甘い偽りも誤ちも (完結)

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怒りのその先

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私は楽譜をよみながら
気になった曲は
口ずさんで歌った



どれも難しい曲…


千尋の通っていた中学校は
レベルが高かったのだろうか…と
気になり始めた



いくら付き合ってると言っても
出会ってまだ1ヶ月も経ってない。

お互い知らない部分が
多すぎる…。






ペラペラとめくっていると、
トランペットのソロ楽譜が出てきた



その曲名をみて驚いた。



「千尋もこの曲吹いたの!?
私この曲で中学の時ソロコンテスト出たんだ~」

そう言いつつまた口ずさむ…




他の楽譜と比べ
相当吹き込まれたと思われる

注意する事など
沢山書き込みされているし
楽譜自体がボロボロだ。







すると彼がいきなり
その楽譜を私の手から奪い
びりびりと破り捨てた


私はその行動が信じられなかった。



「な!!!なんで!!?」



私がそう怒り気味に
食ってかかると
明らか千尋の方が怒っている顔をしていた












「お前本当になにも覚えてないんだな」





「え…」












その後は何も言わないため、
私もさすがに限界がくる…


分からないことを言われてばかりじゃ腹が立つ…






「私に脅迫してきたけど
結局理由なんて話してくれないじゃない!

覚えてるわけないよ!!

私、千尋が転校してきて
初めて会ったんだもん!!」


そう声を張り上げる


千尋が座っている私のすぐ前に立つ





「……じゃあ一つだけ教えてやるよ」



正面にしゃがみ込み
いきなり首を掴まれた


苦しくて咳き込む……………






「お前は中学のとき
この曲をソロコンテストで吹いた。

お前の後に、他校の生徒が
お前と全く同じ曲を演奏した。

俺はその時
まだ吹奏楽部に入ってない、
音楽なんてさらさら興味なかった。」






淡々と話してるが
どんどん手に力がこもってきて
本当に苦しい…




「…吹部に…入ってないのに

なんで千尋に関係…あるの…?」




引き下がれない私は
苦しみながらも千尋に尋ねる。




するといきなり千尋が
締めていた手を離し
そのまま私を弾き飛ばす



衝撃で後ろに転がる






「…後は自分で考えるんだな」






あんなに怒っていた千尋の様子は
もう普段通りに戻っていて、

私の頭を撫で にこっと微笑み
煙草の箱を持ち
部屋を出て行った……




恐怖と不安で手が震えていた……







そして千尋にそう言われても
全然思いだせなかった。



中学1年生の時
出場したソロコンテスト…


先輩ではなく、1年生の私が
選ばれて出場だったため、
ただただ周りからのプレッシャーと圧に
もがき戦いながら演奏した


結果は金賞で
全国大会にも行った。





……それだけしか覚えていない…。





そんな他校の演奏を聞けるほど
私には、心の余裕がなかった…

今ではいい思い出だが
当時は苦しくて毎日が辛かった…




どうしても思いだせない…と
落胆していると
一つだけ手がかりがあることに気がつく。



当時のソロコンテストのDVDを
購入してあったのだ







(……千尋が寝たら、観て確かめよう…)








明日は日曜日でお互い1日練だし
観るとしたら今日の夜しかない…


それからというもの
私は不安でしょうがなかった…









夕食に作ったオムライスを
千尋は美味しそうに頬張っていた。



昼間の一件があったのにも関わらず
何もなかったかのように
私に接する…



わからなかった…


あそこまで怒り
私に手を出すのに対し、
すぐ平然とし優しい顔をするのだ。


付き合えと言われたけど、
何故、自ら恨んでいる相手と
付き合えるのだろうか…?








夕食を済ませ、
凝りもせずまた一緒にお風呂に入る…



湯船に浸かって
千尋を横目で見ると
耳にキスをされた


そのまま口を合わせる

甘い甘いキス…





………この行動も
どこまでが本気で
どこからが嘘なんだろう…


なんて…、
そんな事ばかり考えてた



千尋の事が全くわからない…。



抱きしめられたら
鼓動が速いのがわかる…

キスをしたら
欲が出てくるのがわかる…




それは私だから
そういう感情になるのだろうか…


それとも男だから
恨んでる相手でも欲情できるのか…





沢山キスをされたけど
今日は昨日のような気分にはなれなかった。










お風呂から上がり
時刻は22時。


どうしてもDVDが気になり
私はさりげなく、
明日も早いしもう寝よう?
と誘った。


千尋はそれをすんなり受け入れると
ベッドに入った。


私も勘付かれないように
そのままベッドに入る



千尋は大きなあくびをしていて
今にも寝そうだった。





ちょっとだけ安心をしていると
急に千尋の手が私の胸を触ってきた




「え?え⁉︎」




今日はそういう雰囲気では
なかったため
予想外な事が起きて
驚きを隠せない




千尋の顔がにこにこ笑ってる


「ねえー、早く寝ようとか言って、
本当は早くえっちしたかったんじゃ
ないのー?」




「えっ?そんなんじゃないんだけど…」




本当に今日は
そんな気分ではない。

今すぐにでも起き上がって
事実を確認したい…、


だからそれどころではないのだ




なのにそう拒む私が
気に入らなかったのか
昨日噛まれた鎖骨の隣を
また強く噛む


「ん…っ」


痛みを我慢したら
変な声が出てしまった


「ねぇ、我慢しないでよ?」

千尋は弱々しく仔犬のような表情で
私を覗き込む


そのあまりにも
甘えた顔にドキっとしてしまう



「俺のことさSって言ったけど…

莉奈は相当なMだよね。
痛いの好きでしょ?」


そんな事っ!と言い返してるのも聞き入れず
胸のあたりを噛む


噛まれた場所が
全体的に赤みを帯びている…


それを見た瞬間
自分も不思議なくらいぞくぞくするのを感じた。



千尋はその様子に気づき、


「……莉奈さんマゾだね?
俺はサディストだけど?」



なんて笑いながら口からこぼし
私にたくさんの傷をつけていった…





その行動に興奮したまらなかった……


















さすがに一回し終えると
千尋は眠そうにベッドへ横になった



すぐに寝息が聞こえた…








私は千尋がちゃんと寝たことを確認し、
そっとベッドからでる


時間は0時を回っていた


静かにDVDを探し出し
デッキにセットをする


音で起こしてはいけないと念をいれて
テレビにイヤホンをつけ
音が漏れないようにした
 

何か手がかりが掴めるかも…という気持ちと
千尋が起きてきたらどうしよう…という気持ちで
鼓動がとても激しかった…









そしてDVDが始まる…………














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