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特別編3:異世界

滅んだ世界の神

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「次元結界を張らせてもらった。もう逃げられんぞ」

私とドリフさんが話をしている僅かな時間で川本さんは結界を作ってくれた。

「流石の手際だ。その力を少しでも私の世界に貸してくれればああはならなかったのにな」
「すまないがたった1つの世界の異変に気付いてやれる程私も暇ではないのだ。救援を求めていれば何とかしてやれたのだがな」

川本さんは淡々と言葉を返す。
どうやらドリフさんはイントルーダーの発生源になった世界の神様みたい。

「ねえ…あなたの世界に私は行った事がある?私に見覚えはない?」

ほのかさんがこちらに歩きながら聞いてくる。
すぐ後ろではアニエスさん達が子供達の拘束を外していた。

「見覚えはないよ」
「そう…」

ほのかさんは少し安心した様子で呟いた。自分がドリフさんの世界を滅ぼしたキッカケになったんじゃないかと心配していたんだね。

「それで、君達は私を投降させてどうするのかな?」
「あなたが異世界の門の開き方を教えた世界を全て教えてもらいます」
「その後は?私を処刑するのだろう?良くて魂を分断して時間を掛けて浄化するってところかな。そんな条件で投降すると思うかい?」

…確かに。

「丸め込まれてるんじゃないわよ」
「ごめんなさい」

リオさんに怒られた。

「じゃあここで死んでもらうしかない」

そう言ってソラちゃんがハルバードを構えて突進する。反対側からはユキさんも大盾と槍を構えて飛び出していた。タイミングを少しずらして私とテュケ君が飛び出す。

私は神格だしみんなも擬似神格化しているから神様でも攻撃は通る。

ドリフさんはソラちゃんの鋭い袈裟がけの振り下ろしをギリギリで避けてユキさんの槍を魔力の盾を作って防ぐ。
ユキさんは大盾で体当たりを繰り出して魔力の盾を吹き飛ばし後退するとテュケ君が2本の剣で振り下ろし。私はソラちゃんと入れ替わる様に滑り込むと下段からディエスエグゼクリシオンで斬り上げる。

私とテュケ君の攻撃は確実にドリフさんを捉えていた。
確かな手応えはあった。けど…

「流石にこんな所まで追いかけてくるだけあって強いね」

斬られた部分から血は出ない。それどころか中身が真っ白で何も無い様に見える。

「本体じゃない?」
「いいや本体さ」

ソラちゃんの呟きに律儀に答えるドリフさん。

切り口の付近の中身がブヨブヨと動いて飛び出してきた!

「ねーちゃん!」

テュケ君が回り込んで来て私に迫るそれを斬り払ってくれる。私は刀身を分離してエスカトンディザスターを作動させてドリフさんを横薙ぎに払う。
その衝撃で後ろに飛ばされるドリフさん。

「テュケ君ありがとう」
「くっ…ねーちゃん…無事でよかった…」

テュケ君の左手首に白い触手みたいなものが絡み付いていた。《ソードコントロール》で飛ばしたディエスエグゼクリシオンを使ってすぐに触手は斬り落としたけど、テュケ君の左手が白く変質していく…。

[警告。それはイントルーダーです。直ちに排除してください]

えぇ!?

「テュケ、左腕を出せ」

アウラさんの警告に一早く反応したのはソラちゃん。テュケ君の背後に回り込んでハルバードを振りかぶっていた。
テュケ君が左腕を水平に出すと肩口からハルバードで斬り落とした。

私は《レナータ》でテュケ君の腕を再生する。

「ありがとうねーちゃん。ソラも…助かった」
「気にするな。それよりも…」

お礼を言うテュケ君。ソラちゃんは斬り落とした腕を見て顔を引き攣らせていた。

見ると落ちた腕は真っ白くなってウネウネと芋虫みたい這いずっている。切り口の所から上下に分かれて「キシャー」と鳴いていた。

うわぁ…気持ち悪い…。
エスカトンディザスターで上から突き刺したら暫くジタバタしていたけど動かなくなった。

「俺の腕が違う生き物に…」

テュケ君はかなりショックだったみたい。

「それはテュケの腕じゃない。腕はちゃんと2本ある。落ち着け」
「お、おう…!」

テュケ君を励ますソラちゃんの声も震えていた。

「貴様、知性を獲得したイントルーダーなのか」
「違う。イントルーダーを取り込んだ神だ。私の名はアルディオス。この力で全ての世界を掌握する」

川本さんが聞くとドリフさんは名乗った。

世界を掌握って…とんでもない事を考えてる神様だ。

「手始めに虚空の覇者ヴォイドマスターには消えてもらおう」

私達が斬りつけた部分はピッタリと元に戻っていて、アルディオス様は右手を川本さんに向けた。
物凄い勢いで腕が伸びて川本さんに迫る。

川本さんは魔力の盾で腕を弾こうとしたけど簡単に貫かれてしまう。

僅かに軌道が変わった事で川本さんに腕は届かなかった。

「最強の存在と言われている虚空の覇者ヴォイドマスターがこの程度か?」
「勘違いするな。俺の全力はこんなものではない」
「聡明な虚空の覇者ヴォイドマスター殿はこの世界を破壊しない為に仮初の肉体で来ているのだろう?今は次元間移動を封じた状態だが、その身体が死を迎えたらどうなるのだろうな?」

アルディオス様はそう言ってニヤリと笑う。

対する川本さんは険しい顔。
解除すれば逃げられるし、現状を維持し続けると本体に戻れない。
つまりあっちの方が有利って事?

「一旦結界を解除するべきだわ」
「その通り。要らぬ犠牲者を出さない様にするにはそれが最善。しかし私がそれをやらせると思うかな?」

アルディオス様が両手を上に翳すと、光が弾けて全方位に広がっていく。

[攻撃力が高すぎます。全員《ヴェンデッタ》で対応してください]

アウラさんの警告通り《ヴェンデッタ》を使用する。
これは自分に向けられた攻撃を跳ね返す能力。
全体攻撃の場合誰かを庇う事はほぼ出来ない。

つまり倒れている人達や子供達は…。

[自身を守る事を最優先に]

何とかならないかと考えを巡らせようとしたらアウラさんに警告された。

それ程の威力って事なんだ。
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