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最終章 薔薇魔女のキセキ
【なろう累計30万pv達成記念話】とある侍従見習の独白
しおりを挟む薔薇魔女に目を留めて頂き、ありがとうございます。
なんと、累計30万pv達成です!
お読みくださって、本当にありがとうございます!m(_ _)m
最終章、なかなか辛い展開が続いていますが、お付き合い頂いてほんと感謝しかないです……
あまり流れを壊すのも良くないですし、かといってシリアスだらけも私のメンタルが持ちませんので笑
息抜きに書いてみました。もちろん、読み飛ばして頂いても本編にまったく支障はございません。
引き続き『薔薇魔女』を宜しくお願い致します♡m(_ _)m
※ ※ ※
おはようございます、テオフィルです。
元々はボドワン子爵家の三男だったんだけれど、訳あって平民になりました。宜しくお願いします。
あ、心配いらないですよ! 学院卒業後は、なんとローゼン公爵家の侍従になることが決まってるんです。僕あんまり詳しくなくて知らなかったんだけど、『公爵家の侍従』て、本当はちゃんとした身分と、何人もの紹介人と、身元保証人がないとなれないらしいです。でも、フィリ様が色々手を尽くしてくれて……正式に。今は見習としてローゼン公爵家に出入りしています。お部屋まで頂いて……本当に頭が上がらないです。
実は僕、ヒューゴーさん、じゃなかった、ヒュー兄さんにすごく憧れてます。
平民の、しかも孤児院出身で、元冒険者で、公爵令嬢の侍従兼護衛で、ドラゴンスレイヤー、ってすごすぎないですか?
全然そんな風には見えなくて、所作とか完璧で強いし、レオナさんの信頼も厚いし、明るくて優しい。ああいう人になりたいって言ったら、マリー姉さんが必ず困ったように眉根を下げるんです。夫としては、イマイチなのかなあ?
あ、ヒュー兄さんとマリー姉さんが夫婦なのは、実は内緒なんですよ。っていうのも、ヒュー兄さん(本当は二十五歳なんです! 童顔!)がレオナさんの護衛で学院に潜入するのが決まった時、レオナさんに言い寄ってたのが、ゼルさんなんです。
ゼルさんは、アザリー王国の第九王子っていう身分を、最初は隠してたんだけど……途中から明かして、開き直って、レオナさんに告白までしちゃって。
あの勢いで押し切られたらマズイから、ヒュー兄さんが『対抗馬』として未だに頑張ってます。お陰でゼルさんは、ヒュー兄さんをライバルだ! と認識して、毎日ワイワイ、何だかんだ楽しそうに戦ってます。
ジンライだって、途中から「ヒューゴーさんて、ほんとに俺らと同い年? なんか、違うような……」て気づいたのに、ゼルさんたら……ま、そこが良いところなんだけど。
そんな僕は今、マーカム王立学院に通っていて、基本的にはゼルさんの寮の部屋に住んでます。
ゼルさんは、コンラート伯爵家の養子で、今はアザリーの王子っていう身分だから、それはもう豪華な部屋なんです。
広いし、設備もすごいし、なんてったってシャワーとトイレも二つずつ付いてる! というのも、メイドや侍従を住まわせる学生のため。だから同室っていっても、かなり快適なんです。
その代わり、部屋の維持もものすんごく大変です!
今なんてさらにディートさんていう、ブルザーク帝国の陸軍大将子息まで短期留学で来ちゃって……まさか同じ部屋に住むなんて思わなかったから。その大変さは、二倍どころじゃない!
洗濯も掃除もまったくできない、ライオンと虎を同時に飼ったことある? すごく食べるし、すごく寝るし、散らかすし、ぷいってどこかに行ってくれたと思ったら、構って構ってってじゃれてくるし、ああもう! てなるんですよ。
「テオこわい」
「テオ、怒ったか?」
しょっちゅうそんなこと言う割に、全然反省してないんですよ。どうしたら良いのかなあ。
ジンライなんて、ニコニコ顔で全部基本スルーしてるの、僕知ってるんだからね。僕が構わなかったら、放置なんだよ!? 分かってる!? また寝間着脱ぎっぱなし! 臭いの着たいなら良いけど! ゼーハー。なんか毎日そんな感じで接してたら
「おかん」
「おかんだ」
「おかん、っすねー」
て呼ばれるようになったんです。
おかん、ていうのは、ゼルさんのお兄さんのヒルバーア殿下と、僕の隠密の師匠ナジャさんの故郷の言葉で、「お母さん」て意味らしいです。不本意!
たまーにレオナさんに愚痴ると
「まあ、テオったら。面倒見がよくて優しいものね。みんな甘えてるのね」
て笑われるんですよ。
なんかレオナさんにまで「おかん認定」されてるんじゃないかなー。僕、これでも男なんだけど……
「良いじゃない。最近テオ、モテてるわよ」
てシャルさんは言うけど、違うんですよ。僕を通じて、ゼルさんやディートさんとお近づきになりたいんです。そういうの、見え見えだからやめた方が良いですよって、何人に言ったことか……女性の「キッ」ていう睨み、ほんと怖いですよ。あれ、図星て分かってるんですよね。なら直せば良いのにってまた愚痴ったら
「そうねえ……でもほら、女性は勇気を出して殿方に直接何かをするのが、難しいところもあるわ。だからああいう風に頑張るしかないの。でも、変わらないとね?」
てレオナさんが、寂しそうに笑うんです。
――ルスラーンさんに、なかなか気持ちを伝えられないもんね、レオナさん……傍から見てても、想い合ってるのが明らかなのになあ、て思うんだけど。ルスラーンさんも、レオナさんには遠慮してるもんね。なにせ公爵令嬢だもんね、そっちも難しいよね。うまくいくと良いのになあ。
「そういうテオは、どなたかいらっしゃらないの?」
てレオナさんは言うけれど、うーん? 正直なところ、あんまりまだ女性に興味がないっていうか。家で母親に怒鳴り散らされまくってたからなあ。なんかうんざりっていうか。あ、でも今はレオナさんやシャルさんのお陰で、女性ていう一括りでは嫌悪してないです。ほんとに。
どっちかというと、やりたいことや覚えたいことが盛りだくさんすぎ? だって、侍従てすごく大変なんですよ! マナーとか所作とか、知識とか、もうてんこ盛りすぎて。しかもナジャさんに「隠密修行したる」て強引に連れ去られて……あ! 聞いてくださいよ、こないだなんて、いきなりマーカム郊外のどこか分からない森に、身一つで放り出されたんですよ! それで二日以内に帰って来いって、耳を疑いましたよね。
何処か分からないどころか、無一文で武器すらないし……結局石を魔法で削ってナイフ作って、森の中の毒草見つけて野獣を狩って、火起こしして食べて、星を見ながら走って帰って来ましたけどね。
ヒュー兄さんなんてそれ聞いて「え? 国内だったんだろ? 優しいな」ですよ。はあ。てか、手ぶらで国境てどうやって超えるんです? て気づいたら、ナジャさん「それはもうちょい後やな」だって! 結局やらすんかい!! ですよ。ま、僕のことはいいんですけどね。
最近のジンライは、誰よりも先に婚約して、なんか毎日焦ってるのが心配です。早く一人前にならなくちゃ、とか、修行しなくちゃ、とか、たまに思い詰めて潜り込んだベッドから出てこなくなって――ペトラさんがもうすぐ帰国するから、焦るのは分かるけど、僕からしたらものすごく頑張ってるけどな?
ベヒモスの時なんて、魔石届けに行ってビックリしましたよ。ジンライたった一人であの結界魔道具を、あの修羅場の中、維持し続けたんですよ! 動揺して魔力をたくさん消費してしまったり、倒れたりすることも、近衛筆頭のジャンルーカさんは想定してたってすごく褒めたのに……当の本人は、「その場に居ただけで何もしてない」って萎縮しちゃって。
戦っていないことが無力感になるの、僕すごく分かるから「ねえジン。ジンがあの場に居なかったら、を想定してみようよ」て言ってみました。机に、紙とペンを用意して。僕が裏山の状況を全部確認して、連絡係したから、戦力分布とか書いて説明してみましたよ。
「ほら、ね? あの結界がなかったら、騎士団員にも学生にも、戦闘不能者がたくさん出たよ」
「戦闘不能……」
「戦えないだけならまだ良いけどね。死者、て言い換えた方が良い?」
「!」
「それでも、居ただけ、て言える? 少なくとも、ジンライに救われたって感謝してくれる人の言葉は、きちんと受け止めるべきじゃない? 逆に失礼だよ。謙遜も良いけどね」
偉そうに言ってごめんね。
でも、君は僕の自慢の親友なんだよ。
君自身が君の価値を知らないなんて、悔しいんだ。
「ありがとう、テオ」
「ううん」
ジンライは、ようやく顔を上げてくれました。そして――
「俺、ゼルさんの脚……作りたい!」
と。ジンライの鍛治の腕と、ペトラさんの魔道具の腕を組み合わせて、魔力で動く義肢を作りたいんだって! さすがジンライだって、思いませんか?
「うん! 僕、応援するよ! 魔石とか素材とか、なんでも採ってくるから、言って!」
それからは、内緒で色々作ってるんです。ほんとに、内緒ですよ?
あ、いけない、そろそろ修行の時間です。
ナジャさんもそうだけど、双子のユイとスイも、実はすごく強いんですよ。産まれた時から、暗殺者として育てられたらしいです。女の子なのに? て言ったら、「女の方が油断する」「ベッドに誘って、永遠に目覚めさせない」て割と背筋が寒くなることを平気で言うんです。
だからナジャさんが「テオ……こいつらに世間の常識ちゅうもんを教えたって」て頭を抱えてて。ナジャさんも、常識はないから……また僕にこういうの、丸投げされるんです。
じゃ、そろそろいきますね!
毎日こんな感じで大変だけど、大好きな人達や、尊敬する人達がこんなにいるから、すごく幸せですよ!
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お読み頂き、ありがとうございました!
明日は再び本編に戻ります。
さて、破天荒王太子……何を語るでしょうか?
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