森の中で偶然魔剣を拾いました。

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19話 戦斧の魔装機使いは〇〇がお好き

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 学園が本格的に始まって2週間ほど経過した。担任が剣戟のタイラスだとは驚いたが意外と言っていいものかわからないが授業は普通だった。なんならわかりやすいまである。
 さすが精鋭部隊アルバーンの元騎士団長と言うべきか、戦闘だけではなく頭も相当キレるみたいだ。


 今日は少し早く起きてのんびりと朝食をとろうと思い、まだ人の少ない食堂へと向かう。
 食堂に入ると人がチラホラとしかおらず並ばなくてもすぐにご飯を受け取る事が出来る。


 こんがり美味しそうな焼き目のついたパンにキャベツとセロリのスープ、目玉焼きにベーコンと今日も豪華な朝食だ。


「今日もとても綺麗ですねマリアさん、僕と結婚してくれません?」
 適当に席に座ろうとすると後ろから朝から甘く甘美な声で食堂のおばさんを口説こうとする男がいる。


「ん?」
 穏やかな朝の食堂で場違い?な言葉が聞こえたので思わず後ろをむく。
 そこには俺より幾分か背の高い青髪の超絶イケメンが朝から食堂のおばさん方をナンパしていた。


 あれーおかしいなー、俺はまだ寝ぼけてるのかなー?超絶イケメンの男が朝から食堂のおばさんを口説いてるぞ~?なんでだろー、不思議だなー、若くて綺麗なお姉さんもいるのにそっちに見向きもしないぞー?


「もう! ローグ君は上手なんだから~。はい、パン一個おまけしてあげるわ」
 頬を赤く染めながらイケメンの食器にパンをひとつ入れる。


 あ、なんだ、ああやってお世辞を言ってご飯を多くもらう作戦か。びっくりさせるなよ。
 イケメンの意図がわかり前を向き席を探し直す。


「違う! 僕が欲しいのはこんなパンじゃなくてあなたの愛だけなんだ!!!」
 イケメンはひとつ多いパンを食堂のおばさんに返し、大袈裟にそんなことを言う。
「もう、これ以上褒めても何も出ないわよ。さあ、後ろが詰まってるから席に行きなさい」
 おばさんは困った顔をしてイケメンを宥める。


「うっ! 確かに貴方を困らせるのは僕も本意ではない。今日のところはここまでにさせてもらうけど必ず僕は貴方の愛を手に入れてみせる!!」
 イケメンは去り際におばさんの手の甲にキスをしてから席に向かう。
「こんなおばさん本気にさせてどうするのよ……」
 満更でもないようで先ほどより頬を赤く染める。


 ……なにこれ?
 きっと食堂にいた生徒全員がそう思っていたに違いない。

 ・
 ・
 ・

「はあー」
 教室へ入り1番上の窓際の席へと座り大きくため息をする。
 言っては悪いが朝から変なものを見て俺の気分は靄がかかったように暗かった。


「どうしたの? なんかげっそりした顔してるけど」
 隣に座ったラミアが声をかけてくる。
「ああ、大丈夫。ちょっとあるものを見ただけ……」
「あるもの?」
 ラミアは眉間に皺を寄せ首をかしげる。


「うーし、始めるぞー」
 げっそりしているとタイラスが分厚い本を持ち教室に入ってくる。
「よし、今日は32ページから開けー、それじゃあ………」
 そのまま魔法学の授業が始まった。


 タイラスの授業はわかりやすいのだがこの魔法学だけは理解に苦しんでいる。
 人間の中には魔力が~とか詠唱を用いて外界の魔力量を~とか訳の分からないことを大雑把になんとなく説明されるのでもう無理だ。ラミア曰くタイラスの説明は細かく説明されててわかりやすいらしいが俺には理解が難しい。


 それでも一人だけ授業に置いてきぼりはいやなので板書をしっかりと書き留めたり説明はしっかり聞いておく。
 なんとなく隣のラミアを見ると顔を伏せてご就寝のようだ。


「……」
 怒られても知らんぞ。そう頭の中で忠告して授業に集中する。



「終わった~」
 午前中の授業が全て終わり一息つく。
「お昼だね~、学食いこ?」
 魔法学の授業からずっと爆睡してた少女はムクリと体を起こし立ち上がる。
「もうお腹ペコペコだよ~」
「ずっと寝てただけのような気がするんですが?」
「寝ながら授業は聞いてたよ~」
「それは寝てたというのか?」
 そんなやり取りをしながら自然と食堂へと足を運ぶ。

 ・
 ・
 ・

 昼食を取り終え、本日最後の授業を受けるべく外にある運動場へと向かう。
 この学園にはいくつかの運動場があり、ほかのクラスは合同で運動場を使うそうなのだが、俺たちAクラスはAクラス用の運動場が用意されていてかなり高待遇だ。
 実技試験を行った時の運動場より数倍大きく他のクラスの生徒達に悪い気がしてらない。


「よし、じゃあ準備運動して男は2000m走、女は1800m走だ。男女ともにタイムを2分きったものからから武器を使って実戦形式の戦闘訓練だ。2分切らなかったものは終わるまでずっと走ってろ」
 深く伸脚をしながらタイラスは本日の行う内容を大まかに説明する。


 しっかりと準備運動をしてスタートラインの白線に何列か作り並ぶ、タイラスの掛け声で一斉に走る。この運動上の1周がちょうど1000mなのでそれを目安に先頭組に離されない程度の速度で走る。


 しかし自分としては普通に走っているつもりなのだが先頭組の中でも頭一つ抜け出て、すぐにかなりの距離が開いてしまう。


 おかしい、普通に走ってるつもりなんだけどなんでこんなに差が開いているんだ?これも魔装機の力なのかな?


 一定のペースを保ちながらそんなことを考えて、右からなにかの気配がするので目線をそちらの方にやると、今朝の食堂で見たイケメンナンパ野郎が俺の隣を走っていた。


「うお!! ナンパ野郎!?」
 突然後ろからそいつが現れたのでつい口からそんな言葉が漏れていまう。
「なにそのナンパ野郎って? 僕のこと?」
 心外だと言わんばかりの不満そうな顔をしながらイケメンが俺の隣を走る。


 やばい、聞かれてたか………。
「いやっ、えっと、その~。キミ、今朝食堂にいたよね?」
 明後日の方向に目をそらし誤魔化す。
「あ、見られちゃってた? いやー、お恥ずかしい僕の愛の嘆きを見られていたなんて!」
「は?」
 愛の、嘆き………?


「君も男ならわかるだろう?あんなに美しい人がいたらついつい声をかけたくなっていまう」
 イケメンは天を仰ぎながら熱く語り始める。
「う、美しい?」
 このイケメンが美しいと言っている人がもしあの食堂のおばさんの事だとしたら申し訳ないのだかお世辞にもそうは思えなかった。前は大変麗しゅうござんしたのでしょうけど今は年相応の体型と容姿をしていると思う。


「あ、あははははは。そうだな……」
 何も言えず乾いた笑いしか出てこない。
「そうか!君もそう思うか!!君はなかなか見る目があるな」
 イケメンは同調したのが嬉しかったのか走りながら俺の肩を掴んでくる。いや、邪魔だよ。
「は!もしかして君も食堂のアリスさんを狙っているのか!?」
 そしてイケメンは突然そんな飛躍したことを言い出した。いや、なぜそうなる。


「よし、レイル、ローエングリン、合格だ。模擬戦やるから武器を持ってこい」
 そんなやり取りをしていると余裕綽々と2000m走を走り終わり、タイラスがこちらにやってくる。


「ふっ。早くも決着をつける時が来たようだな」
「は?」
 なんの話しだ?
「とぼけるなよ、この戦いでどちらがアリスさんにふさわしい男か決めようじゃないか!!」
 また訳の分からないことを言い始めた、てかそんな大きな声で言わないで勘違いれるだろ!


 そんなこんなで何故か食堂のマドンナ?のアリスさんを巡っての模擬戦がはじまることになった。

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