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第一章 世界のはじまりと仲間たち
〈閑話1〉青竜と死に至る病
しおりを挟むここまでお読み頂き誠にありがとうございます。
この回は、閑話になります。読み飛ばして頂いても本編に影響ございません。
とはいえ、とっても気合いを入れて書きましたドラゴン戦です。1万字あります。
もしもお楽しみ頂けたら……すっごく嬉しいです!
よろしくお願いいたしますm(_ _)m
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「準備はいいかなあー?」
んん、と背を伸ばしながら、ジョエルが問う。
「ああ」
「ウス」
「ええで~」
全員から返事があったのを確認し、
「ほんじゃま、ぼちぼちやりましょー」
ジョエルは、複雑な紋様が削りこまれた巨大な石扉に歩み寄る。手には、ここに至る寸前に屠ったキマイラから獲た鍵。
「まずはご挨拶、ねー」
「私が強化魔法を全てかけ終わるまで動くなよ」
「……ッス」
「ういうい~」
鍵を差し込まれた扉は、ガチン、と何かが嵌った音がし。
ゴゴゴゴゴ……
ゆっくりと開き始める重たい扉の間から、冷気が溢れてきた。鼻の奥がツンとする。
ヒューゴーは深呼吸を繰り返し、白くなる息を眺めながら、高揚する気持ちを懸命にコントロールしていた。
目の前に、青い鱗に覆われた巨大な魔獣が現れた。
まだ目は閉じている。
丸まって寝ているようだ。その背に畳まれている翼で、胴体と後脚を覆っていて、呼吸の度に大きく上下している。
後ろ足の爪は、その一つだけで成人男性一人分くらいの大きさがあった。
ヒューゴーは、まさか本当にドラゴン討伐に連れてこられるとは、と目の前の存在を見て苦笑した。
※ ※ ※
――話は十日前に遡る。
ローゼン公爵家令嬢、レオナの誕生日パーティの後、公爵邸まで『お叱り』にやって来た王国騎士団副団長が、散々弟弟子である公爵家侍従と戯れた後に
「八日後の朝迎えに来るから、できる限りの戦闘装備で準備よろしくー。あ、馬もねー」
「はぁ!?」
「じゃーねー」
「ちょ、どういうことだ!」
言い捨てて帰っていった。
――きっちり八日後の朝。
「じゃ、行くよー」
「うおぃ、せめてどこに行くか教えろ!」
「えへっ、お楽しみー」
「……うぜぇ」
「番犬君は黙ってついてくればいーのー」
――ぶっ殺す!
「はは! それだけ殺気あれば大丈夫ー!」
副団長――ジョエルの栗毛の愛馬は、アルクス。
補助の魔道具を付けているとはいえ、疲れ知らずで、三日三晩走り続けられる。
公爵家の厩番から借りた馬で侍従――ヒューゴーが必死に食らいついていくと、野宿を経て二日とかからず、ある宿場町に着いた。
「ここは……」
さすがに分かった。
破邪の迷宮で有名な場所、つまりは。
「ブルードラゴン、倒しに行こうねー」
「聞いてねぇ!」
「ビックリした?」
ビックリどころじゃねえ! と叫びたいのを我慢したヒューゴーは、思わず頭を抱えて蹲った。
「おい、大丈夫か?」
頭上から降ってきた声は、ヒヤリと冷たいが心配げだった。
「ラジさんすか? ……大丈夫っす」
蹲った姿勢のまま顔だけで見上げると、ラジと呼ばれた王国魔術師団副師団長ラザールは
「ならいいが」
とふっと笑う。
「調子悪かったら、寝て待っとってもええで~」
背後からの声に、あまりの驚きで、今度は思わずガバッと立ち上がった。
「おまっ、いつ帰って来た!?」
「今日、呼び出されてん」
と、彼はジョエルを親指でちょいちょいと差す。
「『蛇』の任務終わるって言うからさー、ちょうど良いかなって思ってー」
全然悪びれる様子のないジョエルに、はあぁー、とヒューゴーは大きな溜息をつく。
二人パーティならどうしようかと思ったが、四人パーティ、しかもほぼ王国最強メンバーである。これなら問題ない。
「じゃ、今日は宿屋でゆっくり休んで明日の朝から潜ろー」
野宿だったのでそれは助かる、とヒューゴーは素直に従った。
そして、翌朝。
冒険者ギルドには『素材収集』ということで届け出て、迷宮に入る。ジョエルとラザールは、公的な巡回任務もあるため、あくまで私的なものという届け出が必要だった。
パーティメンバーは、王国最強弓のジョエル、同じく最凶魔術師ラザールに加えて、前衛ヒューゴー、そして『蛇』と呼ばれた、
「わいは弱体化要員てことでええやんな?」
「うん、あと破邪の魔石狙いだから。チャンスあったら盗んどいてー」
「うっは、人使い荒すぎやで自分!」
「レオナにあげるんだよー」
「……ならしゃーないかあ」
の四人である。
「回復薬を配っておく」
ラザールが、全員に小瓶を一本ずつ手渡した。
「うわー。これエクストラポーションじゃん。散財したねえ」
ジョエルが驚くと
「奴は攻撃力が高いからな。保険だ」
ラザールは、眼鏡をくいっと指で押し上げながら答えた。
それが、彼が照れている仕草だと知っているのは、ジョエルだけだ。
ちなみに、ドラゴン討伐には事前の届け出は不要だが、討伐記録をギルドへ持って行くと、ドラゴンスレイヤーとして登録され、冒険者ギルドで破格の待遇を受けることができるようになる。国王からの叙勲対象でもある。
さらに、ドラゴンを討伐することで手に入る特殊なスキルがあり、この王国でそれを獲得しているのは、たった四人だけ。その内の二人が、ジョエルとラザールであった。
「今回は申し訳ないけど、記録なしでー」
ごめんね二人とも、とこの時だけはジョエルが申し訳なさそうにした。記録してしまうと、仮に破邪の魔石が手に入った場合、国王に献上しなければならなくなる。あくまで討伐は非公式にする必要があった。
「かまへんで、興味ないし」
「自分も平気っす」
「ありがとー。じゃあはい、言い出しっぺから一言どうぞー」
ジョエルがラザールを促したので、二人は驚いた。
「えっ」
「ラジはんがかいな? まさかやでえ」
「んん。では怪我のないように。宜しく頼む」
「はぁ」
「へいへい」
「じゃー、しゅぱあーつ!」
破邪の迷宮は地下十階構造。
ドラゴンの棲処としては難易度はそれほど高くないので、挑戦する冒険者が後を絶たず、宿場町も儲かっている。
が、最奥の部屋にいるブルードラゴンは、攻撃力が非常に高く、しかも氷のブレスで部屋が丸ごと凍るため、倒すにはかなりハードルの高い竜種。討伐記録は、なんと百年前で止まっている。
全ての竜種は、討伐されてもすぐに次代のドラゴンの卵を産み落とす。討伐記録が出たという噂を聞きつけて、幼竜を狙いに来る冒険者もいる。だが、残念ながらあっという間に成竜になるし、大体が門番に勝てないのだ。
「久しぶりに来たけど、変わってないねー」
ジョエルとラザールが以前倒したのは、ブルーと異なる竜種だが、騎士団、魔術師団として定期的に各地の主な迷宮は巡回している。もちろん冒険者の邪魔はせず、王国の治安維持に必要な範囲で、だ。
「ふむ……宝箱は触れずに行くぞ」
「りょうかーい」
冒険者で迷宮探索を生業にしている輩達のために、基本は置いていく。
「あかん! 今気づいたんやけど、ほならわいの報酬て何?」
ザシュッと狼系の魔獣を切り伏せた彼は、愕然とした。
「ぶふ、気づいちゃった?」
ジョエルは確信犯である。
「宝箱触られへんのやったら、タダ働きやんけー! アイターやらかしたー、わいとしたことがっ」
口やかましいが、彼の背後には魔獣の死骸が多数散らばっている。その魔石を拾い集めながらラザールが
「……そうか。では私が出そう。いくらだ?」
と申し出ると
「ラジはんのマジ返し、相変わらずきっついわー」
いらんいらん冗談やってー、と彼は手を振った。
「そん代わり、レーちゃんに会わせてえや」
「……フィリが良いって言ったらねー」
ジョエルが苦笑しながら答える。
レーちゃんというのは、彼が勝手に呼んでいる、レオナの愛称だ。
「っしゃ、頑張る!」
「はは、相変わらずだなあ、お前」
「ヒューは毎日おうとるからええやんけ。うらやま。かわろか?」
「代わるわけねーだろ」
「せやな、知ってた」
こんな雑談をしながら、サクサクと地下九階まで進む恐るべきパーティである。ちなみにここまでラザールは、一度たりとも魔法を唱えていない。王国魔術師団副師団長が、完全に魔石収集係である。
「さぁて。ここからは気合い入れてねー? 門番倒すよー」
ブルードラゴンの手前に鎮座するのは、獅子の頭と牝山羊の体、大蛇の尾を持つキマイラである。
このように、各ドラゴンには眷属として門番がおり、最低限これを倒せなければ、ドラゴンを見ることすら叶わない。
この大陸に生息する竜種(眷属)は、レッド(グリフォン)、ブルー(キマイラ)、ホワイト(オルトロス)、ブラック(ケルベロス)の四種と言われているが、定かではない。その上位種である真竜もこの世界のどこかにいる、と言う者もいる。
キマイラは、眷属の中では攻撃力が低い代わりに、強烈な幻惑を使ってくる。精神感応作用で、一番注意が必要なのが同士討ちだ。
「「「ジョエルだけはかかるなよ」」」
「ほおーい!」
ジョエルのドラゴンスキルだけは、敵に回したらパーティが瞬時に全滅する。
ラザールが、この迷宮内で初めて懐から杖を出した。
「シールド・マジックバリア・アタックブースト・ショットブースト・レジストポイズン」
一気に唱え終わると、
「……よし、行って来い」
最後尾まで下がった。本戦に備えて、ラザールの魔力を温存するため、できるだけ物理で倒さなければならない。
ジョエルが弓をつがえる。
見た目には石像にしか見えないソレに向かって。
「いっけー」
ビュンッ
――イギャアアアアアッ!
矢の痛みで無理矢理起こされた眷属が、怒りの雄叫びを上げた。空気がビリビリ震える。
獅子の顔が歪み、開いた喉奥に炎がちらちら見えた。
「いきなりかよ!」
ヒューゴーは一足飛びに距離を詰め、キマイラの気を自分に向けようと、剣を構えるや否や、首もと目がけて振り下ろした。
「避けろ!」
その頬をビュンッ! とジョエルの矢が掠めていく。
いつの間にか振り上げられていた大蛇の尾が、ヒューゴーをチロチロと見下ろしていたが、その左首をわずかに抉って、矢は壁に突き刺さった。
一方のヒューゴーは、剣筋を止めることなくキマイラの首筋をそのまま切った後、回転の勢いで身体を丸め、胴体を蹴って離脱した。
「爆ぜろっ」
タイミングを合わせたジョエルの魔力が、矢に通じ、壁ごと爆発する。
「綺麗やなぁ」
爆風に紛れて黒い影がしゅんっ、と獅子の顔の前に躍り出る。
「金やぁ」
うっとりしながら、彼はナイフをキマイラの左目に突き立てた。――キマイラの眼球は、金色だ。
イギャアアアアア――
突き立てたナイフから溢れ出る、濃い赤の霧を吸い、キマイラはめちゃくちゃに暴れまくった。ぱらぱらと天井から砂利が降ってくるくらいに、迷宮全体が揺れている。
「ラザール!」
ジョエルが叫びながら矢を連続で放つ。
肩に、脚に、足に、何本も刺さるが、動きは止まらない。
「ちっ……クラスィフィクションッ」
珍しく詠唱したのは、最上級の土属性弱体魔法。
うぞうぞと迷宮の床が動いたかと思うと、キマイラの足元が縫い付けられたようになった。
が、尾の大蛇は暴れまくったままだ。
「任せろ!」
ヒューゴーが、床を蹴って空中に飛び上がる。
両手で握りしめた剣を、袈裟斬りで思いっきり振り抜く。
ざんっ
ぬめった黒紅が、たちまちぶしゃあと視界を汚す。
ぬるべちゃり、と床に落ち――大蛇は絶命した。
イギャアアアアア!!
苦しみながら口を開けるキマイラの喉奥には、また炎がちらちら見えた。
――ごうっ
「下がれっ!」
ジョエルの怒鳴り声。
真横の太い炎柱が、一瞬でヒューゴーの眼前を焼き尽くしていった。
焦げ臭い。前髪が黒くボロボロと落ちた。
「あっぶねぇ~……」
「スレスレやーん」
からかわれ、ムッとするヒューゴー。
「うっせー」
「ジョエルに頼まれたもんは盗ったでえ。もう殺ってかまへんよ」
「はっや」
「ほなお先」
影が消えたのを見計らって、ヒューゴーは剣を構え直した。
「っし、本気出す」
「本気だったじゃーん?」
ジョエルが幻惑を警戒して下がる。
「もうすぐ拘束切れるぞ!」
その後ろからラザールががなる。
対峙するのは今、ヒューゴーのみ。
ビイィィイン――シュルルシュルルルシュシュ――
キマイラが、奇妙な音を上げる。
視界が歪み、花のような甘い香りが、フロアに立ち込めた。
「ラジはん、も少し下がりましょ」
波打つ黒い刃のナイフを逆手に構えた彼が、ラザールを庇うように立つ。
『黒蝶』と呼ばれる小刀で、彼は空気をことの如く切った。――そのお陰で、香りはジョエルどころか、ラザールまでも届かない。
「……来るで」
フォォオオン
ぐらり。
天井が、たわんで、落ちてくる。
床が、波打って。足がズブズブと埋まっていく。
――助けて! ヒューゴー!
遠くでレオナが、叫んでいる。
――怖い、この人、怖いよウ
泣いている。
深紅の瞳から、ボタボタと血の涙が溢れている。
――ヒューゴー、お願い! 怖いノッ!
この人達を殺し、ころ、ころ、コロロ……シテシテシテ――
「俺の主人はなぁ」
ぶおん、と剣に炎が宿る。
八相の構えから水平に、レオナの首を躊躇いなく、全力で一気に振り切って、
――斬る。
ザンッ――ぶおっ
……どしゃり。
切り口が黒く焦げた、獅子の頭が降ってきた。
「んなこと、ぜってえ言わねぇんだよ!」
幻惑が、解けた。
どっすん。
遅れて、牝山羊の巨体が倒れる。
ばしゃあっ
切られた頸から黒い液体が溢れ、石の床にじわりと広がっていく。
「ふう……」
「お疲れー」
ジョエルは軽口で言うが、表情はとても満足そうだ。
「ッス」
ヒューゴーは軽く剣を振って、炎を消した。
「なあ~、これ拾うの忘れたら、あかんのとちゃうん?」
笑いながら差し出されたのは、銀の鍵。
持ち手部分に世界樹『ユグドラシル』の紋様が刻まれており、鍵部分の先端にはラピスラズリが埋め込まれている。キマイラを討伐すると手に入る、ブルードラゴンの部屋の鍵だ。
「あ、わりぃ」
「僕が持っておくよー。この鍵にも価値があればねえ」
残念ながら一日経つと消えてしまう、幻の鍵なのである。そのため『ドラゴンを倒したぜ』と嘘をつく冒険者に対して『鍵は持っているか?』などと質問をして、見抜けるテクニックにもなっていたりする(冒険者ギルドの役職付きにしか知られていない)。
「思ったより、楽に倒せたな」
ラザールが水を飲みながら言う。
「これなら、想定より余裕がありそうだ」
「それはよかったー! ひっさしぶりに見たからさ、磔」
ジョエルが、ぽりぽりと携行食を齧る。レオナお手製の疲労回復クッキーの残りだ。
「えらいすんまへんでしたぁ。ジョエルの魔眼矢と相性良すぎやわ、あれ。毒が効きすぎたみたいやったわ」
「お目目ぐりぐりで毒注入する奴なんて、初めて見たっつーのー」
「にゃっはー、あれ高いねんで? レッドサーペントの毒やねん」
「えげつな……」
苦笑しながら、ヒューゴーは剣を拭いて、刃こぼれがないかを確認した。
「皆怪我はないか? なければ、休憩しながら戦術会議をしよう」
ラザールの提案に、三人は頷く。
雑魚ならまだしも、相手は知性の高い竜種である。
「基本的には、先程の門番と同じだが――」
――そして休憩ののち。いよいよ竜の棲処に突入したのである。
「世界の理は水、青きユグドラシルの使いよ」
ジョエルが、寝ているブルードラゴンに話しかける。
「破邪の加護を得るため、試練を与えたまえ」
まだ寝たままではあるが、グルルル、と喉が鳴る。
「シールド・マジックバリア・アタックブースト・ショットブースト・ヘイスト・リフレクション・アクアレジスト」
ラザールが、問答無用で強化魔法を一気に詠唱する。
これだけ一度に詠唱できるのは、王国魔術師団でも彼ともう一人しかいない。
「無理はするなよ」
「ほーい」
「ウッス」
「はいな」
グルゥ
パーティが戦闘態勢に入ったのが分かったのか、ブルードラゴンは目を開けた。ギョロり、と金の瞳と目が合う。案の定、歓迎はされていないようだ。バサリ、と翼をひと羽ばたき。ゆっくりと鎌首をもたげて――
グララアアアアアァァ!
――咆哮した。
「行くぞっ」
「あいさー」
前衛二人が一気に距離を詰めるのは、キマイラ戦と同様だが、
「今回の毒も、きっついでえ!」
と、『蛇』と呼ばれていた男が、まさに蛇の形をした曲刀二刀流で、後脚を切りつける。
その間ヒューゴーは、不知火を発動していた。火魔法の一種で、自身の幻を任意に増やせる、いわば分身の術だ。
ブルードラゴンは視界が翻弄され、攻めあぐねている。
が。
「あかん、やっぱ通らんかったわー!」
初撃の攪乱はうまくいったものの、刃が通らなかったようだ。ドラゴンの鱗は、物理攻撃も魔法も通りにくい。
ギャアアアアア!
ブルードラゴンは後脚を地団駄し始め、床が波打つ程の揺れが襲ってくる。とても踏ん張りがきかない。
「問題ねえっ」
ヒューゴーが寸分違わず同じ箇所を、力任せに袈裟斬りする。
「まだまだ!」
ジョエルが叫びながら、矢をまとめて番える。
右眼がぼうっと光り、その周りには、いくつもの小さな竜巻。
「合わせろっ」
ぐぐぐ、と弦を引く。
「「おう」」
即座に応じ、体勢を整える二人の前衛。
パヒュッと乾いた音がして、何本もの矢が風を切っていく。魔眼矢シルフィードは、いかなるものをも切り裂く、と有名だ。
「ダークネス・スロウ・パラライズ」
ラザールは、弱体魔法をかけ続けている。
ドラゴンは首を左右に振って全ての攻撃を牽制している。
――はたして、いくつかの魔眼矢が、硬い鱗に傷を付けた。
「うおおおおお」
ヒューゴーがドラゴンの身体を駆け上がり、傷の上から更に切りつける。
「アースアロー」
ラザールが、淡々とその傷を狙って、攻撃魔法を撃っていく。
ガアアアアァァァァ
少しずつ効いているようだ。
怒りの咆哮が、ビリビリと肌を震わせる。
ふと、尾が持ち上がった。
ブンッと振ると、それだけで風が皮膚を引き裂く。
ヒューゴーは、咄嗟に眼前で両腕をクロスさせて後方に跳び、防いだ。
「ヒューッ!」
ジョエルの叫び。
「ち、いかん」
ラザールが、咄嗟に魔法で土壁を作りまくるが、尾が揺れるだけで子供が砂場で戯れに壊すくらいに、全てが脆く崩れ去っていく。
「慌てんなやぁ、らしくないで」
彼の言う通り、ヒューゴーの両腕は血に染まってはいたが、動かせないほどではないようだ。ドラゴンの気を自身へ向けるため、わざとがむしゃらに攻撃を続けているから、血しぶきが派手に飛んで重傷に見えている。
ドラゴンは、尾で殴り、首でなぎ倒そうと試みるが、全てを避けられイラついている――やがて痺れを切らせ、バサリ、と翼をはためかせた。
まずい、飛ぶ!
全員、背筋にヒヤリと汗が流れ落ちるが、一人ニョロリ、と舌舐めずりをしてから叫ぶ男がいた。
「今や! ――呼べやぁ!」
「リンジーッ!! ナーガッ!!」
「っしゃ」
ぶおん、と彼の周りが黒く染まる。
――名封じは、王国東の辺境にある、小さな山村由来の、隠密のスキルだ。自身の名を封じることで魔力を貯め、指定した人間に解錠語とともに意図して呼ばれることで、解放する。そのため彼の日常の通り名は『蛇』。任務中のコードネームでもある。
名封じは、自身では解除できないのが難点だが、その代わり封じている間の魔力は上限なく貯まっていく。才能のない村の子どもは、この術でもって主人の命に従い、抱えきれない程の魔力を爆発させることによって『人間爆弾』となり、要人を暗殺することを生業としていた――
「影縫い」
ドラゴンの尾を、たちまち黒く太い糸ががんじがらめにしていく。
それを見てヒューゴーは、ボロボロになった自身の剣を投げ捨て、エクストラポーションをグイッと飲み、雑に瓶を放りながら下がる。その瓶一本あたり、騎士(役職なし)の平均給与の二ヶ月分なのだが。
「交代やな」
「おぅ」
蛇、もといリンジーは、尾を縫い付けられさらにイラついているドラゴンに、悠然と向かっていく。
「わいのスキルじゃあ、あんさんは倒せまへんけど」
べろりと蛇剣を舐める。
「ごっつういやぁなことはしてくさかい、覚悟しいやぁ」
それを見て、スイッチの入ったリンジーは相変わらず禍々しいな、と三人は苦笑した。
そこからのリンジーは、まさに悪魔だった。
毒霧を振りまきながら、ありとあらゆる呪いを試みていく。
この世界で希少な闇属性持ちの彼にしかできない、闇魔法の数々。そのほとんどが禁忌として学ぶことすら許されていない。
指で複雑な形の印を結んでは、呼吸と共に発せられる魔法、というか呪法が、彼の持ち味。故郷で赤子の頃から仕込まれてきた、数々の禁呪である。
グギャアアアアア――
唾液を撒き散らしながら苦しむドラゴンは、その顔の周りを黒霧で覆われており、引き剥がそうと必死でもがいている。
「あかん、――魔力切れてもた」
肩を大きく上下させ、脂汗の浮かんだリンジーは、後退して拳を突き出す。
「けど予定通り、月蝕だけは入れたでえ……死なんと思うけどな」
「さっすがー! ……後は任せろ」
ジョエルが目を閉じ、集中し始める。
「こちらはいつでも」
ラザールが、まるで指揮をするかのように、構えた杖の先で空中に四角を描く。
月蝕とは、最上級の闇属性弱体魔法。生物のエネルギーを徐々に失わせ、最後には死に至る呪いである。ドラゴンに入るかは、賭けだった。
グル、グルルルルーッ!
どしゃっと地面を蹴って、ドラゴンがついに飛び上がった。
バサッバサッと翼をはためかせながら、その口を大きく開ける――
フリーズブレスが、来る。
食らったら、問答無用で全滅だ。
「……ヴリトラ」
杖の先が黄金に光り、小さな金の四角がドラゴンに向かって飛んでいく。
そしてその四角は、ドラゴンを覆い尽くすまで広がって、立方体の中にその巨体を閉じ込めた。
ガッチャン――ヴェェエエエエン……
「……ジョエル」
「おー!」
右眼が爛々と輝き、蒼弓を構えるジョエル。
ラザールは杖をドラゴンに向けたまま、口を真一文字で頷く。
「……ヒュドラ」
ジョエルが短く告げると、矢の無かったはずの弦から、無尽蔵に魔眼矢が吐き出されていく。
ラザールは、矢の全てを結界内に送り込むため、ジョエルと肩を並べた。
――シュバシュバシュバ
シュバシュバシュバ
シュバシュバシュバ
シュバシュバシュバ――
グギャアアアアアッグギャアアアッッ
ラザールのヴリトラは、指定空間を完全密閉する絶対結界。
一方ジョエルのヒュドラは、一定時間無敵の魔眼矢連弾。
いずれもドラゴンスキルである。
ラザールは、連弾が生まれると瞬時に結界内へ送り込む。結界を維持しつつ転送もやってのける、離れ技だ。
――ギインッ
金属音とともに、鼻の奥がまたツンとなった。
部屋の温度が急激に冷えたのだ。
「これでも撃つ気かっ」
ラザールが焦る。
「あかん、わい今無理やわ」
魔力を使い果たしたリンジーは、ラザールの後ろで片膝をついている。魔力は、ポーションでは回復できない。
――計算が狂った。
想像以上の強靭さに、ラザールは逃走の算段を脳内で開始する。
「っしゃーねえ」
「!? ヒューゴー!?」
連弾姿勢を保ったままジョエルが叫ぶが、ヒューゴーは既にドラゴンの真下に走り込んでいた。いつの間にか、リンジーの蛇剣を二刀持っており、身体の前で腕を交差させ、片膝をついて丸まって構えている。
――陽炎
身のうちの魔力の全てを、この禍々しい毒剣にこめる。
「うぐっ」
歯を食いしばっていないと姿勢が崩れるくらい、生気を刀に吸い取られるのを感じた。
「あやー、呪われてまうかー」
たはー、とリンジーが力なく肩を落とす。
「どういうことだっ!」
ジョエルが怒鳴る。
「……話は後だ。今は全員動けん。信じるしかない」
ラザールが諌める。
「っ、 来るぞおおっ!」
ヒューゴーが叫び、ぐん、と身体を限界まで丸めた。
ッキイイィイーーーーーン
ゴオオォオォォォ
……
ピィン……
――耳が痛いほどの静寂。そして。
シャーーーーーーーーーーー
意外と静かなのだな、とヒューゴーは思った。
全ての生きとし生けるものを凍らせるフリーズブレスが、頭上の結界から漏れ出ようとしている。
「ぐっ……」
ラザールの膝が崩れる。
「削り切れなかったか……」
ジョエルの弦の音が止んだ。
無情にも連弾時間切れである。
ラザールのヴリトラが、限界まで膨張している。
中身は、真っ白で何も見えない。
ぴしぴしぴし……
亀裂が、広がっていく。
それは、命の終わりまでのカウントダウンだった。
「っ、外まで走れえ!」
ヒューゴーが血反吐を撒き散らしながら叫び、ジョエルが何か言う前に、ラザールがその首根っこを掴んで走り出した。
バキィンッ
割れた。
――たんっ
静寂の中、ヒューゴーは飛んだ。
シャーーーーーーーーーーー
ドラゴンは、狂ったようにフリーズブレスを吐き続けていた。
体表のほとんどが、ジョエルの魔眼矢でびっしりと覆われており、命の灯火は消えかけているにも関わらず、その瞳の光だけは煌々としているのが一瞬で見えた。
ペキペキ、ペキペキ
髪も口角の血も鼻水も頬も汗も、たちまち凍っていく。
――一太刀でいいから。
陽炎が、かろうじて絶対零度に抵抗する刹那の時。
内腑が腐っていくのを感じながら、限界まで折り曲げた身体を、一気に大の字に開き切る。二刀流の炎が、眼前の巨体をクロスに引き裂いた。
陽炎が、強く、赤く揺らめいて。
遠くで、レオナが笑っている。
美しい、赤――
グギャアアアアアア!!
ドラゴンの断末魔を聞きながら、彼はバンザイの姿勢のまま真っ逆さまに……堕ちた。
「……ったく、無茶やなあ」
リンジーの苦笑いが、聞こえた気がした。
※ ※ ※
「……?」
ヒューゴーの目が覚めたのは、昨晩泊まった宿屋のベッドの上だった。窓の光から察するに、夕方のようだ。
「あ、やっと起きたー!」
傍らにはジョエル。
離れたソファにはラザールが、魔術書を片手にうつらうつら。
窓際のリンジーはナイフを磨いていたようだ。
「あれ……あっ、ドラゴンどうなった!?」
ガバッと起き上がろうとして、身体が痛すぎて即座にまたベッドに沈んだ。
「ぶはー、開口一番それだしー」
「……ん、起きたか。無事倒したぞ。お手柄だな」
ラザールが寝ぼけ眼のまま、微笑んでいる。
「傷はエクストラポーションで、ある程度治ったのだが、その……」
言い淀むラザールの後を継いで、リンジーが淡々と言う。
「わいの武器で呪われてん、自分」
「呪われ……?」
「キュアやディスペルも試したんだが」
「聖属性の上級魔法でないと、解呪は無理ぽいー。かといって教会はねー、ドラゴン保護派だからねー」
ジョエルが暗に、恐らく断られるだろう、と言っているのが分かった。
「……俺はどうなる?」
全員が、リンジーを見た。
彼はやれやれと手を降参、とばかりに挙げ
「わかれへん」
とシンプルに告げた。
「……まあ、死ぬだろうな、自分で分かる」
ヒューゴーは自分の体内で、何かがゆっくり朽ちていく感覚があった。
「んな危ない武器使うなよ……」
ジョエルが肩を落として言う。
「いわく付きなんは知っとったんや。これ、ヤマタノオロチ言うねんけど、わいが平気やから、まさか呪われるとは思わんくて……」
珍しくショボンとするリンジーに、
「はは、勝手に使った俺が悪い。多分陽炎のせいだし」
ヒューゴーは努めて明るく言った。本心だ。
恐らくは、持ち主でない魔力を大量に送り込まれて、中のナニカが怒ったのだと思っている。
「……呪いと言うものは、ヒールでは止められん」
ラザールが苦しそうに言う。
「はい。あの時俺は、覚悟を決めたんで。魔石は?」
「わいが持っとる。公爵邸まで、送るさかい」
「お? レオナ様に会っても良いって?」
ヒューゴーがおちゃらける。
「……会えんでもええわい。どアホ」
「ははは。ありがとう。頼む」
「ヒューゴー、破邪の魔石な、二個取れた」
ジョエルが泣きそうな顔で言う。
「お前すごいよ。スキルも取れたよ。これからだよ」
「へへ。も一個はシャル様に。……ごめんな、にーちゃん」
「ごめんじゃないよ。泣かすなよ。くそっ」
ジョエルが、ベッド脇で皆の目もはばからず、嗚咽を漏らした。
ヒューゴーは、満足感でいっぱいだがやはり、寂しさを感じた。とにかくレオナに会いたいな、と思いながらまた、深い眠りに堕ちた。
……マリー。――ごめんな……
-----------------------------
お読み頂き、ありがとうございました。
やっと出せました、リンジー!
彼の話し言葉はあくまでフィクションですのでご了承くださいませm(_ _)m
2023/1/16改稿
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