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特別編3:異世界

坂口家

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追跡者を躱して私達はリオさん達のいる児童養護施設に転移する。

街の中というよりは緑が多い静かな所だった。
学校の様な小さな建物が何棟かあって、子供達はそこで暮らしているみたい。

リオさん達は応接室みたいな所にいるみたいなのでアウラさんを通じて連絡を取り合って合流する。

応接室には香帆ちゃんとショウ君、リオさん達に京子さんだけでここの職員さんは席を外してくれていた。

「何で香帆がこんな所に1人でいなくちゃいけないんだよ!」
「お兄ちゃん、こんな所なんて言わないで。みんなとてもいい人だし何不自由なく暮らせてるよ?」
「そうじゃねえ!父さんと母さんが遺してくれた家を乗っ取って住んでるアイツらが許せねえんだよ!」

ショウ君は凄い剣幕だった。

「許せないってどうするつもりよ?」
「どうせ俺はここに存在しちゃいけないんだろ?だったらアイツらを殺しても…」

リオさんが聞いたらとんでも無い事を言い出した。

「良いわけないだろ。頭を冷やせよ」
「俺達が居ないのをいい事に好き勝手やりやがって…」

マサキさんに言われて悔しそうに呟くショウ君。

「いいんだよお兄ちゃん。あの家に1人きりで住むなんて私にはできなかったもの。広過ぎるし寂しくて死んじゃうよ」

香帆ちゃんはショウ君を宥めようとしていた。

こんな小さな子なのに気遣いが出来るなんて偉いね。
…きっと沢山苦労して来たんだね。

アウラさん、坂口家に住んでいる人の事ってどこまで調べられる?

[《叡智》を使えば調べられない事はありません]

頼もしい!じゃあ早速その人達の事を調べてもらえるかな?

[了解。検索中……分かりました]

早っ!

アウラさんは坂口家に住んでいる人たちの事を詳しく説明してくれる。情報は仲間のみんなにも共有して伝えてもらった。

香帆ちゃんの未成年後見人になったのはお父さんのお兄さんに当たる人で、生前の関係は決して良い者ではなかったらしい。

未成年後見人については読んで字の通りだそう。

関係の悪かったお兄さんが…香帆ちゃんにとっては伯父さんだけど、その人が後見人になったのは、単純に他に出来る人がいなかった事になっているけど、お母さん側の親戚が香帆ちゃんの事を心配して名乗りを上げてくれたらしい。

それを伯父さんは断って後見人になった。
両親の生命保険や家などの不動産は香帆ちゃんが成人するまでは伯父さん夫婦が管理する事になったのだけど、香帆ちゃんを扶養する事は難しいと言って養護施設に入れてしまったらしい。実際は伯父さんの子供2人は成人して家を出ているので何の問題も無い筈なのだけど…。

「はぁ?やってる事メチャクチャじゃないの!家庭裁判所に訴えた方がいいんじゃない?」

リオさんに情報を聞いて京子さんが怒り出す。そうだよね。こんな事って許されるの?

「家に住むのは管理名目で押し通せそうね。香帆ちゃんを施設に入れたのは、精神的に不安定だとか、本人に難があるって事にしたんじゃない?」
「ふざけんなよ!香帆が悪い事にしたのかよ!」

リオさんが考えを口にするとショウ君はますますヒートアップした。

私も酷過ぎると思う。

こんな良い子を難癖つけて施設に入れるなんて…。

[香帆の伯父、坂口真一夫妻は管理している相続金の一部を管理費と称して使用しています]

「やっている事が無茶苦茶ね。情報を全て証拠として押さえましょう」
「その方が良さそうね」

リオさんと京子さんが法的にどうにか出来ないかを話し合っている。

「お仕置き部屋に入れちゃえば?」
「それは流石に良くないのでは…?」

ソラちゃんの提案はユキさんに否定された。

〈法的に制裁を加える以外に何かしないと気が済まないですね〉

レナトゥスまでそんな事を言い出すし…。

でも私もその気持ちは同じだよ。

「ショウ君、この件は私達に任せてくれないかな?香帆ちゃんが良い環境で暮らせる様に出来る事は全部やるから」
「いやだ」

ショウ君は私を睨む様にしながら言ってくる。

「いや…アンタらにだけ香帆の事をさせたくないんだよ。俺にも何か手伝わせてくれ」
「構わないが、さっきみたいな物騒な事をやろうとしたらアスティアに送り返すからな?」
「ああ。約束するよ」

マサキさんかショウ君に条件を出してくれて、ショウ君もそれに同意した。

よし、みんなで香帆ちゃんを助けよう!

ーーーー

それから私達は使徒さん達のネットワークを駆使して坂口真一さん夫妻の不正の証拠を入手して、後見人として相応しく無いと訴えた。

それと同時にお母さん側の親戚の方に連絡を取り香帆ちゃんの現状を説明。
説明したら親戚の夫妻は激怒した。「そんな人達に香帆ちゃんを任せられない!私達が責任を持って育てます!」とすぐにでも飛び出して行きそうな剣幕だった。

法的には後見人の交代が成されるのは近いと思う。

さてさて後は…

「ミナのお仕置きタイム?」
「私がやるんじゃないよ」

今回は2人にとても悪い夢を見てもらおうと思う。

深夜、2人の枕元に行き《ナイトメア》の上位版魔法《アルプトラオム》を掛ける。

内容はこう。

血塗れのお父さん、お母さん、ショウ君が2人のところにやって来て『香帆を、よくも…』と襲いかかってくる。
逃げる2人は迷宮の中にいて逃げ回る。そこに次々と3人が襲い掛かり、手にしたナイフで刺される所で目を覚ます。

刺されたところは本当に痣になっていて、それが毎日続く。

はじめの 一日目は悪夢に出てくる3人をマサキさん、ネネさん、ショウ君に操作してもらってよりリアリティを出してもらった。

特に本人役のショウ君は怨みの全てを乗せて演技?をしてくれたので凄い迫力だった。

2日後には後見人についての話があったみたいだけど、夫妻は泣いて謝りながら交代を懇願して来たらしい。
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