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6話 彼女の証明2
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気がつくと自分の足元には魔物の死体が転がっていた。
「終わっ……た?」
倒すことに夢中で自分がどの手順でどうやって魔猪を倒したのか記憶が曖昧だった。
このバケモノたちを自分が倒した実感が全くわかず夢でも見ているような気分だった。
「お疲れ様ですマスター、とても素晴らしい戦いでした」
ぼうっとその場に佇む俺にアニスが剣から少女の姿に戻り声をかけてきた。
「お、おう、でもこれはアニスのおかげだ。俺は農民だからこんな力は元々ないんだ」
「いえ、そんなことは……」
俺の言葉を聞いてアニスは否定気味に言う。
「いや、そんなことはある! これでアニスが駄目じゃないって証明できたな、アニスがいなかったら俺はいまここで屍になってたろうな。ありがとうアニス」
アニスの謙遜の言葉を遮り俺が感謝の言葉を言うとアニスはポロポロと涙を流し泣き出してしまった。
「ア、アニス!? どうしたどっか怪我でもしたのか!?」
いきなり泣き出してしまったので驚いてしまう。
「い、いえ大丈夫…です。その、嬉しくて。初めて誰かの役に立ててわたし……」
彼女の泣きながらも嬉しそうな顔とその言葉を聞いて泣いている理由を理解した。
彼女は300年生きてきて今、初めて誰かの役に立てたのだ。
自分が武器として駄作ではないと少しでも実感したのだ。
その嬉しさが彼女にとってどれだけのものかは自分には測り知れないけど彼女にもっと生きることの喜びを教えてあげたいとそう思った。
「レイル大丈夫だったか!? というかお前さっきの戦い……それにそのお嬢ちゃんはいったい……?」
アニスが泣くのに未だ戸惑っているとさっきまで一緒に戦ったガーディアがこちらにやってきた。
ガーディアは状況が理解できないと言ったような少しあわてた口調でこちらに質問を投げつけてきた。
「えっと、それは……」
何と言えばいいのか分からず考えていると突然視界がぼやけ、しっかりと足に力を入れていられなくなる。
「ま、マスター!?」
「おい!どうしたレイル!?」
アニスとガーディアのあわてた声が聞こえなんとか倒れるのを我慢したが、どんどん目の前が霞んでいきその場に倒れてしまう。
あれ?どうしたんだ、さっきまで何ともなかったのにいきなりどうして?
なんとか立ち上がろうとするが体は全く言うことを聞かず、意識ははずるずると闇に引きずり込まれそこで完全に意識がなくなる。
・
・
・
目が覚めるとそこは見慣れた天井だった。
魔物を倒した後、俺は地面に倒れて家まで運ばれたようだ。
「……」
まだ意識がはっきりとしない中、窓から射す陽の光に目を細めながら体を起こす。窓の外を見ると村の人達が家や畑の修復をしていた。それを何となく眺めていると扉の開く音がする。
「失礼しますマスター」
アニスは静かに扉を開けて落ち着いた様子で部屋に入ってきた。
「おはようアニス、昨日はごめんないきなり倒れたりして」
昨日か一昨日かどれくらい時間が経ったのかわからないがとリあえずアニスにお礼を言う。
「マ、マスターお体はもう大丈夫なのですか!? すぐにお母様をお呼びいたしますので!」
俺が目を覚ましていることに驚いた様子でアニスはステラを呼びに行こうとする。
「え、あ、ちょ……」
呼び止めようとするがその声は全く届かず、アニスは扉を開けっ放しにしてステラを呼びに行ってしまった。
少しするとステラがドタドタと大きな足音を立てて部屋に入ってきた。
「本当にあんたはバカ息子だよ! 一体どれだけ人を心配させるつもりだい!」
ステラは開幕早々、憤怒の雄叫びをあげる。
「いや、それが倒れて帰ってきた息子にかける第一声かよ!?」
「なんだいその口の聞き方は! 私がどれだけ心配したと思って……」
さっきまで猛獣が雄叫びをあげるように怒っていたのにいきなり小動物のようにしおらしくなってしまった。
「いや、ごめん母さんまた心配かけて」
「今回ばかりは許しません! 大体あんたは……」
ステラは完全にお説教モードになりもう俺ではどうすることもできなかった。
ステラの説教を甘んじて受け入れようとするとそこに一人の救世主が現れる。
「まあまあステラ、そのへんにしてやれレイルのおかげでこうして平和な今日があるんだ」
部屋に入ってきた救世主はガーディアだった。
「ガーディアさん、でもねぇ~」
納得がいかないという様な声でステラは言う。
「レイルもこの村を守るために頑張ったんだ、それを責めてはいけない。むしろその勇気を称えるべきだ」
「おお! 救世主……!」
俺が歓喜の声を上げているとガーディアが、
「レイル体の調子はどうだ?」
とこちらの心配をしてくれた。
「ありがとうガーディア、ここまで運んできてくれたんだろ? 体の方は問題ないよ」
「そうか、それならよかった。……それでいきなりで申し訳ないんだが村長の家まであのお嬢ちゃんと一緒に来てくれないか?」
ガーディアは申し訳なさそうな顔をして言ってきた。
「昨日のこと?」
ガーディアは無言で頷いた。
「わかった、すぐに準備をしていくよ」
俺はベットから立ち上がり準備を始めようとする。
「すまんな、もう少し休ませてやりたいのだが……」
「気にしなくていいよ、ガーディアは何も悪くない」
「そう言ってもらえると助かる。では村長の家で待っているぞ」
ガーディアはステラと一緒に部屋を出ていった。
そして準備を整え、食卓テーブルの椅子にぼうっと座っていたアニスと一緒に村長のところへ向かう。
「終わっ……た?」
倒すことに夢中で自分がどの手順でどうやって魔猪を倒したのか記憶が曖昧だった。
このバケモノたちを自分が倒した実感が全くわかず夢でも見ているような気分だった。
「お疲れ様ですマスター、とても素晴らしい戦いでした」
ぼうっとその場に佇む俺にアニスが剣から少女の姿に戻り声をかけてきた。
「お、おう、でもこれはアニスのおかげだ。俺は農民だからこんな力は元々ないんだ」
「いえ、そんなことは……」
俺の言葉を聞いてアニスは否定気味に言う。
「いや、そんなことはある! これでアニスが駄目じゃないって証明できたな、アニスがいなかったら俺はいまここで屍になってたろうな。ありがとうアニス」
アニスの謙遜の言葉を遮り俺が感謝の言葉を言うとアニスはポロポロと涙を流し泣き出してしまった。
「ア、アニス!? どうしたどっか怪我でもしたのか!?」
いきなり泣き出してしまったので驚いてしまう。
「い、いえ大丈夫…です。その、嬉しくて。初めて誰かの役に立ててわたし……」
彼女の泣きながらも嬉しそうな顔とその言葉を聞いて泣いている理由を理解した。
彼女は300年生きてきて今、初めて誰かの役に立てたのだ。
自分が武器として駄作ではないと少しでも実感したのだ。
その嬉しさが彼女にとってどれだけのものかは自分には測り知れないけど彼女にもっと生きることの喜びを教えてあげたいとそう思った。
「レイル大丈夫だったか!? というかお前さっきの戦い……それにそのお嬢ちゃんはいったい……?」
アニスが泣くのに未だ戸惑っているとさっきまで一緒に戦ったガーディアがこちらにやってきた。
ガーディアは状況が理解できないと言ったような少しあわてた口調でこちらに質問を投げつけてきた。
「えっと、それは……」
何と言えばいいのか分からず考えていると突然視界がぼやけ、しっかりと足に力を入れていられなくなる。
「ま、マスター!?」
「おい!どうしたレイル!?」
アニスとガーディアのあわてた声が聞こえなんとか倒れるのを我慢したが、どんどん目の前が霞んでいきその場に倒れてしまう。
あれ?どうしたんだ、さっきまで何ともなかったのにいきなりどうして?
なんとか立ち上がろうとするが体は全く言うことを聞かず、意識ははずるずると闇に引きずり込まれそこで完全に意識がなくなる。
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目が覚めるとそこは見慣れた天井だった。
魔物を倒した後、俺は地面に倒れて家まで運ばれたようだ。
「……」
まだ意識がはっきりとしない中、窓から射す陽の光に目を細めながら体を起こす。窓の外を見ると村の人達が家や畑の修復をしていた。それを何となく眺めていると扉の開く音がする。
「失礼しますマスター」
アニスは静かに扉を開けて落ち着いた様子で部屋に入ってきた。
「おはようアニス、昨日はごめんないきなり倒れたりして」
昨日か一昨日かどれくらい時間が経ったのかわからないがとリあえずアニスにお礼を言う。
「マ、マスターお体はもう大丈夫なのですか!? すぐにお母様をお呼びいたしますので!」
俺が目を覚ましていることに驚いた様子でアニスはステラを呼びに行こうとする。
「え、あ、ちょ……」
呼び止めようとするがその声は全く届かず、アニスは扉を開けっ放しにしてステラを呼びに行ってしまった。
少しするとステラがドタドタと大きな足音を立てて部屋に入ってきた。
「本当にあんたはバカ息子だよ! 一体どれだけ人を心配させるつもりだい!」
ステラは開幕早々、憤怒の雄叫びをあげる。
「いや、それが倒れて帰ってきた息子にかける第一声かよ!?」
「なんだいその口の聞き方は! 私がどれだけ心配したと思って……」
さっきまで猛獣が雄叫びをあげるように怒っていたのにいきなり小動物のようにしおらしくなってしまった。
「いや、ごめん母さんまた心配かけて」
「今回ばかりは許しません! 大体あんたは……」
ステラは完全にお説教モードになりもう俺ではどうすることもできなかった。
ステラの説教を甘んじて受け入れようとするとそこに一人の救世主が現れる。
「まあまあステラ、そのへんにしてやれレイルのおかげでこうして平和な今日があるんだ」
部屋に入ってきた救世主はガーディアだった。
「ガーディアさん、でもねぇ~」
納得がいかないという様な声でステラは言う。
「レイルもこの村を守るために頑張ったんだ、それを責めてはいけない。むしろその勇気を称えるべきだ」
「おお! 救世主……!」
俺が歓喜の声を上げているとガーディアが、
「レイル体の調子はどうだ?」
とこちらの心配をしてくれた。
「ありがとうガーディア、ここまで運んできてくれたんだろ? 体の方は問題ないよ」
「そうか、それならよかった。……それでいきなりで申し訳ないんだが村長の家まであのお嬢ちゃんと一緒に来てくれないか?」
ガーディアは申し訳なさそうな顔をして言ってきた。
「昨日のこと?」
ガーディアは無言で頷いた。
「わかった、すぐに準備をしていくよ」
俺はベットから立ち上がり準備を始めようとする。
「すまんな、もう少し休ませてやりたいのだが……」
「気にしなくていいよ、ガーディアは何も悪くない」
「そう言ってもらえると助かる。では村長の家で待っているぞ」
ガーディアはステラと一緒に部屋を出ていった。
そして準備を整え、食卓テーブルの椅子にぼうっと座っていたアニスと一緒に村長のところへ向かう。
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