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23話 少女は思いに耽ける
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目覚めはいつもいい方だ。
でも、今日はなんだか目覚めがあまりよろしくない。きっと昨日のせいだ、あの時邪魔が入らなければこんなにモヤモヤしなかったと思う。
「はあ……」
少女は深く溜息をつき昨日の出来事を思い返していた。
「珍しいな、お前が朝からため息なんて」
ベットから起き上がると赤く反り返る髪の毛が特徴的な厳つい目をした従者が立っていた。
「おはようガーロット」
彼女は素っ気なく挨拶をしてタオルを持ち、このモヤモヤを晴らすために風呂場へと行く。
キュッと蛇口をひねり暖かいお湯を上から浴びて、鼻歌交じりにシャワーをする。
これをしなければ朝が始まった気がせずこのシャワーのためだけに毎朝、早く起きている。
「はあ~」
先程の溜め息とは違いとても心地良さ気な声が漏れる。
五分ほどお湯を浴びてお風呂場をでる。そのままタオルで体を拭き私服に着替える。
「………」
しかし毎朝の日課を終えてもモヤモヤは消えてくれず、気分が落ち着かない。
「どうした浮かない顔して、何かあったのか?」
「……」
従者がご主人様の体調を心配するが心配されている当の本人は彼の言葉が聞こえていないのか返事をしない。
外に出よう。
ふと彼女はそう思いいたり準備をする。
準備と言っても気持ち程度のお金をポケットに詰めて終わりだ。
まだ乾き切っていない髪の毛で借りている部屋のドアを開ける。
「はあ、一言ぐらい何か言ったらどうですかご主人様?」
お金をポケットに入れた時点で外出することを察していた従者はわざとらしくそう言って彼女の後ろをついていく。
・
・
・
「………」
いつもなら楽しいはずの無意味な散歩も今日は全然楽しくない。
あのまま彼との戦いが続いていれば私の勝つことなんてわかっているのにモヤモヤがなくならない。
先程から街の中を歩きながら彼女はずっと昨日の少年との戦いを思い出していた。
傍から観れば物思いに耽ける美少女という構図にすれ違う人々は彼女に目を奪われる。
「ねえねえ、そんなムズい顔をしてどしたの~?暇なら俺たちと遊ばね?」
一人のチャラついた男3人組が彼女に近づく。
「………」
しかし彼女は3人組の男を気にもせず無視して通り過ぎる。
「ちょちょ、無視はドイヒーじゃね?」
少し強引に彼女の肩を掴み通り過ぎようとするのを引き止める。
……しつこい。
「ねえ、今ちょっと大事なこと考えてるから消えてくれない……?」
少女がするとは到底思えないほど荒んだ目で3人組の男を睨み、そのままなにか言えば殺されそうなほどの威圧を向ける。
「「「す、すみませんでした……」」」
3人組のチャラついた男達は彼女の殺気に呑まれその場で呆然としてしまう。
そのうちの一人はズボンを盛大に濡らし足をガクガクと震わせる。
「おい、やりすぎだぜラミア」
「………」
少女は従者の言葉に返事もせずただ意味もなく道を進む。
なんでこんなに気になるんだろう、彼は私よりも弱いはずなのに今まではこんなことなんてなかった。私はただ強い人と戦えればそれで満足だった。それで言えば剣戟との戦いはビリビリと痺れる最高の舞台だった。それを思えば昨日のものは格段に質が落ちるのになぜ……。
彼が一番最初に作られた魔装機の持ち主だから?……きっとそれもある。でもそれ以外にもなにか私では到底想像できないものを秘めている気がする。
気になる。
「おい、そっちは行き止まりだぞ」
気づくと彼女は見知らぬ路地裏の袋小路まで足を運んでいた。
気になる。
しかし彼女はやはり従者の言葉に返答せずそのまま足を止めてその場に佇む。
「おい、本当にどうしたんだ今日は?」
返事が返ってこないとわかっていながらも従者は主人に言葉をかける。
決めた。
「ガーロット、私決めたよ」
主人は従者にやっと口を開きいきなり訳の分からないことを言う。
「決めたって、何を?」
従者は呆れた顔をしながら聞き返す。彼女がこんな感じなのはいつもの事なので気にもしていない。
「私、彼のこと知りたい。だから調べる!」
そう宣言して彼女は回れ右をして来た道をもどり始める。
「彼って昨日のやつか?」
「うん、レイル君」
「そうか、好きにしろ。俺はアンタについて行くだけだ」
従者はただ主人の言葉を肯定して後ろからついて行く。
ただ意味もなく主人の気のゆくままに彼らは歩き始めた。
でも、今日はなんだか目覚めがあまりよろしくない。きっと昨日のせいだ、あの時邪魔が入らなければこんなにモヤモヤしなかったと思う。
「はあ……」
少女は深く溜息をつき昨日の出来事を思い返していた。
「珍しいな、お前が朝からため息なんて」
ベットから起き上がると赤く反り返る髪の毛が特徴的な厳つい目をした従者が立っていた。
「おはようガーロット」
彼女は素っ気なく挨拶をしてタオルを持ち、このモヤモヤを晴らすために風呂場へと行く。
キュッと蛇口をひねり暖かいお湯を上から浴びて、鼻歌交じりにシャワーをする。
これをしなければ朝が始まった気がせずこのシャワーのためだけに毎朝、早く起きている。
「はあ~」
先程の溜め息とは違いとても心地良さ気な声が漏れる。
五分ほどお湯を浴びてお風呂場をでる。そのままタオルで体を拭き私服に着替える。
「………」
しかし毎朝の日課を終えてもモヤモヤは消えてくれず、気分が落ち着かない。
「どうした浮かない顔して、何かあったのか?」
「……」
従者がご主人様の体調を心配するが心配されている当の本人は彼の言葉が聞こえていないのか返事をしない。
外に出よう。
ふと彼女はそう思いいたり準備をする。
準備と言っても気持ち程度のお金をポケットに詰めて終わりだ。
まだ乾き切っていない髪の毛で借りている部屋のドアを開ける。
「はあ、一言ぐらい何か言ったらどうですかご主人様?」
お金をポケットに入れた時点で外出することを察していた従者はわざとらしくそう言って彼女の後ろをついていく。
・
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「………」
いつもなら楽しいはずの無意味な散歩も今日は全然楽しくない。
あのまま彼との戦いが続いていれば私の勝つことなんてわかっているのにモヤモヤがなくならない。
先程から街の中を歩きながら彼女はずっと昨日の少年との戦いを思い出していた。
傍から観れば物思いに耽ける美少女という構図にすれ違う人々は彼女に目を奪われる。
「ねえねえ、そんなムズい顔をしてどしたの~?暇なら俺たちと遊ばね?」
一人のチャラついた男3人組が彼女に近づく。
「………」
しかし彼女は3人組の男を気にもせず無視して通り過ぎる。
「ちょちょ、無視はドイヒーじゃね?」
少し強引に彼女の肩を掴み通り過ぎようとするのを引き止める。
……しつこい。
「ねえ、今ちょっと大事なこと考えてるから消えてくれない……?」
少女がするとは到底思えないほど荒んだ目で3人組の男を睨み、そのままなにか言えば殺されそうなほどの威圧を向ける。
「「「す、すみませんでした……」」」
3人組のチャラついた男達は彼女の殺気に呑まれその場で呆然としてしまう。
そのうちの一人はズボンを盛大に濡らし足をガクガクと震わせる。
「おい、やりすぎだぜラミア」
「………」
少女は従者の言葉に返事もせずただ意味もなく道を進む。
なんでこんなに気になるんだろう、彼は私よりも弱いはずなのに今まではこんなことなんてなかった。私はただ強い人と戦えればそれで満足だった。それで言えば剣戟との戦いはビリビリと痺れる最高の舞台だった。それを思えば昨日のものは格段に質が落ちるのになぜ……。
彼が一番最初に作られた魔装機の持ち主だから?……きっとそれもある。でもそれ以外にもなにか私では到底想像できないものを秘めている気がする。
気になる。
「おい、そっちは行き止まりだぞ」
気づくと彼女は見知らぬ路地裏の袋小路まで足を運んでいた。
気になる。
しかし彼女はやはり従者の言葉に返答せずそのまま足を止めてその場に佇む。
「おい、本当にどうしたんだ今日は?」
返事が返ってこないとわかっていながらも従者は主人に言葉をかける。
決めた。
「ガーロット、私決めたよ」
主人は従者にやっと口を開きいきなり訳の分からないことを言う。
「決めたって、何を?」
従者は呆れた顔をしながら聞き返す。彼女がこんな感じなのはいつもの事なので気にもしていない。
「私、彼のこと知りたい。だから調べる!」
そう宣言して彼女は回れ右をして来た道をもどり始める。
「彼って昨日のやつか?」
「うん、レイル君」
「そうか、好きにしろ。俺はアンタについて行くだけだ」
従者はただ主人の言葉を肯定して後ろからついて行く。
ただ意味もなく主人の気のゆくままに彼らは歩き始めた。
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