上 下
602 / 763
特別編3:異世界

マドゥーラの村

しおりを挟む
──〔human side〕──

バルバさんが言うには2年前に買い取った子供3人は自分達の村に連れ帰り魔法使いとして育てているらしい。

「つまりマドゥーラの民は魔法使いの資質について知っているという事ですか?」

アニエスさんが質問する。私達は瘴気を体に取り込む事で魔力を操れるようになるのではと仮説を立てていた。

「その通リ。我々もまタ、生まれた時ニ瘴気に晒さレ魔素を体ノ中に循環させタ」

どうやら私達の仮説は合っていたみたい。

「子供を高いお金を出して買わなくても、自分達の子供を魔法使いとして育てれば良いではないですか」

ユキさんが意見する。

「我らハ一族同士でノ交配でハ子供が出来なクなってシまったのダ。生まれてモ早ク死ヌ」
「長い間一族で閉鎖的に暮らしていた弊害ですかね~」

レフィさんはこういう事に詳しいのかな?

「魔法使いに育てる理由は?」
「魔法ノ適性は子ニ受け継がレる」

アンネさんの質問にバルバさんは答える。

「あの、その子達の意思はどうなるんでしょうか?奴隷として売られて、知らない土地に連れて行かれて…」

いくら良い待遇で暮らしていたとしても納得できないよ。

「ここノ者達ガ付けた焼印ハ消しテある。あの子らガ成人したラ村で暮らすカ出ていクか決めさセるつもりダ」

そうなんだ…。

「会わせてもらう事は出来ますか?」
「構わなイが、遠イぞ」
「それなら大丈夫です。会頭さん、地図ってないですか?」
「持ってこよう」

そう言って部屋から出ていく会頭さん。すぐに丸めた大きな紙を持ってきてくれた。

テーブルの上に広げると雑な地図だけど世界地図みたいだった。

「ここがレギュイラだ。マドゥーラの民が住んでいるのはこの大陸で、確かこの辺りでしたね?」
「そウだ」
「分かりました。じゃあ行きましょう」

そう言ってからみんなを見るとそれぞれ頷いてくれた。

「2ヶ月ハ掛かルぞ」
「いいえ、一瞬ですよ」

私は《ハイパークレアボイアンス》を使って地図で教えてくれた地点付近を確認して《テレポート》で移動する。

そこは頑丈そうな石の塀に囲まれた村の中だった。
石や木で出来た家が立ち並んでいて一見すると普通の村に見える。

「ここですか?」

私が聞くと、バルバさんは目を見開いたまま固まっていた。

「ここは…マドゥーラの村なのか…?」

あ、会頭さんも連れてきちゃった。

「あの、ここで合ってますか?」

そばに行って袖を引っ張りながら聞く。

「そうダ。ここは私ノ村ダ」

うん、合ってた。

『バルバ、子供の買い付けに行ったのではないのか?』

顔も服装もバルバさんにそっくりな男の人がやって来る。こちらの大陸の言葉なのかな?言語が違う。

『あ、ああ…ゾルドか。さっきまでレギュイラにいたのだが、転移した』
『転移?何を馬鹿な事を。あの魔法は何代も掛けて解析しても未だに使える様にはなっていないではないか』

ゾルドさんは鼻で笑いながらバルバさんに言い返している。

「あの、バルバさんが言った事は本当です」
『おお…凄まじい魔力量ではないか。良い買い物をしたではないか!』

ゾルドさんも私達を売り物だと思ってるね。

「私達はバルバさんに買われたわけではありません。2年前にこの村に来た子供達が元気か見に来ました」
『バルバよ、この子供達は外部の者なのか?ならば生かしてはおけんぞ』

私の言っている事は分かっているみたいだけど、話をしようとしてくれない。しかも物騒な事を言い出したんだけど。

「穏やかじゃない物言いだね。生かしておかないって何をするの?」

アンネさんがゾルドさんの前に立つ。

『《デススペル》。こうなるのだ』

今の魔法って…!即死魔法!?

「そう。なら遠慮はいらないね」

アンネさんはそう言うと右手に風のエレメンタルを集めて無駄のない動きでゾルダさんの左頬に拳をぶつける。

物凄い音がしてゾルダさんは錐揉みしながら飛んでいく。
10メートルくらい飛んだかな…。

いきなり即死魔法を使ってくるなんて。しかも詠唱が物凄く早かった。たぶん《高速言語》を使ったんだと思う。

「アンネさん大丈夫なんですか?」
「うん。私に即死魔法は効かないよ」

即死効果のあるスキルを無効化するマジックアイテムを持っているらしい。
雷も効かないし即死対策もしてるんだね。

「あらら…いきなりぶっ飛ばしちゃって良かったの?」

ほのかさんがアンネさんに聞く。

「先に仕掛けて来たのは向こうだから。村全体と敵対しても仕方ない。制圧してから用事を済ませる」
「アンネちゃん過激ー」

『何だ?何があった?』

建物から続々と出てくる人達。みんなバルバさんにそっくりなんだけど…。

「同じ顔だらけだぞ…」
「こう言っては失礼ですが、不気味ですね…」

テュケ君とユキさんは《インベントリ》から武器を取り出していた。向こう側も魔法の詠唱を始めている。

『よせ!』
『バルバよ、この村に敵を引き込んだのか?ならばお前も敵だ!』

ああ、そうなっちゃうんだ。

「誤解を解きたイがこのままデは無理ダ。出来れバ殺さないデもらえルか?」
「分かりました。皆さん、私達の目的は子供達の確認です。制圧のみで、絶対に殺さないでください」

さっきの人、生きてるよね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界転生はうっかり神様のせい⁈

りょく
ファンタジー
引きこもりニート。享年30。 趣味は漫画とゲーム。 なにかと不幸体質。 スイーツ大好き。 なオタク女。 実は予定よりの早死は神様の所為であるようで… そんな訳あり人生を歩んだ人間の先は 異世界⁈ 魔法、魔物、妖精もふもふ何でもありな世界 中々なお家の次女に生まれたようです。 家族に愛され、見守られながら エアリア、異世界人生楽しみます‼︎

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。