団長であるジョエルと、副団長であるジャンルーカが、ある書類を覗きこんでいる。
 美麗なふたりが密着している姿に、周りはなぜかそわそわチラチラと視線を投げかけてしまうのだが、ふたりはおかまいなしだ。
 
「うわぁ」
「ねー。ルスが聞いたら、キレるよねー?」
「そうですね。私も今、若干キレてます」
「キレたジャン、怖いもんねー。また椅子蹴っとくー?」
「おや。根に持っているんですか?」
「ううん。見たいだけー。ねー?」

 ジョエルが顔を上げて周りを見渡すと、なぜか団員たちがキラキラした目で頷いている。

「はあ。なんなんですかそれ。蹴りませんよ」
「残念ー! こんな綺麗な顔でキレられると、ゾクゾクするよねー」
「言われた私がゾクゾクしてますけどね。気持ちが悪くて」
「うは。嫌われちゃったー」
「おい。何をいちゃいちゃしているんだ」

 そんなふたりの背後から、ヒヤリとした低い声がした。

「ザールくーん!」
「……ジャン殿、何か問題でも」
「ええ。こちらの通達書をご覧ください」
「ちょおー! 無視、ひどい!」
 と言いつつも悪びれないジョエルを、ジャンルーカは
「それよりこれ、いつ全体通達します?」
 すぐさま平常運転に引き戻す。
 
「えっとね、あー。明後日?」
「なるほど。レオナ嬢の結婚式を終えた後、ですね」
「邪魔したくないしねー」
「それもそうだな」
「かしこまりました。警備はラザールと私にお任せを」
「うん。ごめんねー。妹の晴れ舞台だからさー!」
「わかっている。いよいよか……」

 ラザールが、窓をみやる。

「だねー! 世界の救世主と薔薇魔女の結婚式。歴史に残るよねー!」

 明るいジョエルの声に、ジャンルーカとラザールは顔を見合わせて、笑ってから言った。
 
「ええ。ですがその前に」
「掃除してくる」
「うん。そっちも任せたー!」

 ジャンルーカが返事代わりに、帯剣をチャキン、と鳴らした。
 ラザールが応えるように、杖を軽く振って色とりどりの光を出して見せてから――ふたりして並んで颯爽と去っていく。
 
「あーあ。意外と団長って暇ぁ~~~~」

 それを見送ってから詰所のカウンターに顎を乗せるジョエルに対し
「なら、これ全部サインください」
 事務員が、無慈悲に大量の書類をドン! とその目の前に置く。
 
「うええ~~~ん! し~ごとはじみ~じ~みじみ~~~!」

 泣き声を響かせながら、ジョエルはそれを持ってすごすごと団長室に戻った。

 

 ※ ※ ※ 

  

「えーっとえっと、はじめまして! キーラです」
「ごきげんよう、キーラ殿下。どうかそんなにかしこまらないで」

 マーカム王宮の中庭には、立派なガゼボがいくつかある。
 そのうちの一つで、小さなお茶会が催されていた。

 マーカム初訪問の、ブルザーク帝国皇帝の妹であるキーラに一目謁見しようと、次から次へとお伺いが舞い込んで疲弊していた、
 それを聞いたガルアダ王国のカミーユが、気を利かせて「僕が先約だよ」と連れ出したのだ。
 
「会えて嬉しいな!」
「カミーユ陛下、光栄です。あの、その、わ、わたし、マナーとか全然」
「あはは! 何を隠そう、僕もだよ!」
「へ!?」
「ねね、この紅茶美味しいよ! 飲んでみて!」
「! ほんとだ、薔薇の香りがします」
「レオナ嬢の差し入れだよ」
「ふわ~すごい~。あんなにお綺麗で気が利いて賢いって、最強ですね……」
「はははは! 確かに最強だ! キーラ殿下っておもしろい! キーラちゃんって呼んでも?」
「もちろんです!」
「僕は、ミユ君でいいよ~」
「ミユ君!」
「あー、後ろの護衛さんが、ひょっとしてご主人? 大丈夫だよ~! 僕にはちゃんと、愛する妻がいるから!」
「げげげ。レナートってば! 夫が失礼をっ」
「いいよいいよ。愛されてるって、いいよね~」
「はわわわ」
 
 すると、少し離れた庭を散歩する、サシャとロランが目に入った。
 
「あれ。サシャ外交官だね? せっかくだし誘っちゃう?」
「良いんですか?」
「いいよいいよ~。おーい!」
「陛下。連れてまいりますので」

 レナートが軽く礼をしてから、素早く二人のもとへと向かう。

「わあ。キーラちゃんのご主人も、相当強いね~。さすが」
「え、歩くのを見ただけで、分かるのですか?」
「うん」

 カミーユはあくまで屈託なくニコニコとしているが、やはり油断しては危険なのだろうな、とキーラは少し身構えた。

「……うん。それでいい。権謀術数渦巻く貴族社会、ましてや帝国皇帝の妹だからね。すぐ仲良く、なんて考えちゃ駄目だよ」
「ミユ君って」
「ん?」
「すっごい良い人ね!」

 キーラが勢いよく立ち上がって、カミーユに握手を求めてきたので、圧に負けて応じると――
「うえ!? なんか悪魔戻ってきた!」
 ザンザンザン、と眉間に深く深く皺を刻んだレナートが、渋面で戻ってくる。その恐怖に、思わずカミーユはのけぞった。
 
「堅物って呼ばれてますから。えへへ」
 
 動じないキーラに
「なんていうか、さすがあの皇帝の妹だよね~」
 と苦笑するカミーユは、レナートの後ろのサシャに気安く手を振る。
 
「デートの邪魔してごめんね? せっかくだからさあ、塩胡椒貿易協定について話したくって~」
「! そそそそれはぜひとも!」

 促されて素直に席に着くサシャ。一方で、その背後に立つロランにもカミーユは声を掛けた。
 
「そう睨まないで、『銀狐』さん。キーラちゃんと一緒に書記官してるんだったよね」
「は。お初にお目にかかります。ロラン・ビゼーと申します」
「サシャ君、よかったね。『麗しの蒼弓』に負けず劣らず、きれいな旦那さんだー。でも中身はどうかな?」
「ぴ!? ひえええああああの!」
「……いかようにでも、ご判断ください」
「安易な煽りには乗らないんだね。フフフ。楽しい」
「もったいなきお言葉」
 
 のちに『中庭会談』と呼ばれるこの強固な経済の結びつきによって、大陸四国は、以降数百年の結束を実現するのであった。


 ――その会談中のキーラとサシャは「冷たい空気! 怖い!」とただただ、ガタガタ震えていた。
 
 
 
 ◇ ◇ ◇


 お読みいただきありがとうございました。
 この小屋は「〈83〉砂漠の王子16」に出てきましたね。懐かしいです。

 さて、ザーラ嬢のお相手は、ご想像つきましたでしょうか?
 後編も、どうぞお楽しみに!
 
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