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1.最悪な邂逅
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きっと僕はこの世界にとってエラーなんだ。こんな世界生きづらいだけだ、誰もが自分のことしか考えていない。それなのに皆笑って生きている、何に向かっているのか、今を必死に生きている、まるで理解ができない。社会に適応できない僕がエラーなの?それならば今すぐ排除してほしい。ほら、今もさっきから横の女がごちゃごちゃ言っていて騒々しい。
「…さっきから何?」
イヤホンを外し、頭が悪そうなこいつの為にわざとらしく迷惑そうに答える。
「…何その目。あのさぁ、自分の立場わきまえて…」
そいつが言い終わらないうちに僕はイヤホンを再び装着した。「ノイズ」をシャットアウトするために音量ボタンを三連打し再び勉学に励む。内側に流れ込んでくる旋律が僕の心の熱りを少しずつ宥め、鎮めていく。音楽は何も言わない。ただただ心に寄り添ってくれる。
この高尚な趣味を楽しんでいたその時、「ブチッ」と鈍い音がした。再び僕の世界にノイズが入り、突如の出来事に困惑する。この惨事の主犯格であろうさっきの女に目を向けると、無残にも配線がむき出しになった僕のイヤホンを握り、鋭い目つきで僕を睨みつけていた。
「…っ、ふざけんな!!」
その刹那、僕は手に持っていた単語帳を投げつけ、目の前の机を蹴飛ばしていた。
ふふん。してやったり。しかし面倒なことになった。煩わしさを帯びたこの空気を吸いたくなくて、脇目も振らず、その場を後にしようとする。だが、
「鷹野君大丈夫!?」
さっきの女の予想外の声に面食らい、思わず声のした方を見る。そこには机の下敷きとなった、鷹野がいたのだった。
…何で?え、どうしてあいつがいるの?思考回路がショートしてしまったらしくこの状況を飲み込むことができない。
「美島最低…はやく謝ってよ…!」
いやいやちょっと待ってください、謝ってほしいのは僕の方なんですけど。大事なイヤホン壊されたんですけど。
「僕は大丈夫だからっ、ね、美島君を責めないで…」
鷹野がクラスメイトに介助され、よろめきながらそう言う。
…ははーん。こいつ、カッコつけるためにわざわざ女のこと助けたのか。…気持ち悪ぃ。
僕vsその他に分かれたこの教室は最悪な空間だった。皆僕に軽蔑の目を向けている。何だってんだよ、望んで勝手に巻き込まれただけじゃないか。僕はこういう可哀想な奴が一番嫌いだ、口とは裏腹に「私可哀想でしょ、助けて?」って目をしてやがる。うざったい。僕はこんなのに騙されない。頑なにも謝らないぞという意思を示すためにも僕は鷹野を一瞥した。それでも尚、奴は僕を責めることはなかった。
あの事件後鷹野は入院することになった、どうやら肋骨が一本折れていたらしい。ふん、いい気味だ、と思ったが奴は一貫して何があってもふにゃっとした笑顔を浮かべる、それがどうも理解できなかった、鼻につく。…一方僕は二週間の停学を頂戴したのであった。そして腹立たしい事に先生は僕に、一度でいいからお見舞いに行けと言うのであった。
「…さっきから何?」
イヤホンを外し、頭が悪そうなこいつの為にわざとらしく迷惑そうに答える。
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そいつが言い終わらないうちに僕はイヤホンを再び装着した。「ノイズ」をシャットアウトするために音量ボタンを三連打し再び勉学に励む。内側に流れ込んでくる旋律が僕の心の熱りを少しずつ宥め、鎮めていく。音楽は何も言わない。ただただ心に寄り添ってくれる。
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「…っ、ふざけんな!!」
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ふふん。してやったり。しかし面倒なことになった。煩わしさを帯びたこの空気を吸いたくなくて、脇目も振らず、その場を後にしようとする。だが、
「鷹野君大丈夫!?」
さっきの女の予想外の声に面食らい、思わず声のした方を見る。そこには机の下敷きとなった、鷹野がいたのだった。
…何で?え、どうしてあいつがいるの?思考回路がショートしてしまったらしくこの状況を飲み込むことができない。
「美島最低…はやく謝ってよ…!」
いやいやちょっと待ってください、謝ってほしいのは僕の方なんですけど。大事なイヤホン壊されたんですけど。
「僕は大丈夫だからっ、ね、美島君を責めないで…」
鷹野がクラスメイトに介助され、よろめきながらそう言う。
…ははーん。こいつ、カッコつけるためにわざわざ女のこと助けたのか。…気持ち悪ぃ。
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