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むぎ

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出会い

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席は資料が置かれている場所であれば、自由席みたいだ。開始30分程前に着いたが、チラホラと席について話している集団がいくつかみられる。

時雨は集団から離れた、窓側の1番後ろの席に座る。

あまり大きな教室ではないため、今日は主に外部入学と高等部から入寮する学生の為の説明会なのだろう。

窓からは桜の木が見えており、まだ蕾で寒々しい印象は抜けない。
話す友人もいない為、持ってきた小説を片手に時間を潰す。

「あのマスクのやつ、外部かな?見た事ねぇよな?」
「ないない。小さいな。顔ほぼ見えねー。話しかけてみるか?」
時雨はドキリとする。感染防止の為に外出時はマスクをつけており、チラッと見た限りではマスクは時雨ぐらいだ。
お願いだから、そっとしておいて~っと願いながら本に視線を落としたまま聞いてないフリをする。

「やめとこーぜ。なんか暗そうだし、外部って事は繋がり持っても意味なさそうだしな~。つか、あいつ1人私服で来てるし、制服でって事も見てねーのかよ。」
ハハハっと笑い物にされているのがわかる。
制服を持たない時雨はフォーマルという事で、白のタートルネックセーターに黒のジャケットとパンツという服装だ。
事情を知らないとはいえ、言葉にツキリと胸が痛むが、彼らと話す勇気は無かったのでホッとする。

入学しても彼らとは話さないようにしようと決心を固めた。

その後は特に何事も無く、チラチラと視線は集めたものの、本に集中した為雑音を捉えることは無かった。

ガラッと誰かが入室してきた時、ワイワイと話していた空気がシーンとなり、皆が席に着いた。
時雨も変化に気付き、本から目を離すと教員らしき人物が教卓の前に立っている。


「おはよう。諸君。私は高等部で教員をしている、高村だ。本日のオリエンテーション及び試験を担当する。」
新規入寮者以外のその他の中等部学生は既に試験は終えているらしい。試験問題は難易度は少し変更される程度で変わらないため、試験の公平性に問題は無いそうだ。
高村の話では今日の予定として、今から学園の歴史、高等部の話をサラッとした後、学園規則で重要なポイントの説明、その後、試験を実施。
休憩後、グループ単位で寮を見学し、待機中に制服採寸をして終了したものから各自帰宅。という流れらしい。

資料を確認しながら、話を聞く。
概ね、入試前に調べた内容であった。

「えー、では、重要な規則だけ説明する。
後は資料で各自確認する事。
まず学園生活な。暴力・虐め等発覚した際は、即停学、酷ければ退学だ。
また、この学園にはαだけでなく、Ω、βも数名在籍している。第2性での差別は禁止としている。Ωが万一ヒートを起こした際にはΩ用の個室があるが、α、βは入室不可。α用にもラット時の部屋がある。緊急時はそこにαは押し込まれるからな。
もし、この学園で番を見つけた時は両者の同意があれば問題ない。
寮規則については、入寮時に寮長から説明がある。外出は基本週末を除き禁止となっている。必要時は外出届を3日前までに提出する事。なお、急な不幸や病気で受診の為と言った緊急時は当日でも受理される。
自炊する学生用に学内にちょっとしたスーパーはある。
特に釘刺しとくのはこれくらいか?質問のあるものは挙手してくれ。無ければ試験に移る。」
特に手が上がらずに試験へと移行した。

机に入学許可証と筆記用具のみ出し、他はバッグにしまう。

「試験は国語、数学、英語。3教科で計120分の試験だ。まとめて問題及び解答用紙を配布する。好きな教科から解いて構わない。不正行為を発見した場合は入学取り消しとなる。クラス分けに関わるからしっかり解けよ。
名前の横に番号書くところがあるが、入学許可証に書いてある番号を記載すること。
では、始め!」
ぱらりと裏にされた問題用紙を表に返す。
ザッと問題を見るが、難易度は優しいと感じた。
入院中はベッドで出来ることしかできない為勉強はしていたし、何より学ぶ事は楽しかった。

1時間程で3教科とも終わり、暇になる。
残り1時間はやる事もなく、ただぼぉっとして窓を眺めていた。

終了の合図がかかり、解答用紙が回収される。

少し休憩をとったのち、近場にいる人で5人程のグループを作り寮案内と制服採寸を行う事となった。

周りはもう仲間内でグループを作っているが時雨は話しかける間も無く取り残されてしまった。
どうしよう……1人でもいいかな?気楽だしそっちの方がいいなぁなんて…

「月見里。」
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