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特別編3:異世界

飛空艇

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自己紹介をして乗船する。
エリザベートさんは8人兄弟の一番上らしい。
見た目は15、6歳に見えるけどもっと上なんだろうなぁ。

「リコッタ、この前乗ってたのはこの船にある?」
「この船はエリザベートの船だから搭載できない」
「むー残念」
「私の船に行けば見せられる」
「じゃあ後で!」

ソラちゃんとリコッタちゃんは親しげに話をしていた。

「全員乗ったか?離陸するぞ」

船員さんがタラップを引き上げると垂直に上昇を始める。振動もなく静かだ。

「この船の動力は魔石?」
「大型の魔石を組み込んだ魔動力炉だな」

リオさんはこの船に興味があるみたい。

「私の船はヘッジホッグセレイラという。元々は海を走る普通の船だったが鋼鉄の島で改造を受けて飛空艇になった。その後に武装を更新して今の姿になったんだ」

エリザベートさんが船の概要を説明してくれる。

甲板上にいるけど風は殆ど感じないし、かなり上昇したけど寒くもなかった。

結界を張っているらしい。

船の側面にはいくつものアンカーがぶら下がっている。

ヴァジエドでイントルーダーを捕まえて投げ飛ばしてた船だったんだね。

「今はキャプチャーアンカーを32基搭載しているんだけど、前は魔力発射式のジャベリンランチャーを64基装備していたんだ」
「それでハリネズミなのですね」

説明を聞いてユキさんは納得していた。

船は上昇をやめてゆっくりと進み始める。空気が澄み渡っていて遠くまでよく見える。今下に見えるのが北ファーン大陸で、ヴァジエドはここから東に行った2つ目の大陸の東端らしい。

「北って事は南もあるの?」
「南は諸島だな。南ファーン諸島と呼ばれているそうだ。何百年か前に魔法使いが何かを暴走させて大陸が吹き飛んだらしいぞ」

大陸が吹き飛ぶって相当な何かだったんだね。

「ミナなら星を砕けるよね?」
「そこは張り合わないでね」

ソラちゃんは何でそんな所で張り合おうとするのかな?

「という事は3大魔法使いと同等かそれ以上という事か」

エリザベートさんは私をマジマジと見ていた。

「3大魔法使い?」
「この前の戦場にも居たぞ。一人はヴァジエド皇帝ゼクセルだ」

エリザベートさんが教えてくれる。
《トリプルキャノンスペル》の皇帝陛下だね。

「私の先生がその一人に数えられています。《常勝の女神》リフェア先生です。一応《ピクシーハンズ》に所属してます」

アニエスさんが教えてくれた。

「最後の一人は冒険者は引退してるんですかね?かなりの頻度で《ピクシーハンズ》の酒場に居るイスファリナって人ですよ~」

と、これはレフィさん。

「で、誰が一番強いの?」
「ダントツでイスファリナさんですね~。その次がゼクセル陛下ですかね」

ソラちゃんの質問にスラスラ答えるレフィさん。それを聞いて何故か私の方を見てくるソラちゃん。

「どっちが強いかな?」
「そんなの分からないよ。あと張り合う気はないからね?」

なんて言いながらもセラさんが3大魔法使いじゃない事に驚いていた。

「この世界の魔法使いはレベルが高いのね」
「さっき酒場で掃除をしていたリファナが詠唱分解のスペシャリスト。本職は付与魔術師だけど」

前に教えてくれた魔法の早撃ち勝負の得意な子だったんだね。
リファナちゃんが1番でセラさんが2番らしい。

リオさんが言った通り、ホントにレベルが高い。

私達は景色を楽しみながら話を聞いていた。

「そろそろ中に入ろうか。案内しよう」
「はい」

エリザベートさんの案内で船の中を見せてもらう。

中は帝国の飛空艇みたいに木造だけど物凄く綺麗にしてある。
それから常時展開している《ビジョン》が至る所に設置されていた。

「窓は全て装甲で埋めてしまったからな」

魔道具を使って外の様子がすぐにわかる様になっているのだとか。

私達は操舵室を見学する。
この部屋はかなり広くてやっぱり窓はない。大型の《ビジョン》のモニターが幾つも並べられていて、見えない所が無いくらい視野が広い。

「ドゥームの宇宙船みたいだね」
「ドゥーム?お前ら奴らともやり合ったのか?」

ソラちゃんが見た目の感想を言うとエリザベートさんが反応する。

「やり合ったどころか助けたわね」
「助けた…?」
「ええとですね…」

私はドゥームの大元になるセントラルコアに生存の可能性を示して、他の生命を脅かさなくても生きていける様にした話をする。

「そ、そうなのか…」
「そんな事があったのですか…」

エリザベートさんと一緒にアニエスさんも驚いていた。
そういえば言ってなかったね。

〈ヌスクァムに居る群体、ドゥーム・ディア=ディエスは戦力としては乏しかった為応援要請は出しませんでした〉

そ、そうなんだ…言わないでおこう。

気を取り直して。

操舵は普通の船と同じ舵輪を使っているみたい。近くに幾つもレバーが付いているけど、これも使って操船するんだね。

「舵輪じゃなくて魔法で指示とか出来ないの?」
「まあ出来なくはないが、ここのクルーは元々船乗りだからこの方が良いんだ」

ほのかさんは舵輪を近くで見ながら聞いていた。

慣れている方がいいもんね。

飛空艇はゆっくりと航行を続けて世界中を見せてくれた。
ヌスクァムは自然が豊かで巨大な山脈や大渓谷などの景色を楽しんだ。
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