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第一章 大迷宮クレバス
42話 手続き
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恙無く昼食を終えて、メインカウンターへの受付の列へと並ぶ。
まだ時間は昼食時真っ只中。
それもあってか受付よりも酒場の方が人で賑わっている。
メインカウンターの受付を待つ列に並んでいると言っても、自分の前には一組の探索者が現在進行形で受付嬢に対応してもらっているだけで、直ぐに自分の番は回ってきそうだ。
「キュキュッ!」
「ふふっ。ふわふわで可愛い……」
そんなもうすぐ回ってくるであろう待ち時間。
隣からは真っ白な毛玉と可憐な女の子が楽しげに戯れている声がする。
可愛いと可愛いの共演。
これはもう完璧としかいいようがない。
癒されて半端ない。癒されすぎて俺の穢れた心が浄化して消えてしまいそうなくらいだ。
……と、まあこんな感じで思考が意味不明な事になるぐらい、隣で今も繰り広げられている光景は破壊力がすごい。
ココ最近、俺のコートの中が生活圏になりつつあるラーナをアイリスに紹介したところ。一人と一匹は先程からこうして戯れあっていることから分かる通り、一瞬で打ち解けた。
ラーナを初めて見せた時のアイリスの反応は面白かった。
彼女も世間では『静剣』などと呼ばれてこの迷宮都市クレバスでは色々な意味で恐れられているが、可愛い生き物には弱かった。
恐らく、大迷宮の中でならば彼女はいくら見た目が可愛いモンスターと言えど容赦はしないのだろうが、モンスターを滅多に見ることの無い街中……しかも白くてふわふわの生き物となれば別のようだ。
もうすっかりラーナの魅力の虜になっていた。
「はぁ……いくらでも触っていられる……」
「キュ~ィ!」
恍惚とした顔でラーナに頬擦りをするアイリス。それを気持ちよさそうに目を細めてされるがままのラーナ。
ここまで無防備なアイリスは珍しい。
これもラーナが為せる可愛さと言う奴なのか……やりおる……。
なんて事を考えていると目の前で対応をしてもらっていた四人組の探索者達がカウンターから離れて酒場へと移動していく。
「次の方どうぞ~」
どうやら前にいた探索者達の要件は終わり、自分たちの番が回ってきた。
受付嬢の溌剌とした声で空いた前のスペースに詰める。
「ようこそ探索者協会クレバス支部へ! 本日はどのようなご要件ですか?」
太陽のように明るい……と在り来りな例えが浮かんでくるほど見事な笑顔をして要件を尋ねてくる受付嬢。
そんな受付嬢の久方ぶりに聞いた決まり文句に感動しながら手短に要件を告げようとしたところで気づく。
「……あれ? マリーカさん?」
今目の前で完璧な営業スマイルを浮かべている受付嬢は以前からそこそこ話す機会のあった亜麻色のお団子髪と丸メガネがよく似合った女性マリーカ・ヨーフェルだということに。
「あれ? 新規の方じゃない……って、ファイクさん!?」
流石は人の顔を覚えるのも仕事のうちの一つな職業。向こうも営業スマイルを少し崩してまじまじとこちらの顔を観察すると直ぐにこっち気づく。
「どうもお久しぶりです。元気にしてました?」
「「元気にしてました?」じゃないですよ!! え?なんでここにいるんですか!? 迷宮でぽっくり死んだんじゃなかったんですか!?」
軽く手を挙げて挨拶をするとマリーカはカウンターから身を乗り出して驚いた様子だ。
「ぽっくり死んだんじゃ……って酷いなぁ~。そりゃまあ少し長い間迷宮に潜って顔見せてませんでしたけど、そんなに言います?」
「少し長い間って全然少しじゃないですけどね!? 一年ですよ、一年!! 結構な数の捜索隊を使って探したのに見つからないと思ってたのに……どういう事ですか!!?」
冗談交じりに笑って返す俺にマリーカは半ばキレ気味にそう返してくる。
うむ。俺の登場にかなり気が動転しているようだ。
「どういう事ですか?って聞かれたらそりゃあ色々と積もる話が有るような無いような? ……とりあえず今日はそっち方面の手続きをしに来たんですよ。いや~受付がマリーカさんで良かったぁ~。話が早くて助かります」
「……なんでさっきからそんな軽いノリなんですか……騒いでる私がバカみたいじゃないですか……」
「騒ぐのは昨日のうちに済ませといたんで」
軽いノリで返しているとマリーカも冷静さを取り戻してきたようで、カウンターに乗り出していた身体を定位置に戻す。
「はあ……少し取り乱してしまいました。それではファイクさん、改めてご要件をお伺いしても?」
「あ、はい。ちょうど去年の今頃、大迷宮から帰ってこず探協から死亡扱いになった、Fランク探索者ファイク・スフォルツォ。昨日、大迷宮クレバスから無事帰還しました。今日はその報告と死亡者リストの手続きしに来ました」
「かしこまりました。それではトレジャーバッチの提示をお願いします」
要件を聞くとマリーカは一つ頷きそう言う。
彼女に言われた通り胸ポケットから探索者の証であるトレジャーバッチを取り出して、手渡す。
「それではここで少しお待ちください。何分、こういった手続きは数が少ないので時間がかかりそうな場合はお伝えします」
「分かりました。お願いします」
マリーカの注意に頷いて奥へとバッチを持って行った彼女を見送る。
確かに死亡リストの取り消しをしに来る探索者は年間でどれくらいいるのだろうか。
少なくとも今年のその第一号は自分だろう。何とも不名誉な一号だ。
「……」
しかしこういった手続きなども全部トレジャーバッチの確認だけで済んでしまうとはとても便利だ。アレを専用の魔導具で読み取るだけでその人の個人情報やどの階層まで到達・踏破したのかが簡単に分かる。
普通は厳正な事情聴取や取り調べが必要なはずなのに、それが無いなんてお手軽すぎる。
"おい。まずいんじゃないか?"
"……は? 何が?"
こう言ったところだけは魔導具様々だ。と感心していると嗄れた声が脳内に響く。
"あのバッチが大迷宮に関する記録を保存しているんなら、深層の事がバレるんじゃないのか? 当初の予定ではとりあえずあの大迷宮を攻略してないことにするんじゃなかったか?"
「あ…………」
そこまで言われて気づく。
俺はとんでもないことやらかしたのではなかろうか。
「ファイクさん?」
「キュ?」
俺の間抜けな声を聞いて不思議そうに一人と一匹が小首を傾げるが、それにも反応できない。
当初の予定は全てをアイリスに話して、それが終わったらやんわりと誤魔化しつつ死亡の手続きをして、本日の予定は終了、それから次の準備をする筈だった。だがトレジャーバッチの仕様を改めて考えていなかった。
各階層のセーフティポイントにある記録石碑にトレジャーバッチをかざせば到達した階層や踏破した階層の記録をしてくれる。
もちろん俺は深層の記録石碑でしっかりと記録しているし、トレジャーバッチには深層の記録が残っている。
この便利な機能を忘れていた。
……アホだ。
これはまずい、まずすぎる。
トレジャーバッチの記録を確認されれば話を誤魔化してなあなあにするどころか全部筒抜けで、当初の予定から大きくズレてしまう。
「………」
俺の持ちうる経験と知識を総動員させてこの凡ミスをどう対処するか考える。
実際の時間にして10秒も経っていない。然れど俺の体感時間はその思考で何十分、何時間にも錯覚してしまう。
「…………逃げよう──」
そして悟る。
俺にはこのミスを完璧にリカバリーする妙案は思いつかないことに。
「え?」
「キュ?」
唐突な発言にさらに一人と一匹の表情が曇っていく。
「──うん、そうしよう。今ならまだ間に合う。俺は生きて帰ってこなかった……そういうことにしよう……」
譫言のように零れ出る言葉。現実逃避は止まらない。
自然と身体は回れ右をして出口を目指そうとする。
次の瞬間には猛ダッシュする覚悟を決めて、両脚に力を込めようとした瞬間──、
「どういうことにするんだ?」
──逃げ出そうとする俺の肩を力強く掴んだ寛闊声が真後ろからする。
「……」
ギギギ、と噛み合わせの悪い歯車の擬音が聞こえてきそうなほどぎこちなく首を後ろに回してみれば、そこにはニッコリ笑顔の厳ついオッサンがいた。
「お前がクラン『静謐なる影法師』のリーダー、そして一年越しに大迷宮から帰還したファイク・スフォルツォだな」
「……いや~そんなクランのリーダーになった覚えはないんですけど……人違いじゃないです?」
『静謐なる影法師』……はてなんの事やら。
至近距離で尋ねてきたオッサンに被りを振って何とか離れようとする。
しかしオッサンの腕は俺の肩をガッシリと鷲掴みにして離そうとしない。
……このオッサン力強すぎないか!?
「ふむ……人違いと、そうか。隣に『静剣』を侍らせておいてよくそんなすぐバレるようなウソをついたもんだ」
「ちょっ……侍らせ──」
それは人聞きが悪いし誤解でしかない。別に俺はアイリスと主従の関係ではない。
「あー、文句は後で受けつける。今は黙ってこい。お前に拒否権はない。『静剣』も着いてこいコイツの仲間なんだろ?」
「はい。私の大事なフィアンセです」
「……カハハッ! あの『静剣』のフィアンセか! そいつはますます聞きたいことが出てきたな!!」
肩から首根っこを掴まれて軽々と持ち上げられる。こうなってしまってはもう穏便な方法での脱出は不可能だ。
……というか色々とツッコミどころ満載なんですが。
「よし。そんじゃあ上の局長室に行くぞ。そこでゆっくり訊問だ」
「えっ、ちょっ───」
今なんだかとてもカンジの悪い聞こえ方したけど大丈夫だよね?
俺、無事に生きて帰れるよね?
不気味なオッサンの物言いに身の危険を感じながら、俺は為す術なく『キョクチョウシツ』とやらに連行された。
まだ時間は昼食時真っ只中。
それもあってか受付よりも酒場の方が人で賑わっている。
メインカウンターの受付を待つ列に並んでいると言っても、自分の前には一組の探索者が現在進行形で受付嬢に対応してもらっているだけで、直ぐに自分の番は回ってきそうだ。
「キュキュッ!」
「ふふっ。ふわふわで可愛い……」
そんなもうすぐ回ってくるであろう待ち時間。
隣からは真っ白な毛玉と可憐な女の子が楽しげに戯れている声がする。
可愛いと可愛いの共演。
これはもう完璧としかいいようがない。
癒されて半端ない。癒されすぎて俺の穢れた心が浄化して消えてしまいそうなくらいだ。
……と、まあこんな感じで思考が意味不明な事になるぐらい、隣で今も繰り広げられている光景は破壊力がすごい。
ココ最近、俺のコートの中が生活圏になりつつあるラーナをアイリスに紹介したところ。一人と一匹は先程からこうして戯れあっていることから分かる通り、一瞬で打ち解けた。
ラーナを初めて見せた時のアイリスの反応は面白かった。
彼女も世間では『静剣』などと呼ばれてこの迷宮都市クレバスでは色々な意味で恐れられているが、可愛い生き物には弱かった。
恐らく、大迷宮の中でならば彼女はいくら見た目が可愛いモンスターと言えど容赦はしないのだろうが、モンスターを滅多に見ることの無い街中……しかも白くてふわふわの生き物となれば別のようだ。
もうすっかりラーナの魅力の虜になっていた。
「はぁ……いくらでも触っていられる……」
「キュ~ィ!」
恍惚とした顔でラーナに頬擦りをするアイリス。それを気持ちよさそうに目を細めてされるがままのラーナ。
ここまで無防備なアイリスは珍しい。
これもラーナが為せる可愛さと言う奴なのか……やりおる……。
なんて事を考えていると目の前で対応をしてもらっていた四人組の探索者達がカウンターから離れて酒場へと移動していく。
「次の方どうぞ~」
どうやら前にいた探索者達の要件は終わり、自分たちの番が回ってきた。
受付嬢の溌剌とした声で空いた前のスペースに詰める。
「ようこそ探索者協会クレバス支部へ! 本日はどのようなご要件ですか?」
太陽のように明るい……と在り来りな例えが浮かんでくるほど見事な笑顔をして要件を尋ねてくる受付嬢。
そんな受付嬢の久方ぶりに聞いた決まり文句に感動しながら手短に要件を告げようとしたところで気づく。
「……あれ? マリーカさん?」
今目の前で完璧な営業スマイルを浮かべている受付嬢は以前からそこそこ話す機会のあった亜麻色のお団子髪と丸メガネがよく似合った女性マリーカ・ヨーフェルだということに。
「あれ? 新規の方じゃない……って、ファイクさん!?」
流石は人の顔を覚えるのも仕事のうちの一つな職業。向こうも営業スマイルを少し崩してまじまじとこちらの顔を観察すると直ぐにこっち気づく。
「どうもお久しぶりです。元気にしてました?」
「「元気にしてました?」じゃないですよ!! え?なんでここにいるんですか!? 迷宮でぽっくり死んだんじゃなかったんですか!?」
軽く手を挙げて挨拶をするとマリーカはカウンターから身を乗り出して驚いた様子だ。
「ぽっくり死んだんじゃ……って酷いなぁ~。そりゃまあ少し長い間迷宮に潜って顔見せてませんでしたけど、そんなに言います?」
「少し長い間って全然少しじゃないですけどね!? 一年ですよ、一年!! 結構な数の捜索隊を使って探したのに見つからないと思ってたのに……どういう事ですか!!?」
冗談交じりに笑って返す俺にマリーカは半ばキレ気味にそう返してくる。
うむ。俺の登場にかなり気が動転しているようだ。
「どういう事ですか?って聞かれたらそりゃあ色々と積もる話が有るような無いような? ……とりあえず今日はそっち方面の手続きをしに来たんですよ。いや~受付がマリーカさんで良かったぁ~。話が早くて助かります」
「……なんでさっきからそんな軽いノリなんですか……騒いでる私がバカみたいじゃないですか……」
「騒ぐのは昨日のうちに済ませといたんで」
軽いノリで返しているとマリーカも冷静さを取り戻してきたようで、カウンターに乗り出していた身体を定位置に戻す。
「はあ……少し取り乱してしまいました。それではファイクさん、改めてご要件をお伺いしても?」
「あ、はい。ちょうど去年の今頃、大迷宮から帰ってこず探協から死亡扱いになった、Fランク探索者ファイク・スフォルツォ。昨日、大迷宮クレバスから無事帰還しました。今日はその報告と死亡者リストの手続きしに来ました」
「かしこまりました。それではトレジャーバッチの提示をお願いします」
要件を聞くとマリーカは一つ頷きそう言う。
彼女に言われた通り胸ポケットから探索者の証であるトレジャーバッチを取り出して、手渡す。
「それではここで少しお待ちください。何分、こういった手続きは数が少ないので時間がかかりそうな場合はお伝えします」
「分かりました。お願いします」
マリーカの注意に頷いて奥へとバッチを持って行った彼女を見送る。
確かに死亡リストの取り消しをしに来る探索者は年間でどれくらいいるのだろうか。
少なくとも今年のその第一号は自分だろう。何とも不名誉な一号だ。
「……」
しかしこういった手続きなども全部トレジャーバッチの確認だけで済んでしまうとはとても便利だ。アレを専用の魔導具で読み取るだけでその人の個人情報やどの階層まで到達・踏破したのかが簡単に分かる。
普通は厳正な事情聴取や取り調べが必要なはずなのに、それが無いなんてお手軽すぎる。
"おい。まずいんじゃないか?"
"……は? 何が?"
こう言ったところだけは魔導具様々だ。と感心していると嗄れた声が脳内に響く。
"あのバッチが大迷宮に関する記録を保存しているんなら、深層の事がバレるんじゃないのか? 当初の予定ではとりあえずあの大迷宮を攻略してないことにするんじゃなかったか?"
「あ…………」
そこまで言われて気づく。
俺はとんでもないことやらかしたのではなかろうか。
「ファイクさん?」
「キュ?」
俺の間抜けな声を聞いて不思議そうに一人と一匹が小首を傾げるが、それにも反応できない。
当初の予定は全てをアイリスに話して、それが終わったらやんわりと誤魔化しつつ死亡の手続きをして、本日の予定は終了、それから次の準備をする筈だった。だがトレジャーバッチの仕様を改めて考えていなかった。
各階層のセーフティポイントにある記録石碑にトレジャーバッチをかざせば到達した階層や踏破した階層の記録をしてくれる。
もちろん俺は深層の記録石碑でしっかりと記録しているし、トレジャーバッチには深層の記録が残っている。
この便利な機能を忘れていた。
……アホだ。
これはまずい、まずすぎる。
トレジャーバッチの記録を確認されれば話を誤魔化してなあなあにするどころか全部筒抜けで、当初の予定から大きくズレてしまう。
「………」
俺の持ちうる経験と知識を総動員させてこの凡ミスをどう対処するか考える。
実際の時間にして10秒も経っていない。然れど俺の体感時間はその思考で何十分、何時間にも錯覚してしまう。
「…………逃げよう──」
そして悟る。
俺にはこのミスを完璧にリカバリーする妙案は思いつかないことに。
「え?」
「キュ?」
唐突な発言にさらに一人と一匹の表情が曇っていく。
「──うん、そうしよう。今ならまだ間に合う。俺は生きて帰ってこなかった……そういうことにしよう……」
譫言のように零れ出る言葉。現実逃避は止まらない。
自然と身体は回れ右をして出口を目指そうとする。
次の瞬間には猛ダッシュする覚悟を決めて、両脚に力を込めようとした瞬間──、
「どういうことにするんだ?」
──逃げ出そうとする俺の肩を力強く掴んだ寛闊声が真後ろからする。
「……」
ギギギ、と噛み合わせの悪い歯車の擬音が聞こえてきそうなほどぎこちなく首を後ろに回してみれば、そこにはニッコリ笑顔の厳ついオッサンがいた。
「お前がクラン『静謐なる影法師』のリーダー、そして一年越しに大迷宮から帰還したファイク・スフォルツォだな」
「……いや~そんなクランのリーダーになった覚えはないんですけど……人違いじゃないです?」
『静謐なる影法師』……はてなんの事やら。
至近距離で尋ねてきたオッサンに被りを振って何とか離れようとする。
しかしオッサンの腕は俺の肩をガッシリと鷲掴みにして離そうとしない。
……このオッサン力強すぎないか!?
「ふむ……人違いと、そうか。隣に『静剣』を侍らせておいてよくそんなすぐバレるようなウソをついたもんだ」
「ちょっ……侍らせ──」
それは人聞きが悪いし誤解でしかない。別に俺はアイリスと主従の関係ではない。
「あー、文句は後で受けつける。今は黙ってこい。お前に拒否権はない。『静剣』も着いてこいコイツの仲間なんだろ?」
「はい。私の大事なフィアンセです」
「……カハハッ! あの『静剣』のフィアンセか! そいつはますます聞きたいことが出てきたな!!」
肩から首根っこを掴まれて軽々と持ち上げられる。こうなってしまってはもう穏便な方法での脱出は不可能だ。
……というか色々とツッコミどころ満載なんですが。
「よし。そんじゃあ上の局長室に行くぞ。そこでゆっくり訊問だ」
「えっ、ちょっ───」
今なんだかとてもカンジの悪い聞こえ方したけど大丈夫だよね?
俺、無事に生きて帰れるよね?
不気味なオッサンの物言いに身の危険を感じながら、俺は為す術なく『キョクチョウシツ』とやらに連行された。
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