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特別編3:異世界
優しい嘘、最期の時
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キリエさんは話を続ける。
「力を授かる1人に選ばれたのは私でした。理由は一番長く凶石と戦っているからだと」
力を受けるのには特別な儀式が必要だと言われ、神託の祭壇と言われる場所で横になり儀式が始まるのを待った。途中で意識が遠くなり声が聞こえる『少し眠るだけだ』と。
「目を覚ますと私は地球にいました。武装も外されて、手元にあったのはこのバトンだけ」
キリエさんは手にしている棒を見つめながら続ける。
「新たな能力は特に備わっておらず、儀式は失敗したのだと判断しました」
「何故地球に飛ばされたのでしょう?」
「分かりません」
キリエさんが目を覚ました時、近くにアレクスの職員がいて突然現れたと教えられる。
[アレクスの情報を検索…フレシュディアの痕跡になる物を施設で保管している模様]
つまりアレクスが何かしたって事かな?
[断定は出来ません]
〈状況から推測するに、フレシュディアの仲間から地球に送り出されたのかも知れませんね〉
[レナトゥスの言っている事は可能性として有り得る事です]
うーん…私もそんな気がしてきた。
でも根拠がないから推測をキリエさんに話すと余計に混乱しそう。
[アレクス施設内にあるフレシュディアの痕跡を調べる事を提案します]
そうだね。
「キリエさん、さっきの建物の中にフレシュディアの痕跡を見つけました。それが何なのかは分からないけど、一緒に確認しに行きませんか?」
「フレシュディアの…痕跡…?行きます」
「じゃあ一時休戦という事でいいですね?」
「…はい」
まだ信用してくれていないんだろう、歯切れが悪い返事がくる。
今はそれだけでもいいよ。
話していて思ったけど、キリエさんは芯の強い人だと思う。一応とはいえ約束した事は簡単には違えない人なんじゃないかな。
「そういえば施設にある転移阻害って何なんですか?」
「あれはアレクスの開発した装置、とだけ言っておきます。私が動作の起点になっているわけではないので今も作動しているはずです」
「そうですか」
じゃあ《ブリンク》を使って突入するしかないかな。
アウラさん、痕跡のある場所を具体的に教えて。
[視覚に共有します]
建物の三階部分の一室に保管されているみたい。人も居ないし、これなら壁を1枚吹き飛ばすだけで部屋に入れそう。
「じゃあ行きますね。《ブリンク》!」
まずは建物の目の前に移動。
次は壁を…
「《シェルバースト》!」
接触破壊型の魔法で壁を吹き飛ばして中に入る。
痕跡は高そうな机の引き出しに入っているみたい。
…鍵が掛かってる。えいっ。
引き出しは壊れたけど中身は取り出せる。
「ミナさん…あなた、意外と野蛮ですね」
「そ、そうですか…?今は非常時なので…」
「そうでしたね」
中に入っていたのは紙…これは、羊皮紙?書かれているのは地球の言葉ではない。
「見せてください」
キリエさんに羊皮紙を手渡すと食い入る様に文章を読んでいく。
「そんな…どうして…どうして私なのですか…」
そう言ってその場に泣き崩れてしまった。
キリエさんから羊皮紙を受け取って私も読んでみる。
【親愛なるキリエ。
君は怒るかも知れないが、我々は君を騙していた。
この世界、フレシュディアはもう助からない。神は既にどこにも居なかった。間もなく崩壊が始まるだろう。しかし幸いな事に君達の元居た世界と交信ができた。ゲートを開く力が足りないらしく、人を1人転移させるのが精一杯の様だ。
我々は話し合った結果、君を送り出す事にした。君を選んだ理由は、この世界に来て君が一番苦労をし、それを乗り越えてきたからだ。
君ならば元の世界に帰っても上手くやっていけるだろう。残りの人生を幸せに生きてくれる事を切に願う。
どうか元気で アルシャッハ傭兵団 団長オーギュスト・ミラン】
キリエさんが地球に転移させられたのは事故じゃなかった。
世界がもう助からないと知って、最後にキリエさんだけでも助けようとしたんだ…。
[アレクスの者が近付いて来ています]
「キリエさん…」
「嘘であって欲しかった…これ程悔やまれる事はありません。私も、みんなと戦って消えたかった…」
羊皮紙をキリエさんに手渡すと大事そうに抱きしめながら嗚咽を漏らす。
銃を持った人達が扉を破って私達に銃撃してくる。私は《ディストーションバリア》を張ってキリエさんを守る。
「キリエさん、ここから離れましょう!」
「…どこだ?」
「え?」
「所長は、どこにいる!?」
キリエさんがバトンに魔力を通して大剣を生成すると銃撃している兵士達に斬りかかる。
「キリエさんダメです!」
オーバーブーストを敏捷に付与してキリエさんを追い抜くと、ディエスエグゼクリシオンでキリエさんの魔力大剣を受け止める。
反対側からは兵士の銃撃。かなりの数を撃たれてしまった。
痛た…
「《バースト》!」
下位の爆発魔法で兵士達を蹴散らす。
「何故止めるのです?あなたにとって敵でしょう?」
「それでも、殺したらダメです!」
「退いてください。私は所長に聞きたい事があります」
「聞いてどうするんですか…?」
「返答次第では、殺します」
キリエさんはアレクスに『フレシュディアに帰る方法を探す』と言われていたらしい。
最後に更新したのがアレクスだったとしたら世界が滅んでいる事を知っていてキリエさんを利用していた事になる。
だとしても殺すのはダメだよ。
団長さんや送り出してくれたみんなは、キリエさんに幸せになってほしいって願ったんだから。
「キリエ君、これはどういう事だね?我々を裏切ったのか?」
声の主は廊下からやって来た。
白衣を着た長身の男性。年齢は40歳くらいかな。
「裏切ったのはそちらでしょう?これはどう言う事ですか?所長」
羊皮紙を見せながら聞くキリエさん。
「それが何を指しているのか私には分からんよ。何せもう無い世界の言葉で書かれているのだから」
鼻で笑って答えてくる男性。
「貴様ァ!?」
「そうとも。我々は全て知っていた。その上で君を利用する為に嘘を吐いた。でもこれは君に生きる希望を与える為の優しい嘘だよ。分かってくれるかね?」
違う。
この人が言っているのはただの方便だ。
優しい嘘っていうのは、オーギュストさん達がした事を言うんだよ。
「力を授かる1人に選ばれたのは私でした。理由は一番長く凶石と戦っているからだと」
力を受けるのには特別な儀式が必要だと言われ、神託の祭壇と言われる場所で横になり儀式が始まるのを待った。途中で意識が遠くなり声が聞こえる『少し眠るだけだ』と。
「目を覚ますと私は地球にいました。武装も外されて、手元にあったのはこのバトンだけ」
キリエさんは手にしている棒を見つめながら続ける。
「新たな能力は特に備わっておらず、儀式は失敗したのだと判断しました」
「何故地球に飛ばされたのでしょう?」
「分かりません」
キリエさんが目を覚ました時、近くにアレクスの職員がいて突然現れたと教えられる。
[アレクスの情報を検索…フレシュディアの痕跡になる物を施設で保管している模様]
つまりアレクスが何かしたって事かな?
[断定は出来ません]
〈状況から推測するに、フレシュディアの仲間から地球に送り出されたのかも知れませんね〉
[レナトゥスの言っている事は可能性として有り得る事です]
うーん…私もそんな気がしてきた。
でも根拠がないから推測をキリエさんに話すと余計に混乱しそう。
[アレクス施設内にあるフレシュディアの痕跡を調べる事を提案します]
そうだね。
「キリエさん、さっきの建物の中にフレシュディアの痕跡を見つけました。それが何なのかは分からないけど、一緒に確認しに行きませんか?」
「フレシュディアの…痕跡…?行きます」
「じゃあ一時休戦という事でいいですね?」
「…はい」
まだ信用してくれていないんだろう、歯切れが悪い返事がくる。
今はそれだけでもいいよ。
話していて思ったけど、キリエさんは芯の強い人だと思う。一応とはいえ約束した事は簡単には違えない人なんじゃないかな。
「そういえば施設にある転移阻害って何なんですか?」
「あれはアレクスの開発した装置、とだけ言っておきます。私が動作の起点になっているわけではないので今も作動しているはずです」
「そうですか」
じゃあ《ブリンク》を使って突入するしかないかな。
アウラさん、痕跡のある場所を具体的に教えて。
[視覚に共有します]
建物の三階部分の一室に保管されているみたい。人も居ないし、これなら壁を1枚吹き飛ばすだけで部屋に入れそう。
「じゃあ行きますね。《ブリンク》!」
まずは建物の目の前に移動。
次は壁を…
「《シェルバースト》!」
接触破壊型の魔法で壁を吹き飛ばして中に入る。
痕跡は高そうな机の引き出しに入っているみたい。
…鍵が掛かってる。えいっ。
引き出しは壊れたけど中身は取り出せる。
「ミナさん…あなた、意外と野蛮ですね」
「そ、そうですか…?今は非常時なので…」
「そうでしたね」
中に入っていたのは紙…これは、羊皮紙?書かれているのは地球の言葉ではない。
「見せてください」
キリエさんに羊皮紙を手渡すと食い入る様に文章を読んでいく。
「そんな…どうして…どうして私なのですか…」
そう言ってその場に泣き崩れてしまった。
キリエさんから羊皮紙を受け取って私も読んでみる。
【親愛なるキリエ。
君は怒るかも知れないが、我々は君を騙していた。
この世界、フレシュディアはもう助からない。神は既にどこにも居なかった。間もなく崩壊が始まるだろう。しかし幸いな事に君達の元居た世界と交信ができた。ゲートを開く力が足りないらしく、人を1人転移させるのが精一杯の様だ。
我々は話し合った結果、君を送り出す事にした。君を選んだ理由は、この世界に来て君が一番苦労をし、それを乗り越えてきたからだ。
君ならば元の世界に帰っても上手くやっていけるだろう。残りの人生を幸せに生きてくれる事を切に願う。
どうか元気で アルシャッハ傭兵団 団長オーギュスト・ミラン】
キリエさんが地球に転移させられたのは事故じゃなかった。
世界がもう助からないと知って、最後にキリエさんだけでも助けようとしたんだ…。
[アレクスの者が近付いて来ています]
「キリエさん…」
「嘘であって欲しかった…これ程悔やまれる事はありません。私も、みんなと戦って消えたかった…」
羊皮紙をキリエさんに手渡すと大事そうに抱きしめながら嗚咽を漏らす。
銃を持った人達が扉を破って私達に銃撃してくる。私は《ディストーションバリア》を張ってキリエさんを守る。
「キリエさん、ここから離れましょう!」
「…どこだ?」
「え?」
「所長は、どこにいる!?」
キリエさんがバトンに魔力を通して大剣を生成すると銃撃している兵士達に斬りかかる。
「キリエさんダメです!」
オーバーブーストを敏捷に付与してキリエさんを追い抜くと、ディエスエグゼクリシオンでキリエさんの魔力大剣を受け止める。
反対側からは兵士の銃撃。かなりの数を撃たれてしまった。
痛た…
「《バースト》!」
下位の爆発魔法で兵士達を蹴散らす。
「何故止めるのです?あなたにとって敵でしょう?」
「それでも、殺したらダメです!」
「退いてください。私は所長に聞きたい事があります」
「聞いてどうするんですか…?」
「返答次第では、殺します」
キリエさんはアレクスに『フレシュディアに帰る方法を探す』と言われていたらしい。
最後に更新したのがアレクスだったとしたら世界が滅んでいる事を知っていてキリエさんを利用していた事になる。
だとしても殺すのはダメだよ。
団長さんや送り出してくれたみんなは、キリエさんに幸せになってほしいって願ったんだから。
「キリエ君、これはどういう事だね?我々を裏切ったのか?」
声の主は廊下からやって来た。
白衣を着た長身の男性。年齢は40歳くらいかな。
「裏切ったのはそちらでしょう?これはどう言う事ですか?所長」
羊皮紙を見せながら聞くキリエさん。
「それが何を指しているのか私には分からんよ。何せもう無い世界の言葉で書かれているのだから」
鼻で笑って答えてくる男性。
「貴様ァ!?」
「そうとも。我々は全て知っていた。その上で君を利用する為に嘘を吐いた。でもこれは君に生きる希望を与える為の優しい嘘だよ。分かってくれるかね?」
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