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75話 勇者とのお話
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「入るわね」
明るいよく聞こえる声で少女は中に入ってくる。
肩口まで伸びた柑子色の夕暮れを思わせる綺麗な髪とくっきりとした顔立ち。必要最低限の防具で身を包み背中の方に真っ赤なマントが翻っている。
昨日は夜で視界も朦朧としていたからよく見えなかったから分からなかったがかなり可愛らしい子だ。
「いきなりお邪魔してごめんなさい。あなたに色々と聞きたいことがあって……ちょっといいかしら?」
少女は静かな落ち着いた瞳でこちらの様子を伺う。
「あ、はい……」
「何が『ちょっといいかしら?』だ! いい訳ないだろ! レイルは今起きたばかりで疲れているんだ!!」
「そうです! また時間を改めて来てください!!」
了承しようとしたところでアニスとリュミールに言葉を遮られ、二人は物凄い剣幕で部屋に入ってきた少女を追い返そうとする。
「お、おい二人とも失礼だろ。俺はだいじょう……」
「マスターは黙ってください!!」
「レイルは黙ってろ!!」
「……はい」
再び言葉を切られ、そのまま口を閉じてしまう。
「あなた達のご主人様は大丈夫と言っているようだけど、従者であるあなた達が勝手に決めていいことなの?」
少女は表情を変えずアニスとリュミールに問う。
「私たちのマスターはどんなに自分が辛くても頑張ろうとする御人です。だから今の言葉も強がりなので気にしないでください」
少女の言葉にアニスはそう答える。
「おいアニス、俺は本当に……」
「マスターは黙っていてください!!!」
アニスは再び叫んで俺の言葉を切る。
「マスターは死にかけたんですよ!? 傷は治っていても疲れはかなり残っているんです! なのになんでまたそうやって無理をしようとするんですか!」
「アニスの言う通りだ、今はゆっくりと休め」
アニスの言葉に続いて静かにリュミールも言ってくる。
「いや、本当に大丈夫だって、かなり気分も良くなった。それに今は寝ている暇なんてない、二人だって分かってるだろ?」
かなり心配している二人に、自分が大丈夫だということを体を動かしてアピールする。
しかし、
「駄目です! マスターはお休みください!」
「そうだ休んでいろ!」
アニスとリュミールは納得せず俺をベットに寝かそうとする。
「おい二人ともいい加減にしないと……」
これ以上は埒が明かない、心配してくれているふたりには申し訳ないがここは強硬手段を……。
そう思った瞬間だった。
「私達はあの時、何もお役に立てませんでした……! 私たちがもっと強ければマスターはこんなに傷つかなくて済んだんです!!」
アニスは再び声を上げて言う。
その瞳からポロポロと大きな涙が零れていた。
「私達はあの時役立たずでした! そんな役立たずの私たちにできる唯一のことはマスターにゆっくりと休息を取って頂くために全力で手助けをすることです! だからまだ完全に治っていないマスターを連れ出そうとする輩を追い出すのも私たちの仕事です!!!」
泣きじゃくりながらアニスは俺をベットから起き上がらせないために体を押さえつけてくる。
その力はとても弱々しくて、払い除けるのなんて簡単なことだ。しかし、そんなことできるはずがない。
「悔しいんだ私達は、苦しんでいる君を目の前にして何もできなかったことを……」
静かにリュミールは言う。
………それは違う。
アニスとリュミールは決して役立たずなんかではなかった。アニスには自分の魔力が空になるまで俺に力を分けてくれたし、リュミールにはタイラスの治療を任せて守ってもらった。
お互いが全力を尽くした結果だったんだ、二人は決して役立たずなんかではなかった。
でも二人は俺が死にかけた時、何もできなかったことを悔やんでいる。
その気持ちは分かる。例えばアニスやリュミールがあの時の戦いで死んでしまったら俺だって自分の不甲斐なさを嘆くだろう。
だから俺は二人に言わなくてはいけない。
「違う、違うよアニス、リュミール。二人は役立たずなんかじゃない。二人は頑張ってくれたじゃないか、俺にたくさんの力と勇気をくれたじゃないか。そりゃあ魔王には全く歯が立たなかったし、死にかけた。でも今こうして俺達は生きてるじゃないか。こうして一緒に泣けてるじゃないか」
二人を抱きしめて俺も自然と涙が溢れてくる。
本当に俺には勿体なさすぎる程に強くて、優しい相棒たちだ。
「だからさ、そんな卑屈で、悲しいこと言わないでくれよ。力足らずだったんならまた三人で一緒に強くなっていけばいいじゃないか。ごめんなアニス、リュミール。本当にごめん。それとこんなに心配してくれてありがとう。俺は大丈夫たから。本当に辛くて、無理だと思ったらすぐに二人を頼るからさ、今は俺の言葉を信じてくれ」
「マスター……」
「レイル……」
ゆっくりと優しく涙が流れ続けた。
・
・
・
「……おほん! 何だか待たせちゃってごめん」
わざとらしく大きく咳払いをして、今まで完全に空気状態になっていた少女に顔を向ける。
「あ、ううん、気にしてない。むしろとても安心した」
「え?」
「とてもいい仲間ね」
優しく微笑んで少女は俺達を見る。
「あ、ありがとう」
なんだかさらに恥ずかしくなってきて落ちつかなくなる。
「それで話をしても大丈夫なのかしら」
少女はアニスとリュミールの方を見て聞いてくる。
「ああ、色々と悪かったね。好きにしたまえ」
「気がたっていたとはいえ、失礼なことをしました、すみません」
二人は顔を真っ赤に染めながら少女に謝る。
「ええ大丈夫、気にしてない。……それじゃあまずはお互いに自己紹介からしましょうか。私の名前はアリア=インディデント、勇者よ、アリアでいいわ。この世界に起きる厄災を退けるために旅をしているの」
「俺の名前はレイル、騎士になるためにバルトメア魔法騎士学園に通っている学生だ。それからそこにいる二人の女の子……銀髪の方がアニス、金糸雀色の髪の方がリュミールだ」
マリアの提案通り簡単にだがお互いに自己紹介をする。
「レイルにアニス、リュミールね、よろしく」
俺たちの名前を繰り返してマリアは握手を求めて手を差し出してくる。
「こちらこそよろしく」
マリアの手を掴んでそれに応える。
何故だがアニスとリュミールの視線が鋭かった気がするが無視しよう。
「それから、助けてくれてありがとう。あのままだったら俺はこうして今元気に起きている事は出来なかった、本当にありがとう」
アリアに聞きたいことは山ほどあるがまずは助けてくれたお礼が先だろう。
俺は深く頭を下げてアリアに俺を言う。
「うん、どういたしまして。」
アリアはニッコリと優しい笑顔を浮かべて、近くにあった椅子に腰を下ろす。
・
・
・
それから俺達はお互いに知っていること、気になったことを話し合って情報を共有した。
一つ目は魔王レギルギアについて何をどれぐらい知っているか。
これは俺と知っていることは同じで、世界に捨てられた魔装機を集めて人間に復讐しようとしてる事やそのために魔王レギルギア率いる新魔王軍が各地で動いていることしかアリアも分かっていなかったみたいだ。
二つ目は魔装機についてどれだけ知っているかだ。
アリアは王都バルトメアを訪れる前に、ヤジマさんが何か悪いことをしようとしたのではと思ったらしく魔界領に行っていたらしい。そこで諸々とあって結果的にヤジマさんではなく新しく魔王を名乗るレギルギアが人間に復讐しようとしていることを知る。その時にヤジマさんから魔装機のことも大体教えて貰い、仲良しの印として魔装機を作ってもらったらしい。というかあの魔王は本当に軽い気持ちで魔装機を作るな……。
ちなみに今その魔装機とは別行動らしい。
三つ目は魔王レギルギアが退いたあとのことだ。
負傷者は多いようだが幸い死者は出ていないらしく、王都では絶賛復興作業が行われはじめているらしい。
大きくわけて話したことはこの三つだ。
アリアとは初めて会ったばかりで俺の知っていることを全て話すか一瞬迷ったが命の恩人にそんな考えは失礼だろうと思い、俺の知りうることは大体話した。
「気になるところはだいぶ話したかしら?」
「多分。まあまた何かあったらその都度話せばいいんじゃないか?」
取りこぼしがないか考えているアリアにそう提案する。
「それもそうね。それじゃあ次はこれからのことを話しましょうか?」
「これから?」
これで話は終わりかと思いきやアリアは姿勢を正してそう言う。
「そう、これから。本当は今回で仕留めきることが出来れば一番良かったのだけど……」
彼女は悔しそうに言って言葉を続ける。
「今回の魔王レギルギアの宣戦布告で近いうちに本格的に新魔王軍と人間の戦争が始まるわ」
「戦争……」
たしかに今回起きたこの事件は再び人間と悪魔が戦争をするには十分な火種になるだろう。しかし彼女の言った言葉にいまいち実感がわかない。
「しかも魔王はさらに強くなって攻めてくるわ。まだ昨日戦った時は魔王として覚醒していなかったから勝算があった。けど今度は完全に覚醒して私達人間に襲ってくるでしょう」
「なっ!?」
昨日でさえ十分に強かったというのにこれ以上強くなるって言うのか!?
「でもその覚醒もすぐって訳じゃない。ある程度力を蓄える期間があるの。私はその覚醒に必要な力が溜まる前にもう一度奴を叩きに行く。その機会を過ぎると魔王に特攻を持つ勇者の私でも覚醒状態の魔王を倒すのは厳しくなるからね」
アリアの目は完全に覚悟が決まっており揺るぎなかった。
「『あなたに聞きたいことがある』って言うのは魔王や魔装機のこともあったけど、私と一緒に魔王を倒すために戦ってくれないかってことなの」
「……一緒に?」
「ええ。本当は正式な場で他の人達もいる時に一緒に話そうと思ったのだけどあなたには先にお願いしようと今思ったの。あまり時間はないけれど私はこれから私と同等の強さを持った魔装機使いを仲間にして魔王レギルギアを仕留めに行くつもり。レイル、あなたには最初の私の仲間になって欲しいの。どうか、私と一緒に戦ってくれませんか?」
彼女は真直ぐな瞳でこちらを見つめる。
……このままやられっぱなしで終わるのは納得いくはずがない。
アリアの言葉を聞いて答えはすぐに出た。
「アニス、リュミール、またしばらく忙しくなりそうだけど大丈夫か?」
二人の方を見て確認する。
「私はどこまでも貴方について行きます、マスター」
「君と出会って忙しくなかったことなんてないと思うんだけど?」
頼もしく二人の女の子は頷く。
「決まりだ。是非俺達にも手伝わせてくれ」
力強く頷いて俺はアリアの旅について行くことを決めた。
明るいよく聞こえる声で少女は中に入ってくる。
肩口まで伸びた柑子色の夕暮れを思わせる綺麗な髪とくっきりとした顔立ち。必要最低限の防具で身を包み背中の方に真っ赤なマントが翻っている。
昨日は夜で視界も朦朧としていたからよく見えなかったから分からなかったがかなり可愛らしい子だ。
「いきなりお邪魔してごめんなさい。あなたに色々と聞きたいことがあって……ちょっといいかしら?」
少女は静かな落ち着いた瞳でこちらの様子を伺う。
「あ、はい……」
「何が『ちょっといいかしら?』だ! いい訳ないだろ! レイルは今起きたばかりで疲れているんだ!!」
「そうです! また時間を改めて来てください!!」
了承しようとしたところでアニスとリュミールに言葉を遮られ、二人は物凄い剣幕で部屋に入ってきた少女を追い返そうとする。
「お、おい二人とも失礼だろ。俺はだいじょう……」
「マスターは黙ってください!!」
「レイルは黙ってろ!!」
「……はい」
再び言葉を切られ、そのまま口を閉じてしまう。
「あなた達のご主人様は大丈夫と言っているようだけど、従者であるあなた達が勝手に決めていいことなの?」
少女は表情を変えずアニスとリュミールに問う。
「私たちのマスターはどんなに自分が辛くても頑張ろうとする御人です。だから今の言葉も強がりなので気にしないでください」
少女の言葉にアニスはそう答える。
「おいアニス、俺は本当に……」
「マスターは黙っていてください!!!」
アニスは再び叫んで俺の言葉を切る。
「マスターは死にかけたんですよ!? 傷は治っていても疲れはかなり残っているんです! なのになんでまたそうやって無理をしようとするんですか!」
「アニスの言う通りだ、今はゆっくりと休め」
アニスの言葉に続いて静かにリュミールも言ってくる。
「いや、本当に大丈夫だって、かなり気分も良くなった。それに今は寝ている暇なんてない、二人だって分かってるだろ?」
かなり心配している二人に、自分が大丈夫だということを体を動かしてアピールする。
しかし、
「駄目です! マスターはお休みください!」
「そうだ休んでいろ!」
アニスとリュミールは納得せず俺をベットに寝かそうとする。
「おい二人ともいい加減にしないと……」
これ以上は埒が明かない、心配してくれているふたりには申し訳ないがここは強硬手段を……。
そう思った瞬間だった。
「私達はあの時、何もお役に立てませんでした……! 私たちがもっと強ければマスターはこんなに傷つかなくて済んだんです!!」
アニスは再び声を上げて言う。
その瞳からポロポロと大きな涙が零れていた。
「私達はあの時役立たずでした! そんな役立たずの私たちにできる唯一のことはマスターにゆっくりと休息を取って頂くために全力で手助けをすることです! だからまだ完全に治っていないマスターを連れ出そうとする輩を追い出すのも私たちの仕事です!!!」
泣きじゃくりながらアニスは俺をベットから起き上がらせないために体を押さえつけてくる。
その力はとても弱々しくて、払い除けるのなんて簡単なことだ。しかし、そんなことできるはずがない。
「悔しいんだ私達は、苦しんでいる君を目の前にして何もできなかったことを……」
静かにリュミールは言う。
………それは違う。
アニスとリュミールは決して役立たずなんかではなかった。アニスには自分の魔力が空になるまで俺に力を分けてくれたし、リュミールにはタイラスの治療を任せて守ってもらった。
お互いが全力を尽くした結果だったんだ、二人は決して役立たずなんかではなかった。
でも二人は俺が死にかけた時、何もできなかったことを悔やんでいる。
その気持ちは分かる。例えばアニスやリュミールがあの時の戦いで死んでしまったら俺だって自分の不甲斐なさを嘆くだろう。
だから俺は二人に言わなくてはいけない。
「違う、違うよアニス、リュミール。二人は役立たずなんかじゃない。二人は頑張ってくれたじゃないか、俺にたくさんの力と勇気をくれたじゃないか。そりゃあ魔王には全く歯が立たなかったし、死にかけた。でも今こうして俺達は生きてるじゃないか。こうして一緒に泣けてるじゃないか」
二人を抱きしめて俺も自然と涙が溢れてくる。
本当に俺には勿体なさすぎる程に強くて、優しい相棒たちだ。
「だからさ、そんな卑屈で、悲しいこと言わないでくれよ。力足らずだったんならまた三人で一緒に強くなっていけばいいじゃないか。ごめんなアニス、リュミール。本当にごめん。それとこんなに心配してくれてありがとう。俺は大丈夫たから。本当に辛くて、無理だと思ったらすぐに二人を頼るからさ、今は俺の言葉を信じてくれ」
「マスター……」
「レイル……」
ゆっくりと優しく涙が流れ続けた。
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「……おほん! 何だか待たせちゃってごめん」
わざとらしく大きく咳払いをして、今まで完全に空気状態になっていた少女に顔を向ける。
「あ、ううん、気にしてない。むしろとても安心した」
「え?」
「とてもいい仲間ね」
優しく微笑んで少女は俺達を見る。
「あ、ありがとう」
なんだかさらに恥ずかしくなってきて落ちつかなくなる。
「それで話をしても大丈夫なのかしら」
少女はアニスとリュミールの方を見て聞いてくる。
「ああ、色々と悪かったね。好きにしたまえ」
「気がたっていたとはいえ、失礼なことをしました、すみません」
二人は顔を真っ赤に染めながら少女に謝る。
「ええ大丈夫、気にしてない。……それじゃあまずはお互いに自己紹介からしましょうか。私の名前はアリア=インディデント、勇者よ、アリアでいいわ。この世界に起きる厄災を退けるために旅をしているの」
「俺の名前はレイル、騎士になるためにバルトメア魔法騎士学園に通っている学生だ。それからそこにいる二人の女の子……銀髪の方がアニス、金糸雀色の髪の方がリュミールだ」
マリアの提案通り簡単にだがお互いに自己紹介をする。
「レイルにアニス、リュミールね、よろしく」
俺たちの名前を繰り返してマリアは握手を求めて手を差し出してくる。
「こちらこそよろしく」
マリアの手を掴んでそれに応える。
何故だがアニスとリュミールの視線が鋭かった気がするが無視しよう。
「それから、助けてくれてありがとう。あのままだったら俺はこうして今元気に起きている事は出来なかった、本当にありがとう」
アリアに聞きたいことは山ほどあるがまずは助けてくれたお礼が先だろう。
俺は深く頭を下げてアリアに俺を言う。
「うん、どういたしまして。」
アリアはニッコリと優しい笑顔を浮かべて、近くにあった椅子に腰を下ろす。
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それから俺達はお互いに知っていること、気になったことを話し合って情報を共有した。
一つ目は魔王レギルギアについて何をどれぐらい知っているか。
これは俺と知っていることは同じで、世界に捨てられた魔装機を集めて人間に復讐しようとしてる事やそのために魔王レギルギア率いる新魔王軍が各地で動いていることしかアリアも分かっていなかったみたいだ。
二つ目は魔装機についてどれだけ知っているかだ。
アリアは王都バルトメアを訪れる前に、ヤジマさんが何か悪いことをしようとしたのではと思ったらしく魔界領に行っていたらしい。そこで諸々とあって結果的にヤジマさんではなく新しく魔王を名乗るレギルギアが人間に復讐しようとしていることを知る。その時にヤジマさんから魔装機のことも大体教えて貰い、仲良しの印として魔装機を作ってもらったらしい。というかあの魔王は本当に軽い気持ちで魔装機を作るな……。
ちなみに今その魔装機とは別行動らしい。
三つ目は魔王レギルギアが退いたあとのことだ。
負傷者は多いようだが幸い死者は出ていないらしく、王都では絶賛復興作業が行われはじめているらしい。
大きくわけて話したことはこの三つだ。
アリアとは初めて会ったばかりで俺の知っていることを全て話すか一瞬迷ったが命の恩人にそんな考えは失礼だろうと思い、俺の知りうることは大体話した。
「気になるところはだいぶ話したかしら?」
「多分。まあまた何かあったらその都度話せばいいんじゃないか?」
取りこぼしがないか考えているアリアにそう提案する。
「それもそうね。それじゃあ次はこれからのことを話しましょうか?」
「これから?」
これで話は終わりかと思いきやアリアは姿勢を正してそう言う。
「そう、これから。本当は今回で仕留めきることが出来れば一番良かったのだけど……」
彼女は悔しそうに言って言葉を続ける。
「今回の魔王レギルギアの宣戦布告で近いうちに本格的に新魔王軍と人間の戦争が始まるわ」
「戦争……」
たしかに今回起きたこの事件は再び人間と悪魔が戦争をするには十分な火種になるだろう。しかし彼女の言った言葉にいまいち実感がわかない。
「しかも魔王はさらに強くなって攻めてくるわ。まだ昨日戦った時は魔王として覚醒していなかったから勝算があった。けど今度は完全に覚醒して私達人間に襲ってくるでしょう」
「なっ!?」
昨日でさえ十分に強かったというのにこれ以上強くなるって言うのか!?
「でもその覚醒もすぐって訳じゃない。ある程度力を蓄える期間があるの。私はその覚醒に必要な力が溜まる前にもう一度奴を叩きに行く。その機会を過ぎると魔王に特攻を持つ勇者の私でも覚醒状態の魔王を倒すのは厳しくなるからね」
アリアの目は完全に覚悟が決まっており揺るぎなかった。
「『あなたに聞きたいことがある』って言うのは魔王や魔装機のこともあったけど、私と一緒に魔王を倒すために戦ってくれないかってことなの」
「……一緒に?」
「ええ。本当は正式な場で他の人達もいる時に一緒に話そうと思ったのだけどあなたには先にお願いしようと今思ったの。あまり時間はないけれど私はこれから私と同等の強さを持った魔装機使いを仲間にして魔王レギルギアを仕留めに行くつもり。レイル、あなたには最初の私の仲間になって欲しいの。どうか、私と一緒に戦ってくれませんか?」
彼女は真直ぐな瞳でこちらを見つめる。
……このままやられっぱなしで終わるのは納得いくはずがない。
アリアの言葉を聞いて答えはすぐに出た。
「アニス、リュミール、またしばらく忙しくなりそうだけど大丈夫か?」
二人の方を見て確認する。
「私はどこまでも貴方について行きます、マスター」
「君と出会って忙しくなかったことなんてないと思うんだけど?」
頼もしく二人の女の子は頷く。
「決まりだ。是非俺達にも手伝わせてくれ」
力強く頷いて俺はアリアの旅について行くことを決めた。
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