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36話 久しぶりの学園にて
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外の空気はめっきりと冷たくなり、秋の終わりを感じさせていた。
今日、俺は久しぶりの学園に来ていた。日数にして三ヶ月ほどだろうか。
教室の扉の前で立ちどまり少し考える。
ヤバい、とても緊張する。
こんなにも緊張するとは思わなかったぐらいに緊張している。
「あ!相棒~!!」
扉の前で緊張していると後ろから声が聞こえてくる。
「ローグか」
姿を見なくてもわかる、目覚めて食堂で会ってから久しぶりに聞いた呼び方と声に少し安堵する。
「もう傷の方は大丈夫なの?」
「ああ、心配かけたな」
「無事に良くなってよかったよ、三ヶ月も休んじゃうから本当に心配したんだから」
「あ、ありがとな……」
ローグの本当に心配する顔を見て申し訳なくなる。
「それより、なんで扉の前で突っ立ってたの?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
ローグのもっともな指摘に空笑いをして誤魔化す。
「入ろうよ」
「そ、そうだな」
ローグが先頭を切って教室の扉を開く。
久しぶりに見た教室の中は何も変わっておらず生徒は各々、自由なひと時を過ごしていた。
「お!レイルじゃないか!!」
「レイル君!怪我したって聞いたけど大丈夫?」
「三ヶ月も来ないからやめたと思ったぜ」
教室に入るなりクラスメートが俺の近くに来て話しかけてくる。
「ああ、もうすっかり良くなったよ。ありがとな」
クラスメートの労いの言葉に少し嬉しくながらいつもの席に行こうとする。
が、いつもの席の隣には物凄い形相で睨んでくるラミアがおり、一瞬足が止まる。
「あれ~?見間違いかな~、レイル君が学校にいる~」
ニコッと笑顔を作るがとても怖い。
「ひ、久しぶり?」
自然に笑顔を作ろうとしても顔の筋肉はいうことを聞かず引きつったものになる。
「おかしいな~、授業に出ることより大事なことがあるんじゃないんですか~?」
あの時のことをかなり根に持っているらしく、ラミアはとても嫌味ったらしく言ってくる。
「……」
返す言葉がないのなでここは無駄に言い返さず、黙ってラミアの文句を聞くことに徹する。
「おーし、始めるぞ~」
しばらくラミアの文句か罵倒なのかわからなくなってきた言葉を聞いていると救世主が教室の中に入ってくる。
「ちっ」
ラミアはまだ文句を言い足りないようで舌打ちをする。
た、助かった……。
そろそろ色々と限界だったのでタイラスが来てくれて本当に良かった。
「お!久しぶりに見る顔があるな」
タイラスは席に着いた俺を見てわざとらしく笑う。
「ど、どうも……」
「まあ、ギリギリってとこだな。レイル、お前はもう一回もサボれると思うなよ」
タイラスは黒いノートを見てそう言う。
「……はい」
こちらも返す言葉がないので返事をして誠意を見せる。
「よし、それじゃあ今日は…………」
タイラスはひとつ頷いて、授業を始める。
・
・
・
「……」
全くわからん。
心の中でボソッと呟き、絶望する。
まあ、当然だとは思った。何せ三ヶ月も授業をサボっていたのだから内容なんてわかるはずなんてないのだ。
それなのに何故か不思議といけるという謎の自信が俺の中にあったのだが恥ずかしくなってくる。
そろそろ午前中の授業が終わるはずなのだがタイラスは気分がいいのか珍しく座学だというのに授業の内容を熱弁していた。
まあ、なんの事だかは分からないのだが。
ポーン、ポーン。
タイラスが熱弁を続ける中、終わりを告げる鐘がなり、そこでタイラスは我に戻る。スッパリと話を切り上げて授業を終える。
「相棒、食堂行こうよ!」
授業が終わるなり直ぐにローグとマキアがこちらまで来てお誘いをしてくれる。
「ああ」
席を立ち上がりローグ、マキアと一緒に食堂へ向かう。
食堂へ向かう途中、後ろからものすごい眼力が飛んできたのは気のせいだと思いたい。
少し歩いて食堂に着くと、たくさんの生徒達で賑わっていた。
今まで人がいない時間帯に食堂を使っていたのでこの感じも懐かしく感じる。
「今日もアリスさん達の美味しいご飯が食べれるなんて僕は幸せ者だなー!!」
ローグは相も変わらずいつもの調子でこれも懐かしい。
角のテーブルがちょうど空いたので昼食を持って席に座る。今日のお昼の献立はサンドウィッチとコーンスープだ。
久しぶりに授業を受けたので腹の虫は早く食わせろとグーグー鳴る。
サンドウィッチを口に運ぼうとすると俺の隣の空いていた席に一人の少女がドカッと荒っぽい音をたてて座る。
少女は挨拶もなく座ったかと思えばサンドウィッチを持たない方の腕で俺の横っ腹にチクチクと肘鉄をかましてくる。
「いた、いたい、いたいな~」
わざとらしく痛いふりをしてみるが少女は器用にサンドウィッチを食べながら俺に高速で肘鉄をかますのを止めない。
「あのー、食べずらいんですけど……」
次は素直に抗議してみるが少女は肘鉄を止めずいつの間にかサンドウィッチとコーンスープを完食する。
いや、早くね?
そして何故か俺のサンドウィッチを肘鉄していた方の手で掻っ攫っていき、何食わぬ顔で食べ始める。
いや、それ俺の分ね。
驚異的なスピードで昼食を食べて、少女は颯爽と消えて行く。
「……相棒、ラミアに何かしたの?」
「相当怒ってましたね……」
二人は嵐のように去っていった少女に呆然とする。
それは俺が聞きたいよ。
今日、俺は久しぶりの学園に来ていた。日数にして三ヶ月ほどだろうか。
教室の扉の前で立ちどまり少し考える。
ヤバい、とても緊張する。
こんなにも緊張するとは思わなかったぐらいに緊張している。
「あ!相棒~!!」
扉の前で緊張していると後ろから声が聞こえてくる。
「ローグか」
姿を見なくてもわかる、目覚めて食堂で会ってから久しぶりに聞いた呼び方と声に少し安堵する。
「もう傷の方は大丈夫なの?」
「ああ、心配かけたな」
「無事に良くなってよかったよ、三ヶ月も休んじゃうから本当に心配したんだから」
「あ、ありがとな……」
ローグの本当に心配する顔を見て申し訳なくなる。
「それより、なんで扉の前で突っ立ってたの?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
ローグのもっともな指摘に空笑いをして誤魔化す。
「入ろうよ」
「そ、そうだな」
ローグが先頭を切って教室の扉を開く。
久しぶりに見た教室の中は何も変わっておらず生徒は各々、自由なひと時を過ごしていた。
「お!レイルじゃないか!!」
「レイル君!怪我したって聞いたけど大丈夫?」
「三ヶ月も来ないからやめたと思ったぜ」
教室に入るなりクラスメートが俺の近くに来て話しかけてくる。
「ああ、もうすっかり良くなったよ。ありがとな」
クラスメートの労いの言葉に少し嬉しくながらいつもの席に行こうとする。
が、いつもの席の隣には物凄い形相で睨んでくるラミアがおり、一瞬足が止まる。
「あれ~?見間違いかな~、レイル君が学校にいる~」
ニコッと笑顔を作るがとても怖い。
「ひ、久しぶり?」
自然に笑顔を作ろうとしても顔の筋肉はいうことを聞かず引きつったものになる。
「おかしいな~、授業に出ることより大事なことがあるんじゃないんですか~?」
あの時のことをかなり根に持っているらしく、ラミアはとても嫌味ったらしく言ってくる。
「……」
返す言葉がないのなでここは無駄に言い返さず、黙ってラミアの文句を聞くことに徹する。
「おーし、始めるぞ~」
しばらくラミアの文句か罵倒なのかわからなくなってきた言葉を聞いていると救世主が教室の中に入ってくる。
「ちっ」
ラミアはまだ文句を言い足りないようで舌打ちをする。
た、助かった……。
そろそろ色々と限界だったのでタイラスが来てくれて本当に良かった。
「お!久しぶりに見る顔があるな」
タイラスは席に着いた俺を見てわざとらしく笑う。
「ど、どうも……」
「まあ、ギリギリってとこだな。レイル、お前はもう一回もサボれると思うなよ」
タイラスは黒いノートを見てそう言う。
「……はい」
こちらも返す言葉がないので返事をして誠意を見せる。
「よし、それじゃあ今日は…………」
タイラスはひとつ頷いて、授業を始める。
・
・
・
「……」
全くわからん。
心の中でボソッと呟き、絶望する。
まあ、当然だとは思った。何せ三ヶ月も授業をサボっていたのだから内容なんてわかるはずなんてないのだ。
それなのに何故か不思議といけるという謎の自信が俺の中にあったのだが恥ずかしくなってくる。
そろそろ午前中の授業が終わるはずなのだがタイラスは気分がいいのか珍しく座学だというのに授業の内容を熱弁していた。
まあ、なんの事だかは分からないのだが。
ポーン、ポーン。
タイラスが熱弁を続ける中、終わりを告げる鐘がなり、そこでタイラスは我に戻る。スッパリと話を切り上げて授業を終える。
「相棒、食堂行こうよ!」
授業が終わるなり直ぐにローグとマキアがこちらまで来てお誘いをしてくれる。
「ああ」
席を立ち上がりローグ、マキアと一緒に食堂へ向かう。
食堂へ向かう途中、後ろからものすごい眼力が飛んできたのは気のせいだと思いたい。
少し歩いて食堂に着くと、たくさんの生徒達で賑わっていた。
今まで人がいない時間帯に食堂を使っていたのでこの感じも懐かしく感じる。
「今日もアリスさん達の美味しいご飯が食べれるなんて僕は幸せ者だなー!!」
ローグは相も変わらずいつもの調子でこれも懐かしい。
角のテーブルがちょうど空いたので昼食を持って席に座る。今日のお昼の献立はサンドウィッチとコーンスープだ。
久しぶりに授業を受けたので腹の虫は早く食わせろとグーグー鳴る。
サンドウィッチを口に運ぼうとすると俺の隣の空いていた席に一人の少女がドカッと荒っぽい音をたてて座る。
少女は挨拶もなく座ったかと思えばサンドウィッチを持たない方の腕で俺の横っ腹にチクチクと肘鉄をかましてくる。
「いた、いたい、いたいな~」
わざとらしく痛いふりをしてみるが少女は器用にサンドウィッチを食べながら俺に高速で肘鉄をかますのを止めない。
「あのー、食べずらいんですけど……」
次は素直に抗議してみるが少女は肘鉄を止めずいつの間にかサンドウィッチとコーンスープを完食する。
いや、早くね?
そして何故か俺のサンドウィッチを肘鉄していた方の手で掻っ攫っていき、何食わぬ顔で食べ始める。
いや、それ俺の分ね。
驚異的なスピードで昼食を食べて、少女は颯爽と消えて行く。
「……相棒、ラミアに何かしたの?」
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