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特別編3:異世界
生業
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ゾルドさんはバルバさんが連れて行ってくれた。
「厄介な人に惚れられちゃいましたね~」
「考えたくない…」
レフィさんはニヤニヤしながら言っているけど、アンネさんは両腕をさすっている。ほのかさん程じゃないけどアンネさんもあまり表情が動かない感じだけど、今回は嫌そうな顔をしていた。
『ゾルダが女性にあそこまで情熱的に迫るとは…彼奴は魔法にしか興味がないと思っていました』
そんな人なんだ…。
「情熱的っていうか、変態的ですよね~。うちのギルドのディラルさんのパーティみたいですよ~」
「ディラルさん?」
「有象無象の変人達のリーダーですかね」
「えぇ…」
それってどんなパーティなの…?
「レフィさん、有象無象は失礼ですよ」
「アニエスさん、正すところはそこなのですか…?」
ユキさんも困惑してるよ。
変な乱入者もあったけど、私達の用事も済んだし帰ろうかな。
「そういえば、バルバさんはレギュイラに子供を買いに来たのか?あの子達がいれば大丈夫なんじゃないのか?」
テュケ君が村長さんに聞く。
『それは我々マドゥーラの数が減ったからなのです』
「というと?」
『我々は各国に魔法使いを派遣しています。国の防衛、要人の警護、様々な用途に我らは重用されているのです。我らはこの容姿から『白い悪魔』と呼ばれている程恐れられています』
そうなんだ。
「その派遣しているマドゥーラ族が最近大勢亡くなったという事ですか」
『そうです。我々の力を落とさない為にも子孫が必要なのです』
今の話だとあの子達もいずれどこかに派遣される事になるんじゃない?
それって荒事をしなくちゃいけなくなるって事じゃ…?
『冒険者とそう変わりませんよ。魔法が使える分だけ報酬が高く、重宝されていますが』
まあ、そうなんだけどね。
「ええと、レギュイラの街では子供の奴隷を買う事はもうできませんよ。孤児達は私達が保護したので」
『そうだったのですか…残念です。いや、子供達にとっては良かったことですね』
残念そうににしながらも子供達の事を考えてくれているあたり、悪い人ではないんだね。
「そうなの。だからあそこで子供を買うのは諦めてね」
『あなた方は孤児達をどうされるおつもりですかな?』
ほのかさんが言うと村長さんが質問をしてくる。
「私達が魔法を教えていますので、将来的には冒険者か、国か貴族に雇用される事もあると思います」
あ、それってマドゥーラの人達と被っちゃう?商売敵になる事を心配しているのかな…?
『素晴らしい!魔法の修練に我らからも派遣させてもらえませんか?』
意外な言葉が返ってきた。
「それはまあ…いいんじゃないですか?」
「はい。良いと思います」
アニエスさんも賛成してくれた。
『我らも皆様から魔法を学ばさせて頂いてもよろしいでしょうか?』
「それはまあ。でも子供達への指導もお願いしますね」
「勿論です」
何だか急展開だけど孤児院の魔法指導役が確保できた。
話が決まれば村長の行動は早かった。指導者として相応しい人選をして4人のマドゥーラ族を派遣してくれる事に。
バルバさんとゾルダさんとあと若い男女が第一陣として私達と一緒にレギュイラに行くことになった。
「げ…ついて来る…の?」
『愛しの君、俺は君の為ならどんな所にでも行こう』
「いいえ、結構です」
アンネさん、本気で嫌がってる…。
「アンネさん~もしかして照れてるんですか~?」
「違う。いきなり即死魔法を掛けて来る様な相手に迫られても困る」
レフィさんが揶揄ってる。
アンネさんは…うん、それは正論。しかも惚れられた原因が謎すぎるよ。
「アンネちゃんはあんまり恋愛経験がないみたいだね~。人を好きになるのに常識は通用しないんだよ?」
「む…そういう問題じゃない」
ほのかさんに言われて口を尖らせて抗議するアンネさん。
子供っぽいところ、初めて見たかな?
そう考えつつ思い出したのは孤児院の子達とご飯の事ではしゃいでいた姿だった。
いや…そうでもなかったね。
「そう言うほのかはどうなの?」
「私?私もないよ。好かれた事はあるけどね」
まあそうだよね。高校生の時から次元漂流してるんだもんね。
「そんな事より早くレギュイラに行きましょう」
「えー、大事な事だよ?」
「興味ありません」
ユキさんは嫌がってるなぁ…。
「ユキちゃんは男の人が嫌いなんだっけ。女の子の方が好きなのかにゃ?」
「ち、違いますよ!」
ほのかさん、今度はユキさんをいじり出すし…何で語尾がにゃなの?ユキさんも何で動揺してるのかな。
「なあ、早く行こうぜ。そう言う話はレギュイラでも出来るだろ?」
テュケ君は退屈そうに言ってきた。
「そうですよ!早く行きましょう。少しでも早く行ってみんなに授業をしましょう!」
魔法よりも道徳的な事を教える時間がもっと欲しい。あの子達に少しでも思いやりのある子に育ってもらいたいからね。
ーーーー
レギュイラの街にマドゥーラ族が来たという事は瞬く間に知れ渡って、しかもそれが孤児院で魔法の先生をしていると知った街の者は孤児院付近に近付かなくなった。
勿論絡んでくる様な人達も一切無くなって、孤児院はこれまで以上の平穏を得る事が出来た。
まあ、実際は大きな生徒が4人増えただけなのが実状なんだけどね。
それからアニエスさんが書いていた手引書を見つけたマドゥーラ族の若い男性が大騒ぎしていた。
「これは間違いなく魔法史に残る大魔道書…いや、叡智の書だ!」
それは流石に言い過ぎじゃないかな?
「厄介な人に惚れられちゃいましたね~」
「考えたくない…」
レフィさんはニヤニヤしながら言っているけど、アンネさんは両腕をさすっている。ほのかさん程じゃないけどアンネさんもあまり表情が動かない感じだけど、今回は嫌そうな顔をしていた。
『ゾルダが女性にあそこまで情熱的に迫るとは…彼奴は魔法にしか興味がないと思っていました』
そんな人なんだ…。
「情熱的っていうか、変態的ですよね~。うちのギルドのディラルさんのパーティみたいですよ~」
「ディラルさん?」
「有象無象の変人達のリーダーですかね」
「えぇ…」
それってどんなパーティなの…?
「レフィさん、有象無象は失礼ですよ」
「アニエスさん、正すところはそこなのですか…?」
ユキさんも困惑してるよ。
変な乱入者もあったけど、私達の用事も済んだし帰ろうかな。
「そういえば、バルバさんはレギュイラに子供を買いに来たのか?あの子達がいれば大丈夫なんじゃないのか?」
テュケ君が村長さんに聞く。
『それは我々マドゥーラの数が減ったからなのです』
「というと?」
『我々は各国に魔法使いを派遣しています。国の防衛、要人の警護、様々な用途に我らは重用されているのです。我らはこの容姿から『白い悪魔』と呼ばれている程恐れられています』
そうなんだ。
「その派遣しているマドゥーラ族が最近大勢亡くなったという事ですか」
『そうです。我々の力を落とさない為にも子孫が必要なのです』
今の話だとあの子達もいずれどこかに派遣される事になるんじゃない?
それって荒事をしなくちゃいけなくなるって事じゃ…?
『冒険者とそう変わりませんよ。魔法が使える分だけ報酬が高く、重宝されていますが』
まあ、そうなんだけどね。
「ええと、レギュイラの街では子供の奴隷を買う事はもうできませんよ。孤児達は私達が保護したので」
『そうだったのですか…残念です。いや、子供達にとっては良かったことですね』
残念そうににしながらも子供達の事を考えてくれているあたり、悪い人ではないんだね。
「そうなの。だからあそこで子供を買うのは諦めてね」
『あなた方は孤児達をどうされるおつもりですかな?』
ほのかさんが言うと村長さんが質問をしてくる。
「私達が魔法を教えていますので、将来的には冒険者か、国か貴族に雇用される事もあると思います」
あ、それってマドゥーラの人達と被っちゃう?商売敵になる事を心配しているのかな…?
『素晴らしい!魔法の修練に我らからも派遣させてもらえませんか?』
意外な言葉が返ってきた。
「それはまあ…いいんじゃないですか?」
「はい。良いと思います」
アニエスさんも賛成してくれた。
『我らも皆様から魔法を学ばさせて頂いてもよろしいでしょうか?』
「それはまあ。でも子供達への指導もお願いしますね」
「勿論です」
何だか急展開だけど孤児院の魔法指導役が確保できた。
話が決まれば村長の行動は早かった。指導者として相応しい人選をして4人のマドゥーラ族を派遣してくれる事に。
バルバさんとゾルダさんとあと若い男女が第一陣として私達と一緒にレギュイラに行くことになった。
「げ…ついて来る…の?」
『愛しの君、俺は君の為ならどんな所にでも行こう』
「いいえ、結構です」
アンネさん、本気で嫌がってる…。
「アンネさん~もしかして照れてるんですか~?」
「違う。いきなり即死魔法を掛けて来る様な相手に迫られても困る」
レフィさんが揶揄ってる。
アンネさんは…うん、それは正論。しかも惚れられた原因が謎すぎるよ。
「アンネちゃんはあんまり恋愛経験がないみたいだね~。人を好きになるのに常識は通用しないんだよ?」
「む…そういう問題じゃない」
ほのかさんに言われて口を尖らせて抗議するアンネさん。
子供っぽいところ、初めて見たかな?
そう考えつつ思い出したのは孤児院の子達とご飯の事ではしゃいでいた姿だった。
いや…そうでもなかったね。
「そう言うほのかはどうなの?」
「私?私もないよ。好かれた事はあるけどね」
まあそうだよね。高校生の時から次元漂流してるんだもんね。
「そんな事より早くレギュイラに行きましょう」
「えー、大事な事だよ?」
「興味ありません」
ユキさんは嫌がってるなぁ…。
「ユキちゃんは男の人が嫌いなんだっけ。女の子の方が好きなのかにゃ?」
「ち、違いますよ!」
ほのかさん、今度はユキさんをいじり出すし…何で語尾がにゃなの?ユキさんも何で動揺してるのかな。
「なあ、早く行こうぜ。そう言う話はレギュイラでも出来るだろ?」
テュケ君は退屈そうに言ってきた。
「そうですよ!早く行きましょう。少しでも早く行ってみんなに授業をしましょう!」
魔法よりも道徳的な事を教える時間がもっと欲しい。あの子達に少しでも思いやりのある子に育ってもらいたいからね。
ーーーー
レギュイラの街にマドゥーラ族が来たという事は瞬く間に知れ渡って、しかもそれが孤児院で魔法の先生をしていると知った街の者は孤児院付近に近付かなくなった。
勿論絡んでくる様な人達も一切無くなって、孤児院はこれまで以上の平穏を得る事が出来た。
まあ、実際は大きな生徒が4人増えただけなのが実状なんだけどね。
それからアニエスさんが書いていた手引書を見つけたマドゥーラ族の若い男性が大騒ぎしていた。
「これは間違いなく魔法史に残る大魔道書…いや、叡智の書だ!」
それは流石に言い過ぎじゃないかな?
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