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学園入学編
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高村の講義は講義半分、実際に問題を解いたり、グループで話し合う時間が半分。
内容的には既に理解している部分であったが、公式の成り立ちなど雑学を入れてくれたり、他の考え方も知ることができ、時雨も楽しく授業を受けた。
「あー、次の問題当てるぞ~。今日は4月23日、足して出席番号27番。」
「へ…。」
時雨は27番。突然の氏名にビックリする。
「27番、誰だ~?」
「は、はい。僕、です。」
「月見里か。届く場所でいいから、途中式込みで黒板に書いてくれ。」
何より気楽なのは、車椅子だからと他の学生と差別化されない事。できる範囲で全てやらせてくれるのが、高村の講義の良いところだ。
ッコン、と見直しを終えたところで、チョークを置く。
「終わりました。」
「よし、正解だ。途中式も美しい。戻っていいぞ。
この問題はさっきやった公式の応用だ。ちょっと複雑にはなっているが、正しく理解出来ていれば解ける。解けなかったやつは見直ししとけよ。」
車椅子をまた押して席に戻ると、前にいた皐月が振り向いて声をかけてきた。
「すっげ。あの問題、ここの大学入試だぜ。俺前に試しに解いたことがあるんだ。高ちゃん、偶に意地悪問題出してくるんだよな。」
「え、そうなの。でも、多分僕以外にも解けてる人はいるから。」
櫂斗も、恐らく帝も解けていそうだ。
「多分、このクラスの半分は解けないね。後で質問攻めにされるぜ。知識欲の塊みたいなメンバーだから。」
その言葉通り、授業が終わると何人かが聞きにきた。
図式化したり、説明を加えながら解説すると、わかりやすいと言われて嬉しくなる。
その後の古典も当てられはしたが、難なく終わり、いよいよ総合、文化祭の話し合いになった。
「一年生は原則合唱コンクールです。課題曲は~と、~と、~の3つのうちどれかひとつ。文化祭1週間前に予選があり、残った3クラスだけが舞台の上で歌う事になります。」
合唱か。歌うのは難しいかなぁ。参加するのは少し難しいかもしれない。
折角だから一緒にやりたかったな…
何も自分の限界を知らないわけではない。最近の調子でいえば、いつ絶対安静といわれるか分からないくらいだ。
「…グ、シグ。」
ぼぉっと考え込んでいたようで、櫂斗に肩を叩かれてハッとなる。
「あ…ごめん。」
心配そうな表情で大丈夫かと聞かれる。
「ぼぉっとしちゃってたみたい。カイ、僕歌うのはちょっと無理かも。」
楽しみにしてたんだけど、と明らかに落ち込む様子に、
「ああ、わかっている。そこでだ。シグは聞いていなかったみたいだが、どうやら伴奏もいるらしい。伴奏で出ないか?」
伴奏か…。合唱曲ならばせいぜい3~5分程度の短さ。激しい曲でもない為、問題はなさそう。
「…やりたい。かな。」
「おっけい。じゃあ、伝えるか。」
櫂斗が前の司会者に時雨が伴奏をしたい事を伝える。
「月見里君、ピアノ弾けるの?大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だと思う。」
「じゃあお願い出来るかな。ああ、申し訳ないんだけど、当日もし具合が悪くなってもいいように、サブで練習してくれる人を募ってもいいかな?」
伴奏が当日いないのは不味いから、ごめんね。と謝られる。
「だ、大丈夫だよ。やらせて貰えるだけ嬉しい。頑張るね。」
「うん、月見里君の伴奏で歌えたら、俺も嬉しいから体調崩さないように無理せずね。」
クラスから決定に賛同する拍手が鳴り響き、胸があったかくなる。
「ありがとう。」
「良かったな。シグ。サブだが、俺は皐月がやれば良いと思う。お前弾けたよな?」
「俺⁈まぁ良いけどさ。櫂斗の指名も受けた事だし、俺も練習しまっす!」
「うぇっ⁈皐月様、よろしいのですか?ではお願い致します。」
司会の子があたふたしている。皐月君だと恐れ多いのだろうか。
「ああ見えて、皐月は音楽一家の息子なんだ。本人もコントラバスの世界大会で入賞するくらいには演奏できる。」
ピアノは畑違いだが、基本で習わされているらしい。
「そうなんだ。皐月君凄いんだね。」
「そうでもないっすよ~。まぐれまぐれっ。シグちん、今度一緒に練習しよ?」
「いいの?嬉しい。」
「うんうん、俺もこんな可愛い子と練習出来たら腕が上がっちゃうよ。って櫂斗、俺は下心ないから、しまってしまって!!」
「楽しそうだな?俺もその練習に参加してやろう。」
「いやいやいやいや、結構です!!」
「カイも一緒にする?」「ああ。いいか?」
「うん、えへへ。皆んなで出来るの嬉しいなぁ。」ニコニコと花が咲いている時雨。
「このカップルは俺の声が耳に入らないのかな⁈⁉︎鬼が、俺は可愛い子と2人でいいのに、鬼が!!」
「何か言ったか?皐月?」
ん?と時雨にわからないように、ドス黒い笑顔が張り付いた表情で微笑んでくる櫂斗。
「ナンデモアリマセン。」
この後皐月は裏で淡々と櫂斗から説教をくらったのは言うまでもない。
「ジャズの方は文化祭何かするのかな。」
「ああ、やると思うぞ。今日放課後行ってみるか?」
「うん。カイは生徒会、ないの?」
「あるが、少し顔を出しに行く分には問題ない。シグを送り届けて話を聞いたら行くよ。もし生徒会の方が部活が終わるより遅ければ生徒会室の方に来てくれるか?」
「うん、わかった。」
部活に行くのも見学に行った以来だ。先輩達は覚えていてくれているだろうか。
内容的には既に理解している部分であったが、公式の成り立ちなど雑学を入れてくれたり、他の考え方も知ることができ、時雨も楽しく授業を受けた。
「あー、次の問題当てるぞ~。今日は4月23日、足して出席番号27番。」
「へ…。」
時雨は27番。突然の氏名にビックリする。
「27番、誰だ~?」
「は、はい。僕、です。」
「月見里か。届く場所でいいから、途中式込みで黒板に書いてくれ。」
何より気楽なのは、車椅子だからと他の学生と差別化されない事。できる範囲で全てやらせてくれるのが、高村の講義の良いところだ。
ッコン、と見直しを終えたところで、チョークを置く。
「終わりました。」
「よし、正解だ。途中式も美しい。戻っていいぞ。
この問題はさっきやった公式の応用だ。ちょっと複雑にはなっているが、正しく理解出来ていれば解ける。解けなかったやつは見直ししとけよ。」
車椅子をまた押して席に戻ると、前にいた皐月が振り向いて声をかけてきた。
「すっげ。あの問題、ここの大学入試だぜ。俺前に試しに解いたことがあるんだ。高ちゃん、偶に意地悪問題出してくるんだよな。」
「え、そうなの。でも、多分僕以外にも解けてる人はいるから。」
櫂斗も、恐らく帝も解けていそうだ。
「多分、このクラスの半分は解けないね。後で質問攻めにされるぜ。知識欲の塊みたいなメンバーだから。」
その言葉通り、授業が終わると何人かが聞きにきた。
図式化したり、説明を加えながら解説すると、わかりやすいと言われて嬉しくなる。
その後の古典も当てられはしたが、難なく終わり、いよいよ総合、文化祭の話し合いになった。
「一年生は原則合唱コンクールです。課題曲は~と、~と、~の3つのうちどれかひとつ。文化祭1週間前に予選があり、残った3クラスだけが舞台の上で歌う事になります。」
合唱か。歌うのは難しいかなぁ。参加するのは少し難しいかもしれない。
折角だから一緒にやりたかったな…
何も自分の限界を知らないわけではない。最近の調子でいえば、いつ絶対安静といわれるか分からないくらいだ。
「…グ、シグ。」
ぼぉっと考え込んでいたようで、櫂斗に肩を叩かれてハッとなる。
「あ…ごめん。」
心配そうな表情で大丈夫かと聞かれる。
「ぼぉっとしちゃってたみたい。カイ、僕歌うのはちょっと無理かも。」
楽しみにしてたんだけど、と明らかに落ち込む様子に、
「ああ、わかっている。そこでだ。シグは聞いていなかったみたいだが、どうやら伴奏もいるらしい。伴奏で出ないか?」
伴奏か…。合唱曲ならばせいぜい3~5分程度の短さ。激しい曲でもない為、問題はなさそう。
「…やりたい。かな。」
「おっけい。じゃあ、伝えるか。」
櫂斗が前の司会者に時雨が伴奏をしたい事を伝える。
「月見里君、ピアノ弾けるの?大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だと思う。」
「じゃあお願い出来るかな。ああ、申し訳ないんだけど、当日もし具合が悪くなってもいいように、サブで練習してくれる人を募ってもいいかな?」
伴奏が当日いないのは不味いから、ごめんね。と謝られる。
「だ、大丈夫だよ。やらせて貰えるだけ嬉しい。頑張るね。」
「うん、月見里君の伴奏で歌えたら、俺も嬉しいから体調崩さないように無理せずね。」
クラスから決定に賛同する拍手が鳴り響き、胸があったかくなる。
「ありがとう。」
「良かったな。シグ。サブだが、俺は皐月がやれば良いと思う。お前弾けたよな?」
「俺⁈まぁ良いけどさ。櫂斗の指名も受けた事だし、俺も練習しまっす!」
「うぇっ⁈皐月様、よろしいのですか?ではお願い致します。」
司会の子があたふたしている。皐月君だと恐れ多いのだろうか。
「ああ見えて、皐月は音楽一家の息子なんだ。本人もコントラバスの世界大会で入賞するくらいには演奏できる。」
ピアノは畑違いだが、基本で習わされているらしい。
「そうなんだ。皐月君凄いんだね。」
「そうでもないっすよ~。まぐれまぐれっ。シグちん、今度一緒に練習しよ?」
「いいの?嬉しい。」
「うんうん、俺もこんな可愛い子と練習出来たら腕が上がっちゃうよ。って櫂斗、俺は下心ないから、しまってしまって!!」
「楽しそうだな?俺もその練習に参加してやろう。」
「いやいやいやいや、結構です!!」
「カイも一緒にする?」「ああ。いいか?」
「うん、えへへ。皆んなで出来るの嬉しいなぁ。」ニコニコと花が咲いている時雨。
「このカップルは俺の声が耳に入らないのかな⁈⁉︎鬼が、俺は可愛い子と2人でいいのに、鬼が!!」
「何か言ったか?皐月?」
ん?と時雨にわからないように、ドス黒い笑顔が張り付いた表情で微笑んでくる櫂斗。
「ナンデモアリマセン。」
この後皐月は裏で淡々と櫂斗から説教をくらったのは言うまでもない。
「ジャズの方は文化祭何かするのかな。」
「ああ、やると思うぞ。今日放課後行ってみるか?」
「うん。カイは生徒会、ないの?」
「あるが、少し顔を出しに行く分には問題ない。シグを送り届けて話を聞いたら行くよ。もし生徒会の方が部活が終わるより遅ければ生徒会室の方に来てくれるか?」
「うん、わかった。」
部活に行くのも見学に行った以来だ。先輩達は覚えていてくれているだろうか。
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