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特別編3:異世界

侯爵の軍艦

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交渉に行くなら軍艦が寄港する前の方がいいだろうという事になり、人選して海上で交渉をする事にした。

「俺もつイて行きタい」

そう言ったのはバルバさん。

荒事にするつもりはないかはいいかな。

「『白い悪魔』が一緒の方が脅しやすいよね」
「脅しに行くんじゃないですからね」

ほのかさん、交渉ですからね!

みんな賛成だったのでバルバさんが一緒に来る事に。
あとは、私達は全員行っていいよね。

まずは《ハイパークレアボイアンス》で軍艦の位置を確認。軍艦って言うくらいだし、立派な船の筈。

…いた。

黒い船体で大砲が沢山付いている。あと大きめの槍を装填してある大砲?もあった。あれは何だろう?

「恐らくジャベリンランチャーですね。私達の世界では大砲よりそちらの方が主流でした。魔力で動くものでしたけど」

アニエスさんに聞いたら教えてくれた。

「大砲は火薬式ですかね?」
「えーと…見た目じゃ分からないです」

レフィさんにも聞かれたので確認してみたけど区別の付け方がわからないよ。

てか、みんなに視界を共有しよう。

「あー…混成ですね~。片舷8門、火薬式が3門で魔力式が5門、それからジャベリンランチャーが4機」
「前後に一門ずつ。どちらも魔力砲」
「帆を畳んでかなりの速力で走っていますね。随分と性能の良い魔動力炉を積んでいる様ですね」

レフィさん、アンネさん、アニエスさんが軍艦を見て装備を解析してくれた。

「みなさん兵器にお詳しいのですね」
「うちの世界ってこういう船が多いんですよ~。結構頻繁に戦ったので」

ユキさんが感心しているとレフィさんは笑いながら答えていた。

ヌスクァムは戦争とか多い世界なのかな。

「空を飛んでこないだけいい」
「一番厄介なのは船よりも超火力魔法を単体で撃てる魔術師ですからね~」

アンネさんとレフィさんが話しているのが聞こえてくる。
そういえば前に行った時は飛空艇が何隻も飛んでたしゼクセル陛下が凄い魔法を使っていたね。

魔法の方は覚えちゃったけど。

「じゃあ行く?」
「はい。念の為少し離れた所に転移して私達が敵ではない事を伝えてから近付きましょう」

ほのかさんに答える。
いきなり甲板に出たら間違いなく攻撃されるからね。

戦うつもりはないけど一応全員装備を着けて出発。《フライト》を掛けてから《テレポート》で軍艦の進路上の少し離れた空中に転移した。

「ミナちゃんの声を届けてあげて」

ほのかさんが風の精霊に呼びかけて音声を拡大してくれる。

「私達はレギュイラの者です!侯爵様にお話があって参りました。乗船の許可をいただけませんか?」

甲板上では人が右往左往していた。

返事は聞こえるのかな?

「向こうの声も聴こえる様にしてね」

ほのかさんが言うとあちらの慌てふためく声が聴こえる様になった。

「敵襲!敵襲ー!」
「急速転舵!面舵!機関停止ー!」

あれ…?私の声聞こえてない…?

「いきナり現れテレギュイラの者ト言っても信じなイかも知れナいな」
「えぇ…そんなものですか?」
「転移魔法ハ我々マドゥーラにモ使えんかラな」

あぁ…そうだった…。

「じゃ、沈めよっか」
「ダメですからね!?」

サラッとすごい事を言うほのかさんを止めて次の対応を考える。

「左舷の全砲塔がこちらを指向していますね」
「どうするミナちゃん?」

アニエスさんもアンネさんも落ち着いてるね。

私達と船の距離はおよそ500メートル。魔力砲は分からないけど火薬式の大砲は多分届かないと思う。

「私が防ぎましょうか?」
「うん。防御魔法を掛けておくね。《マナクリンブ》、《マナイルベイション》」

物理防御力と魔法防御力の両方をあげておく。
ユキさんの防御力なら要らないと思うけど一応ね。

軍艦が撃ってきた!

ユキさんが前進して大盾を構える。
最初に飛んできたのは魔力弾。ユキさんはそれを難なく盾で防いだ。
意外な事に火薬式も砲弾をここまでとばしてきた。丸い砲弾は曲線を描いてユキさんの近くに飛んでくるけど、盾を振り回して全ての砲弾を弾き飛ばした。
ジャベリンは一発だけこちらに飛んできたけど軽々と跳ね返していた。

流石はユキさん。
威力はまあまああるみたいだけど、多分盾を使わなくてもダメージ通らないんじゃないかな。

「何だあの娘は!」
「魔物か?」
「ええい化け物め!次弾装填急げ!」

まだ撃ってくる気だよ。

「あの!お話を聞いていただけませんか?私達は交渉にきました!」

…ダメだ。聞いてくれない。

「こうなったら仕方ないよね」
「撃沈はダメですよ」

ほのかさんが沈めるって言いそうだったから先に釘を刺しておく。

「じゃあ、ミナちゃんが一発ガツンとやって黙らせてよ」
「えぇ…」

それじゃ交渉にならないよ。

甲板を見ていたら気になる人を見つけた。白い髪にローブ姿。あれはマドゥーラ族じゃない?

「バルバさん、あの人…」
「マドゥーラの民ダな。侯爵に雇わレているノだろう」
「あの人を通じてこちらが敵じゃないって伝えられませんか?」
「無理だナ。我らマドゥーラは戦場デ出会った場合、雇い主ニ従う事になっテいる」

甲板上のマドゥーラ族の人は魔法の詠唱を始めている。こちらを攻撃するつもりなのだろう。

「仕方ないですね。戦う気を無くせばいいだけですし…」

《アドラステア》を作動させて、何か威力のある魔法を撃って見せようか。

…試しに《トリプルキャノンスペル》を試してみようかな。

この辺りには島も無いし多少派手にやっても大丈夫だよね。

両手を前に突き出して集中する。
手の中に魔力を集中、圧縮を繰り返していく。

よし、いくよ!

「《トリプルキャノンスペル》!」

放たれた魔力は《レイブラスター》とは比較にならない程巨大な光線となって軍艦の横を掠めていく。

凄まじい圧力、大気が震えて海は2つに割れていた。

「すごーい。モーゼみたいだねー」
「まさかそれを使うとは思いませんでした…」

ほのかさんは大喜び。アニエスさんは引いていた。

「いや、やり過ぎじゃね?」

テュケ君が呆れながら言ってくる。

船はその後に起こった大波を何とか凌いで白旗を上げていた。

結局こうなっちゃった…。
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