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特別編3:異世界

超巨大飛空艇

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リオさん達が次々と砲塔を破壊していく。
船体には上部、底部合わせておびただしい数の砲塔が付いている。

私も援護した方がいいかと思ったけど、加減を間違えて船体に大穴が空くのが容易に想像できたのでやめておいた。

「そろそろいいですかね。行きますよ~」

レフィさんが《巨影化》で大きくなるって船体に組み付こうと前進する。
飛空挺の上部にある巨大な砲塔がエネルギーを溜めているのが見えた。

[注意、次元の歪みが発生しています。あの砲撃は危険です]

「レフィさん!あの砲撃に気を付けて下さい!」

慌てて注意を呼び掛けたけどレフィさんは砲撃を受けてしまった。
避ける事は出来たのかも知れないけど、私達の事を気遣ったんだろう。

砲撃が直撃した胸から腰の間までが削り取られてしまった。
影は形を維持できなくなりゆっくりと崩れていく。

「レフィさん!」

あんな攻撃を受けて大丈夫なんだろうか?呼び掛けには答えてくれない。

「ユキさんもあの砲撃は受けないで」
「分かりました」

盾ごとユキさんが消滅なんて絶対に嫌だからね。

「いや~まさか一撃でやられるとは思ってませんでした~」

私のそばに元の姿に戻ったレフィさんが現れた。

「大丈夫ですか?」
「はい~この通り身体は大丈夫ですよ~」

レフィさんはいつもの調子で答えるけど、明らかに消耗している。

レフィさんの《巨影化》で押し返せないのなら私がやっても同じ事になるだけだと思う。そうなると…

「何今の?」
「次元が歪んだ。相転移砲?」

リオさんとソラちゃんは驚いて砲塔の方を見ていた。

「よく分からんが上のデカイ奴はこれ以上撃たせない方が良さそうだな」
「そうですね。門を開くための技術を武装に転用したのでしょう。貫通はしない様なのでこちらに被害はありませんでしたが、地表に着弾したらどうなってしまうのか心配です」

マサキさんとレアさんは船から距離を取って話していた。

「あんな強力な攻撃をして来るなんて想定外でした。押し返す事が出来そうに無いのでこの場で撃破します」
「了解だ。これからは遠慮なく魔法を撃つぞ」
「ええ。危険な攻撃を持っているなら手加減なんてしていられないわ」

私が宣言するとハナちゃんとネネさんが全力で魔法攻撃を始める。

私はユキさんと一緒に飛空挺の上部に行って砲塔の破壊を始める。
狙うのは次元を歪める砲撃をしていた大きな砲塔。
こんなものを作る暇があったら、世界をキレイにする方法を考えればいいのに!

「一撃でいくよ!《トリプルキャノンスペル》!《レイブラスター》装填、発射!」

極太の光線が発射されて飛空挺の上半分を焼く。各所で大爆発を起こして船体が真ん中で2つに折れる。

あんな大きなものが地上に落ちたら大きな跡になってしまう。

「任せろ!」

テュケ君が下に回り込んでオーバーブースト《メガフレア》を放つ。巨大な火球が2つに割れた船体を飲み込んで大爆発を起こす。

ちょっ…やり過ぎじゃない?

吹き飛んだ残骸はかなり細かくなって空へ舞い上がっていった。

今の船にどれだけの人が乗っていたんだろう…。

「今のうちに門を閉じるわよ」
「はい!」

私は考えていた事を振り払うと門の正面で止まる。

アウラさん、門を閉じるよ。お願い!

[了解。門の閉鎖を準備中……警告、門の向こう側に次元の歪曲を検知]

え、それってまさか…!

咄嗟に《次元装甲》を発動させて砲撃を防ぐ。

[同型艦の砲撃です]

まだあんな船があるの?

門の向こう、イオザード側には同じサイズの飛空艇が3隻、見える全ての砲門をこちらに向けていた。

〈向こうも必死なのでしょう。自分達の世界が死を迎えようとしているから〉

でもそれって自分達のせいだよね?
生き残る為に他の世界にあんな兵器を持って来るなんて許せないよ。

「ミナちゃん、門を閉じるには船を沈めるしかなさそうだよ」
「はい。でも…」

ほのかさんがそばに来て声を掛けてくれる。

「ミナちゃんは優しいからね。乗っている人の事を考えちゃうよね」
「はい…」

アウラさん、さっき沈めた船には何人乗っていたの?

[4213人です]

そんなにも……

砲塔に魔力が集まっていく。上部の大きな砲塔は次元の歪みを発生させていた。

今更迷ってどうするんだと思っている自分と、撃墜せずに何とか出来ないかと思っている自分が鬩ぎ合う。

みんなには傷ついてほしくない。でも私1人なら……

「甘いぞミナ殿」

隣に大きなものが現れて声を掛けてくる。虚空の覇者ヴォイドマスターさんだ。

そのままヴォイドエネルギーを飛空艇に照射して次々と破壊していく。

「その迷いは命取りになるぞ。奴らは侵略者、敵だ。情けをかける必要など無い」

ヴォイドエネルギーをぶつけられた飛空艇は消しゴムで消したみたいに抉り取られていって消滅する。

「川本君」
「杉浦、無事か?」
「うん。助けに来てくれてありがとう」
「もっと早く来られればよかったのだがな」

ほのかさんの表情はいつもの通りだけど少し嬉しそう。

「すみません…」
「気にする必要はない。相手の事を思いやる心は悪いものではないのだ。ただ、優先順位を間違えてはいけない」

異形の姿で現れた虚空の覇者ヴォイドマスターさんは私の頭に手を置きながらそう言った。
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