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71話 間違い
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未だ歓声は鳴りやまずテントの外からは今も興奮した声が耳に籠る。
「……これ」
医療班のテントにベルゴを運んで中にいた人に渡す。
「わざわざ運んでもらってすみません、助かりました!」
一つ頭を下げて白衣を身にまとった白髪の老人は回復魔法を使うために魔力を纏い始める。
これが白衣を身にまとった美しい女医ならばここまで奴を運んできた甲斐が有ると言うものだがそんなに人生は甘くなかった。
「それじゃあ俺はこれで」
そんな思考を表に出さないようにして、ラミアの様子を見るべく大会で怪我をした参加者達が休んでいる別のテントへと移動する。
「……マスター、今綺麗な女性の方を期待しましたね?」
「……」
「いやいやアニス、それより先に聞くことあるよね?」
黙秘権を行使していると珍しくリュミールがツッコミを入れてさっきのベルゴと戦った時の話を持ってくる。
「………分かってますよリュミール、冗談です。それで理由を聞かせてくれますよねマスター?」
少し黙ってアニスが問いただしてくる。
「あれは……」
『ただの個人的な意地』と言ったらこの二人はどれくらい怒るのだろうか?
なんとか納得してもらえる理由を探すが俺の頭は答えを導き出す様子はない。
まあ正直に言うしかないか……。
「……ただの個人的な意地です」
なんの変化も加えず思い浮かんだ言葉をそのまま放つ。
「「……」」
二人のお嬢さんがたは俺の言葉を聞いて何も返答の言葉はなく、その沈黙がこちらの罪悪感を掻き立てる。
「……マスター、私は悲しいです」
「……全くだ。こんな気持ちは生まれて初めてだよ」
少しの沈黙が続き、アニスとリュミールは悲しそうな顔をする。
「えっと……」
てっきり怒ると思っていたところを想像とは違う反応が返ってきて戸惑う。
「私たちでは力不足だったでしょうか?」
「いや! そんな訳じゃなくて! ただ俺はあいつに自分の力だけで勝ちたかっただけで……」
しょんぼりとしたアニスの声に慌てて理由を話す。
「ならばどうして私たちを使って頂けなかったのですか? 私達はマスターの力そのものです。……確かにまだ私たちに頼りないところもあるかもしれません。ですが! 私達はいつ何時でもマスターのお力になりたいのです!!」
「アニスの言う通りだ、私達はひとつの運命共同体。レイルが嬉しかったり悲しかったりすれば私たちも嬉しいし悲しい。レイルが悔しかったり怒っていれば、私たちも同じ気持ちなんだ」
リュミールも同意したように言葉を続ける。
「現にアニスと私はあのベルゴとやらの闘い方は気に入らなかったし、見てるだけで腹が立った。私達はレイルと一緒に戦う気満々だったというのに、君は一人独断で私たちからの魔力供給を切ってしまった。あれほどの悲しさはなかったね」
「……!」
二人の言葉を聞いて俺はハッとした。
……何を思い上がっていたのだろうか。
何が『コイツには一人で勝たなければいけない』だ。
いつから自分だけが強いと勘違いをしていた?
いつから一人で強くなった気でいた?
今の俺があるのは全部自分一人の力ではない、アニスとリュミールのおかげではないか。
それを忘れて、ベルゴとは一人で戦う、自分の力だけで勝つだって?ふざけるのも大概にしろ。
「っ!」
強く歯を軋ませて、自分の盛大な間違いに恥ずかしくて叫び出したくなる。
「マスター、もうあのようにお一人で戦うのはやめてください……」
「ああ、次やったらタダじゃおかないからね」
アニスとリュミールは左右の俺の手を強く掴む。
「ごめん二人とも、俺が間違ってた」
二人の手を強く握り返して、自分の愚かさを再確認する。
今の俺の強さ、力は俺だけのものじゃない。アニスとリュミールが居て、始めて手にすることができた二人の力だ。
俺はその力を貸してもらっているに過ぎない。そんな大事なことを忘れるほど、俺は変な思い上がりをしていた。
「わかって頂ければ良いのです」
「ラミアの所に行くんだろ? 早く行こう!」
二人は納得して俺の手を離すとアニスは剣の姿、リュミールは石の中に戻る。
「そうだな」
この過ちを忘れずに胸に刻み、ラミアの所へと再び足を前に出す。
・
・
・
「あ、相棒……」
「お疲れ様です、レイルさん……」
大会中に怪我をした参加者達が休むテントに入ると見慣れた二つの声が聞こえてきた。
「浮かない顔をしてどうしたんだよ、ローグにマキア?」
眉をへの字にしてどこか沈んだ顔をした二人を見て尋ねる。
「……うん。ラミアの様子をもう一度見に来たんだけど、やっぱり話しかけても全く反応がないんだよ……」
「心ここに在らず、と言った感じでとても落ち込んでいました……」
二人はラミアの様子を思い出してか、悲しそうに言う。
「相棒もラミアの様子を見に来たんでしょ?だったら早く会ってあげてよ、ラミアをなんとか出来るのは後は相棒だけなんだ」
ローグは勢いよく俺の両肩を掴んでくる。
「ラミアさんは一番奥のベットで休んでいます。次のタイラス先生との決勝まで時間もないですし急いでください」
「わ、わかった」
二人の焦り様に圧されつつ、奥の方へと行ってみる。
途中には大会の予選で傷ついた参加者や先程のタイラスとの死闘で酷い怪我を負ったアラトリアムがベットの上で横になって休んでいる。
その中の一番奥、角の陽の当たらない薄暗いところにあるベットにラミアは休んでいた。
他の参加者達とは違い、体を起こして虚ろな瞳でただただ無言で虚空を見つめ続ける。
「……」
なんと声をかければいいのか分からず、ラミアが休むベットの少し手前で立ち止まってしまう。
"おい、そんなとこで立ち止まらないで話しかけろ。時間もあまりないんだぞ?"
「う、うるさい」
リュミールにそう言われて何の考えもなしに思わず足を動かす。
「……レイル君?」
もう引くことはできず、こちらに気づいたラミアが顔を向けて俺の名前を呼ぶ。
「調子はどうだ、ラミア?」
少し不格好に笑いながら尋ねてみる。
「……」
しかし、ラミアは俺の言葉に返答をしようとはせず無言で俯いてしまう。
「ら、ラミア?」
顔を覗き込んで様子を伺うがラミアは俯いたままこちらに顔を見せてくれない。
”だいぶ滅入ってるね”
”大丈夫でしょうか?”
「そうだな……」
アニスとリュミールもラミアを見て心配そうに言う。
「……てたのかな?」
「ラミア?」
「……間違ってたのかな?」
するとラミアは足に掛けていた毛布を強く握って悔しそうに震える。
「間違ってたって何がだ?」
答えが返ってくるかは分からないが、話の内容が見えてこないので聞いてみる。
「ずっと……ずっと騎士になりたいと思って強くなるために戦ってきたはずだった。けど本当はただ強い人と戦えれば、それだけでよかったのかな?」
静かにラミアは話し始める。
「あの時……ベルゴに言われて、分からなくなったの。否定したくてもできなかった。私は本当に騎士になりたかったのか……」
表情はよく見えないが苦しそうにポツポツと言葉を零す。
「……」
きっとベルゴとの戦いの中でラミアは自分の中にある信念を壊されたのだろう。
それによって自分に自信が無くなり、何を支えとして立てばいいのか分からなくなったのだ。
「アイツがラミアに直接なんて言ったのかは分からないけど……間違っててもいいんじゃないか?」
「え?」
俺の言葉にラミアは顔を上げる。
間違いなんて生きていれば、数え切れない数していく。
「たとえ今まで信じてきたことが間違いでも、それを認めて正すことが出来ればいいと思う。それに全てを間違わない完璧な人間なんていない、多かれ少なかれ必ずどこかで大きな間違いをする」
真剣にラミアの瞳をしっかりと見て言う。
「直ぐに『そうだね』って納得するのは無理だとしても時間をかけてゆっくりと確認して、認めて、正して、答えを出していけばいいんじゃないか?俺達はまだそれが許される」
「ゆっくりと……」
「うん。だからそんなすぐに答えを出して、決めつけるのは早いんじゃない?」
焦る必要は無いのだ。
「まあ俺もついさっき間違ったばかりでこんなこと言える立場じゃないんだけどさ」
柄にもなく真剣に話したことが気恥ずかしく思えてきて照れ隠しに自虐的にそんなことを言う。
「レイル君も間違ったの?」
その言葉を聞いて、興味津々でラミアが質問をしてくる。
「うん、間違った。しかも盛大にね」
わざとらしくおどけてみせる。
「でも二人が……アニスとリュミールがそれを教えてくれた。正してくれた」
「別に一人で答えを出す必要なんてないんだ。ラミアの相棒のガーロットや俺だったり、ローグやマキア、仲間と一緒にその答えを見つけていけばいい。だからさ一人で黙って落ち込んでないでまずは話してみなよ。そうすれば少しは気分が晴れるかもしれないし」
ラミアと同じ目線に屈んで彼女の頭の上に手をおく。
「そうだよラミア! ガンガン僕達を頼ってよ!」
「そうです! 一人で抱え込まなくていいんです!」
すると後ろからローグとマキアが顔を出す。
「ローグ、マッキー……」
ラミアはいきなり現れたローグとマキアを見て驚いている。
「ありがとう」
そしてベルゴとの戦いから、ずっと辛そうだったラミアの顔に優しく小さな微笑みが戻る。
その笑顔を見て俺達も安心して自然と笑みがこぼれる。
「すいません! ここにレイルさんはいますか?」
話がひと段落着いたところで、大会係員の男性がテントの中で俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「時間か……」
その声でラミアの頭から手を避けて立ち上がる。
「頑張ってね相棒」
「ああ」
「タイラス先生とですけどレイルさんなら勝っちゃいそうな気がします」
「ありがとう」
ローグとマキアに激励されて急いで係員の方へと向かう。
「レイル君!」
「ん?」
ラミアの声で急いで係員の方へと向かおうと動き出していた足を止める。
「頑張ってね」
ラミアは小さく胸の前でガッツポーズをして見送ってくれる。
「……おう!」
それにこちらも力強く右の拳を掲げ、再び足を動かす。
「……これ」
医療班のテントにベルゴを運んで中にいた人に渡す。
「わざわざ運んでもらってすみません、助かりました!」
一つ頭を下げて白衣を身にまとった白髪の老人は回復魔法を使うために魔力を纏い始める。
これが白衣を身にまとった美しい女医ならばここまで奴を運んできた甲斐が有ると言うものだがそんなに人生は甘くなかった。
「それじゃあ俺はこれで」
そんな思考を表に出さないようにして、ラミアの様子を見るべく大会で怪我をした参加者達が休んでいる別のテントへと移動する。
「……マスター、今綺麗な女性の方を期待しましたね?」
「……」
「いやいやアニス、それより先に聞くことあるよね?」
黙秘権を行使していると珍しくリュミールがツッコミを入れてさっきのベルゴと戦った時の話を持ってくる。
「………分かってますよリュミール、冗談です。それで理由を聞かせてくれますよねマスター?」
少し黙ってアニスが問いただしてくる。
「あれは……」
『ただの個人的な意地』と言ったらこの二人はどれくらい怒るのだろうか?
なんとか納得してもらえる理由を探すが俺の頭は答えを導き出す様子はない。
まあ正直に言うしかないか……。
「……ただの個人的な意地です」
なんの変化も加えず思い浮かんだ言葉をそのまま放つ。
「「……」」
二人のお嬢さんがたは俺の言葉を聞いて何も返答の言葉はなく、その沈黙がこちらの罪悪感を掻き立てる。
「……マスター、私は悲しいです」
「……全くだ。こんな気持ちは生まれて初めてだよ」
少しの沈黙が続き、アニスとリュミールは悲しそうな顔をする。
「えっと……」
てっきり怒ると思っていたところを想像とは違う反応が返ってきて戸惑う。
「私たちでは力不足だったでしょうか?」
「いや! そんな訳じゃなくて! ただ俺はあいつに自分の力だけで勝ちたかっただけで……」
しょんぼりとしたアニスの声に慌てて理由を話す。
「ならばどうして私たちを使って頂けなかったのですか? 私達はマスターの力そのものです。……確かにまだ私たちに頼りないところもあるかもしれません。ですが! 私達はいつ何時でもマスターのお力になりたいのです!!」
「アニスの言う通りだ、私達はひとつの運命共同体。レイルが嬉しかったり悲しかったりすれば私たちも嬉しいし悲しい。レイルが悔しかったり怒っていれば、私たちも同じ気持ちなんだ」
リュミールも同意したように言葉を続ける。
「現にアニスと私はあのベルゴとやらの闘い方は気に入らなかったし、見てるだけで腹が立った。私達はレイルと一緒に戦う気満々だったというのに、君は一人独断で私たちからの魔力供給を切ってしまった。あれほどの悲しさはなかったね」
「……!」
二人の言葉を聞いて俺はハッとした。
……何を思い上がっていたのだろうか。
何が『コイツには一人で勝たなければいけない』だ。
いつから自分だけが強いと勘違いをしていた?
いつから一人で強くなった気でいた?
今の俺があるのは全部自分一人の力ではない、アニスとリュミールのおかげではないか。
それを忘れて、ベルゴとは一人で戦う、自分の力だけで勝つだって?ふざけるのも大概にしろ。
「っ!」
強く歯を軋ませて、自分の盛大な間違いに恥ずかしくて叫び出したくなる。
「マスター、もうあのようにお一人で戦うのはやめてください……」
「ああ、次やったらタダじゃおかないからね」
アニスとリュミールは左右の俺の手を強く掴む。
「ごめん二人とも、俺が間違ってた」
二人の手を強く握り返して、自分の愚かさを再確認する。
今の俺の強さ、力は俺だけのものじゃない。アニスとリュミールが居て、始めて手にすることができた二人の力だ。
俺はその力を貸してもらっているに過ぎない。そんな大事なことを忘れるほど、俺は変な思い上がりをしていた。
「わかって頂ければ良いのです」
「ラミアの所に行くんだろ? 早く行こう!」
二人は納得して俺の手を離すとアニスは剣の姿、リュミールは石の中に戻る。
「そうだな」
この過ちを忘れずに胸に刻み、ラミアの所へと再び足を前に出す。
・
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「あ、相棒……」
「お疲れ様です、レイルさん……」
大会中に怪我をした参加者達が休むテントに入ると見慣れた二つの声が聞こえてきた。
「浮かない顔をしてどうしたんだよ、ローグにマキア?」
眉をへの字にしてどこか沈んだ顔をした二人を見て尋ねる。
「……うん。ラミアの様子をもう一度見に来たんだけど、やっぱり話しかけても全く反応がないんだよ……」
「心ここに在らず、と言った感じでとても落ち込んでいました……」
二人はラミアの様子を思い出してか、悲しそうに言う。
「相棒もラミアの様子を見に来たんでしょ?だったら早く会ってあげてよ、ラミアをなんとか出来るのは後は相棒だけなんだ」
ローグは勢いよく俺の両肩を掴んでくる。
「ラミアさんは一番奥のベットで休んでいます。次のタイラス先生との決勝まで時間もないですし急いでください」
「わ、わかった」
二人の焦り様に圧されつつ、奥の方へと行ってみる。
途中には大会の予選で傷ついた参加者や先程のタイラスとの死闘で酷い怪我を負ったアラトリアムがベットの上で横になって休んでいる。
その中の一番奥、角の陽の当たらない薄暗いところにあるベットにラミアは休んでいた。
他の参加者達とは違い、体を起こして虚ろな瞳でただただ無言で虚空を見つめ続ける。
「……」
なんと声をかければいいのか分からず、ラミアが休むベットの少し手前で立ち止まってしまう。
"おい、そんなとこで立ち止まらないで話しかけろ。時間もあまりないんだぞ?"
「う、うるさい」
リュミールにそう言われて何の考えもなしに思わず足を動かす。
「……レイル君?」
もう引くことはできず、こちらに気づいたラミアが顔を向けて俺の名前を呼ぶ。
「調子はどうだ、ラミア?」
少し不格好に笑いながら尋ねてみる。
「……」
しかし、ラミアは俺の言葉に返答をしようとはせず無言で俯いてしまう。
「ら、ラミア?」
顔を覗き込んで様子を伺うがラミアは俯いたままこちらに顔を見せてくれない。
”だいぶ滅入ってるね”
”大丈夫でしょうか?”
「そうだな……」
アニスとリュミールもラミアを見て心配そうに言う。
「……てたのかな?」
「ラミア?」
「……間違ってたのかな?」
するとラミアは足に掛けていた毛布を強く握って悔しそうに震える。
「間違ってたって何がだ?」
答えが返ってくるかは分からないが、話の内容が見えてこないので聞いてみる。
「ずっと……ずっと騎士になりたいと思って強くなるために戦ってきたはずだった。けど本当はただ強い人と戦えれば、それだけでよかったのかな?」
静かにラミアは話し始める。
「あの時……ベルゴに言われて、分からなくなったの。否定したくてもできなかった。私は本当に騎士になりたかったのか……」
表情はよく見えないが苦しそうにポツポツと言葉を零す。
「……」
きっとベルゴとの戦いの中でラミアは自分の中にある信念を壊されたのだろう。
それによって自分に自信が無くなり、何を支えとして立てばいいのか分からなくなったのだ。
「アイツがラミアに直接なんて言ったのかは分からないけど……間違っててもいいんじゃないか?」
「え?」
俺の言葉にラミアは顔を上げる。
間違いなんて生きていれば、数え切れない数していく。
「たとえ今まで信じてきたことが間違いでも、それを認めて正すことが出来ればいいと思う。それに全てを間違わない完璧な人間なんていない、多かれ少なかれ必ずどこかで大きな間違いをする」
真剣にラミアの瞳をしっかりと見て言う。
「直ぐに『そうだね』って納得するのは無理だとしても時間をかけてゆっくりと確認して、認めて、正して、答えを出していけばいいんじゃないか?俺達はまだそれが許される」
「ゆっくりと……」
「うん。だからそんなすぐに答えを出して、決めつけるのは早いんじゃない?」
焦る必要は無いのだ。
「まあ俺もついさっき間違ったばかりでこんなこと言える立場じゃないんだけどさ」
柄にもなく真剣に話したことが気恥ずかしく思えてきて照れ隠しに自虐的にそんなことを言う。
「レイル君も間違ったの?」
その言葉を聞いて、興味津々でラミアが質問をしてくる。
「うん、間違った。しかも盛大にね」
わざとらしくおどけてみせる。
「でも二人が……アニスとリュミールがそれを教えてくれた。正してくれた」
「別に一人で答えを出す必要なんてないんだ。ラミアの相棒のガーロットや俺だったり、ローグやマキア、仲間と一緒にその答えを見つけていけばいい。だからさ一人で黙って落ち込んでないでまずは話してみなよ。そうすれば少しは気分が晴れるかもしれないし」
ラミアと同じ目線に屈んで彼女の頭の上に手をおく。
「そうだよラミア! ガンガン僕達を頼ってよ!」
「そうです! 一人で抱え込まなくていいんです!」
すると後ろからローグとマキアが顔を出す。
「ローグ、マッキー……」
ラミアはいきなり現れたローグとマキアを見て驚いている。
「ありがとう」
そしてベルゴとの戦いから、ずっと辛そうだったラミアの顔に優しく小さな微笑みが戻る。
その笑顔を見て俺達も安心して自然と笑みがこぼれる。
「すいません! ここにレイルさんはいますか?」
話がひと段落着いたところで、大会係員の男性がテントの中で俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「時間か……」
その声でラミアの頭から手を避けて立ち上がる。
「頑張ってね相棒」
「ああ」
「タイラス先生とですけどレイルさんなら勝っちゃいそうな気がします」
「ありがとう」
ローグとマキアに激励されて急いで係員の方へと向かう。
「レイル君!」
「ん?」
ラミアの声で急いで係員の方へと向かおうと動き出していた足を止める。
「頑張ってね」
ラミアは小さく胸の前でガッツポーズをして見送ってくれる。
「……おう!」
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