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暖かい朝
しおりを挟むどのくらいの時間
抱き合っていただろうか…
目が覚めると
朝の日差しがカーテンから透ける
いつの間にか寝てしまったんだ…
千尋も隣で
ぐっすりと眠っている
私は重たい身体を起こし
キッチンへ向かう
時刻は7時前…
休みの日なのに早起きしすぎたな
と思いつつ
千尋を起こさないように静かに動いた。
二人分の卵を割り
フレンチトーストを作りながら
コーヒーをおとす。
部屋中が美味しそうな匂いで包まれた。
コーヒーは飲めるかわからないけど、
まぁ、煙草吸う人だし
好きだろう…と
勝手に思い用意をする。
テーブルに出来上がった
朝食を置く
起こしに行こうかな…と
思った瞬間
後ろから抱きつかれた
気配が無かったため
すごく驚いてしまった
「目が覚めて
莉奈さんが隣にいないから
不安になった…」
そう言って顔を
私の背中に擦り付ける。
寝起きはいつもこういう感じなんだろうか…
と思い、ついつい
甘やかしてしまう。
「勝手にいなくならないから大丈夫…。
だから…ね?
ご飯たべよ?」
自然と口にした自分の言葉に
動揺してしまった。
そっか…
脅迫されても逃げないってことは、
こいつの支配下に
置かれてもいーか…って
私自身思ってるのかな…。
なんてよくも分からない変な事を考えた。
朝食を食べ始めると
千尋が呟く。
「朝起きて
自分の女がいて
あったかいご飯が出来てて…って
なんかいーよな」
千尋から意外な言葉を口にする。
自分の女って言葉に
高揚した
食べ終わると
彼は煙草を吸いに
またベランダへ出た
凝りもせずついて行くと
彼は手招きをする。
千尋の隣へ行くと
左腕で肩を抱かれ
「お前、なんか犬みてーだな」
そう言って頭を撫でる
…私、猫派なんだけど……と
思いつつ
なんかそれも悪くないなと思った
「じゃあ千尋はご主人様だねっ」
と何気なく言う。
それを聞いた瞬間
千尋は満面の笑みを浮かべた。
「それたまらねーな!
俺の言う事全部聞いて
言いなりになるってことだろ?」
それを聞いて
そういう意味じゃないんだけどな…
と少し戸惑う私。
そして思ったことを問う
「…千尋ってかなりのSだよね?」
自分の顔が引きつっていくのを
なんとか我慢して聞いた
それを聞きすかさず千尋が笑いながら
「俺みたいなのがMだったら
きめーだろ?」と言った
そう言われ
想像をしてみたら
本当に気持ちが悪くて
思いきり笑ってしまった。
気色悪いよ~、
なんて言うと
千尋は照れながら
私の頭をペシっと叩く
とても穏やかな朝
「……なあ、
俺たちこのまま
一緒に暮らさねえ?」
「え…?」
「どーせ俺たちを
心配してくれる親なんていねーし
今、俺二人でいて幸せ感じてるし」
…や、私の親は
心配してくれてると思うよ?と
言おうとしたけどやめた。
心配するわけがない。
私がこの高校で吹奏楽をやりたい!
と言ったら
学費が高い!出てけ!!
と言われたからだ。
私の生活費と学費は
全て祖母が出してくれている。
しかし祖母は
県外に住んでいるため
なかなか会う事はない。
うーん…と考えていると
彼がおもむろに話してきた。
「俺さ、転校する前は
親父と二人で住んでたんだ。
別に仲も悪くなかったし。
でも親父が若い女連れてきてさ…
それが嫌になったってのも
転校を決めた理由に入ってる」
そんな事を
悲しげな表情で言うもんだから
なんだか同情してしまった。
「……いーよ、
ここで暮らそう?」
そう言うと
千尋は優しく抱きしめてくれた
高校生が同棲なんて
絶対にしてはいけないと分かってはいたけど、
自分が一人でいる事より、
こいつを一人でいさせてしまう事が
とてもじゃないけど
出来なかった。
弱っていくような気がしてなぜか怖かった
そのままお昼頃まで
何をするわけでもなく
ゆっくりと過ごした
午後になって
千尋は荷物を取ってくると言うので
帰りのタクシー代だけを渡し、
私は買い物に出た。
朝、何が好き?と聞くと
オムライスと答えていて
それが意外過ぎて
なんだか笑ってしまった
千尋といると
退屈しないなーなんて思った。
買い物を済ませ
外を歩いていると
後ろから声をかけられた
「莉奈ーー!!!」
「え、藍じゃん!?
なんでこんな所にいるの!?」
と聞くと
たまたま用事済ませてて…
と言っている。
藍の地元は遠くのほうで、
学校に通うのも
電車で1時間ほどかかる。
なのでこの辺りにいるのは
とても珍しかった。
午後は空いていると
言っていたため
二人で近くの小さなカフェに入った
隆弘先輩のことを聞かれて
この1週間のことを
全て話した。
「隆弘先輩が
そんな人だったなんて
信じらんないんだけど…」
藍が不安そうにそう言うため
私も頷く。
「…でもやっぱし二個上の先輩達って
なんか大人だもんね。
みんなそういうの、
経験してるのかなー?」
と照れながら話している。
自分が経験がないわけじゃないから
なんとも思わないが、
純粋な藍には
それが不思議な事のように
思ってるみたいだ。
私が顔をしかめて
考えていると
藍がまた話し出す
「あと東城くん!!
あれからもう何もされてない!?」
心配そうな顔で私を覗く
「………何もないよ」
藍の顔を見ることが出来ず、
目を逸らしてそう答えた。
私が東城に脅されていた事を
藍には少しだけ伝えてあった。
だからこそ
いま付き合ってるんだ…
なんて言えない
一緒に暮らすの、
なんてもちろん言えない…
私は初めて
親友の藍に隠し事をした
藍と別れ
家に帰宅すると
千尋はすでに帰ってきていた
外で待たせてはいけない、と思い、
もともと不動産屋からもらっていた
スペアキーを渡しておいたのだ。
クローゼットが一つ空いていたので
ここ使っていいよ、と
言っておいた場所に
しっかりと片付けてある
「ただいま…
荷物…少ないんだね?」
彼の持ってきた物は
私服と沢山の本だけだった。
驚くほどに少ない…
「必要な物はこれだけだからさ、
自分の家にも物は
ほとんど置いてなかった」
男の人の一人暮らしなんて
そんなもんだろうか…と
なんとなく理解する
ふと見ると
沢山の本の中に
楽譜であろうスケッチブックも
大量に置いてあった。
私は興味が湧いたため
「この楽譜見てもいい!?」と
目を輝かせて千尋に聞いた
「別にいーよ」
と返されたので
その場所に座り込み楽譜を見はじめる
千尋は何も言わず
ケータイの画面を眺めていた
わたしは楽譜に集中していたため
このとき千尋が
どんな表情をしていたかは
わからない……………
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