575 / 763
特別編3:異世界
滅んだ世界の神
しおりを挟む
「次元結界を張らせてもらった。もう逃げられんぞ」
私とドリフさんが話をしている僅かな時間で川本さんは結界を作ってくれた。
「流石の手際だ。その力を少しでも私の世界に貸してくれればああはならなかったのにな」
「すまないがたった1つの世界の異変に気付いてやれる程私も暇ではないのだ。救援を求めていれば何とかしてやれたのだがな」
川本さんは淡々と言葉を返す。
どうやらドリフさんはイントルーダーの発生源になった世界の神様みたい。
「ねえ…あなたの世界に私は行った事がある?私に見覚えはない?」
ほのかさんがこちらに歩きながら聞いてくる。
すぐ後ろではアニエスさん達が子供達の拘束を外していた。
「見覚えはないよ」
「そう…」
ほのかさんは少し安心した様子で呟いた。自分がドリフさんの世界を滅ぼしたキッカケになったんじゃないかと心配していたんだね。
「それで、君達は私を投降させてどうするのかな?」
「あなたが異世界の門の開き方を教えた世界を全て教えてもらいます」
「その後は?私を処刑するのだろう?良くて魂を分断して時間を掛けて浄化するってところかな。そんな条件で投降すると思うかい?」
…確かに。
「丸め込まれてるんじゃないわよ」
「ごめんなさい」
リオさんに怒られた。
「じゃあここで死んでもらうしかない」
そう言ってソラちゃんがハルバードを構えて突進する。反対側からはユキさんも大盾と槍を構えて飛び出していた。タイミングを少しずらして私とテュケ君が飛び出す。
私は神格だしみんなも擬似神格化しているから神様でも攻撃は通る。
ドリフさんはソラちゃんの鋭い袈裟がけの振り下ろしをギリギリで避けてユキさんの槍を魔力の盾を作って防ぐ。
ユキさんは大盾で体当たりを繰り出して魔力の盾を吹き飛ばし後退するとテュケ君が2本の剣で振り下ろし。私はソラちゃんと入れ替わる様に滑り込むと下段からディエスエグゼクリシオンで斬り上げる。
私とテュケ君の攻撃は確実にドリフさんを捉えていた。
確かな手応えはあった。けど…
「流石にこんな所まで追いかけてくるだけあって強いね」
斬られた部分から血は出ない。それどころか中身が真っ白で何も無い様に見える。
「本体じゃない?」
「いいや本体さ」
ソラちゃんの呟きに律儀に答えるドリフさん。
切り口の付近の中身がブヨブヨと動いて飛び出してきた!
「ねーちゃん!」
テュケ君が回り込んで来て私に迫るそれを斬り払ってくれる。私は刀身を分離してエスカトンディザスターを作動させてドリフさんを横薙ぎに払う。
その衝撃で後ろに飛ばされるドリフさん。
「テュケ君ありがとう」
「くっ…ねーちゃん…無事でよかった…」
テュケ君の左手首に白い触手みたいなものが絡み付いていた。《ソードコントロール》で飛ばしたディエスエグゼクリシオンを使ってすぐに触手は斬り落としたけど、テュケ君の左手が白く変質していく…。
[警告。それはイントルーダーです。直ちに排除してください]
えぇ!?
「テュケ、左腕を出せ」
アウラさんの警告に一早く反応したのはソラちゃん。テュケ君の背後に回り込んでハルバードを振りかぶっていた。
テュケ君が左腕を水平に出すと肩口からハルバードで斬り落とした。
私は《レナータ》でテュケ君の腕を再生する。
「ありがとうねーちゃん。ソラも…助かった」
「気にするな。それよりも…」
お礼を言うテュケ君。ソラちゃんは斬り落とした腕を見て顔を引き攣らせていた。
見ると落ちた腕は真っ白くなってウネウネと芋虫みたい這いずっている。切り口の所から上下に分かれて「キシャー」と鳴いていた。
うわぁ…気持ち悪い…。
エスカトンディザスターで上から突き刺したら暫くジタバタしていたけど動かなくなった。
「俺の腕が違う生き物に…」
テュケ君はかなりショックだったみたい。
「それはテュケの腕じゃない。腕はちゃんと2本ある。落ち着け」
「お、おう…!」
テュケ君を励ますソラちゃんの声も震えていた。
「貴様、知性を獲得したイントルーダーなのか」
「違う。イントルーダーを取り込んだ神だ。私の名はアルディオス。この力で全ての世界を掌握する」
川本さんが聞くとドリフさんは名乗った。
世界を掌握って…とんでもない事を考えてる神様だ。
「手始めに虚空の覇者には消えてもらおう」
私達が斬りつけた部分はピッタリと元に戻っていて、アルディオス様は右手を川本さんに向けた。
物凄い勢いで腕が伸びて川本さんに迫る。
川本さんは魔力の盾で腕を弾こうとしたけど簡単に貫かれてしまう。
僅かに軌道が変わった事で川本さんに腕は届かなかった。
「最強の存在と言われている虚空の覇者がこの程度か?」
「勘違いするな。俺の全力はこんなものではない」
「聡明な虚空の覇者殿はこの世界を破壊しない為に仮初の肉体で来ているのだろう?今は次元間移動を封じた状態だが、その身体が死を迎えたらどうなるのだろうな?」
アルディオス様はそう言ってニヤリと笑う。
対する川本さんは険しい顔。
解除すれば逃げられるし、現状を維持し続けると本体に戻れない。
つまりあっちの方が有利って事?
「一旦結界を解除するべきだわ」
「その通り。要らぬ犠牲者を出さない様にするにはそれが最善。しかし私がそれをやらせると思うかな?」
アルディオス様が両手を上に翳すと、光が弾けて全方位に広がっていく。
[攻撃力が高すぎます。全員《ヴェンデッタ》で対応してください]
アウラさんの警告通り《ヴェンデッタ》を使用する。
これは自分に向けられた攻撃を跳ね返す能力。
全体攻撃の場合誰かを庇う事はほぼ出来ない。
つまり倒れている人達や子供達は…。
[自身を守る事を最優先に]
何とかならないかと考えを巡らせようとしたらアウラさんに警告された。
それ程の威力って事なんだ。
私とドリフさんが話をしている僅かな時間で川本さんは結界を作ってくれた。
「流石の手際だ。その力を少しでも私の世界に貸してくれればああはならなかったのにな」
「すまないがたった1つの世界の異変に気付いてやれる程私も暇ではないのだ。救援を求めていれば何とかしてやれたのだがな」
川本さんは淡々と言葉を返す。
どうやらドリフさんはイントルーダーの発生源になった世界の神様みたい。
「ねえ…あなたの世界に私は行った事がある?私に見覚えはない?」
ほのかさんがこちらに歩きながら聞いてくる。
すぐ後ろではアニエスさん達が子供達の拘束を外していた。
「見覚えはないよ」
「そう…」
ほのかさんは少し安心した様子で呟いた。自分がドリフさんの世界を滅ぼしたキッカケになったんじゃないかと心配していたんだね。
「それで、君達は私を投降させてどうするのかな?」
「あなたが異世界の門の開き方を教えた世界を全て教えてもらいます」
「その後は?私を処刑するのだろう?良くて魂を分断して時間を掛けて浄化するってところかな。そんな条件で投降すると思うかい?」
…確かに。
「丸め込まれてるんじゃないわよ」
「ごめんなさい」
リオさんに怒られた。
「じゃあここで死んでもらうしかない」
そう言ってソラちゃんがハルバードを構えて突進する。反対側からはユキさんも大盾と槍を構えて飛び出していた。タイミングを少しずらして私とテュケ君が飛び出す。
私は神格だしみんなも擬似神格化しているから神様でも攻撃は通る。
ドリフさんはソラちゃんの鋭い袈裟がけの振り下ろしをギリギリで避けてユキさんの槍を魔力の盾を作って防ぐ。
ユキさんは大盾で体当たりを繰り出して魔力の盾を吹き飛ばし後退するとテュケ君が2本の剣で振り下ろし。私はソラちゃんと入れ替わる様に滑り込むと下段からディエスエグゼクリシオンで斬り上げる。
私とテュケ君の攻撃は確実にドリフさんを捉えていた。
確かな手応えはあった。けど…
「流石にこんな所まで追いかけてくるだけあって強いね」
斬られた部分から血は出ない。それどころか中身が真っ白で何も無い様に見える。
「本体じゃない?」
「いいや本体さ」
ソラちゃんの呟きに律儀に答えるドリフさん。
切り口の付近の中身がブヨブヨと動いて飛び出してきた!
「ねーちゃん!」
テュケ君が回り込んで来て私に迫るそれを斬り払ってくれる。私は刀身を分離してエスカトンディザスターを作動させてドリフさんを横薙ぎに払う。
その衝撃で後ろに飛ばされるドリフさん。
「テュケ君ありがとう」
「くっ…ねーちゃん…無事でよかった…」
テュケ君の左手首に白い触手みたいなものが絡み付いていた。《ソードコントロール》で飛ばしたディエスエグゼクリシオンを使ってすぐに触手は斬り落としたけど、テュケ君の左手が白く変質していく…。
[警告。それはイントルーダーです。直ちに排除してください]
えぇ!?
「テュケ、左腕を出せ」
アウラさんの警告に一早く反応したのはソラちゃん。テュケ君の背後に回り込んでハルバードを振りかぶっていた。
テュケ君が左腕を水平に出すと肩口からハルバードで斬り落とした。
私は《レナータ》でテュケ君の腕を再生する。
「ありがとうねーちゃん。ソラも…助かった」
「気にするな。それよりも…」
お礼を言うテュケ君。ソラちゃんは斬り落とした腕を見て顔を引き攣らせていた。
見ると落ちた腕は真っ白くなってウネウネと芋虫みたい這いずっている。切り口の所から上下に分かれて「キシャー」と鳴いていた。
うわぁ…気持ち悪い…。
エスカトンディザスターで上から突き刺したら暫くジタバタしていたけど動かなくなった。
「俺の腕が違う生き物に…」
テュケ君はかなりショックだったみたい。
「それはテュケの腕じゃない。腕はちゃんと2本ある。落ち着け」
「お、おう…!」
テュケ君を励ますソラちゃんの声も震えていた。
「貴様、知性を獲得したイントルーダーなのか」
「違う。イントルーダーを取り込んだ神だ。私の名はアルディオス。この力で全ての世界を掌握する」
川本さんが聞くとドリフさんは名乗った。
世界を掌握って…とんでもない事を考えてる神様だ。
「手始めに虚空の覇者には消えてもらおう」
私達が斬りつけた部分はピッタリと元に戻っていて、アルディオス様は右手を川本さんに向けた。
物凄い勢いで腕が伸びて川本さんに迫る。
川本さんは魔力の盾で腕を弾こうとしたけど簡単に貫かれてしまう。
僅かに軌道が変わった事で川本さんに腕は届かなかった。
「最強の存在と言われている虚空の覇者がこの程度か?」
「勘違いするな。俺の全力はこんなものではない」
「聡明な虚空の覇者殿はこの世界を破壊しない為に仮初の肉体で来ているのだろう?今は次元間移動を封じた状態だが、その身体が死を迎えたらどうなるのだろうな?」
アルディオス様はそう言ってニヤリと笑う。
対する川本さんは険しい顔。
解除すれば逃げられるし、現状を維持し続けると本体に戻れない。
つまりあっちの方が有利って事?
「一旦結界を解除するべきだわ」
「その通り。要らぬ犠牲者を出さない様にするにはそれが最善。しかし私がそれをやらせると思うかな?」
アルディオス様が両手を上に翳すと、光が弾けて全方位に広がっていく。
[攻撃力が高すぎます。全員《ヴェンデッタ》で対応してください]
アウラさんの警告通り《ヴェンデッタ》を使用する。
これは自分に向けられた攻撃を跳ね返す能力。
全体攻撃の場合誰かを庇う事はほぼ出来ない。
つまり倒れている人達や子供達は…。
[自身を守る事を最優先に]
何とかならないかと考えを巡らせようとしたらアウラさんに警告された。
それ程の威力って事なんだ。
0
お気に入りに追加
3,734
あなたにおすすめの小説
泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜
足助右禄
ファンタジー
沢山の家族に看取られ80歳で天寿を全うした春子は、神様らしき人物に転生させられる。
「おめでとうございまーす。アナタは泉の精に生まれ変わりまーす。」
気がついたら目の前には水溜まり。
「これが……泉?」
荒れ果てた大地に水溜まりが一つ。
泉の精として長大な時間を過ごす事になったお婆ちゃんの話。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。