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特別編3:異世界

異世界帰還者

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ゆっくりと落ちていくオルトナ様をソラちゃんはローブの裾を適当に掴んでいた。
そのまま落ちたら死んじゃうもんね。

「あなた達は私の世界が既に無い事を知っていたのですか?」
「…ええ。でもそれを話しても信じなかったでしょう?」

キリエさんの問い掛けに傷口に回復魔法を掛けながら答えるカエデさんは、追い詰められているのに不敵に笑っている。

まだ何か仕込んでいるのかな。早く制圧してしまった方が良さそうだね。

[右方長距離、転移反応。魔力銃を検知、警戒を]

次の瞬間赤黒く光るものが放たれた。

それは私目掛けて一直線に凄まじい速度で飛んでくる。何故か身動きが取れず焦る。

「仕方ない。恨むなら仲間を恨め」

そう言って私の前に割り込んで来たのはソラちゃん。光弾を掴んでいたオルトナ様を盾にして防いだ。

「うわぁ…ソラちゃんエゲツないですね~」

レフィさんは笑ったまま言っている。

「ソラちゃん…」
「直感的に自分で受けたらいけないと思った。反省はするけど後悔はしない」

ソラちゃんは申し訳なさそうにしていた。

「《スナイパーキャノンスペル》、《レイブラスター》チャージ!シュート!」

撃ってきた相手に対してリオさんが《ピクシーハンズ》の人の誰かに教わった魔法で反撃を行う。デバイス2つに魔力制御と射撃管制を任せて撃つから精度も威力も桁違いらしい。

転移で逃げようとしているみたいだけど間に合わない。凄まじい光量の光線を受けて跡形もなく消えてしまった。

もうあの変な弾を撃たれる事は無くなったけど、魔力の弾はオルトナ様の左胸に命中している。
主神様を死なせてしまった。これはかなりマズいんじゃ…?

「…射手は倒したかい?」

そう聞いてきたのはオルトナ様だった。

「生きてた」
「普通なら即死なんだけどね…おっと、僕は降伏するからその物騒な物で打たないで…」

ソラちゃんがハルバードを振り上げたのを見て慌てて降伏を宣言するオルトナ様。

「なんで生きてる?」
「あれを創ったのは僕だからね。自分には効かない様にしておいたのさ。因みにあれは《神滅の魔弾》と言って神を殺す為に創ったものなんだ。ミナ=アドラステアには効かないかもしれないけど他の世界の神になら効くと思ったからね」

…途端に饒舌になった気がする。戦う意思が無いなら何でもいいけどね。

「もう敵対しないって意思表示だよ。僕の知っている事なら何でも教えちゃう」
「オルトナ…!裏切るのか…!?」
「やだなぁ。僕はミナ=アドラステアが敵に回るなんて知っていたら協力なんてしなかったんだよ?神様の中じゃ『あれにだけは絶対に敵対するな』なんて話があるぐらいなんだから。虚空宮ヴォイドパレスに突貫した方がまだ生存確率があるって」

神様達の間で私はどんな扱いを受けているんだろう…。

「くっ…こうなったら…!」

カエデさんは手の中に小さな石を召喚した。

〈あれは…!ドゥームコアです!〉

え?つまりイオザードにいたドゥームと結託しているって事?

〈いえ、イオザードにいたドゥームは前の戦いで消滅しています。あれは…ドゥーム・ディア=ルダレス、他の世界のドゥームです〉

他の世界のドゥームと協力関係にあるって事ね。あれをどうするつもりだろう?

[融合するつもりでしょう]

自身を強化して私達と戦おうとしてる…でもそんな事をしたら人じゃなくなっちゃうよ。

「もう後には引けない!ここにいる全員を殺す!」

そう言ってドゥームコアを掲げるカエデさん。止めないと!

「やらせねえよ」

次の瞬間、カエデさんの手の平の上にあったドゥームコアは真っ二つに切れてから砕け散った。

やったのはマサキさん。一瞬でカエデさんに詰め寄ってコアだけを剣で砕いていた。

「なっ…!?」
「全員ってのは俺の嫁や娘も入ってるよな?当たり前だがここにいる誰も殺させない。お前とそこの神はついでに生かしておいてやるよ」

マサキさんはいつになく鋭い目つきでカエデさんを睨みつける。

「あ…ああぁ……」

その場で力無く項垂れるカエデさん。マサキさんが魔力銃を掴むと手を離してゆっくりと地面に降りてくる。

「スゴいですね~マティアスさんみたいでしたよ~」
「似た様な事は出来る様になってきた。彼ほど自然には出来ないけどな」

レフィさんがマサキさんを褒めていた。

マティアスさんのって事は私の超加速を斬ったみたいな事を出来る様になったんだ…。

〈驚きました。まさかコアを一撃で斬れるとは…〉

レナトゥスもただただ驚いている。

ていうか、あのコア斬っちゃって良かったのかな?

〈セントラルコアに確認をしたのですが、指令を拒否する様になり行方不明になっていたそうです〉

ルダレスに事情を聞いてみたかったけど、もう話はできないね。
カエデさんに聞いてみようか。

「あのドゥームはどうやって手に入れたんですか?」
「ひっ!?」

近くに行ったら露骨に怖がられた…。

「マサキがあんな目で睨むからじゃないのか?」
「仕方がないじゃないか。あんな事を言えばキレて当然だろ?」

ハナちゃんがこちらにやって来てマサキさんを非難する。マサキさんはいつもの調子に戻って答えていた。

「マサキはドゥームのコアを斬ってカエデの心をへし折った。私にも出来ないかな?」
「修行したら出来る様になるぞ」

ソラちゃんも憧れるのかな?マサキさんがどんな修行をしたのか気になるんだけど。

「ん、取り敢えず全力で敵を叩く練習をしてみる」

それだとへし折るどころか粉々になっちゃうよ。
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