上 下
758 / 763
特別編3:異世界

幸先

しおりを挟む
フィエナさんがセラさんの魂を持った勇者だと確証は持てないけど、このまま放っておく事は出来ないよね。

「フィエナがセラの魂を持っているとしたら保護しておかないとな」
「誰かに任せて他を探せる様なツテは無いし、取り敢えず村に滞在させてもらうとするか。時間をかければ更に情報が得られるかもしれないし」

レイナスさんとヒサメさんがそう話し合っているとシルヴァリオさんとセラさんもそれに同意していた。

「じゃあ私達は捜索再開ね。シルヴァリオが勇者から聞いた情報を教えてもらえるかしら?」
「もちろん」

シルヴァリオさんはリオさんにさっき教えてもらった情報を教える。
私達も一緒に話を聞こうと思ったんだけど、そこに聞きなれた声が頭の中に響いてきた。

(ミナ殿聞こえるか?)
虚空の覇者ヴォイドマスターさん?)

声の主はこの世界に降りて来ていない虚空の覇者ヴォイドマスターさんだった。

(神界から思念を転送している。あまり長い時間地上に介入出来ないので手短に話す。探している魂を見つける方法に進展があった。今からそちらに増援を送るのでその者達に詳しい話を聞いてくれ)
(分かりました。ありがとうございます)

伝えたいことだけ話すと虚空の覇者ヴォイドマスターさんの気配は消えてしまった。

「どうしたの?」
「今虚空の覇者ヴォイドマスターさんから連絡があって、魂を見つける方法が出来たみたいなんです。あと増援を送るって言ってました」
「良いタイミングね」

リオさんが感心した様に頷く。

「誰が来るんだろうね?」
「戦力になってこういう事に詳しい人が来るのかな?」

ソラちゃんとテュケ君も気になっているみたい。

ところでここにはどうやってくるのかな?私目掛けてテレポートしてくるとか…?

ワクワクしながら待っていたら遠くの空に光るものが現れた。

もしかしてあれかな?

飛んできてる…というか落ちて来てる様に見えるんだけど。

「あれっぽい?」
「…雑な投入のされ方ね」
「お、こっちに向かって来てるぞ」

方向が変わって真っ直ぐこっちに飛んできて目の前に着地した。

「ほら、言った通りでしょ?」
「はい。流石です」

話しながらやって来たのは4人の女性。
この前手伝ってくれたイスファリナさんとリフェアさんと知らない人が二人。

虚空の覇者ヴォイドマスターから連絡があったと思うけど、手伝いに来たフィリスです」
「私はリルカ。よろしくね」

スラっとした大人っぽいフィリスさんと背が低くて15、6歳に見えるリルカさん。リルカさんは胸当てだけを身に付けて両端に薄い刃の付いた弓を背負っていて、フィリスさんは武具を装備していなかった。

「ヌスクァムの人達が来てくれたんだね」
虚空の覇者ヴォイドマスターと繋がりがあるみたいだし助かるわ」

ソラちゃんとリオさんはそんな話をしながら自己紹介。私達とテュケ君も続いた。

「まさかこれほどの人達が来てくれるなんて思っていませんでした」
「セラの魂が盗られたなんて一大事じゃない。可能な限り手伝わせてもらうわよ」

セラさんが紹介してくれたけど、リルカさんはリフェアさんの師匠で、フィリスさんはリルカさんの友達でイスファリナさんのお母さんなのだとか。お二人とも凄く強いらしい。

「魂の判別方法だけど、これにセラちゃんの魂の波長を転写して対象者に持たせれば反応が出るみたい。早速やってみて」
「はい」

フィリスさんから菱形の透明な石を受け取って胸に抱くセラさん。しばらくすると石が淡い緑色に変わる。

「フィエナさん、これを持ってもらっても良いですか?」
「はい…」

不安そうにしながらも受け取るフィエナさん。手のひらに乗せた石は暫くすると光り始める。

「うん、聞いた通りの反応。この子がセラちゃんの魂を持っているよ」
「大当たりだったな」
「困った時の運任せだ」

シルヴァリオさんとレイナスさんがそう言って笑っている。

「それで、魂を取り返すにはどうすれば良いのか分かりますか?」

冷静に聞くヒサメさん。そうだった。まだ見つけただけだもんね。

「それはまだ解析中よ。方法が分かるまではこの子を保護しておく必要があるわね」

ヒサメさんに答えたのはイスファリナさん。

「ええと…私はどうなるのでしょうか…?」

心配そうに聞いてくるフィエナさん。

「あなたの中にはここにいるセラの魂の一部が入ってしまっているみたいなの。返してもらいたいのだけど、あなたに危害が及ばない様に取り出す方法を探しているから安心して」
「そう…ですか。分かりました」

イスファリナさんが説明してくれてフィエナさんは一応理解してくれたみたい。

「村に何人か滞在して変な輩に絡まれない様にしたいのだけど、どうすれば良いかしら?」
「それなら私達の中から人員を出すわ。その他で各地に散っている仲間にこの石を渡してくるわね」

リオさんにリルカさんが答える。

「私が村に居ようか?」
「それでも良いけどここは私がこの子を護るよ。イスファリナは探知能力も高いからみんなを手伝ってあげて」

イスファリナさんとフィリスさんが話し合っている。

一人だけ村に残るって話なんだね。

「フィリスは強いの?」
「ああ。あの人は次元が違う」
「よく分からないくらい強いぞ。俺の親父の冒険者仲間だった人だけど今でも勝てる気がしない」
「状況によってはこの中で最強かもしれないね」

ソラちゃんが聞くとヒサメさん、レイナスさんシルヴァリオさんが口々に教えてくれる。村に残るのが一人だけなのは決定事項なんだ?

「フィリスさんは四龍格闘術という特殊な体術の最高師範で、どんな状況でも即応可能なスタイルだから安心だよ」

セラさんが続けて説明してくれた。
ちなみにリルカさんは弓術と剣術が使えて、戦術指揮は《常勝の女神》なんて呼ばれてるリフェアさんのお師匠さんだから安定力抜群。リフェアさんとイスファリナさんは3大魔術師の二人らしいから実力は十分。セラさん達から言わせれば『この四人がいれば大体何でも解決出来る』だそう。

「ああ、そうそう。虚空の覇者ヴォイドマスターにユキの波長を写してもらった物もあるから渡しておくわね」

イスファリナさんがやって来て私に石を手渡してくれる。

「ありがとうございます」
「友達が大変な事になって心配だろうけど、私達も全力でサポートするから頑張ろうね」
「はい!」

優しい人だね。

イスファリナさん達3人は各地で捜索をしているメンバーに石を渡してから捜索に加わってくれるそう。

「ユキねーちゃんは大丈夫だ。今までどんな事があっても立ち上がってきたからな」
「そうね。でもなるべく早く元気なユキに会いたいわね」

テュケ君とリオさんが私を励ましてくれる。

「ん、ユキなら私達が魂を持って帰るまで待っててくれるよ」

ソラちゃんもいつになく真面目に頷いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

烙印を理由に婚約破棄。その結果ステータスALL1000の魔導師になりまして

流雲青人
ファンタジー
生まれながらに魔力を一切持たずに生まれたエデンは直ぐに跡取り失格の烙印を押されてしまう。幼い頃は気にしなかった烙印だが、成長していくのにつれ次第にその烙印を気にするようになっていく。性格も暗くなり、笑顔を見せなくなったエデンだったが婚約者が出来、エデンの人生は大きく変わった。 だがある日突然その悲劇は起こった。 「君との婚約を取り消したい」 婚約者からまさかの婚約破棄 その悲しさのあまり、エデンに本来目覚める筈のなかった魔力が目覚める。しかしそれは平均ステータスの300を大きく上回る、ALL1000のステータスだった。 こうして最強の力を手に入れたエデンは家を飛び出し、のんびり自由に生きていく……筈だった。 という物語。 題名変更しました 題名について考えてくれた皆さん、本当にありがとうございましたm(*_ _)m ※3月24日、完結しました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。