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動き出した歯車

23 守護者になりました(1)

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「これからどうすればいいんだろ?」

ピッタリハマり光が灯ったはいいが“魔を示せ”ってのがよく分からん。ここでいう魔とは魔力で間違いない。となればでいけるか。

実はスライムとの戦闘中に強化魔法なんかを使ったときに微かに何が体の中を流れるのを感じた。
アプデ後からはより強く感じられるようになった。
感じれる力のようなものを利用してスキルの威力アップしたりできたりしないかな?と考えた。自分でも馬鹿らしいと思ったけど、意識しながらやってみたら驚くことにスキル強化された。逆に怖くなった。
しかし、MPを消費するようだ。
1回使っただけだったからよく分からなかったが、デビルベア戦の最後のとき“抜刀”を威力アップさせようと思い多くの体を流れる魔力を両手に集中されて見たら抜刀ではなく〔迅速斬〕になった。
“迅速斬”自体は刀スキルLv5で獲得したものの発動条件が分からなかった。
でも元のスキル今回でいえば抜刀をMPを消費というより体内の魔力を集めてそれが一定の量集まれば〔抜刀→迅速斬〕というようになる言うことであっていると思う。

ということでこの“スキル進化”の応用でいけると思う。いや、いってくれ...

「すぅ......は~」

集中し体内を流れている魔力を感じる。さっきの戦闘で消費したから体内を巡る魔力は最初より少なくなっている。これ足りるかな...
次にランプの上にかざしている右手の手のひらから魔力を外に追い出すように流れをつくる。その瞬間に立ちくらみがして倒れそうになった。いきなりだったがなんとか倒れないように片膝を地面に着けて机を持つ事が出来た。。次に頭痛がきた。

「ランプ...は?」

痛みに耐えながら手の力を使って体を持ち上げてランプを見る。ランプ前に〔魔力確認中〕という表示がされていた。今立っているのはしんどいのでイスを借りさせてもらうことにする。
表示が〔確認終了〕に変わる。時間はあまりかからなかった。

「認証完了 システム始動開始」

という機械音声が鳴り、自分の荒くなった息遣いがゴゴゴという音に打ち消された。
とっさに構えようとしたが立ち上がる途中で体に力が入らず座り込む。アップデートがあるまではなかった感覚だ。しかもオフにできないし、晴人通して文句言ってやるぞ運営。

「お入りください」

さっきの機械音声が終了を知らせる。ゆっくりと立ち上がり足を引きずるように歩く。テーブルのそばに階段のようなものが出来ていた。階段は少し多いように見えた。暗いけれど先まではっきり見える。最近この体のスペックの良さに驚かされている。性別は変わってしまったけれどこういう所はちょっぴり嬉しい。
階段に足を着くと同時にランプに火が灯る。なんだか疲れすぎて驚く気力さえ湧いてこなかった。
ランプに照らされた階段を転ばぬように1歩1歩気をつけながら進んでいく。

「 到着っと... 」
「誰がいますかー!」

と前にある扉を開けて体を少しだして声を出して確かめてみるが返事は無い。まぁ当たり前かと思い中に入った。

「誰ですか?」

「うわぁぁぁ!!」

予想もしていなかった声がして絶叫した。本気でドアを閉めて後ろに下がる。扉から5歩くらい離れたところまで下がる。
いやおかしいよ!気配察知に反応なんもなかったし...  いや呼びかけた自分も悪かったけどさ、しょうがないじゃん!
なんていうか非常識な人になりたくないだけで...
ガチャというドアノブがひねった音がした。ドアが開く。死ぬならいっそ何も見たくない!

「そんなに怯えないでくださいよ...」
「傷つきます」

「......!?」

突然冷たい人の手...が頬に触れた。ビクッと身体が跳ねる。バクバクする心音を聴きながらゆっくりと見上げる。そこに立っていたのはメイド服を着た困った顔をしている女の人だった。安心して、はぁと口から息が漏れ、強ばっていた身体から一気に力が抜けて地面に座り込む。さっきまでは収まっていたように感じた頭痛も痛みを増して戻ってきた。
自分の体が横に倒れていっているのが分かり、動かそうとするが体の全く自由が聞かない。

「あ、え?ちょっと大丈夫!?」

僕は頭を地面に打った鈍い痛みとぼんやりと聞こえる慌てている女の人の声を聞きながら意識を失った。


目を覚ますと知らない天井があった。
ここはどこなんだろう。疲れて重たい身体を無理やり起こす。上半身をおこすと僕にかけてあった毛布が膝あたりに掛かった。よく見れば服装も変わっている。少し毛布をめくってみると、ズボンと服が水色の少しフワフワしている可愛いものになっている。しかもズボンにはくまさん付き。
いかにも”女子“って感じのやつ。
なんで変わってるんだろ...

「起きた?」

声がした方を見ると女の人が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。

「焦ったのよ いきなり目の前で倒れるから」

「あ、すみません...?」

何があったんだっけ?えっと...そうだ僕は何かに驚いて気を失って...ってこの人じゃん。思い出した僕はダッシュでベッドの端っこに身体をよせる。
そんな僕を見て女の人は不思議そうにしている。

「大丈夫よ?とって食べたりしないから」

「うぅ...本当ですね?」

「ほんとよ... 私に獣人をたべる趣味はないから それにそんなことしたらあの人に怒られちゃう」

女の人が僕に向かって微笑む。なんだかそれを見ると心から安心することができた。それと同時になんだか懐かしい感じがした。1度もあったことがないはずなのに...
それよりさっき
”あの人に怒られる“って言ったけどもしかして...

「あなたの言っているあの人って獣人の人なんですか?」

「ええ そうよ」

「僕の同じ獣人の人がいたんですか!?」

「当たり前じゃない 聞くけれどじゃあなぜあなた今生きているの?」

「それは...獣人の人がいたからで...」

「それがあなたの疑問の答えよ」

それを言われてああなるほどと納得してしまったが、それはおかしい。
僕は元々この姿じゃなかった。この話をしたらこの人は一緒に考えてくれるだろう。でもこのことを言ったら引かれないだろうか?
よし!聞こう。この謎が解けなかったら僕の心のモヤモヤは晴れなくて夜寝れなくなりそうだ。

「実は僕は元々男だったんです」

「へぇ~そうなんですね」

「え?」

「そんな間抜けな声出してどうしたの?」

「あ、いや... 信じるんですか?」

「はぁ~ あなたって注意深い人なんですね」

「あ、違うんです!そう言うことじゃなくて...」

「じゃなくて?」

「自分で言っといてあれですよ男だったんですよ?」

「でもあなたはとてもかわいいよ?」

僕は女の人から顔を逸らす。この身体になってから”可愛い“と言われることがあるのだが、とても恥ずかしい。前までは可愛いと言われると嬉しい感情と男としての感情が混ざりあって複雑な気分になっていた。今は美咲さんの恥ずかしさの方が大きい。
はは、はやく話題を変えよう!!恥ずかしくてやばい。

「そん、そんなことよりですよ!」

「やっぱりこの子めっちゃ可愛い...」

「忘れてください!!」

バサッという音を立て僕は布団の中に潜った。
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