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70話 騎神祭剣術大会準決勝第二回戦
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考え方、戦い方、態振る舞い方、喋り方、まだ上げたりないが今はこれぐらいにしておこう。俺は奴が気に食わない。
もしこの要素が気にならなかったとしても俺は奴と仲良くできるとは到底思えない。本能的に奴とは相容れない、これが一番しっくりくる答えだ。
『何もしなくていい』と二人の少女に告げて目の前の敵を睨む。少女達は何か講義の声を上げるがそれを無視する。
コイツには一人で勝たなければ意味が無い。俺だけの力で勝ってこそ意味のある勝利だ。
……こんなことアニスとリュミールに正直に言ったら『ふざけるな!』と怒られるだけなので言わない、まあ怒られてもしょうがない理由だ。これはただの俺の意地なのだから。それでもこれは推し通らないといけない意地だ。
アニスを構えて意識を目の前の敵だけに集中する。
奴からは魔力を少したりとも感じない。ならばこちらも何も魔法は使わない。
「騎神祭剣術大会準決勝第二回戦、開始!!」
鳴らされた銅鑼の音に素早く反応し、地面を蹴る。
アニスを下段に構え敵に接近、斜めに一本の線を描くように敵の胴体目掛けて斬りあげる。
その速度は常人の目では到底とらえきれず、一筋の光が瞬く間に通り過ぎるような速さ。
……まずは挨拶だ。
ベルゴは俺の攻撃をギリギリまで引きつけると左手に持った毒々しい色の短剣で受け止める。
「他にもあるぜ?渾身の一撃を意図も簡単に防がれた時の惚け面も間抜けだったなあ~」
目の前の屑は思い出したように言う。
「黙れって言ってるだろ!」
我武者羅に力を入れて短剣を弾き、ガラ空きになった敵の腹部に蹴りを入れる。
左足を軸に爪先の方に重心を入れつつ、体全体を捻らせてその勢いで弧を描くように右足を振り抜く。
しかしその蹴りは短剣を持っていない空いた右手で難なく受け止められ防がれる。
「体術はまだ荒削りだな」
値踏みするように放たれた言葉を無視してすぐさま足を引こうとするがベルゴの右手に完全に捕まり自由を奪われる。
「はぁああ!」
ベルゴは服の上からでも分かるほど右腕の筋肉が膨れ上がらせ、片腕で軽々と俺の体を持ち上げるとそのまま地面に向けて鞭のように腕を振り下ろす。
「く……!」
叩きつけられる既の所でアニスを地面に突き刺し勢いを殺して直撃を避ける。一瞬、奴の右手の力が弱まりその隙に足を引いて自由を取り戻す。
今のは少し焦った。
「ふん、それぐらいはやってもらわんとな」
反撃を躱されたことに大して気にした様子もなくベルゴはすぐさま接近してくる。
矢継ぎ早に放たれる連撃をアニスで防ぎながら反撃の機会をうかがう。
しかし、性根は腐っていようがタイラスと渡り合えるぐらいには実力のある剣士。隙のない鋭い剣筋は反撃を許そうとせず、捲し立てるようにこちらへと襲いかかってくる。
"おい! 聞いてるのか!? やられっぱなしじゃないか!!"
"マスター、魔力を!!"
頭の中では依然として二人の少女がこちらに手助けをしようと言ってくる。
"大丈夫だよ二人とも、少しは俺を信用してくれよ"
本当に心配症というかなんというか……こんなに言われれば『俺ってそんなに危なっかしい戦い方をしているのか』と自分で自分を疑ってくる。
"何が『大丈夫だよ』だ! 私たちが魔力を廻さないから押され気味だろ!!"
まあ、傍から見れば俺が劣勢に見える展開だろう。
「……」
あえてリュミールの言葉に返答せず戦闘に集中する。
"なにか言えよ!!"
手を振り回しながらプンプンと怒っている姿が目に浮かぶ。
うちのお嬢さんがたも退屈してきたようだしそろそろ見に徹するのはいいだろう。とりあえず何も無い状態の剣筋はほぼ見切れた。
「フッ……!」
少しずつベルゴの剣速よりも動きを速める。
あの地獄の日々を思えば目の前のベルゴの剣は可愛らしくも思えてくる。
「………!!」
少しずつ攻守が逆転していく違和感にベルゴは直ぐに気づき短剣を引いて、一旦距離を取ろうとする、がそれはこちらが許さない。
一歩、深く踏み込んで逃げる隙を与えぬほど速く、鋭く、アニスを振る。
「お前……!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながらベルゴはこちらを睨む。
完全に形勢は逆転。ベルゴがギリギリ受け切れる速さで剣速を維持して適当なところでわざと剣を逸らして距離を取る。
「どうした? 疲れたのか?」
肩をすくめながら目の前で冷や汗をかく適に聞いてみる。
「……お前、何者だ?」
口を強ばらせてベルゴは質問を質問で返してくる。
「何者って、毎日騎士になるために鍛錬を積んでいるただの学生さ」
適当に言って、質問を返す。
「巫山戯るな!お前はさっきの小娘と似たような変な武器を使っているが全くの別物だ。その若さでどうしてそこまで行けた?何を見てきた?」
困惑した顔色を隠さずまたも質問してくる。
「…………巫山戯てるのはどっちだ」
目の前の屑に聞こえるか聞こえないかの声でそう言うと俺はアニスを構え直す。
「何?」
「魔法も使わないで余裕こいてると痛い目見るぞって言ったんだ……」
どうやら奴に今の言葉は聞こえなかったようだ。ならばもうこれ以上話すことは無い。
"やっと出番か!?"
"やってやりましょう!!"
"いや、二人は何もしなくていい"
"え……"
"え……"
一瞬、嬉しそうな声が聞こえてきたが残念ながら今回は御二方の出番はない。
アニスに魔力は送って貰わず、自分の体の中に残っている僅かな闇魔力を動かす。僅かながらも魔力は電光のように体を駆け巡り、先ほどよりも力が満ちていくのを感じる。
以前の無能で未熟な自分ならばこんな少しの魔力で地面の上で苦痛にもがき苦しみ、とても見ていられる状態になっていただろう。
黒い流れは体に馴染むように速く、夙く、体を駆け抜け、全身を黒い瘴気のようなもので包んでいく。
「いくぞ、覚悟はいいか不死鳥」
投げ捨てるように言って地面を弾く。
なんの小細工も必要ない、一直線に、最初に挨拶替わりとして仕掛けた攻撃と同じ形で敵に近づく。ただ一つ違うことは最初の攻撃と比べて速いこと。
それは会場の観客は愚か、目の前の敵ですら視認できないもの。
「何を……」
急いでベルゴも自身の体を魔力で強化して俺の攻撃を迎え撃とうとする。
その魔力量はただの剣士が持ち得るものではなく碧玉級の魔法使いと同等の質と量を備えた、剣士としては一級品のものである。
しかし、それほど大量の魔力で自身を強化してもこちらの微かな闇魔力には適わない。
全く反応できていないベルゴを他所に下段に構えたアニスを先程と同じように斜めに腹部目がけて切り上げる。さすがに本当に腹をかっさばくのは死にかねないので柄頭を使って峰打ちにする。
「くはっ!!」
腹部から鈍い音が鳴って苦しそうに体の中に溜まっていた空気を吐き出し膝から地面に倒れ込む。確認するまでもなくベルゴは気を失い、司会の方を見やる。
「き、決まりました! なんとも静かに決着がつきましたがなんということでしょうか、不死鳥のベルゴが大会王者、剣戟のタイラス以外の剣士に負けるとは誰が予想したことでしょうか!!」
勝負はたった一瞬、今の戦いの内容がほとんど何も分かっていないであろう司会のそんな言葉でなんとも呆気なく終わる。
俺は遅れて沸き起こる観客の歓声を聞き流して地面に倒れ付し起きる様子のないベルゴを背負いながらテントの方へ向かう。
勝ったというのに気持ちは晴れず、まだどこか胸の端に不快感が残っていた。
もしこの要素が気にならなかったとしても俺は奴と仲良くできるとは到底思えない。本能的に奴とは相容れない、これが一番しっくりくる答えだ。
『何もしなくていい』と二人の少女に告げて目の前の敵を睨む。少女達は何か講義の声を上げるがそれを無視する。
コイツには一人で勝たなければ意味が無い。俺だけの力で勝ってこそ意味のある勝利だ。
……こんなことアニスとリュミールに正直に言ったら『ふざけるな!』と怒られるだけなので言わない、まあ怒られてもしょうがない理由だ。これはただの俺の意地なのだから。それでもこれは推し通らないといけない意地だ。
アニスを構えて意識を目の前の敵だけに集中する。
奴からは魔力を少したりとも感じない。ならばこちらも何も魔法は使わない。
「騎神祭剣術大会準決勝第二回戦、開始!!」
鳴らされた銅鑼の音に素早く反応し、地面を蹴る。
アニスを下段に構え敵に接近、斜めに一本の線を描くように敵の胴体目掛けて斬りあげる。
その速度は常人の目では到底とらえきれず、一筋の光が瞬く間に通り過ぎるような速さ。
……まずは挨拶だ。
ベルゴは俺の攻撃をギリギリまで引きつけると左手に持った毒々しい色の短剣で受け止める。
「他にもあるぜ?渾身の一撃を意図も簡単に防がれた時の惚け面も間抜けだったなあ~」
目の前の屑は思い出したように言う。
「黙れって言ってるだろ!」
我武者羅に力を入れて短剣を弾き、ガラ空きになった敵の腹部に蹴りを入れる。
左足を軸に爪先の方に重心を入れつつ、体全体を捻らせてその勢いで弧を描くように右足を振り抜く。
しかしその蹴りは短剣を持っていない空いた右手で難なく受け止められ防がれる。
「体術はまだ荒削りだな」
値踏みするように放たれた言葉を無視してすぐさま足を引こうとするがベルゴの右手に完全に捕まり自由を奪われる。
「はぁああ!」
ベルゴは服の上からでも分かるほど右腕の筋肉が膨れ上がらせ、片腕で軽々と俺の体を持ち上げるとそのまま地面に向けて鞭のように腕を振り下ろす。
「く……!」
叩きつけられる既の所でアニスを地面に突き刺し勢いを殺して直撃を避ける。一瞬、奴の右手の力が弱まりその隙に足を引いて自由を取り戻す。
今のは少し焦った。
「ふん、それぐらいはやってもらわんとな」
反撃を躱されたことに大して気にした様子もなくベルゴはすぐさま接近してくる。
矢継ぎ早に放たれる連撃をアニスで防ぎながら反撃の機会をうかがう。
しかし、性根は腐っていようがタイラスと渡り合えるぐらいには実力のある剣士。隙のない鋭い剣筋は反撃を許そうとせず、捲し立てるようにこちらへと襲いかかってくる。
"おい! 聞いてるのか!? やられっぱなしじゃないか!!"
"マスター、魔力を!!"
頭の中では依然として二人の少女がこちらに手助けをしようと言ってくる。
"大丈夫だよ二人とも、少しは俺を信用してくれよ"
本当に心配症というかなんというか……こんなに言われれば『俺ってそんなに危なっかしい戦い方をしているのか』と自分で自分を疑ってくる。
"何が『大丈夫だよ』だ! 私たちが魔力を廻さないから押され気味だろ!!"
まあ、傍から見れば俺が劣勢に見える展開だろう。
「……」
あえてリュミールの言葉に返答せず戦闘に集中する。
"なにか言えよ!!"
手を振り回しながらプンプンと怒っている姿が目に浮かぶ。
うちのお嬢さんがたも退屈してきたようだしそろそろ見に徹するのはいいだろう。とりあえず何も無い状態の剣筋はほぼ見切れた。
「フッ……!」
少しずつベルゴの剣速よりも動きを速める。
あの地獄の日々を思えば目の前のベルゴの剣は可愛らしくも思えてくる。
「………!!」
少しずつ攻守が逆転していく違和感にベルゴは直ぐに気づき短剣を引いて、一旦距離を取ろうとする、がそれはこちらが許さない。
一歩、深く踏み込んで逃げる隙を与えぬほど速く、鋭く、アニスを振る。
「お前……!」
苦虫を噛み潰したような顔をしながらベルゴはこちらを睨む。
完全に形勢は逆転。ベルゴがギリギリ受け切れる速さで剣速を維持して適当なところでわざと剣を逸らして距離を取る。
「どうした? 疲れたのか?」
肩をすくめながら目の前で冷や汗をかく適に聞いてみる。
「……お前、何者だ?」
口を強ばらせてベルゴは質問を質問で返してくる。
「何者って、毎日騎士になるために鍛錬を積んでいるただの学生さ」
適当に言って、質問を返す。
「巫山戯るな!お前はさっきの小娘と似たような変な武器を使っているが全くの別物だ。その若さでどうしてそこまで行けた?何を見てきた?」
困惑した顔色を隠さずまたも質問してくる。
「…………巫山戯てるのはどっちだ」
目の前の屑に聞こえるか聞こえないかの声でそう言うと俺はアニスを構え直す。
「何?」
「魔法も使わないで余裕こいてると痛い目見るぞって言ったんだ……」
どうやら奴に今の言葉は聞こえなかったようだ。ならばもうこれ以上話すことは無い。
"やっと出番か!?"
"やってやりましょう!!"
"いや、二人は何もしなくていい"
"え……"
"え……"
一瞬、嬉しそうな声が聞こえてきたが残念ながら今回は御二方の出番はない。
アニスに魔力は送って貰わず、自分の体の中に残っている僅かな闇魔力を動かす。僅かながらも魔力は電光のように体を駆け巡り、先ほどよりも力が満ちていくのを感じる。
以前の無能で未熟な自分ならばこんな少しの魔力で地面の上で苦痛にもがき苦しみ、とても見ていられる状態になっていただろう。
黒い流れは体に馴染むように速く、夙く、体を駆け抜け、全身を黒い瘴気のようなもので包んでいく。
「いくぞ、覚悟はいいか不死鳥」
投げ捨てるように言って地面を弾く。
なんの小細工も必要ない、一直線に、最初に挨拶替わりとして仕掛けた攻撃と同じ形で敵に近づく。ただ一つ違うことは最初の攻撃と比べて速いこと。
それは会場の観客は愚か、目の前の敵ですら視認できないもの。
「何を……」
急いでベルゴも自身の体を魔力で強化して俺の攻撃を迎え撃とうとする。
その魔力量はただの剣士が持ち得るものではなく碧玉級の魔法使いと同等の質と量を備えた、剣士としては一級品のものである。
しかし、それほど大量の魔力で自身を強化してもこちらの微かな闇魔力には適わない。
全く反応できていないベルゴを他所に下段に構えたアニスを先程と同じように斜めに腹部目がけて切り上げる。さすがに本当に腹をかっさばくのは死にかねないので柄頭を使って峰打ちにする。
「くはっ!!」
腹部から鈍い音が鳴って苦しそうに体の中に溜まっていた空気を吐き出し膝から地面に倒れ込む。確認するまでもなくベルゴは気を失い、司会の方を見やる。
「き、決まりました! なんとも静かに決着がつきましたがなんということでしょうか、不死鳥のベルゴが大会王者、剣戟のタイラス以外の剣士に負けるとは誰が予想したことでしょうか!!」
勝負はたった一瞬、今の戦いの内容がほとんど何も分かっていないであろう司会のそんな言葉でなんとも呆気なく終わる。
俺は遅れて沸き起こる観客の歓声を聞き流して地面に倒れ付し起きる様子のないベルゴを背負いながらテントの方へ向かう。
勝ったというのに気持ちは晴れず、まだどこか胸の端に不快感が残っていた。
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