森の中で偶然魔剣を拾いました。

EAT

文字の大きさ
上 下
25 / 110

24話 やはり少年は……

しおりを挟む
 今日であの人に心を奪われてから一週間だ。朝昼晩、どんな時でも彼女の笑顔が頭から離れない。
 僕に食事を配ってくれる時のあの深みのある優しく明るい笑顔が……。


「ローグまたアリスさんのことを思い出してたのか?」
 僕の唯一の同士が呆れた顔をして聞いてくる。
「ああ、目を閉じるたびに思い出してしまってね……」
「わかるぜ~、俺も人間だったらイチコロだぜありゃ」
 うんうんと激しく首を動かし同意してくれる。


「さて、今日こそはあの人の心を射止めてみせる!」
「その意気だローグ!!」
 学園指定の制服をきっちりと着て、愛しの人のところへ会いにいく。


 同じ歳ぐらいの女の子なんて別にどうでもいい。
 そう思い始めたのはいつ頃だったのかもう忘れてしまった。気がつけば僕は熟女にしか興味がなかった。


 友達からはその事でいじめられもしたけど僕は一度も熟女好きを恥じたことなんてない。


 アッシュとの出会いはとても不思議なものだったと思う。僕はいつも街の路地裏にあるゴミ捨て場でいじめられていた。罵声をあびせられ殴られ蹴られ、ボロボロにされて、反撃なんて考えもしなかった。やり返したら僕をいじめてた奴らとは一緒になる気がしたから。


 みぞおちに一発いいパンチをくらいお腹を抱えながら地面に突っ伏していると声が聞こえてきたんだ。


 "お前は間違ってなんかいない!!"
 ってそんな声がどこかから。


 気がつくと僕を思う存分甚振って飽きのか、いじめっ子達はどこかへ行ってしまい1人になった。


「お前は間違ってなんかないぜ!」
 今度ははっきりとそう聞こえて声の主を探す。


 声は大量のゴミの中から聞こえて僕は興味本位でそのゴミを掻き払っていった。
 しばらくすると中から一本の大きな斧が出てきてその斧から声がするのだ。


「お前の男気見せてもらったぜ!!」
「……君はなんなの?」
 普通、喋る武器なんて見つければビックリしてすぐにその場を離れるはずなのだがその日は何故か好奇心がそうさせなかった。


「俺?俺の名前はアッシュ。お前と同じ熟女を愛する、まあ同士みたいなもんだ!」
「武器なのに喋るし女の人が好きなの変だね……」
 つんつんと斧を指で突っついてみる。
「別に変じゃないさ、俺は武器であり悪魔だからな!」
 斧が大きな声でそう言うと突然目の前にひょろひょろの緑髪の人が現れる。
「うわ!」
 ビックリして思わず尻もちをついてしまう。


「そういえば、まだお前の名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」
 いきなり目の前に現れた人は地面に座り込む僕を見て手を貸してくれる。
「き、君は……?」
「おいおい、さっき自己紹介したろ。俺の名前はアッシュ、覚えたか?」
 ひょろひょろの男の人はさっきまでいたはずの斧と同じ名前を名乗る。


「で、お前は?」
 ひょろひょろ男、アッシュの腕をつかみ勢いよく立ち上がる。
「ぼ、僕の名前はローエングリン、みんなからはローグって呼ばれてる……」
 いまいち状況が掴めない中、自己紹介をした。
「そうか、よろしくなローグ!!」
 アッシュは太陽のように笑い僕の名前を呼んだ。


 これが僕とアッシュの出会いだった。

 ・
 ・
 ・

「ふう……」
 いつも彼女と会う時は緊張していまう。彼女を見た瞬間、心臓が飛び跳ねそうでたまらない。
 でもこの気持ちを胸の中に閉まっている方が心臓が飛び跳ねることよりも気持ちが悪く感じてしまって変な感覚だ。
 これが恋なのだろう。


 よし。
 心を決めて彼女が待つ食堂の中へと入る。


 今日も食堂には朝から熟女にナンパをするイケメンが愛を囁いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

処理中です...